中央アジアで健在のモッキンバード作戦
2019年6月26日
マーティン・バーガー
New Eastern Outlook
ワシントンが「カラー革命」戦術を実験した国々での内部状態は、現地メディア情報源が推進しようとしているメッセージと、標的に定められた国にとっては有害で、アメリカにとっては有利なクーデターをもたらすことが可能な「革命感情」のレベルとの間に、明らかに正の相関関係があることを示している。ワシントンが長い間この事実を知っていたのは明らかで、それはまさにメディア操作の仕事が常にCIAの最優先事項だった理由だ。
ジョセフ・J・トレントは彼の本『The Secret History of the CIA CIAの秘密の歴史』で、CIAの特別プロジェクト部門(SPD)が、1948年以降、どのようにプロパガンダへの熱情を発展させたかを大量の詳細で記述している。モッキンバード作戦の計画を立てることと、実行に対して、主に責任があったのが同じSPDだったのは奇妙だ。
モッキンバード作戦の主な目的は、ジャーナリストをリクルートし、世界中の種々の編集委員会に常任のCIA要員を潜入させることを通じて、アメリカと外国メディア情報源の両方に対し影響を及ぼすことだった。1953年以降、アメリカの新聞と通信社の圧倒的多数は、モッキンバード作戦の犠牲者となり、CIAエージェントだらけになって、宣伝と反情報を広めることで忙しかった。60年代と70年代、ABCやNBCやCBSやタイムやニューズウィークやAP通信やUPI通信やロイターやハースト新聞やスクリップス・ハワードのようなメディア報道がこの作戦の影響を受けており、多数の刊行物がモノマネドリ作戦の本当の規模を明らかにしている。モッキンバード作戦立案者は、外国メディアや海外の政治的出来事に影響を与えようとしていたが、そうした狙いに成功したように思われる。
1975年に、後にチャーチ委員会とあだ名をつけられた、諜報活動に関する政府の作戦を調査するためのアメリカ上院特別委員会の議長を務めた民主党員上院議員フランク・チャーチが、モッキンバード作戦の特定の詳細を明らかににした。
それでも、彼はこの作戦を終わらせ損ね、CIAが一般大衆をだますことを目指す秘密作戦を行う方法は、ほとんど変化しないままになっている。国内、国際的両方の狙いをワシントンが支配する便利な道具なので、モッキンバード作戦がまだ健在なのは明らかだ。彼らの仕事で、ワシントンの指示を行うことに対し、多くのアメリカとヨーロッパの主要マスコミ名士が、かなりの金を受け取り続けているのも明らかだ。CIAに支配されたメディアを通して、有望な政治家に関する誤報を広め、宣伝を推進し、欧米圧力団体の利益を傷つける可能性がある、あらゆる話題を消去するのだ。
最近、CIAとドイツ連邦の諜報機関が、トップのマスコミ名士に賄賂を使い、金を受け取らない人々を恫喝することによって、ドイツ・メディアの言説を形成する能力を持っていることが知られるようになり、アメリカ諜報機関がメディアを操作している事実はヨーロッパで多くの注目を受けた。
数年前、有名なドイツ人ジャーナリスト、ウド・ウルフコッテが、CIAが、どのように主要なドイツストメディア情報提供者の大部分をこき使うことが可能かを大量の詳細で述べた『Bought Journalist 買収されたジャーナリスト』という題名の本を出版した。
もしウクライナの危機を綿密に観察すれば、事実上、ヨーロッパとアメリカの報道機関ほぼ全てが、この問題に対するロシアの立場を徹底的に無視していることで、この作戦の有害な触手が明らかになる。
だがこの全てにおいて、最も悪い部分は、モッキンバード作戦が前進していることで、この結論は、2016年に行われた二つの上院外交委員会聴聞会から引き出すことができる。当時まだ、リトアニアへのアメリカ大使として承認されていなかった、アン・ホールと、ウクライナ大使に指名されたマリー・ヨワノヴィッチが、リトアニアとウクライナのジャーナリストが「ロシアの宣伝に対処する」訓練を受けていたことを明らかにした。2015年8月、リトアニア・クーリエは、ジャーナリストにワシントンが訓練をおこなう最初の東欧の国はリトアニアだと書いた。当時、リトアニアのアメリカ大使館は、高い志を持ち、経験豊かなロシア語を話す記者に、調査ジャーナリズム研修プログラムを提供した。「バルトにおける調査ジャーナリズム訓練」と名付けられたこのプログラムは、アメリカ政府から50万ドルもの交付金を受け取った。プログラムは、三つのバルト国全てを対象に設計されており、三つのアメリカ大使館全てが、訓練活動の計画と調整に参加したが、ビリニュスのアメリカ大使館が資金割り当てを監督した。
モッキンバード作戦が健在だというもう一つの裏付けがある。カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタン、タジキスタンとトルクメニスタンで、アメリカ中央司令部によって行われた、アメリカに忠実なニュース番組キャスターとメディア・マネージャー捜索の首尾良い成果だ。アンクルサムに厳選された人々は、アメリカで来月訓練を受ける予定だ。
アメリカ国務省は、既に中央アジア中の様々なマスコミ名士に、適切な招待を送っており、他方地域じゅうのアメリカ大使館員の全てが、万事円滑に進むようにする仕事を与えられている。予想通り、この「実務研修」プログラムの資金はアメリカ中央司令部が提供する。
公式には、このプログラムは、新しいメディア形式と近代的放送装置で仕事をするよう中央アジアのジャーナリストを訓練することが狙いだ。はるか彼方の土地で精選されたそれらメディアマネージャーたちは、主要アメリカ・メディア企業代表者との会談に出席することになると思われる。それら新人は、国務省職員や心理作戦分野専門家にもインタビューを受ける予定だ。このような会談の間に、更に彼らを教える前に、アンクルサムは、それらのメディアの人々がアメリカに、どれほど忠実か知ろうとするはずだ。
これは世界がアメリカ風民主主義に対して支払っている本当の代償だ。本当のジャーナリズムの死だ。
マーティン・バーガーはフリージャーナリストで地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/06/26/operation-mockingbird-is-alive-and-well-in-central-asia/
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ようやく『新聞記者』を見た。初日に見たかったのだが、諸般の事情で昨日まで外出できなかった。平日の昼でも、若い人もいた。映画の前に、トンデモ政党の宣伝があったのにはびっくり。観客の間から「笑い声」が聞こえたような気がするのは幻想だったのだろうか。そして、トンデモ作家の作品名のすぐあとに、戦艦大和の姿の映る映画の宣伝にも驚いた。茶坊主作家の作品を映画化した監督の新作映画。どちらも、この映画の観客の関心はひかないように思えるのだが。
とうとうイランもしびれをきらしたのだろうか。一方的に宗主国が悪いのだが。
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