最近の日本の選挙はアメリカの「インド太平洋」戦略を減速させるかもしれない
2019年7月31日
Andrew KORYBKO
orientalreview.org
先月の日本の選挙で、安倍首相の連立与党が、日本の平和憲法を変えるために必要な3分の2の議席という圧倒的多数を失うことになり、アメリカの「インド-太平洋」戦略の速度、特に、湾岸での反イラン海軍連合の形成と、インド-日本合同の「アジア-アフリカ成長回廊」の軍拡を大幅に減速しかねない。
安倍首相の連立与党は議論の余地なく先月の選挙で勝利したが、彼が実に長い間すると約束してきたように、日本の平和憲法を変えるのに必要な議会の3分の2の圧倒的多数は得られなかった。この問題は日本社会では極めて微妙で、昔の日本帝国が、第二次世界大戦を始め、敗北した侵略国家の一つだったから、国際関係でも極端に論争の的であり、それ故、日本は、戦後、国際社会によって、再び軍を維持することを禁じられたのだ。日本は以来、「自衛隊」と呼ぶものを作り出すため抜け穴を利用して、地域の海賊行為と戦うという口実の下、2011年、ジブチに前例がない外国軍事基地を建設さえしたが、日本の軍事力は、多くの人々が客観的に、世界主要大国の一つとしての地位に相応しいと考えるものより遥かに下にある。
まさに、日本が地域で最強の軍を支配した時代に、アジアで何が起きたかを他の誰よりも良く知っているがゆえに、中華人民共和国がそれほど心配しているのだが、中国に対して、日本を比類なく不利にしていると感じているため、安倍首相はそれを変えようと望んでいる。この安全保障のジレンマは、最近、大洋横断のこの広大な地域に関して国防総省が最近発表した戦略報告書で、日本との同盟は「インド太平洋の平和と繁栄の要」だと宣言したアメリカに、巧みに利用されている。アメリカが自身のために構想する戦略軌道のどこか近くに到達するためには、日本は平和憲法を変え、その過程で国際的に認識されている第二次世界大戦の結果も修正しなければなるまい。だが、アメリカがしっかり後に控えているので、戦後国際秩序の基礎の一つの一方的な廃止も、国連安全保障理事会の他のメンバーが何と言おうとも、彼らによる、いかなる懲罰行動もありそうにない。
少なくとも今のところ、これが起きるのを阻止しているのは、憲法を変えるのに必要な3分の2の圧倒的多数を安倍首相から奪った日本人自身だ。日本国民は、明らかに、憲法を変えるより、現状を維持したがっているのだが、日本の首相は、それでも彼の理念を実行するのに必要な支持を得るべく邁進すると誓ったのだ。しかし今のところ、アメリカの「インド-太平洋」戦略は、アメリカが日本が湾岸でアメリカの反イラン海軍連合に加入する責任を持つ安倍首相の不本意によって最もはっきりと見られるそれがその同盟者を任じるために意図している地域横断の「後ろからのリード」役職に関して速やかにとることを当てにすることができないサインの速度を遅くした。日曜日、彼は記者団にこう語った。「我々は、これに関するアメリカの考えを聞き始めており、我々は慎重に聞き続けたいと望んでいる。日本はイランとも友好関係を持っている。」 彼の立場は二つの理由で理解できる - 連合への支持を誓えば、有権者が怖がって、逃げてしまうかもしれず、連合に加われば、イランからは、敵対的な動きとして見られるだろう。
日本の首相で自由民主党(LDP)の党首でもある安倍晋三首相は、2019年7月22日、東京、日本の自由民主党本部で参議院選挙一日後に記者会見に出席。
湾岸連合への加入という問題に関して、アメリカ「インド太平洋」の二本柱、インドと日本との間に、ひびが現れていることを意味するので、この後者の事実は極めて重要だ。この南アジアの国家は、イランがこのような動きに否定的に反応するだろうと日本がいくら懸念しようとも、湾岸地域に、海軍、空軍を急派することに何の良心の呵責もない。インドはアメリカ率いる連合に加入することを否定してはいるものの、数年前に締結したロジスティクス交換覚書(LEMOA)軍事協定の一部として、アメリカ海軍から燃料と後方支援を受けていることを認めており、インドは本質的にこの地域の集団の一部なのだ。もしアメリカが我を張れば、インドと日本はアメリカのサポートを現実の作戦という文脈で、軍隊の集団的相互運用性への大きな第一歩として、彼らの海軍や他の活動を調整して、湾岸で共に活動するだろう。最終目標は、最終的に、始まったばかりのインド-日本「アジア-アフリカの成長回廊」(AAGC)を武装化し、中国がBRIでするはずだとアメリカが騒いだのと、まさに同じことを、善人ぶって、することなのだ。
今のところ、日本の選挙で、安倍首相が、日本の平和憲法を修正して、軍に関連する出来事の連鎖反応を引き起こす最も容易な「法的」方法を失った後、これらの壮大な戦略上の目標は凍結されている。それはアメリカの「インド太平洋」構想が打ち破られたことを意味せず、単に日本が第二次世界大戦による結果の事実上の修正を「正当化する」ための別の回避策を見いだすまで、展開が延期されたに過ぎない。日本人の意志に反しているにもかかわらず、このような動きの背後にある巨大な勢いを考えれば、それは遅かれ早かれおそらく現実に起きるだろうが、いずれにせよ最近の選挙は、「法的に」うまくやり通すのをこれまで以上に困難にした。同時に、それは日本社会が、インドがそうであるのと同じほど、国防総省が考える「インド太平洋」での日本の戦略的役割を固く支持していないことを示している。そうであれば、この南アジアの国は中国「封じ込め」という地域構想の本当の要だとアメリカが究極的に考えるようになるかもしれないのだが。
お断り:著者は本人の個人的見解以外、誰か、あるいは、いかなる組織の代表でもなく、個人の資格で、本記事を書いている。著者が書いたいかなるものも、編集部の見解、あるいは他のいかなる放送局や団体の公式の立場とも混同してはならない。
出典ORIENTAL REVIEWを銘記しての転載歓迎。
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『慰霊と招魂 ─靖国の思想─』を読んでいる。明治維新の内戦も、中国やアジアでの侵略戦争も、靖国と直結していた。祭神数の急増だ。今度は、日本軍ではなく、宗主国の命で、そうしたものへの関与がはじまりそうなご時世。この本を読もうと思ったきっかけは、笙野頼子氏の小説『金比羅』。
宗主国は、さらなる搾取を狙っている。金も、命も。
IWJガイドの冒頭の一部をコピーさせていただこう。
はじめに~「私たちが求めてきた、介護を必要とする障害者が訪問介護サービスを使って就労するという要望は認められませんでした」初登院のれいわ新選組・木村英子参議院議員の重い一言! 維新の松井一郎大阪市長や吉村洋文大阪府知事は参院が介護費用を負担することを「優遇」「不公平」と批判!? 【中略】
松井氏のツイートは、障害者が健常者と同じように国会において議員として活動を行えるように国が支援することが、あたかも障害者の特権であるかのような主張です。また吉村氏のツイートからは、障害者が社会活動に参加できないという問題を財源論にすり替え、障害者差別を容認することが「公平」だとの意図が見えます。松井氏、吉村氏の考えは、優生思想につながる危険な考えではないでしょうか。
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