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2019年10月15日 (火)

米ドルの世界準備通貨という地位を潰す上で、イランは中国の秘密兵器

Federico Pieraccini
2019年10月3日

 国際政治に影響を与えている強い変化の流れがある。それは単極から多極世界秩序への移行によって引き起こされる革命の始まりだ。実際、我々は、中国の輸出に対するアメリカ関税適用、イランに対するワシントンの制裁、アメリカのエネルギー自足、サウジアラビア産業施設の脆弱性、中国へのガスと石油の大量輸出と同様、アメリカの攻撃に抵抗するイランの能力を含め、いくつかの要因の組み合わせに直面している。全てが一つの要因、つまり世界準備通貨としての米ドルの衰退に収束する。

 最近我々は、ほとんど毎日単位で、中東でかなり重要な出来事を目撃している。ワシントンとテヘラン間の緊張は、何より、ワッハーブ派サウジアラビアとイスラエルのトランプへの融資家と完全な同一歩調で行進するネオコンと深く結びついたアメリカの連中をなだめるトランプ政権の必要性に拍車をかけられている。

 挑発と偽旗で構成される対テヘラン攻撃政策は、何年もの間起こるだろうと私が予想していた通り、最近、アメリカ軍産複合体にとっての広報大惨事をもたらした。

 イエメンのフーシ派による攻撃は、非常に高価なアメリカのパトリオット航空防衛システムの欠点を暴露して、サウジアラビア王国の二つの主要な石油施設を攻撃した。

 この攻撃は、わずか数千ドルの支出、低経費の非対称戦争手段が、あらゆる予想を超え、どのように何十億ドルにも相当する損害を与えることが可能か、どれほど効率的であり得るかを実証して世界中の政策当局に衝撃を与えた。フーシ派攻撃で起こされた損害の実際の程度は、アラムコが公式情報提供に苦闘する状態で未知のままだ。

 イラクからリヤドが、かなりの量の石油を輸入する必要があるかもしれないことを未確認情報が示唆しているが、攻撃により石油生産の50%以上が中断させられている。

 サウジアラビアの生き残り計画を複雑にするのに、このシナリオが十分ではないかのように、イスラエルとネオコンは、サウジアラビアが経費の大部分を負担することになるはずの対テヘラン武装攻撃を要求している。イランの軍事力に気付いたサウド家は、イランに対する彼らの闘争的な調子を軟化させたように思われる。

 制御不能な戦争のリスクがある、この極めて激しやすい中東で、サウジアラビアの危険は非常に明確で、おそらく彼らも良く知っているのだ。国民に提供している福祉のおかげで維持されているサウジアラビア王国は不安定な状態にある。もし戦争が死と破壊と貧困をもたらせば、ワシントンが指導するアラブの春型反乱で打倒されるまで、サウド家は、どれほど長い間持続できるだろう? サウジアラビアの重要性は、誰が国を支配しているかではなく、OPECを支配し、米ドルでの石油販売を押しつける能力により、世界準備通貨という概念のおかげで、世界経済におけるワシントンの重要性を保証していることであるのを理解しなくてはならない。

 イラン・イスラム共和国に280億から4000億米ドルの与信枠を与える北京の最近の決定は、近い将来のみならず、遠い将来にも目を配る広域スペクトル戦略の一環だ。

 イランは、アメリカの二次制裁による石油販売収益の欠如を埋め合わせるこの経済援助で確実に恩恵を得るだろう。北京は、経済と人口の目ざましい成長を経験している中国のため、未来の石油供給を保証する、油田、プラント、流通、港湾とエネルギー・ハブをイラン国有企業が発展させるのを支援して、イランのガスと石油市場に入るつもりだ。

 もし我々が中国の意図の背後に対する推論を拡張し、中東やアメリカの権益にそれを関連づければ、慎重に評価する必要がある興味深い構図が現れる。

 水圧破砕とシェールガスによりエネルギー自足を実現し、石油純輸出国に変わったのをワシントンが自慢しているのを我々は知っている。問題になっている油井の永続性には疑念があるが、現状は、アメリカが内需を満たすため、サウジアラビアと中東の石油への依存を大幅に減らしているのを確認するように思われる。

 したがって、外交問題評議会CFRの最近インタビューで説明したダンフォードやマティスなどの将官を含め、多くの政策当局者が、列強外交の復活を認識して、国防戦略変更で、よく知られている4+1の枠組み(中国、ロシア、イラン、朝鮮民主主義人民共和国 + イスラム・テロ)から、よりバランスのとれた2+3(中国、ロシア + 朝鮮民主主義人民共和国、イランとテロ)へと、焦点が、どのように変わったかを確認している。

 地理学用語で、これはペルシャ湾や中東や北アフリカから離れ、将来、極東への軍隊移動を暗示している。これは(軍事的、経済的、技術的に)ワシントンの主要競争、すなわち中国を封じ込め、包囲することを目的としている

 この包囲に対し、北京には取っておきの切り札がある。中国はその一帯一路構想(BRI)にとって極めて重要なイランを支援するだけでなく、より後の段階で、米ドルだけで石油を売るのをやめるようサウジアラビア(とOPEC)を説得に努めることで、米ドルの準備通貨という立場を置き換えることが狙えるのだ。モスクワは、OPECプラスを開発して、米ドル以外の通貨で表示された価格のLNG市場を形成し、同盟者中国を支援できる。現在、北京とモスクワは、SWIFT制度も米ドルも完全に迂回して炭化水素貿易をしている。

 中国は世界全体の経済展望を変えることが可能な十分練られた作戦を持っている。中国は、まずイランが輸出を開発するのを助け、同時に自国への未来の供給を保証し、両国がアメリカ経済テロから身を守ることを可能にする。当然、中国へのイラン石油販売は、SWIFTシステム外で行われ、それゆえ、アメリカのオイルダラー・カルテルの範囲外で行われる。

 この動きによって、北京は、既に北アフリカ(鉱物と原材料)と東のロシア(農業)でした投資を補完して、自国の継続発展を保証すべく、途方もなく増大する経済のために炭化水素の未来の販売を確保しようと努めているのだ。

 アメリカの経済覇権にとって、中国による本当の危険はサウジアラビアにある。もしワシントンが、石油輸入の上で、サウジアラビアへの依存が益々減少し、東南アジアに焦点を移せば、地域覇権国家として、イランが上昇するの、アメリカが阻止する理由は益々少なくなるだろう。そこで、リヤドは周囲に目を配り、地域地図上の自分の場所を再考するよう強いられるだろう。

 リヤドの悪夢は、中国を主要貿易相手国とし、ロシアが軍事パートナーのシーア派の弧が、地中海からペルシャ湾まで広がることだ。この全て、地域でバランスをとる拮抗力となるアメリカ同盟国皆無だ!

 イランに関する中国の戦略は、サウジアラビアに米ドル以外の通貨での石油販売を考えるよう圧力をかけることだ。現状では、北京はサウジアラビアから大量の原油を輸入している。これは中国が、石油輸入を、ドル以外の通貨あるいは人民元そのもので、石油に支払うイランに移行すれば、変えられるのだ。

 もしこの影響が(南パース/北ドーム・ガス田開発で根本的に重要なイランの経済パートナー)カタールや他の湾岸諸国に広がれば、サウジアラビアは、見返りという点では、ほとんど何もないサウジアラビアのビジョン2030年のような希望にあふれた計画を持つ、ガスと石油を輸出する経済大国としての地位が脅かされることになる。

 北京は、ドル以外の通貨、おそらく我々が住んでいる多極世界を、よりよく表す通貨バスケットを通してガスや石油を含む第1次産品を輸入するのを好んでいる。それは、海外市場や個別の国々の民間資金に対する連邦準備制度理事会の影響を制限できる、IMFのものを手本にしながら、米ドルの比率がより小さい(あるいは皆無の)バスケットであり得る。

 北京の戦略は、攻撃的であれ、穏やかであれ、アメリカの対応に合わせて変化させ、段階的に進めるよう意図されているように思われる。たとえ可能でも、決して実際には相手を打撃しないブラジルの格闘技ダンス、カポエイラのようなものだ。だが、このカポエイラの長期的狙いは、アメリカの収入と権力の主要源を傷つけることだ。つまり世界準備通貨としての米ドルに。

 この戦略の第一段階は、イランと、主にアメリカ制裁の結果、不安定なイランの経済状態に焦点を当てる。第一段階では、イランがアメリカの経済テロリズムをかわすなか、北京の与信枠は、イランを破産させずにおくのに役立つだろう。第二段階は、石油とガス田で中国国有企業がイラン企業と働くのを可能にするため、おそらく何らかのイラン法の変化を伴うだろう。第三段階では、おそらくドーハとテヘランが共有する世界最大のガス田開発に、カタールが関与するだろう。一方、一帯一路は拡大しつづけ、ペルシャの国の周辺に近づき、途中で多くの東南アジアの国々を巻き込み、それにより異なる地域間の貿易を拡大するだろう。

 この戦略が既に機能しているのを確認して、中国は、いかなる戦争の場合でも、海路のと通信線を守ろうと努めている。北京は強い海軍力を持つことがどれほど喫緊か悟り、この目標に向かって、しかるべく大いに投資している。

 このような地政学の文脈で、見返りに、十分な軍事的保護や、経済的利益を受けること無しに、もっぱら米ドルで石油を売って、サウジアラビアが、それほど無条件で、アメリカ権益に迎合し続けると想像するのは困難だ。中国-イラン-ロシアという代替案が誰にでも見える形で上昇しているにもかかわらず、経済的に世界を不安定にし続けながら、地域の同盟諸国の軍事的保護を無視しながら、米ドルを、世界的準備金として生き続けさせられると信じていたのであれば、ワシントンは大変な誤算をしていたのだ。

 オバマからトランプまでの間には、アラブの春、警告され、実行された戦争、経済の不安定化、財政テロ、同盟国への脅迫、時代遅れの兵器販売や単極から多極秩序への移行によって引き起こされた戦略変更(「アジア基軸」)があった。そのような変化する世界では、米ドルは、必然的に通貨バスケットで置き換えられ、ワシントンが、今そうである超大国になるのを可能にした無限の購買力を消滅させるはずだ。

 北京は何年も前にこのメカニズムを理解し、今イランを、画期的変化をもたらす触媒として見ている。イランは、BRIがその領土を通過するだけでなく、アメリカというオイルダラー覇権国を、経済的王手詰めするため、サウジアラビアに接近し、この王国を多極派集団に引き入れる上で、自身当て馬ともなるので有用なのだ。

 リヤドに対する北京の経済的、道義的提案は問題に遭遇するだろうし、オイルダラー覇権を維持する上でのサウジアラビアの重要性をアメリカは認識し、当然これに抵抗するだろう。ロシアは王国に防衛兵器を売ると申し出て、この地政学的変化に寄与している。

 あらゆる手を使って、北京の勃興を傷つけようとするオバマとトランプの取り組みは、この特権的で、不自然な取り決めの終局の幕を開けて、世界準備通貨として米ドルを維持するワシントンの能力に悪影響を及ぼしただけだ。


 Federico Pieracciniは国際問題、紛争、政治と戦略を専門とする独立したフリーライター

 個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。

 記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2019/10/03/iran-is-chinas-secret-weapon-for-killing-off-the-us-dollars-global-reserve-status/

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 最近たまたま治水・利水関係の本を数冊読んだ。『江戸を造った男』もその一冊。カスリーン台風による利根川堤防決壊現場にもいったことはあるが、歴史上の逸話と思い込んでいて、似たような実際に起きるとは想像していなかった。何度か降りた駅前が冠水している映像を見て驚いた。

 Kekkaikou

 「まずまず」発言、正気だろうか? フランス料理の堪能も国民の代表の仕事。

 孫崎享氏の今日のメルマガ題名 教師イジメは報じるが、国民イジメは放置する大本営広報部、ほとんど種子法廃止にふれない。

山田正彦元農相の警鐘「私達の生る糧である米を安心、安全、安価で提供は、法律?種子法 で定めてた。安倍政権はこれを廃止。かつて野菜の種一粒2円程、今では40円、これを米等にするのが種子法廃止、誰の為か。多国籍アグリ企業が利益を得る為。これが安倍政権

 IWJも今日の見出しは「まずまず」

日刊IWJガイド「予想されていた過去最強クラスの台風19号! 遅すぎる『非常災害対策本部』の設置! 自民・二階氏は台風被害『まずまずで収まった』と発言!? 」2019.10.15日号~No.2588号~(2019.10.15 8時00分)

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