中国とアメリカとリチウム地政学
2019年11月18日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook
大規模の電気自動車開発という世界戦略以来数年、リチウムは戦略的金属として焦点になった。現在、中国とEUとアメリカで需要は莫大で、リチウム供給支配の確保は、既に石油支配に対するものと五十歩百歩の自身の地政学を発展させている。
資源確保に動く中国
EVの世界最大の生産者になるという主要目標を設定した中国は、リチウム電池原料の開発は第13次5ケ年計画(2016-20)期間の優先事項だ。中国自身にリチウム埋蔵はあるが、採掘は限られており、中国はリチウム鉱業権を確保するため海外に出た。
天齊が支配するオーストラリアの中国企業タリソン・リチウムはオーストラリア西部パース近くのグリーンブッシズで世界最大最高級のリシア輝石埋蔵量を採掘し所有している。
タリソン・リチウム社は世界最大の主要リチウム生産者だ。同社のオーストラリアのグリーンブッシズ・サイトは今日中国のリチウム需要の約75%、世界需要の約40パーセントを生産する。これはオーストラリアの他の主要原材料と同様、伝統的に強固なアメリカ同盟国オーストラリアとの関係を、北京にとって戦略上の重要なものにした。同様に、中国はオーストラリアにとって最大の貿易相手国となった。
だがオーストラリア周辺の太平洋で増大する中国の経済的影響力は、戦略上重要なオーストラリアの地元地域に手を出さないよう中国に警告メッセージを送るようスコット・モリソン首相に強いた。2017年末、オーストラリアは、地域における中国の影響力増大の懸念から、時にクワッドと呼ばれる、アメリカとインドと日本が南太平洋で中国の影響力を抑制する非公式協力、以前の試みを復活させた。オーストラリアは、最近中国の融資に対処するため、太平洋の島国への戦略的融資も増やした。明らかに、この全てが、今後10年間、新たに出現したEV経済で主役になるべく、中国が世界的に他の場所でリチウムを確保すること不可欠にしたのだ。
電気自動車開発が中国の経済計画における優先事項となった時、確実なリチウムの探索は、もう1つのリチウムの主要源チリへと移った。世界最大リチウム生産企業の一つ、ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ(SQM)が、中国の天齊がチリの主要なシェアを寄せ集めるという状態である。採鉱産業報告によれば、もし中国の天齊がSQMの支配権を増すことに成功すれば、世界リチウム支配の地政学は変わるだろう。
電気自動車(EV)に電力を供給するのに使われるリチウム・イオン電池の戦略的元素リチウムのグローバル供給は、ごくわずかな国々に集中している。
リチウムの潜在需要をイメージするために言うと、テスラのモデルS用電池には約10,000個の携帯電話電池に電力供給するのに十分な63キログラムの炭酸リチウムが必要だ。最近の報告で、ゴールドマン・サックス銀行は炭酸リチウムを新しいガソリンと呼んだ。ゴールドマン・サックスによれば、電気自動車生産高の1パーセント増加だけで、現在のグローバル生産の40パーセント以上リチウム需要を増やすことになる。多くの政府がより低いCO2排出を要求しており、グローバル自動車産業は今後10年にわたり大規模EV計画を拡大して、石油が今日そうであるのと同じ位、リチウムを戦略的なものにするだろう。
リチウムのサウジアラビア?
リチウム採掘が実に困難なボリビアも、近年北京にとって興味の目標になった。いくつかの地質学推計は、世界最大のウユニ塩湖だけで、900万トンのリチウムがあると推定され、ボリビアのリチウム埋蔵量をランク付けしている。
2015年以来、中国の採掘企業CAMCエンジニアリングが、塩化カリウムを肥料として生産するため、ボリビアで巨大プラントを経営している。CAMCが軽く扱っているのは、ボリビアに22ある、このような塩原の一つウユニ塩原の塩化カリウムの下には世界最大の既知のリチウム埋蔵量がある事実だ。2014年、中国の臨沂Dakeトレードが、同じ場所にリチウム電池パイロットプラントを建設した。
そして2019年2月、モラレス政府は、中国の新彊TBEAグループ社が、ボリビア国営リチウム企業YLBが計画したジョイント・ベンチャーの49パーセントの株を所有する、もう一つのリチウム協定に署名した。協定は、コインパサと、パストス・グランデス塩原から、推計23億ドルもかけて、リチウムや他の物質を作り出す予定だ。
リチウムに関しては、これまでのところ、中国は、その支配の上で、世界のグレート、・ゲームで優位にある。現在、中国企業が、グローバル・リチウム生産の半分近くと、電池生産能力の60パーセントを支配している。ゴールドマン・サックスは、中国が10年以内に世界のEVの60パーセントを供給できると予測している。要するに、北京にとって、リチウムは戦略的優先事項なのだ。
リチウムを巡る米中ライバル関係?
世界のリチウム採掘の主役は、現在アメリカ合州国だ。立派な理事会を持つノースカロライナ州シャーロットの企業アルベマールは、中国同様、特にオーストラリアとチリに主要リチウム鉱山を保有している。2015年、同社がアメリカ企業ロックウッド・ホールディングスを買収した際、アルベマールは世界リチウム採掘における最有力企業になった。注目すべきことに、ロックウッド・リチウムは、チリのアタカマ塩原と、中国の天齊集団が51パーセントを所有するオーストラリアのグリーンブッシズ鉱山で事業を行っていた。これは中国との提携で、アルベマールに、巨大オーストラリア・リチウム・プロジェクトの49%のシェアを与えていた。
明確になり始めているのは、中国の経済計画を巡るアメリカ-中国間の緊張が、戦略上重要なリチウム埋蔵地を支配する中国の影響力への反撃を含んでいた可能性があることだ。エボ・モラレスを強制的にメキシコへの追放に追い込んだボリビアでの最近の軍事クーデターは、初期の証拠から、ワシントンの指紋がある。ヘアニネ・アニェス暫定大統領を演ずる項目、右翼キリスト教徒と右翼百万長者ルイス・フェルナンド・カマチョは、国の政治生命、公然とワシントンに保証されたもので右に不快なターンに信号を送る。問題は未来の政府が中国企業とのリチウム採鉱協定を無効にするかどうかだろうことは他の間で重要だ。
トランプと習近平間の貿易に関するサミットが目玉だったはずの11月16日のチリでのAPEC会議キャンセルにも、もう一つの重要性がある。南華早報によれば、会議は、主要な中国-チリ貿易協定のための場でもあった。計画されていた習の代表団は、150社の企業トップを含み、更に最近アメリカが警告したチリ-中国の経済的結びつきを強化し、大きな経済的合意への署名が計画されていた。
チリ政府の公共交通運賃値上げに反対する集団抗議活動の爆発は、ワシントンのカラー革命に火をつけるために他の国々で使われている類似の経済的引き金の兆候がある。抗議行動はチリでのAPECサミットを中止する短期的効果があった。チリでの抗議行動では、アメリカから資金供給を受けたNGOの積極的な役割は確認されなかったが、チリと中国間で成長する経済関係は、明らかにワシントンには前向きのものと見なされていない。現時点でのチリにおける中国によるリチウム採掘は、現政府の自由市場経済にもかかわらず、ワシントン介入の目標となり得るほとんど論じられていない戦略上の地政学的要因だ。
この際、明らかなのは、未来のEV電池市場支配のための世界的戦争が行われているということで、リチウム支配がその核心だ。
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師。プリンストン大学の政治学位を持つ石油と地政学のベストセラー作家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/11/18/china-usa-and-the-geopolitics-of-lithium/
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後楽園のドーム外に、フィリピンの方々が多数おられるのをテレビで拝見した。教皇のスピーチで思い出して、下記記事を再読した。長崎のカトリック教会でのミサのさなかへの原爆投下、教会跡撤去は、アメリカ支配層の人々が、プロテスタント信者やユダヤ教信者であることと、全く無関係なのだろうか?。
- 長崎原爆投下70周年 : 教会と国家にとって歓迎されざる真実
- 1945年8月9日の長崎爆撃 キリスト教会と国家についての歓迎されざる真実
- 1945年8月9日長崎爆撃: 無検閲版
- 広島の神話 責任を負わない戦争犯罪とアメリカ軍の歴史の嘘
- はだしのゲンが見たヒロシマ・原発切抜帖・ひろしま・あしたが消える日
九州場所で、白鵬の取り口について、解説者が「勝てば何をしてもいいのか」と言ったのを聞いた。自民党に言えば立派だったのに。横審もエルボーを批判した。50回優勝目標といわれても、あの「最長最悪」イメージが重なる。
植草一秀の『知られざる真実』の見出し、大本営広報部では決して見られない。
アメリカのイスラエル入植地合法説、大本営広報部は批判しているのだろうか?
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