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2019年6月26日 (水)

イギリスとオマーン:深まりつつある両国の特別な関係は王位継承後も存続するだろうか?

地域の前向きな変化を犠牲にして、長年の湾岸同盟国との一層親密な関係を求めるイギリス
マーク・カーティス
Middle East Eye
2019年6月17日

 60年前、イギリスは、オマーンで長く忘れられた戦争に勝利し、現在も強化されつつある二国間の間の特別な関係を作り出した。

 イギリス軍のトップが最近オマーンを訪問し、両国の「永続的な友情に関する包括的共同声明」と新たな共同の防衛協定に署名する中での、その記念日だ。去年、両国は中東において、20年間で最大のイギリス軍事演習に協力した。

 オマーン支配者スルタン・カーブースに対するイギリスの支援強化はイギリス・メディアでは無視されながらもる大規模だ。けれども重要な疑問が迫っている。彼の亡き後、誰がスルタンを継ぐのだろう、ロンドンはその後もこの特別な関係を続けられるだろうか?

「非常に多くの希望はない」

 中央オマーンでの1957-9年の戦争は、中東でも最も抑圧的な体制の一つ、スルタン・サイード・ビン・タイムールの支配を脅やかす反乱を挫折させた。機密指定を解除されたファイルが、地域のイギリス最高外交官ジョージ・ミドルトンがそれを認識していたのを示している。「人々の状態は惨めだ、スルタンは人気がない、中央政権は存在せず、現在の政権下では、将来、非常に多くの希望はない。」

 だからといって、イギリスが、サララの宮殿で何百という奴隷を保持しているスルタンを支援してイギリス空軍(RAF)を派遣し、空から反政府派を爆撃して「我々が自由に使える兵器の力を住民に示し」、彼らに「抵抗は無効で、苦難を味わうだけ」であると納得させるのを阻止しなかったことをファイルは示している

 ハロルド・マクミラン前首相は、「反体制派分子の村が農作物を集めるのを妨げ」、「空軍の活動で、選択した村への給水拒否」を促進するため、戦争犯罪となる民間標的、給水と農地の爆撃を承認した。空軍特殊部隊も1958年遅くに派兵され、翌年、反政府派の最終のとりでを占領した。

 南オマーンのドファール行政区で数年後に起きた反乱も、同様にイギリス介入を引き起こした。ドファール蜂起はスルタンの「制圧と無視に反対する先住民の反乱」だったことを、外務省は後に非公式に認めている

 ほとんどどんな学校も医療施設もなくで、1970年まで、人前でたばこを吸うこと、サッカーをすること、めがねをかけること、15分以上、人と話すことが禁止されていた。蜂起に対するスルタンの対応は、より大きな力を使うことだった。主にオマーン軍を支配しているイギリス人士官の。

巨大イギリス基地

 イギリスが、スルタンはドファール戦争に勝てないかもしれないとを悟って、マスカット駐留のイギリス軍事顧問は、1970年に宮廷クーデターで彼を打倒し、彼の息子、以来ずっとその座にあるカーブースを権力の座につけた。オマーンは、結果的に、イギリス軍と諜報機関の巨大基地になった。

 エドワード・スノーデンが漏洩したファイルが、イギリス政府通信本部GCHQが、オマーンに、ホルムズ海峡を通ってアラビア湾の中に入る様々な海底ケーブルを傍受する、ティンパニー、ギターとクラリネットというコードネームを付けられた三つのスパイ基地ネットワークを持っていることを示している。

 アラビア湾の石油と軍と諜報作戦:無視されているオマーンとイギリスの危険な特別な関係

 これらの基地は膨大な量の電子メールと電話とWebトラフィックを傍受し、処理している。情報はアメリカ国家安全保障局と共有される。

 イギリスは中央オマーンのドゥクム港コンプレックスに、イギリス海軍のために建造中の2隻の65,000トン航空母艦が停泊可能な巨大新軍事基地を設置したばかりだ。これは「スエズの東だが、湾外にある戦略上重要な恒常的な海軍基地」となり「インド洋全域でのイギリス空母打撃群派遣のために集結地点」となるはずだ。

 地域における恒常的なイギリス軍駐留を容易にするため、新たなオーマン-イギリス合同訓練地域が今年オマーンに設立された。両国の関係は武器輸出により更に強固になる。オマーンは、2014年-18年の間に、24億ドルに相当する武器を輸入しているが、イギリスは最大の供給元だった。

経済権益

 オマーンにおけるイギリスの事業権益も、オマーンGDPの30パーセントを占める石油とガスで、特に増大している。シェルはオマーンの石油を管理する石油開発株式会社の34パーセントの所有権を持っており、他方BPは160億ドル投資した大規模なハッザン・ガス・プロジェクトで60パーセントの所有権を持っている。

 これらの権益はイギリスを一層スルタン政権に結び付けているが、この政権は湾岸の基準からしてさえ権威主義で抑圧的だ。政党は活動を禁止され、政治集会は逮捕される可能性が高い。オマーンは下院選挙があるが、下院はほとんど無力だ。

 スルタン・カーブースは首相、軍隊最高司令官、中央銀行総裁と国防大臣、外務大臣と財務大臣の地位を公式に保持している

 オマーンが最近数十年、大きな経済発展を成し遂げているが、それを温和な独裁制として描写するのは誤解を招く。2014年、国連特別報告者が「沈黙と恐怖が蔓延する文化が、オマーンの改革のために語り、働くことを望む全員に影響を与えている」と述べた

 去年、オマーンは言論の自由と他の権利に対する厳しい罰則を含む、当局に広範な権限を与える新刑法典を導入した。「スルタンの権利や特権への異議申し立てや、彼の名誉を傷つけるものを公表にする」あるいは「国家の地位を侵害する」者は誰であれ投獄するのだ。

人権侵害

 スルタン政権に対するイギリスの積極的支援は、2017年に、Middle East Eyeが北アイルランドの警察がオマーン警察、軍と特殊部隊にストライキや抗議行動に対処する方法を教える課程を実施したことを明らかにして、確認されていた。

 ロンドンは、彼らの「非常に親密な関係」は強調するが、オマーンの人権侵害に関しては沈黙している。実際、最近解任されたイギリスのギャビン・ウィリアムソン国防大臣、が、2019年2月にオマーンを訪問した際、彼は「先見の明のある人」だとまで表現して、スルタンの「政治的手腕、知識、賢明さ」を称賛した

 イギリス議会記録によれば、イギリス外務大臣アラン・ダンカンはスルタンの常連ゲストで、2000年から24回オマーンを訪問している。これらの訪問は主にスルタン国の負担だ。ダンカンが2016年7月に国務大臣になって以来、訪問は三回行われた。

 だが現在のスルタンが亡くなったら、イギリスはその特別な関係を維持できるだろうか? 78歳で、2014年から結腸癌を病んでいるカーブースには相続人がおらず、公式に後継者を指名していない。オマーン基本法は、次の指導者は、1871年から88年までマスカット・オマーンのスルタンだったサイード・タルキ・ビン・サイード・ビン・スルタンの男性子孫でなければならないと規定している

2人の最も一般に言及された先頭走者はカーブースのいとこ、サイード・アサド・ビン・タリク・アル・サイードと、その息子タイムールだ。

平常どおり

アサド副首相は、カーブースに代わって、常に外国の外交官に会っており、最も有力な後継者だと思われている。アサドは彼自身カーブースのように、軍司令官になる前に、1970年代、サンドハースト王立陸軍士官学校で研修を受けた。

 まだ39歳のタイムールはウィキリークスによって明らかにされたアメリカ国務省電報で「魅力的で、愛想が良く、非公式である」と描写されている。彼はイギリスで、ブライトン、スコットランドのガラシールズとロンドンで4年間学んだ。

 イギリスは、カーブース逝去の際に同じことが更に続くことを確実にするために、マスカットで、現在の高官を取り巻く連中との関係を利用するだろう。

 欧州連合からのイギリス離脱は、イギリス政府に長年の湾岸同盟国とのより親密な関係を求めるよう促している。これは地域における前向きな政治的・経済的変化の促進を犠牲にし続けるだろう。

*

 本記事の意見は著者のもので、必ずしもMiddle East Eyeの編集方針を示すものではない。

 マーク・カーティスは歴史家でイギリス外国の政策と国際関係評論家で、最近の改訂版Secret Affairs: Britain’s Collusion with Radical Islamを含む6冊の本の著者。

記事原文のurl:https://www.middleeasteye.net/opinion/britain-and-oman-will-their-growing-special-relationship-survive-succession

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 アンドレ・ヴルチェク氏の記事「他の湾岸諸国とは一味違うオマーン」を先月翻訳した。イギリスにも多少触れられていた。日本は石油は出ないが、この記事の巨大基地や武器爆買い「どこかの国とそっくり」と思った。あの条約が今話題。

日刊IWJガイド「トランプ米大統領が日米安保破棄を側近に漏らしたとブルームバーグが報道! 日本は自主防衛を迫られる!? トランプ訪日直前に防衛関連株が急伸!!」 2019.6.26日号~No.2477号~(2019.6.26 8時00分)

 

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