モスクワはマクロンのぺてんにだまされるのだろうか?
2019年9月17日
Paul Craig Roberts
フランスのエマヌエル・マクロン大統領はアメリカの傀儡だ。彼はワシントンによってその座につけられたのだ。彼の現在の課題は、欧米に参加したいロシアのあこがれを利用して、ロシアのプーチン大統領をだますことだ。「ロシアは深くヨーロッパ人だ」(8月20日)、「ヨーロッパで、信頼と安全保障の新構造を構築するため、我々はロシアとの協力を必要としている」(8月27日)、「ヨーロッパがロシアに連絡を取る時期だ」(8月27日)、「ロシアをさらに隔離する無理押しすることはヨーロッパによる深刻な間違いだ」(8月29日)、「ロシアとの緊張を緩和する時期が来た」(9月9日)など一連の発言で。
何がここで起きているのだろう? トランプ大統領による穏やかな発言が、彼が「プーチンの工作員」だとして、トランプ弾劾を目指す、数年間の「ロシアゲート」捜査という容疑をもたらした。それでも、プーチンにこびへつらうワシントンの臣下がいる。欧米に受け入れられる代償として、ワシントン外交政策へのロシアが譲歩すまようプーチンを軟化させるか、イランに対する今度の攻撃のため、プーチンを油断させるのでなければ、この意味は一体何だろう?
私はプーチンを世界で唯一のリーダーと見なしているが、時々彼には当惑させられる。ロシアの同盟国イランは、イスラエル、ワシントンとサウジアラビアによる軍事攻撃の対象にされているのに、プーチンは、サウジアラビアに、ロシアのS-300とS-400防空システムを売ると申し出ているのだ!プーチンは、イランの報復に対して、サウジアラビアやイスラエルやアメリカを武装させたいと望んでいるのだろうか? サウジアラビアがこれらのユニークなシステムの1つを入手した瞬間、それはまっすぐに、専門家がどのようにそれを破るべきか解明するワシントンに送られるだろう。それで、イラン防衛は損なわれ、シリアの、そしてロシアの防衛も同じことになるはずだ。
私は時々ロシアと中国の政府が、どれほど現実的か考える。中国政府は、中国国内で不和を引き起こし、香港で反乱させるアメリカのNGOを大目に見ている。ロシア政府は、モスクワ地方議会選挙で、ロシア政府の成績に打撃を与えたモスクワでの最近の抗議行動を計画したアメリカとドイツのNGOを大目に見ている。アメリカは、ロシアや、中国から融資を受けたNGOが不和を引き起こして、アメリカで活動するのを決して大目に見ないだろう。ロシア政府は、なぜワシントンがモスクワ選挙で、ロシア政府を困らせるのを許すのだろう? 中国政府は、なぜワシントンが、香港で中国政府を困らせるのを許すのだろう?
多分両方の政府が、彼らが西側諸国より言論の自由と、抗議に対して、より寛大であるように思われることを明示しようとしているのだ。だが、欧米メディアが言説を支配しているので、誰にもそういう印象を与えず、プーチンへのロシア人の支持が低下しており、中国が、わずかの自由を欲する無辜の抗議行動参加者を虐待している言説になるのだ。
イランは攻撃相手に仕立てられている。アメリカとヨーロッパは、イランの武器がサウジアラビア石油プラント攻撃で使われたと言っている。ワシントンで、たとえそれがサウジアラビアに対して戦争をしているイエメン人が組織したにせよ、アフガニスタン侵攻に対する口実が、国内のオサマ・ビンラディンの存在だったと全く同様、イランを有罪にするのだ。実際、サウジアラビアに対する攻撃は、無頓着な欧米の人々が、軍事攻撃を支持させるため、イランに対して更に多くのプロパガンダをするため、イスラエルやCIAがした可能性が極めて高い。明らかに、ロシアと中国の政府は、欧米での民主主義神話によって目をくらませられている。欧米国民は、何が起きているか理解するのに十分知的で明敏なわけではない。彼らは支配者の狙いに対する束縛ではないのだ。
ロシアと中国の声はどこにあるだろう? 中国はエネルギー供給とイランに対する投資を失うことがうれしいのだろうか? ロシアは国境でジハードの混乱が起きるのがうれしいのだろうか? 単に両国がそれを大目に見ないと発表するだけで、イランに対して醸成されている攻撃を止めることがでるはずなのだ。
もしイランが攻撃されれば、それはイスラエル、ワシントンと同じぐらい、大いにロシアと中国の責任だ。
欧米は道徳的、精神的、経済的、政治的に崩壊している。一体なぜロシアは、欧米に加わることを望むのだろう?
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/
記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2019/09/17/will-moscow-fall-for-the-macron-deception/
----------
孫崎享氏の今日のメルマガ題名は下記の通り。早く『日本国の正体』を拝読したいもの。
日本の民主主義の根源を問う。『日本国の正体』日本、自力で民主主義獲得せず ノーマン 降伏にもとづく諸事情も徳川幕府打倒以後の時期と比較は適切。すなわち、いずれも人民は改革運動を自ら開始せず、根源的な力は上から。前者は軍事官僚、後者は占領軍。
日刊IWJガイドの見出しは下記の通り。
目次には下記もある。
サウジの石油処理施設の攻撃で、アメリカとイランが一触即発の事態に!? ロシアは地対空ミサイルシステムの購入をサウジに促した!? どうなる中東情勢!? 日本参戦の悪夢の前にオイルショック時の「狂乱物価」の悪夢再来の可能性!?
« イエメンで、アメリカのもう一つの恥ずかしい敗北が迫っている | トップページ | ハルマゲドンが差し迫っている? »
「イラン」カテゴリの記事
- 2023年選挙におけるエルドアン成功の秘訣(2023.06.03)
- イスラエルと「新しい」中東(2023.05.20)
- アメリカはなぜシリアを空爆しているのか?(2023.04.09)
- 壮大なユーラシア・チェス盤上の「始めから最短手数で詰みにいたる手順、フールズ・メイト」ゲーム(2023.04.08)
- シリア人にはアメリカ占領者を攻撃するあらゆる権利がある:物語のマトリックスの端からのメモ(2023.03.31)
「アメリカ」カテゴリの記事
- バイデンのF-16の動きは絶望を意味する空想飛行(2023.06.04)
- 2023年選挙におけるエルドアン成功の秘訣(2023.06.03)
- モスクワでのドローン攻撃-ウクライナでのミサイル攻撃(2023.06.02)
- トルコ大統領選挙結果でロシアは何を期待できるのか?(2023.06.01)
「ロシア」カテゴリの記事
- バイデンのF-16の動きは絶望を意味する空想飛行(2023.06.04)
- 2023年選挙におけるエルドアン成功の秘訣(2023.06.03)
- モスクワでのドローン攻撃-ウクライナでのミサイル攻撃(2023.06.02)
- トルコ大統領選挙結果でロシアは何を期待できるのか?(2023.06.01)
- アメリカ上院議員、ロシア人の死を「有効な出資」と呼んだことを否定(2023.05.31)
「中国」カテゴリの記事
- アジア太平洋地域にしっかり照準を合わせているNATO軍産複合体(2023.05.29)
- 日本と韓国を中国と戦争させたいと望んでいるアメリカ(2023.05.26)
- 広島原爆の記憶を冒涜するG7戦争挑発サミット(2023.05.21)
- 欧米の極めて複雑な中国分析の世界を理解する(2023.05.19)
- 我々に信じるよう帝国が要求する一つの最も愚かなこと(2023.05.06)
「ポール・クレイグ・ロバーツ」カテゴリの記事
- ポール・クレイグ・ロバーツは大量虐殺が好きなのか?(2022.05.01)
- ロシアの安全保障提案をワシントンが拒絶したのはまずい判断(2022.01.31)
- 欧米で、ジャーナリズムは宣伝省にとって替わられた(2021.11.23)
- ワシントンは世界の悪の中心(2021.08.19)
- 真珠湾:画策された出来事? (2020.12.10)
「サウジアラビア・湾岸諸国」カテゴリの記事
- アラブ連盟とダマスカスを団結させたジェッダ会議(2023.05.24)
- アラブ人の再結成で孤立するイスラエル(2023.05.22)
- イスラエルと「新しい」中東(2023.05.20)
- サウジアラビア王国に外交政策ドクトリンを課すと固く決意しているアメリカ(2023.05.10)
- 前向きな解決に向かうシリア問題(2023.05.03)
「イスラエル」カテゴリの記事
- アラブ人の再結成で孤立するイスラエル(2023.05.22)
- イスラエルと「新しい」中東(2023.05.20)
- ネタニヤフーは(再び)戦争を求めているのだろうか?(2023.04.10)
- イラン-イスラエル「影の戦争」(2023.03.17)
- 頻繁なシリア空爆をエスカレートさせるイスラエル(2022.10.30)
最近のコメント