ボリビア報道で「クーデター」という単語を頑固に避ける主流マスコミ
2019年11月11日
ケイトリン・ジョンストン
CaitlinJohnstone.com
ボリビアで強暴な右翼暴徒とアメリカ政府に支援された軍事クーデターがおきたが、主流メディアの大見出しのどれからも、ほとんどこれを知ることはできない。
「ボリビアのエボ・モラレス大統領は不正選挙非難の後、退任」とCNNが主張する。
「激化する抗議行動、ボリビアのモラレスは選挙の批判的報道の中、辞任」とワシントン・ポストが報じる。
「ボリビア大統領エボ・モラレス辞任」とニューヨーク・タイムズが言う。
「ボリビアのエボ・モラレス大統領、不正投票抗議の中で辞職」とBBCが断言する。
「ボリビア大統領、投票操作の主張のさなか退任」と我々はテレグラフに知らされる。
「ボリビアのモラレス大統領 疑惑選挙の激しい反発後に辞職」とシドニー・モーニングヘラルドが言う。
そういうわけだ。たまたま(スマートフォンや、ラップトップや、ハイブリッド自動車や電気自動車用の電力供給のための重要なエネルギー源として、ある日石油に置き換わるかもしれない)世界最大のリチウム埋蔵を有し、アメリカ政府による政権転覆の標的に定められていた事実が大量に文書化されている国で、膨大な人々を圧倒的な貧困から見事に救い上げた南米の社会主義政府の先住民大統領が、「選挙疑惑」に関するある種スキャンダルだけで辞任したのだ。右翼暴徒が、この大統領の家族を脅していたことや、国軍が文字通り、彼に退任するよう命じ、現在彼を逮捕すべく捜しているという事実、覆面兵士に、追放された官僚が駆り集められ、捕虜として抑留されるに至っている事実とは全く無関係なのだ。
全てまったく正常で、全てまったく疑わしくないのだ。
国民の本当の代表を選ぶ民主的過程を保証するため#ボリビアでの新選挙を勧める@OAS_公式報告調査結果を全面的に支持する。選挙制度の信頼性は回復するに違いない。
- ポンペオ国務長官(@SecPompeo) 2019年11月10日
いつも通り、この話題に関するマスコミ報道は、モラレスの強制辞任直前に、マイク・ポンペオ国務長官がTweetで「選挙疑惑」の話題を語ったアメリカ国務省と完全に一致している。ポンペオは、先月のモラレス再選の際、いかがわしい投票集計があったという、ワシントンに本拠を置く米州機構(OAS)の証拠の無い、信用に値しないとされている主張を引き合いに出していた。経済政策研究センターCEPRのマーク・ワイスブロットが、ネイション誌の最近記事で説明しているように、OASはワシントンからその資金の60パーセントを得ており、この中立のはずの国際機関に対して、アメリカは途方もなく大きい影響力を持っている。これは興味深いことに、化学兵器禁止機関OPCWへの不釣り合いな金銭的援助を、中立のはずの国際機関に、アメリカ方針に従うよう強いる影響力として利用しているという、我々が以前論じたワシントンの周知の実績とつながっている。
言説支配の範囲は益々拡大しつつある。
10月20日の選挙で、彼らは不正行為の証拠を決して発見できなかったが、メディアは、この「真実後の世界」で、それが「真実になる」ほど頻繁にこの主張を繰り返した。スレッド:https://t.co/8oWFNKNebT
- マーク・ワイスブロット (@MarkWeisbrot) 2019年11月10日
アメリカに集中した帝国は、言う通りにしない政府には、成功するまで、クーデターの企てをしかけ続ける。2002年、ベネズエラでのクーデターは失敗し、2019年にも、失敗したが、連中は成功するまで試み続けるだろう。キックボクサーは、訓練された相手では、大半の攻撃が当たらないか、最小限のダメージにしかならないと考えて、打撃を組み合わせるが、最終的に、一発が効いて、ノックアウトする。帝国主義者の政権交代策も同じ「パンチ連打」原理を使っている。攻撃し続け、あらゆる機会に徐々に弱らせ、最終的に、何かが効果をあげるのだ。
帝国には、これをする余裕がある。全ての権力と資源を持っている場合、今日、独立国政府を倒す試みが失敗しても、常に、明日があると、機が熟すのを待てるのだ。
去年、国連安全保障理事会の会議で、世界におけるアメリカの役割の本質を、モラレスは非常に正確に要約したが、結局、実に先見の明があったのだ。
「ここで皆様に率直に公然と申し上げたいと思いますが、アメリカ合州国は民主主義の擁護には全く興味がありません」とモラレスは言った。「もしそれが事実なら、アメリカはクーデターに資金供与したり、独裁者支援をしたりしないはずです。ベネズエラでしたように、アメリカは軍事介入で民主的に選出された政府を脅さなかったはずです。アメリカ合州国は人権や公正には全く何の関心もありません。もしそうなら、アメリカは人権を守る国際協定や条約に署名しているはずです。アメリカは国際刑事裁判所の調査メカニズムを脅かさなかったはずで、アメリカは拷問使用も奨励しないはずで、アメリカは人権理事会を離脱しなかったはずです。移民の子供たちを家族から離して檻に入れはしなかったはずです。」
「アメリカ合州国は多国間協調主義には興味がありません」とモラレスは続けた。「もしアメリカが多国間協調主義に興味があれば、アメリカはパリ協定から脱退したり、移住に関するグローバル・コンパクトを冷たくあしらわなかったはずで、一方的攻撃をしかけたり、エルサレムをイスラエルの首都と宣言するような不法な決定をしたりはしなかったはずです。多国間協調主義に対するこの蔑視は、政治的支配と、天然資源占有へのアメリカ合州国の渇望が、その動機です。」
「アメリカ合州国が、他国を侵略したり、ミサイルを発射したり、政権転覆の資金調達をするたびに、公正、自由と民主主義のために、人権の大義や人道的理由でアメリカは行動しているという絶え間ないメッセージを繰り返す宣伝攻勢の陰でそうしているのです」ともモラレスは言った。
「我々の世代の責任は、より公正な、より安全な世界を、次世代に渡すことです」とモラレスは結論した。「この夢は、我々が協力し、国際連合に対するあらゆる脅威から守られ、尊敬される共通の規則を持った世界、多国間協調主義を強化することでのみ実現できるでしょう。」
実際、アメリカの言う通りにしない政府に対する政権転覆政策の果てしない作戦実行が可能な唯一の理由は、アメリカが支配する一極世界秩序が、そうする権力、資源、余裕を許しているためだ。多極世界は、ワシントンDCの内や周辺にいる少数の社会病質者に命令されない形で、世界中の一般市民が、彼らに起こることに対する発言権を持つことを可能にするだろう。一極世界が君主制への道であるのと同様、多極世界が民主主義への道なのだ。世界中の人々は、この一極体制に反対するべきだ。
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「サクラサク」という電報を待ったのは大昔の思い出。いよいよサクラチルのだろうか。
昨夜、NHK歴史秘話ヒストリア「網走監獄 最果ての苦闘」を見た。最近『鎖塚』と吉村昭の『赤い人』を読んだばかりだった。北海道は屯田兵が開拓したのだと思っていたが、金子堅太郎の意見書通り、政治囚などを、死んでも監獄費の節約と送り込んで開拓させたのだ。強行建設の中で亡くなった囚人を埋葬したものが鎖塚として残されている。
朝日新聞の記事「集治監、過酷な受刑者労働決めた意見書」にも書かれている。
《彼等ハ固ヨリ暴戻ノ悪徒ナレハ、其苦役ニ堪ヘス斃死スルモ、尋常ノ工夫カ妻子ヲ遣シテ骨ヲ山野ニ埋ムルノ惨情ト異ナリ、又今日ノ如ク重罪犯人多クシテ徒ラニ国庫支出ノ監獄費ヲ増加スルノ際ナレハ、囚徒ヲシテ是等必要ノ工事ニ服従セシメ、若シ之ニ堪ヘス斃レ死シテ、其人員ヲ減少スルハ監獄費支出ノ困難ヲ告クル今日ニ於テ万已(ばんや)ム得サル政略ナリ》
受刑者労働は、歴史秘話ヒストリアで説明された網走・旭川道路建設だけでなく、炭坑や硫黄、鉱山採掘にも使われた。北海道の硫黄山では、安田善次郎が受刑者労働を活用した。足尾銅山でも受刑者が酷使された。炭坑や鉱山では、受刑者だけでなく、中国や朝鮮から強制連行された人々が、徴用工として酷使された。旧麻生鉱業において外国人捕虜が強制労働させられていたのも歴史的事実だ。
最近の元徴用工記事を、念のため読んでみた。
元徴用工訴訟、新たに日本企業二社を提訴。
原告団によると、新たに提訴されたのは、熊谷組と古河機械金属の2社。とある。
後者は田中正造が谷中の人々とともに戦った足尾鉱毒問題を引き起こした古河市兵衛の企業の後継。
足尾には、銅山で働かされた朝鮮人強制連行犠牲(徴用工)者慰霊碑がある。下記記事を見ると、設置や維持は韓国ではなく、北朝鮮系の方々がされているようだ。
足尾には、同様に強制連行され、足尾銅山で酷使された中国人殉難烈士慰霊塔がある。その場所、規模、朝鮮人慰霊碑とは比較にならない。「中国人殉難烈士慰霊塔 足尾の画像」で検索すれば、多数の写真がみられる。
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