イラン対サウジアラビア:勝負あり
2019年9月19日
The Sakerブログ用のガッサーン・カディ記事
アラムコに対する攻撃は、長い戦争の始めなのだろうか、既に勝負ありなのだろうか?後者のように思われ、色々な点で、イランとサウジアラビア間の戦争は、始まる前に終わったのだ。フーシ派による、たった一つのアラムコ攻撃が、サウジアラビア石油輸出を半分へと転落させた。原油価格の20%上昇は言うまでもない。
フーシ派がアラムコ攻撃実行を宣言しているにもかかわらず、現在、トランプ政権は、フーシ派ではなく、イランが攻撃したのだという考えを世界に受け入れさせたがっている。https://sputniknews.com/us/201909191076835893-pompeo-attack-saudi-oil-facilities-act-war-iran/ これまでのところ、少なくとも日本は納得していないように見え、フランスもそうだ。https://sputniknews.com/middleeast/201909191076835540-japan?no-evidence-iran-behind-attack-saudi-aramco-facilities/
しかしながら、実際は、サウジアラビアの決意と、立ち上がって戦う能力は、誰が攻撃者かとは、ほとんど無関係で、それはサウジアラビアが、その損害を、さほど深刻に受け止めていないのを明らかにしたためだ。これは次の疑問か起きる。サウジアラビアは完全屈服するまでに、一体何回このような攻撃を切り抜けることができるのだろうか? 見たところ、さほど多くはなさそうだ。
サウジアラビア経済とインフラは極めて脆弱なので、前の記事で、私はそのようなシナリオを予想した。事実上、たった一つの主要な富を産み出す源(つまり石油)と、大都市に清浄な水をポンプで汲み出す少数の海水淡水化プラントしかない国は、実際、非常にソフト・ターゲットだ。結局、一握りの重要標的が攻撃されれば、石油輸出だけではなく、家庭への水道が停止するだろう。http://thesaker.is/dissecting-the-unfathomable-american-iranian-war/ だが海水淡水化プラントが稼働を停止するには、直撃を受ける必要はない。プラントは電力を必要とし、電力は燃料によるものなので、燃料供給が停まれば、プラントも停止するし、冷房なしでは生きられない国の発電所も同様だ。
最近まで、アラビアの人々は、干ばつや、塩気がある水や、焼けつく暑さに慣れていた。彼らはオアシスや周辺で暮らし、ほとんど水を使わない生活様式だった。だが新世代のサウジアラビア人や何百万という外国人居住者は家庭での毎日のシャワーや飲料水や空調設備に慣れている。戦争中、人は食物や水を探すため野外にでる。狩りをし、釣りをし、地域の漿果や食べられる野生植物を集め、流れる川や小川で壺を満たし、裏庭で自家用野菜を栽培するが、砂の王国サウジアラビアでは、このような選択肢は全く存在しない。
さらに、1950年代の数百万人から人口は膨れ上がり、サウジアラビアの現在の住民は3300万人おり、これには、そこで働き、暮らす何百万人もの外国人居住者も含まれる。
https://en.wikipedia.org/wiki/Demographics_of_Saudi_Arabia。破損したインフラが修復されるまで塩気がある水の限られた供給は十分ではなく、そもそも送水さえされない。
ロシアより大きく世界三番目の防衛予算を持つ国サウジアラビアは、パトリオット・ミサイルから銃弾に至るまで、全てを輸入し続けている。
これはイランの地理や自然資産や人口と極めて対照的だ。イランには山や谷や川や牧草地や繁栄する農業と、アメリカが課した制裁のおかげで、革新的で自足であるよう教えられている7000万人の国民がいる。
そして、アラムコの標的が不意に攻撃されたと言うのは、既にサウジアラビアはイエメンと、戦争状態にあり、特にイエメン空襲が、ここ数カ月エスカレートしていたことを考えれば、非常にばかばかしく、言い訳になるまい。サウジアラビアにとって更に恥ずかしいことがある。イランとの戦争の可能性が今や熱い話題になっているのに、重要なサウジアラビア施設が、一体どうして無防備であり得たのだろう?
だが、もしトランプ政権が主張し、我々をそう信じさせたがっているように、本当に、イランが攻撃をしたのであれば、話は全く別で、イラン・ミサイルが、湾の対岸、イラン本土から飛び立ち、アメリカの防衛や最新の探知ハードウェアやソフトウェアを回避するのに成功し、サウジアラビア領土の目標に効果的に到達したのをアメリカは認めることになる。もしこれがトランプが我々に信じるよう望んでいるシナリオならば、イランと交戦するアメリカの能力について、これは一体何を物語るのだろう? これは、地球上で「最も偉大で最も強い」とされる国の大統領選挙結果に、ロシアが実際影響を与えることができるという主張、ロシアゲートより遥かに大きな茶番だ。このような主張は、アメリカの敵が極めて組織的で、賢く、強いか、アメリカが混乱していて、愚かで、弱いことを意味する。それとも、その両方だろうか? いずれにせよ、このような主張を、他ならぬアメリカ自身が行えば、アメリカの立場を良くしないのは確実だ。
サウジアラビアとビッグ・ブラザーの弱点と脆弱性に並ぶのは、もう一つの同盟国、UAEだけだ。実際、もしガラス貼り超高層ビルを守りたいと望むならとフーシ派報道官ヤヒア・サリアは首長国連邦に厳しく警告した。https://www.rt.com/news/469104-houthis-new-drones-attack-uae/ サリアは演説で、アラブのことわざに皮肉をこめて言及し、自分の家がガラスでできていたら、他の人々に石を投げるべきではないと言った。世界が注意深く無関心に見守る中、何年も無差別攻撃をした後、イエメン人を無慈悲に飢えさせようとした後、フーシ派が侵略者に慈悲をかけると想像できるだろうか?
だがそれに直面しよう。ドバイやUAEの他の繁栄する大都市はゴーストタウンに変身するように運命づけられているのだ。現在の魅力と、上っ面の豪華さを使い果たすまでの時間の問題に過ぎない。結局、こうした空想的な都市には、本物の実質的な持続可能なものは皆無だ。それどころか、イランとの戦争は、崩壊をはや回しする可能性が高い。もし(彼・それ)らの生命のために走っていないなら、群れで去っている外国人投資家と国外居住者を処理して、残すようにする。
皮肉にも、アメリカ/サウジアラビア/UAE同盟は、もしそれが本当に同盟なら、地域への支配力を広めたと言ってイランを非難しているのだ。そして、おそらく、この主張を裏付ける証拠がある。だが連合は、彼ら自身が画策した侵略と、サダム打倒が、イランによって埋められたイラクの力の空白を作ったことを都合良く忘れているように思える。8年もの長きにわたる苦いイラン-イラク戦争は、勝者も敗者もなしで終わったが、アメリカ/アラブ連合によるサダム打倒は、まさに、その連合が、今抑えようとしているイランを、事実上の勝利者に変えたのだ。この茶番は、これ以上皮肉であり得るだろうか?
アメリカはイラン軍の力を過小評価しており、イランは真逆のことをしている。これは当然で、心理戦の本質だ。だが実際は、誰もイラン軍事力の実態を知らないのだ。この理由から、イランとの全面対決では、当初、アメリカは、艦船をペルシャ湾から出し、イランの短距離ミサイル到達距離以遠に移動させ、後の段階で、安全と確信したら、接近させるのかも知れない。だがサウジアラビアの極めて重要な地上目標は移動することができず、イランは片手の指で数えられるごく少数の目標を攻撃するだけで、サウジアラビア/UAEの全面降伏を実現できるのだ。
誰もイランの実力は知らないが、ずっと弱く遥かに貧しく恵まれないイエメンの餓死しそうな人々を打倒する上で、サウジアラビアが大失敗したのを我々は知っている。
アメリカは現地には軍を派兵するまいし、それで海軍艦艇を危険にさらすようなことはほとんどない。ソフト・ターゲットはサウジアラビアやUAEの重要インフラであり、パトリオット防空システムは、それらを攻撃する全てのミサイルを途中で迎撃することはできるまい。フーシ派ができるなら、イランもできて当然だ。
私は最近ネットフリックスで「ベトナム戦争」シリーズを見て、当時あの戦争の真実が暴露された時、アメリカのタカ派は、自国民と世界に、再度ウソをついたまま逃げ仰せたり、ベトナムにした手口で、いつか他国を侵略したりすることはあるまいと思ったのを思い出した。ところが20年もしないうちに、連中は全力でイラクに侵略し、国民は連中の言説を信じたのだ。おそらく、何か決して変化しないものがあって、朝鮮、ベトナム、レバノン、イラク、アフガニスタンやシリアで敗北した後も、依然、アメリカは、イランと戦うと固く決意しているように思われる。今回、最大の敗者はアメリカだけで終わらず、アラブ同盟国、つまりサウジアラビアとUAEもそうなるかもしれない。既に悪い兆しがあり、それは明らかに、勝負ありと読めるので、最近のアラムコに対する攻撃は避けられない結果の前兆に過ぎない。
記事原文のurl:https://thesaker.is/iran-vs-saudi-arabia-its-game-over/
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二年前に、下記記事を翻訳した。
イランとサウジアラビアの武力威嚇: 全面戦争では、どちらが優勢か?
偶然「たんぽぽ舎30周年記念の集い」の録画を拝見した。たんぽぽ舎の方の挨拶から始まって、来賓の鎌田慧さんや神田香織さんの挨拶、そして小出裕章さんの講演「原発にしがみつく日本ばぜ?どうする」 75分。講演の最後に、あの田尻宗昭さんの講演時の言葉が紹介された。パワーポイント画面の文字を写しそこねたが「社会を変えていくのは、数じゃない。一人です、二人です、三人です。」という趣旨。ポール・クレーグ・ロバーツ氏が良く引用されるマーガレット・ミードの言葉と同じだったのに驚いた。
「世界を変えようと決意を固めた思慮ぶかい市民たちからなる小さなグループの力を決して否定してはいけません。実際、その力だけがこれまで世界を変えてきたのです。」
孫崎享氏の今日のメルマガ題名
サウジへの石油施設攻撃が示す軍事的意味合い、9月14日石油施設に壊滅的打撃。サウジは戦闘機 F-15C(67機)F-15D(31機)F-15C(61機)レーダー施設、地対空ミサイル 対空システム[機能せず。日本にも言える事。ミサイル、無人機攻撃にほぼ無力を証明。
下記講演会も拝聴予定。
ガイドには、とんでもないが書いてある。傀儡支配層と、大本営広報部の結託、大本営広報部は報じない。
はじめに~これまで自由に質問できていた防衛省の記者会見でIWJが突如質問を禁じられる! 経産省では広報担当者が事前にIWJの質問内容を検閲!?
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