モスクワ・ミッチ、秘密のロシア潜水艦とロシア嫌いという錯乱
Finian Cunningham
2019年8月11日
Strategic Culture Foundation
主要共和党上院議員のミッチ・マコーネルは「ロシアの手先」として、主要アメリカ放送局や政治集会であざけられている。一方イギリスのデイリー・テレグラフはイギリス領海で「人目につかずに活動して」いる「超秘密」ロシア潜水艦について報じている。
アメリカとイギリスの主流政界における合理的な考え方の崩壊は見境がないロシア嫌いによって浮き彫りにされている。核保有超大国間で国際緊張が高まっている時に、このような思考は、妄想で、偏執的で、究極的に、恐ろしいものだ。
まず、マコーネル上院議員に対して、ロシアの手先というレッテルを貼っている馬鹿げた騒ぎを考えよう。上院多数党院内総務は、アメリカのニュース放送局MSNBCとワシントン・ポストに「モスクワ・ミッチ」と「プーチンの命令を実行している」と呼ばれた。表向きは「外国の干渉」を防ぐため、選挙制度の安全性を強化することを目指した法案を、マコーネルが阻止した後に、こうしたあだ名がつけられたのだ。
マコーネルがなぜ法案に反対したかは明らかではない。彼は、州レベルの選挙制度に対する連邦による過剰な支配に同意していないように思える。彼は、既に何億ドルも選挙制度を改良するのに費やされており、そのため追加出費は正当化できないとも主張している。彼は結局、財政上のタカ派なのだ。
それでも、提案された選挙法案に対するマコーネルの反対を、アメリカ選挙で、ロシアのハッキングを可能にするので、彼がロシア工作員である「証拠」だと、アメリカ政治とメディアの被害妄想ロシア嫌い連中が推論するのは全く正気の沙汰ではない。
彼の地元ケンタッキー州の最近の政治的催しで、マコーネルは「モスクワ・ミッチ、モスクワ・ミッチ!」と唱える民主党支持者に野次られ、ブーイングされた。抗議行動参加者はTシャツを着て、ソ連時代の槌と鎌がついたコサック帽をかぶったマコーネル画像のプラカードを振り回した。
77歳の上院議員が、政治的攻撃に、がくぜんとしたのも無理はない人。彼は冷戦時代の赤狩りを思い起こして、それを「現代のマッカーシズム」と呼んだ。彼はそれが過去のマッカーシズムよりもっと悪いとさえ言った。この点、彼に一理ある。
マコーネルのいらだちは、非難が全く非合理的な空虚さから生じたものだ。6回選出された議員は最も長く勤めている共和党上院議員だ。彼は、ロシアとウラジーミル・プーチン大統領に対してタカ派である「完ぺきな」実績から伝統的に右翼党の重鎮だ。
気さくな南部男マコーネルが、ロシアの手先と解釈するなどというのは、ばかばかしくて、言葉にもならないほどだ。非難が暴露しているのは、アメリカ主流政界やメディア文化のまったくの錯乱と政治的無知だ。
プリンストン大学のスティーヴン・コーエン教授が最近のインタビューで言ったように、ロシア嫌いと、アメリカ政治に対する干渉とされるものへの偏執は、余りにも多くのアメリカ政治家、評論家、軍諜報機関、民主党支持者の中で、永久の固定観念になっている。二年間のマラー捜査が、いかなる実質的な詳細や証拠も、見事に提供し損ねた後も、「ロシアゲート」という根拠がない物語が、最終的に捨て去られずに、生き続けているのを、コーエンが遺憾に思って当然だ。
だが、それでも、最近の議会聴聞会で、元FBI長官ロバート・マラーは、2016年大統領選挙にロシアが干渉したという空虚な非難を繰り返すのを許され、モスクワは2020年の選挙で再びそうするだろうと断言した。これは全く教義的信条に過ぎないが、ロシアのプーチン大統領が「妨害作戦」で、アメリカ民主主義をくつがえすことを命じたという「事実」として受け入れられてしまう。(モスクワは常に激しくそれを否定している。)
それが、上院多数党院内総務ミッチ・マコーネルのようにロシアに反感を持った人物が、相対的な健全さを発揮して、「外国の干渉を防ぐ」ために必要とされる選挙の安全性の強化を拒絶すると、「ロシアの手先」だとヒステリックな非難で襲われる理由だ。ロシアの悪意に関する錯乱した妄想ゆえに、全くの不合理さは自己強化するのだ。証拠は不要だ。それは「我々が本当だと信じる」から「本当なのだ」。
マコーネルは、彼らを「左翼ハッカー」や「共産主義者」と呼んで、中傷する連中に反撃した。彼は、アメリカ国民のために無料医療を拡張しようと努める民主党の政策に言及して結論を出した。彼は自身を誇らしげに、アメリカを「社会主義の狙い」から守る「死に神」と呼んだ。
これほどうつろなやりとりは、アメリカ政治文化がどれほど知的レベルが低下したかを実証している。ますます痛烈な党派的非難や中傷は事実も証拠も理由も政策や歴史や政治哲学に関するいかなる知的理解もなしに飛びかっている。
だが、遺憾なことに、基本的に、狂気の政治言説は根強いロシア嫌いに依存している。ロシアは政治的コインの両側で、悪、悪意があると見られている。アメリカ社会の固有の問題を扱うより、言説はよくあるエセ説明を探して、ロシアや、共産主義とされるものに関連することの責任にする。アメリカ政治とプロパガンダの冷戦虚無主義は一度も止まったことがない。それは一層妄想化し、うわべだけの現実からも乖離する。この文脈で、現代のロシア嫌いは、不合理さと証拠不要の教義上の信念ゆえ、おそらく一層危険だ。
そこで、デイリー・テレグラフによる、イギリスをしつこくつけ回す「超秘密」ロシア潜水艦の話になる。イギリスの政治支配階級がアメリカと共有している、いわゆる報道(より正確には心理作戦記事)は、錯乱した反ロシア妄想を暴露するために絶対必要な読み物だ。
「軍の情報提供者[原文のまま]によれば、新種の超低騒音ロシア潜水艦[原文のまま]が人目につかずに[原文のまま]イギリス領海で活動しているのではないかと懸念される」とテレグラフが報じた。
情報提供者は、テレグラフがイギリスの諜報宣伝の道具に良く使われることを表して、例によって匿名だった。
「目に見えない」ロシア潜水艦という「不安」を裏付けるための一片の証拠も提供されていない。おそらく「目に見えない」船は、ロシア人がどれぐらい卑劣で、コソコソしているかの「証明」だ。記事の狙いは、イギリス海軍に更に多く軍事出費をするための広報だった。
デイリー・テレグラフがこのようなばかげた脅し記事を報道できるのは、全てではないが、多くのイギリス人が、ロシア嫌いを組織的に吹き込まれているおかげだ。
アメリカの政治文化同様、イギリス政治文化は堕落し下劣になっている。それは中世の魔術や「呪術的思考」と同じだ。証明や理由や適法手続きという基準は放棄された。啓蒙時代前への退行のようだ。アメリカとイギリスがロシアを狙う核兵器庫を所有している事実は、彼らの政治支配階級の狂った考えゆえ、全世界にとって本当に恐ろしい可能性だ。
Finian Cunningham
主要ニュース報道機関の元編集者、記者。記事がいくつかの言語で発表されており、広範囲に国際問題について書いている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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模範的右翼議員まで、「モスクワの手先」扱いするというのは、末期的症状に見える。
大本営広報部のニュースというもの、ほとんどみないが、『京都人の密かな愉しみBlue修業中「祇園さんの来はる夏」』をみた。ドラマの中で、祇園祭にまつわる実に様々な情報を知った。楽しい京都広報番組?毎回見ている。
お台場の競技問題、日刊IWJガイドでも扱っている。
ガイドの中にある、れいわ議員の活動実績は気になる。
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コメント
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ミッチ・マコーネル上院議員が、ウェブ上でコラージュまで拡散されてモスコー・ミッチと揶揄されていたのは知っていたのですが、理由が全然分からないでいました。今回、記事を拝見して、なぜ分からなかったのかの理由がようやく分かりました(笑)。英米の、ロシアへの異常とも言える拒否反応については、まだよく分かりませんが。どうもありがとうございました。
投稿: まるべりぃ | 2019年8月18日 (日) 22時26分