バーレーン:アメリカ外交の致命的輪縄
2019年8月31日
ヴィクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook
ドナルド・トランプ政権は、外交を通して、ペルシャ湾岸において「特筆すべき成功」を達成した。アメリカ外交官が、いくら繰り返しも、地図上で見つけることがほとんどできない人口も少ない小さな首長国バーレーンは、アメリカの圧力の下、アメリカに要求された条件で「船の自由航行」政策に参加すると宣言した。
(中東地域を担当する)アメリカ第五艦隊が基地を置くバーレーンは、ペルシャ湾岸の商業航行の安全を保証するアメリカ海軍連合に参加した。この進展はバーレーンのハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ国王と、アメリカ中央軍のケネス・F・マッケンジー・ジュニア新司令官の会談後に発表された。
いまだ湾岸の状況をアメリカが支配するのを支援することに対し、どのペルシャ湾岸諸国も、さほど意欲を示していない。彼らが、アメリカを、イランとの紛争に積極的に押しやろうと、世界第一の覇権国になりたい彼の野心を利用して、ドナルド・トランプを刺激するため、彼らができる限りのことをしているのは事実だ。特にそのリーダーが十分にもしイランに対する現在の非合法制裁が撤回されれば、テヘランが事実上、地域の指導的役割を引き受けることが可能になり、スンニ派諸国は、シーア派の言いなりに平伏せざるを得なくなることを知っているサウジアラビアとUAEは特にそうだ。地域における権力に関する彼らの幻想的な独占権を維持するため、サウジアラビアのスンニ派は全てのアラブ人から最も憎まれる敵だと自身表現する国イスラエルと提携さえするに至っている。
しかしながら、少数派スンニ派だけで構成される政府が、人口の80%を構成し、当然ながらイランを支持するシーア派信徒と権力を分かち合おうと全く思っていない国バーレーンでは、事態はむしろ異なっている。バーレーンの「真珠革命」を鎮圧し、その後、何年もの間、シーア派信徒に対するスンニ派支配を強固にしたのはUAEとサウジアラビアの治安部隊だった。バーレーンは、バーレン王国内や周囲の島にある四つのアメリカ海軍基地の一つ、首都マナーマの主要基地や、ムハッラク補給基地を含む、アメリカ最大の外国海軍基地の本拠地だ。エイブラハム・リンカーンやジョージ・ワシントンを含めアメリカのニミッツ級航空母艦は、これらの基地でしばしば見ることができる。アメリカ海軍の駐留と供給の上で、これら海軍基地は重要な場所で、いかなる重大な局面においても最初に反撃する拠点の一つだ。
もう一つの重要な軍事施設は、イラン海岸から238キロのアメリカのイーサ空軍基地だ。長さ3.8キロの滑走路が二本あるこの飛行場は、C-17軍用輸送機、F-16戦闘機とP-3オライオン海洋哨戒機の本拠地だ。そして航空母艦を本拠とする、FA -18爆撃機とEA-6Bプラウラー電子戦機もある。
バーレーンの首都から南東わずか四キロに、もう一つの基地、ジャフェア海軍基地があり、これはアメリカ第五艦隊の本拠地だ。
ペルシャ湾岸の大きな重要性と、戦略上、好都合なバーレーンの位置から判断して、イギリス国防省は、80年で最初の新海軍基地をマナーマに開設した。国防省発表によれば基地はミナ・サルマンにあり、300人以上のイギリス海軍要員と民間人の本拠地で、短期的に最高550人の要員を受け入れることができる。発表によれば、新イギリス海軍基地は「イギリスと同盟国と提携諸国に、スエズの東で重要な戦略基地を提供する」。
かくして、バーレーンは、いや応なしに、アメリカ-イギリス-サウジアラビア軸の周囲を旋回するのを強いられ、彼らの承認なしでは、いかなる処置もとる権限がない人工衛星となった。これには二つのかなり重要な理由がある。第一に、バーレーンは、アラブの標準では、かなり貧しい国で、アメリカとイギリス基地を受け入れることに対するバーレーンの奉仕への支払いと、リヤドとアブダビからの長期的な金銭的援助が予算の重要な部分を構成しているのだ。
もう一つの重要な要因は、2011年の失敗した「真珠革命」以来、衰えずに継続している大衆抗議にもかかわらず、バーレーン国王と彼の家族に対する、連合による無条件の支持だ。2011年2以来月、バーレーン国民は、アール・ハリーファの退位と、全てのバーレーン人を代表する公正な政治制度の創造を要求して、平和的抗議デモを定期的に開催している。彼らはバーレーンにおける、多数派シーア派に対する広範囲にわたる差別についても不平を言っている。マナーマは抗議行動に厳しく対処した。当局は人権活動家を拘留し、主要野党を解散し、民主化運動活動家から市民権を奪い、彼らの多くを追放した。
主要な反対派集団の2月14日青年同盟は、アメリカとイギリスの政府が「ペルシャ湾岸の国バーレーンの政治犯に対するマナーマ政権の犯罪に共謀している」という宣言を発表した。宣言は、バーレーンの悪名高いジョー刑務所での厳しい処置に抗議して、600人以上の政治犯が無期限ハンストをしているとも述べ、集団はアール・ハリーファ政権に対する闘いで、自分たちが勝利することを確信していると述べた。
いわゆる民主的な国々が、このような反動的、抑圧的政権と同盟している状況は、控えめに言っても、むしろ逆説的だ。この際「あなたの友だちが誰か教えてくれれば、私はあなたが誰か言えるだろう」と言うことわざを思い出さずにはいられない。アメリカとイギリスの親友たちには、国王(バーレーン、サウジアラビアとヨルダン)、エミール=首長(カタール、クウェート)、シャィフ=首長(UAE)とスルタン(オマーン)がいる。すると、絶えず民主政治の厳守を自慢している西欧諸国の指導者連中を我々はどう判断できるだろう? 彼らは一体どんな種類の民主主義の理想を熱望しているのだろう、実際、彼らの民主主義は一体どんな風に見えているだろう?
ともあれ軍事衝突の際、国の重要地域を占拠するアメリカとイギリスの基地は、まさに最前線になることは明白なのだから、バーレーン国王は危険なゲームをしているのだ。
ヴィクトル・ミーヒンは、ロシア科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/08/31/bahrain-the-deadly-lasso-of-us-diplomacy/
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ひとごととは思われない。国名を入れ換えれば、そのまま。
昨日、植草一秀の『知られざる真実』の記事 動員・妨害・分断での自公政権持続の終焉
で紹介されているUIチャンネルでの植草一秀氏と鳩山元首相との対談を拝見した。
テーマは植草一秀氏新著『25%の人が政治を私物化する国』(詩想社新書)
その後、続けて、UIチャンネルでの鳩山元首相と孫崎享氏との対談
鳩山元首相と白井聡氏との対談
を拝見した。いずれも大本営広報部では、決して聞けない内容。
当然なのだろうが、象徴的な人事。
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