アメリカ中東政策の核心にあるカタール
2019年7月23日
ヴィクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook
最近のカタール首長タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニーのアメリカ訪問と、そこで署名された契約と協定が、アメリカ-カタール関係の現状と、ペルシャ湾岸地域のワシントン政策をほぼ正確に査定するのを可能にしている。
まず第一に、カタールは、独自政策を行おうとさえせず、明らかに、ほとんどアメリカ政策に同調している。カタール首長は、D・トランプ大統領のみならず、政権の多数の高官との交渉でも大成功したが、その全てを列記するには何ページも必要だ。
多くの点で首長国は、アメリカの偉大な友人で、同盟国で、カタールとアメリカ間の戦略的提携が、あらゆるレベルで未曾有の高みに達しており慶賀に堪えないとアメリカ大統領は述べた。タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー殿下の多数のアメリカ訪問が、強力で急速な両国関係を反映していると彼は強調した。この点に関し、大統領は、アメリカ-カタール関係が、単なる軍事、法律、貿易協力を遥かに超えていることを大いに強調し、人身売買、不正資金浄化、テロへの資金供給を含め、国家を超えた脅威に対処する上でのアメリカ-カタール協力を高く評価した。
第二に、ドナルド・トランプにとって現在最優先課題で、解決すれば彼の再選を確実に決定するはずのイラン問題は詳細に話し合われた。ドーハは最近テヘランと、どちらかと言うと強い関係を確立し、アメリカに関し、イランの政策にある程度まで影響を与えられるだけでなく、ワシントン-テヘラン交渉で仲裁人にもなれることが良く知られている。カタールとイラン間の最も強い経済関係はガス問題と関係がある。両国はペルシャ湾のガス田、つまり採掘可能埋蔵量2150億バレルの石油と14兆立方メートルのガス(世界の総埋蔵量の8%)がある南パース/北ドームを共有している。この理由で、ドーハはイランの孤立化に興味はない。現在、ワシントンとペルシャ湾の国々が益々イランに圧力を加える中、カタールはテヘランと政治的、経済的関係を維持している唯一の国だ。
非常に影響力のある新聞ワシントン・ポストのインタビューで、アメリカ政権高官が、アメリカは、メッセージをイランに伝えるため、カタールを使うことを明確にした。「これが何らかの正式な仲介人の役割と思わないように。だが我々は、彼らがメッセージを伝え、緊張緩和の取り組みの可能性について報告し、対話に何らかの道を切り開くことを期待できる。」 この種の声明は、現在アメリカとのいかなる直接接触も避けているイランとの対話におけるカタールの役割を促進する。
第三に、彼の訪問中、首長は再び、軍事的つながりの堅固さと、継続中のアメリカ兵器大量購入を保障した。カタール・マスコミによれば、6月末、国防総省はステルス技術(「見えないジェット」)を使った多目的F-22戦闘機を、ドーハから遠からぬ巨大基地アル・ウディドに派遣した。カタール基地へのアメリカ空軍攻撃機配備は、イランとの武力衝突の高い危険があるペルシャ湾で、アメリカの軍事的存在を強化する、もう一つの措置となった。「これらの戦闘機(F-22)は、これまでで初めて、中東におけるアメリカの軍と権益を守るためカタールに配置される」という、担当地域が中東を含むアメリカ軍隊中央司令部(USCENTCOM)声明をお読み願いたい。(カタール軍の兵士数より多い)15,000人以上の兵士が配備される基地はイラン阻止戦略の主要要素だと思われる。だが基地の存在は、逆に、カタールをイランの第一標的にするのだ。
第四に、ドナルド・トランプ大統領は、ボーイング、ゼネラル・エレクトリック、レイシオン、ガルフストリームやシェブロン・フィリップスのような巨大アメリカ企業とのアメリカに有利な多数の貿易契約に署名するようカタールに強いた。アメリカ大統領によれば、カタールとの協力の結果、アメリカには多くの雇用が生まれた。カタール首長に敬意を表する厳粛な晩餐会で、アメリカ大統領は、タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー首長に向かって演説し、機嫌よく宣言した。「我々のではなく、主としてあなた方の資金だったのは、有り難いことです。実際、もっと良いのは、それは、我々のでなく、全て彼らの資金だった。それは益々結構だ。」
例えば、カタール石油は、シェブロン・フィリップス・ケミカル社と、メキシコ湾のアメリカ海岸で新しい国際石油化学製品プロジェクトを実行する協定に署名した。厳粛な調印は、首長とアメリカ大統領を前に、ホワイトハウスで行われた。推計約80億ドルの費用で、アメリカ石油化学製品プロジェクト湾岸2(USGC II)は、年間200万トンという巨大な能力の、世界最大のシステム熱分解装置と、2ブロックの、それぞれ年間100万トンの高密度ポリエチレンのエチレン・システム熱分解装置になる。
折よく先月、カタール石油は、カタールにシェブロン・フィリップス・ケミカル社とジョイント・ベンチャーを立ち上げると発表した。工業都市ラス・ラッファンでの、中東最大で、世界最大の1つとなる年間190万トンの能力のエタン熱分解装置がある世界規模の石油化学製品工場だ。
もう一つの高額契約に、GEエンジンに関し、カタール航空とGEアビエーションが署名したものがある。契約に従い、カタール航空は、エンジンの維持管理、修理とオーバーホール(MRO)のための、TrueChoice TM フライト・タイム契約とともに、GEnxエンジンを、30機の新しいボーイング787-9飛行機のために選んだ。カタール航空は60機のボーイング777X飛行機に搭載されるGE9Xエンジン用のMROサービスのため、TrueChoice TM フライト・タイム契約に署名した。これら全ての契約の総額は50億ドルを超える。カタール・メディアの推計によれば、署名された契約の総額は100億ドルを超える。
カタール首長のアメリカ訪問は、アメリカとイラン間の緊張が増大し、地域のいくつかの隣国によるカタール封鎖が2017年から続いている困難な時期に行われたのを指摘する必要がある。継続中のカタール封鎖が、この危機に関係している全ての国と親密な軍事的、外交的関係を持っているアメリカを、かなり居心地悪い立場に置いていたのは疑う余地がない。だが、それにもかかわらず、ワシントンは、カタールの豊かな首長国に対するその強い影響力を維持し、アメリカの政策に無条件に賛成するよう強いるのに成功した。
ヴィクトル・ミーヒンはロシア科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/07/23/qatar-at-the-heart-of-the-us-policy-in-the-middle-east/
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国名を替えても意味は通じる。独自政策を行おうとさえせず、明らかに、ほとんどアメリカ政策に同調している。
選挙後、突然生まれ変わる人がいたたり、病気がよくなって、気色わるくも機織鮮明にする人物の話題。おぞましい。
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