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2019年9月19日 (木)

エンターテイメントは国防だ。ロシアが銃ではなく弾薬しか持っていない理由

ティム・カービー
2019年8月31日

 ある種の遺伝的な運のおかげで、私は講演するのに何の恐怖もなく、実際、私にとっての第二言語ロシア語で、私の考えをどう聴衆に伝えられるかという面白い挑戦だと考えている。かなり長い間ロシア・メディアで働いた者として、私は結構頻繁にメディアの影響力と情報戦争についての講演を依頼される。愛国的なロシア知識人は彼らの国が、再び、強力になり、尊敬されるには、強い軍隊が必要だと考えているようだ。彼らは、支配的な(欧米)主流メディアと競合するために、言説をつむぎだす自国のニュース・メディアがソフト・パワーの重要な側面だということも分かっている。だが私が、ソフト・パワーの側面としてのエンターテイメントの重要性に言及すると、必ず微笑と笑いが始まる。ロシアの自称知識人は誰も、娯楽が潜在意識に深い影響を与える事実を信じることができない、ロシアが超大国に上昇するのを押しとどめているのは、ロシアが全国的にこの事実を否認していることだ。

 軍事的ハード・パワーであれ、ハイテク産業のソフト・パワーや他の指標であれ、いろいろな意味で、我々が現在暮らしている世界では、地図上のグローバル戦力投射という点では、アメリカ/NATOが首位で、自国内を完全支配しながらも、国境外では微力な中国が二位で、旧ソ連地域の拠点を含め多少の外国への影響力を持つロシアが大きく水をあけられて三位だ。これら地政学プレーヤーのビッグスリーを見れば(ロシアは、かなり遅れた銅メダル保持者だ)、我々が暮らしている現実を反映する世界の全体像が見える。だがエンターテイメントの話となると、ロシアは本質的に等外臣下だ。

 通貨価値の相違を考慮に入れずに、大雑把に言えば、世界で最も収益を上げる映画生産国上位10位のうち、6カ国が欧米で、世界映画興行収入は合計約7400億ドルになる。驚くまでのこともなく、このうち一番大きい部分はアメリカだ。そして誰もが想像する通り、アングロサクソンのすぐ後には、中国がいつもの銀メダルの地位にいる。

 ところがロシアは、全世界映画興行収入ランキング15位で、この事実はロシア国防の巨大な穴と、将来発展の可能性のなさを示している。

 強力な自国エンターテイメント産業を持たないことの危険について、かつて友人のエジプト人が私に図星のことを言った。

「揺りかごから墓場までハリウッドの影響下にいてさえ、若者の95%は自国文化の中にいて、欧米の服は着るかもしれないが、彼らの心はエジプト人のままだ。ところが全国の若者の5%が、外国のご主人に仕える「アメリカ人」になり、この5%というのは、どんなカラー革命であれ、始めるための最小必要人数だ」。

 そして文明的構想を投射する手段を持っていないのはロシアにとって危険で、他の国が自分の構想を、絶えずロシアに対して投射し続けており、何らかの考え方と何も考えないものとの選択という条件では、若者は、たとえそれが外国のもので異質であっても、ある種の考えに飛びつくだろう。何か信じるべきものがあるのは何もないより良いのだ。

 国じゅうにおける小規模抗議行動の多くの原因になっているのは、短期的には、ある種の「ロシアの夢」や「ロシア新世紀プロジェクト」の欠如だ。政府は外国人は言うまでもなく、自国民に提供すべき精神的、イデオロギーなものを何も持ち合わせておらず、これは大きな弱点だ。若者が彼らは自由ではない耳にし、自由が素敵に聞こえるが、自由の対抗構想はなく、彼らの自由の理念は、欧米が彼らにそうだと言っているものなのだ。

 地球上の全ての子供がスターウォーズ/ディズニーの自由主義価値観に洗脳され、全員(少なくとも子供は)アニメを何本か見ており、Facebookは愚かなボリウッド映画クリップで満ちている、ところが世界的規模で見ると、事実上誰も、いかなるロシア映画も見ていない。エンタテインメントに関しては、属国日本や貧困に苦しむインドは、ロシアより何光年も先を行っている。

 「自由を認めない民主主義」や「多極主義」や「第四の政治理論」という考えは、現代ロシアの知的会話の核心にあり、驚くべきイデオロギー的可能性があるが、これらの考え方は、PRや、構想として、それを大衆と共有する手段を持っていない。外国人は大抵決して「アメリカン・ドリーム」を言葉で表現できないが、彼らが見た全ての映画のおかげで彼らの心の中でその概念を持っているのがわかる。自由主義の世界構想は、ハリウッドのおかげで世界で大々的に宣伝されているが、一方、ロシアは、その考えを共有すべきたくさんの白書を書くことで変化を起こしていると信じるシンクタンクが円卓会議で議論している。落とし穴は彼らがこの方法は全く何も悪くはないと考えていて、彼ら自身ネットフリックスが毎日提供するあらゆるゴミを消費しながら、私をあざ笑っていることだ。

 ロシアは自身を守り、超大国の座にロシアを引き上げる構想を推進するイデオロギーの文化的 / 知的攻撃手段は持っているのだが、問題はそうした弾薬を使用するために装填すべきいかなる種類の「銃」(娯楽媒体)も欠如しているのだ。だがなぜそうなのか、ロシアは、なぜ国際的に成功するための映画を制作する能力がないのだろう。

  • 政府や私をあざけり笑うタイプの人々は、エンターテイメントが国防の重要な部分だと言うことに対し、技術系官僚の見地から世界を見ている。核弾頭ミサイルと、その「影響」は専門技術者が理解するのが容易で、各国の「青年の5%」を説得するため、世界にロシアの魂を投射する映画を制作する価値は、彼らが理解するには余りにも抽象的なのだ。彼らは創造的な人々ではなく、彼らは構想を持った人々でもなく、彼らは事態を破綻させずにおくために存在している会計担当者連中だ。連中は、人々がアルコールを飲む量を最適化するための一連の法律なら考え出せるが、なぜ飲んではいけないかというイデオロギー的理由は考え出せないのだ。
  • ロシア人は潜在意識に対処する必要があると思わないのだ。外国人への全てのメッセージは公式に専門のニュース・メディアに行われるべきなのだ。この観点は、感情に訴える広告やマーケティングの方法とは正反対だ。ロシア人は感情的な娯楽メディアを通して潜在意識に訴えるのを拒否しているのだ。
  • ロシア映画産業は、ロシアとロシアのもの全てが嫌いで、世界中の何百万人もの普通の人々の生活に触れるのではなく、カンヌでトロフィーを渡す部屋いっぱいの薬物中毒の変質者連中の拍手喝采に会うため、アートシアター映画制作を好むリベラル派だらけの閉ざされたネットワークだ。
  • 正典と認めた、あるいは部分的に正典と認めた投射すべきイデオロギー/世界観をロシアは持っていない。定式化された「ロシアの夢」や「ロシアの構想」は存在しない。この種のイデオロギー・プロジェクト制作は、政府の見地からして、非常に限られた資金で、数カ月以内に完成できるはずなのにもかかわらず。

 強力な国家は強力な文化的構想を投射する。以上終わりだ。オバマが言った通り、ロシアの構想やロシアの夢を示せるエンターテイメント・メディアを制作できない限り、ロシアは常に「地域大国」のままであり続けるだろう。21世紀大国の本当の兆候は、その国の文化的構想の真髄を含んだエンタテインメントを制作する能力だ。もし自国文化についての映画やビデオゲームを制作できなければ、その文化はおそらくグローバル化世界での生き残りには適していないのだ。

 私は背広を着た有力な男性たちに、国防のためのエンターテイメントの価値について、10年間笑われた後、彼らの一人が目を覚まし、私が正しいと悟り、私に機会を与え、これを改める資金調達するように希望することができるだけなのだが、悲しいことに、ロシアが、ハリウッド/ワシントン・エンターテイメントの家臣のままでいることに満足している以上、更に何十年か嘲笑され続けるかもしれないと私は思う。

 ティム・カービーは独立ジャーナリスト、TV・ラジオ司会者。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2019/08/31/entertainment-is-national-defense-why-russia-has-ammo-but-no-gun/

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 エンタテインメントは与党防衛だ、という所もある。自国民の生活のためではなく、宗主国支配層のために奉仕するのがお仕事の人々、まともな視察さえせずに平然としている人々の防衛。呆導は猟奇事件と、隣国批判専門。コールド・ジャパン。宗主国のための自国破壊の点では秀逸。

 孫崎享氏の今日のメルマガ題名

財務省8月の貿易統計発表。対中国輸出6か月連続で前年割れ。韓国向けの輸出額は9・4%減。中国経済が減速したとは言え、8月の工業生産が前年同月比4.4%増。日本の対中、対韓国政策が響いている。対中国は中国企業の%G導入取りやめ。その点の言及は沈黙。

 そして、いまだに停電中の方々が多数おられる状態。

日刊IWJガイド「本日、午後8時より『熊本・大分大地震 総集編 2016.9.6 前編』を、明日午後8時より『熊本・大分大地震 総集編 2016.9.6後編』を再配信します! 現在進行中の千葉大災害と合わせ鏡のように観ることで、報道はなぜ支援と兼ねて行うことができないとされていたのか、『客観報道』という欺瞞をつきます!」2019.9.19日号~No.2562号~(2019.9.19 8時00分)

 

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コメント

黒曜石様

恥ずかしながら、父親に連れていってもらった「ダンボ」は衝撃的でした。仲間外れの子象が、突然脚光を浴びるという夢の様な話、個人的にそうあって欲しい物語でした。親がそこまで考えていたかどうかは全くわかりません。今も、空を飛ぶどころか、転んだり、溺れたり、まともに進めません。

なるべく早く高畑さんの展覧会を見に行きたいと思っています。行きずりの素人に、アニメの本質つについて問いかけてくださったことが忘れられません。なぜなのか、いまでも全く不思議でなりません。

子供の頃から、なぜかディズニーアニメが好きではありませんでした。
うまく言えないのですが、あの「画風」にどうしてもなじめなかったのです。

私よりもかなり年上の、美術や映像分野での尊敬すべき著名人などが、戦後に見たディズニー映画の素晴らしさを称えるのを聞くたびに、あの「絵面」に感動できない自分のセンスが悪いのかと、コンプレックスにさえ思ったものですが。

最近はそれでよかったと思えるようになってきました。

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