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2019年6月19日 (水)

嘘をついて、「ワグ・ザ・ドッグ(すり替える)」

ウェイン・マセン
2019年6月18日
Defense.gov

 ドナルド・トランプ政権は、共和党支配の議会に支援ほう助された、ウソつき、ペテン師、安物宣伝者、常習犯や学校のいじめっ子の政権として歴史に残るだろう。ジョージ・W・ブッシュとディック・チェイニーが嘘をついて、アメリカをイラク戦争においやったのと全く同様に「チーム・トランプ」がそうすることが可能であり、おそらくウソをついて、アメリカをイランとの戦争においやるだろう証拠が、オマーン湾内の2隻のタンカーに対する最近の攻撃に関する最近のたわごとで見ることができる。今回の攻撃はオマーン湾で、アラブ首長国連邦のフジャイラ首長国海岸沖に投錨していた4隻の船に対する似たような、いかがわしい攻撃ほぼ1カ月後に起きた。5月12日の攻撃は、トランプ政権メンバーにより、イランのせいにされたが、そのような主張を補強する証拠は提供されなかった。

 でっちあげたウソや、テレビによる絶え間ない宣伝に基づいたアルバニアに対するアメリカの戦争にまつわるコメディ・フィクション映画『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』のモデルになれるくらいの漫画キャラクター風戦争屋、ジョン・ボルトン国家安全保障補佐官は、ホルムズ海峡からオマーン湾に出ようと航行していた2隻の船に対する6月13日の攻撃の全てに、彼の指紋をべったり残しているように思われる。

 攻撃が世界的に報じられるやいなや、ボルトンの共犯者、マイク・ポンペオ国務長官がカメラの前に立ち、機雷による船舶攻撃をイランのせいにした。ポンペオは「諜報機関」が、イランが日本が所有するパナマ国籍の商船コクカ・カレイジャスと、ノルウェーが所有するマーシャル諸島共和国国籍の商船フロント・アルテアに対する機雷攻撃を実行したと判断したと宣言した。だがどの国の諜報機関だろう? ポンペオはアメリカ諜報機関がイランに責任があると結論したとは主張していない。ポンペオとボルトンのイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の極右超民族主義政権との親密な結びつきを考えれば、ポンペオが大いに頼っている「諜報機関」とはモサドと、ヘルツリーヤと、ワシントンDC、そしてロサンゼルスの動画宣伝者チームだったように思われる。

 トンキン湾スタイルの偽旗作戦で、イランに対する米軍攻撃を引き起こすのは、確実にボルトン、ポンペオと、ネオコンと、彼らが国家安全保障会議と国務省に雇っている親イスラエル・サクラのチームによる作戦の鍵となる部分だ。加えて、ペテンを通して戦争を行うのはイスラエルのモサド戦略の不可欠な要素だ。1954年のオペレーション・スザンナは、モサドが使った、そのような人をだます戦術の一つだった。エジプト国内のアメリカとイギリスとエジプトの標的が、モサド工作員に爆破され、その責任がエジプトの共産党員とムスリム同胞団メンバーのせいにされた。1967年、東地中海をパトロール中の諜報活動船リバティー号に対するイスラエル攻撃は、元来エジプトに罪をなすり付けることが意図されていた。1976年のエールフランス機ハイジャックと、ウガンダ、エンテベ空港への目的地外着陸は、イギリス諜報機関によれば、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)の隠れみのを使って、フランスとアメリカ人の視点で、パレスチナ解放機構(PLO)に損害を与えるため、イスラエル諜報機関が計画した偽旗攻撃だった。ニューヨークのワールド・トレードセンターでの9/11攻撃におけるモサドの役割について重大な疑問が残っている。

 トンキン湾スタイルの偽旗作戦で、イランに対する米軍攻撃を引き起こすのを、ボルトン、ポンペオや、イラン特別代表ブライアン・フックや、国務省対テロ・コーディネーターネイサン・セールスなどの他のトップ・ネオコンは悪いことだと思っていない。

 いくつかの事実が、イランが攻撃に責任があるというのは的外れなことを示している。イランのハッサン・ロウハニ大統領が、キルギスタン、ビシュケクでの上海協力機構(SCO)サミットのために出発準備をしていた時、船に対する攻撃が起きた。大統領が外国訪問中に、イランがこのような行動に加わる可能性はゼロだ。ネオコン集団により、イラン革命防衛隊(IRGC)が攻撃の責を負わされたが、地域の水路での貿易に干渉しないのがIRGC政策だ。それは、最近トランプ政権により「外国テロ組織」に指定されたIRGCは、イランやイラクで輸送機関を含め種々の営利事業に投資しているためだ。IRGCは、通常、いずれの集団もサウジアラビアに資金供給されている、イスラム国や、アラビア半島のアルカイダ(AQAP)に由来する区域での実際の脅迫を緩和する活動をしている。船舶へのいわれのない攻撃は、IRGCの収益をそこない、それ故、政策に悪影響を与えるはずだ。

 しかも、船が攻撃された時、日本の安倍晋三首相がテヘランにいた。安倍首相は和平対話任務で、ドナルド・トランプ大統領からイラン最高指導者アヤトラ、アリ・ハメネイ宛ての手紙を携えていた。コクカ・カレイジャスは日本の所有で、フロント・アルテアは攻撃された時に、アブダビから日本に向けて、大いに可燃性のナフサ貨物を輸送していたことは注目すべきだ。コクカ・カレイジャスは、サウジアラビアからシンガポールに向けて可燃性のメタノールを輸送していた。東京の国土交通省広報担当が、2隻の船は「日本関連の貨物」を運んでいたと述べた。テヘランで、イランのジャバード・ザリーフ外務大臣が、安倍首相のイラン訪問中の日本が所有する船に対する攻撃は「怪しいということばでは言い尽くせない」と述べた。

 イラン・テレビの空撮テレビ・カメラは、その可燃性の貨物が燃えている2隻の船の映像をとらえることができた。雲がない空に向かって撮影されたこれらビデオは、フォックスニュース、CNN、MSNBC、BBCを含め、イランが攻撃したという言説を推進する他の人々、戦争を促進する欧米ニュースネットワークに活用された。だがもし彼らが秘密裡に攻撃を実行していたなら、イランのテレビが、なぜ意図的に、このような撮影画像を欧米商業メディアに提供するだろう? 加えて、11人のロシア人、11人のフィリピン人とグルジヤ人で構成されるフロント・アルテア乗組員は、イラン沿岸警備隊に救助され、けがを治療され、帰路便のためバンダル・アバスに輸送された。

 約40年で初めての日本首相イラン訪問時の船に対する攻撃には、他に、よりそれらしい組織がある。例えば、彼らが日本や他のどの国に調停されるかにかかわらず、サウジアラビアと首長国とイスラエルは全て、ワシントンとテヘラン間のどんな会談にも反対だ。例えば、以前サウジアラビアは、トランプ政権とイランのでの調停者役をしようとすることに対し、激しくオマーンを激しく締めつけたことがある。

 皮肉にも、下院諜報委員会が、次回大統領選挙運動の「極端なフェイク・ビデオ」の脅迫に関する証拠を聴聞したまさに同じ日に、アメリカ中央司令部(CENTCOM)が、IRGCに属するボートが、コクカ・カレイジャス船側から不発の吸着型機雷を取り除いているのを示していると主張して、ぼやけた赤外線カメラ(FLIR)動画と写真を公表した。国防総省はイランの有責性の「証明」として動画を提供したのだ。だが、コクカ・カレイジャスを所有する企業、国華産業株式会社の堅田豊社長が、同社の船に対する攻撃が、機雷ではなく、「飛来した砲弾」によるものだ言って、国防総省がトランプ級の本格的なウソを言っているのがばれてしまった。機雷によるものとするには、爆発は喫水線の遥か上だと堅田社長は東京で報道機関に語った。

 ポンペオは報道機関に「地域で活動しているどの代理集団も、これほど高度な行動をするための資源や能力を持っていない」と言った。それも、もう1つの偽りだった。イスラエルはペルシャ湾水域で、常時パトロール中の、少なくとも1隻のドルフィン級ディーゼル電気潜水艦を維持している。これら潜水艦は、核弾頭ミサイルのみならず、コクカ・カレイジアス、フロント・アルテアに損害を与えられるポップアイ・ターボ巡航ミサイルを含め、通常ミサイルも装備している。ペルシャ湾のサウジアラビア艦船は、二隻の商業タンカーに損害を与えることが可能なハープーン地対地ミサイルで武装したバドル級コルベット艦と、サディク級哨戒艇で構成されている。UAE海軍のコルベット艦は、タンカーに損害を与えることが可能なエクゾセ空対地ミサイルで武装している。

 加えて、ボルトンとトランプの個人的な法律顧問ルドルフ・ジュリアーニが、ワシントンでその権益を代理しているテロ・カルト集団モジャーヘディーネ・ハルグ(MEK)は、サウジアラビアとバーレーンの支援を得て、ペルシャ湾岸に沿って、イランの標的に対するテロ攻撃を十二分に実行できることを示している。バーレーンは、アメリカとイギリスの海軍基地所在地でもある。MEKは、どの国も、イラン政府と関係を維持したり、対話したりすることに反対で、ボルトンやジュリアーニ同様、テヘランでの「政権交代」を追求している。トランプ政権は、IRGCにテロ組織とレッテルを貼っているが、MEKのテロリスト指定を中止し、それが自由に、ワシントンやニューヨークやロサンゼルスで活動するのを可能にしている。

 トランプと同じぐらい熟練したウソつきのポンペオは「地域で活動しているどの代理集団も、これほど高度な行動をするための資源や能力を持っていない」と言った。それは、もちろん、トランプランドのオーウェル風「ダブルスピーク」で反対を意味し、つまり、アメリカやイスラエルやサウジアラビアやUAEの支援を得たMEKは、これほど高度な行動をするための資源や能力を持っているのだ。

 個々の寄稿者の意見は、必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。

 記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2019/06/18/wagging-the-dog-while-lying-about-it/

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 ワグ・ザ・ドッグ、tail wag the dog、犬が尻尾を振るのではなく、尻尾が犬を振るという、「本末転倒」を表現する慣用句。この題名の映画、結構話題になったような気がするが、記憶がない。表題の訳が適切かどうかは見当がつかない。あしからず。

 今朝のIWJガイド題名も

日刊IWJガイド「ホルムズ海峡のタンカー攻撃で米国は新たな写真とともにイランの関与を主張! 日本政府内では米国の自作自演やイスラエルの関与を疑う声も!」 2019.6.19日号~No.2470号~(2019.6.19 8時00分)

 

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