我々の意識と誤った歴史認識を作り出すウソ
2019年5月9日
Paul Craig Roberts
私の世代は、ジョージ・オーウェルの『1984年』のようなディストピアといえば、言論が管理されていて、スターリンを批判すれは収容所に追いやられる国、ソ連を連想した。我々は、ここアメリカや、そこでの我々の生活は全く違うものだと考えていた。だが、時がたつにつれ、20世紀のソ連における生活と、今の欧米における生活の違いは見えなくなっている。現在、ジャーナリストのジュリアン・アサンジは、ソ連の反体制派が受けたのより酷くはないにせよ、同じような国家テロと拷問を受けている。欧米メディアは、印刷もTVも公共ラジオ放送も、政府と政府を支配する既得権益団体の宣伝省役を演じている状態で、ソ連のメディアと同じぐらい支配されている。Facebookやツイッターのようなソーシャル・メディアは、支配体制と、その方針を支持しない意見を表明する人々に対する場所提供を組織的に拒否している。メディアには、言論の自由の保障を実行する能力も意図もないのだから、憲法修正第1条による言論の自由の保障を一掃するのは簡単なのだ。
オーウェルのメモリー・ホールや歴史改竄を、架空、あるいは本物のディストピアでだけ結び付けたのは私の世代の間違いだった。ありとあらゆることが歴史改竄なのだ。我々は、それに気がつくほど知らなかっただけなのだ。生きて学んで、私が理解したのは、歴史は常に改竄されがちで、真実だと強く主張している歴史家たちは、その報いをうけているのだ。彼らは、支配者が喜ぶことを書いて、物質的恩恵を求める「宮廷歴史家」だったので、古代の歴史家の多くが当てにならないことは既に確立した事実だ。現代では、多くの歴史家は、資本主義兵器製造の利益のために犠牲にされた全ての息子、孫、兄弟、父親、叔父、夫、友人たちや、いとこを正当化し、過度に悪者にされた敵に対する輝かしい勝利の物語で大衆を魅了して、本の売り上げで収入を得るために書いている。発行人は、愛する家族の死の無意味さを、まざまざと描いた誰も買わないような本当の説明は欲しがらない。皆、あるいはほとんどが、彼らの死は高尚な目的のためで「価値はあった」と思いたいのだ。
ごくわずかの例外を除いて、英語話者の歴史家は、両世界大戦に対する責任をドイツのせいにした。これは歴史の改竄だ。第一次世界大戦、あるいは、当時は「大戦」あるいは「世界大戦」と呼ばれたものの最初の本当の歴史家はハリー・エルマー・バーンズだった。バーンズはスミス・カレッジの歴史社会学の教授で、コロンビア大学で、歴史でのウィリアム・ベイヤード・カッティング特別研究員だった。彼の著書『The Genesis of the World War(世界大戦の起源)』は1926年に、ニューヨークで、アルフレッド・A・クノップによって出版された。
予期されたように、連合軍のドイツに対する犯罪や裏切りを隠蔽する代わりに、バーンズは真実を語った。イギリスとロシア王室の親類であるドイツ皇帝は、ニューヨーク・タイムズによってその役割のために称賛され、世界中で和平調停者として知られていた。最後に動員したドイツは、動員するか、ドイツに対してイギリスと同盟しているロシアとフランスに侵略されるかのいずれかしかなくなるまで、ドイツ政府は平和の為に行動していたことは周知の明白な事実だ。歴史上、一番後に動員した国が、戦争を始めたとして非難されたことはかつて一度もなかった。だが事実は、決して宮廷歴史家の邪魔をしない。
戦争の起源は、1870年のフランス-プロイセン戦争でドイツに取られたアルザス-ロレーヌの領土に対するロシア皇帝のコンスタンチノープルの大臣2人と、フランス大統領の欲求だった。ドイツがオーストリア-ハンガリー帝国の保護者だったので、おそらく彼らが画策したセルビアでのオーストリア皇太子暗殺に対するオーストリアの回答を、この策士連中は戦争を宣言するために利用したのだ。
もしドイツが休戦に同意すれば、ドイツは領土を損失せず、賠償金もとらないと、アメリカのウッドロー・ウィルソン大統領が、ドイツに約束することで、無分別に何百万人もの命を奪った世界大戦の休戦協定を実現した。ドイツが休戦に同意したとき、対立する陣営の領域を占拠していたのはドイツだった。ドイツ領土には外国軍隊はいなかった。
ドイツが協定から離脱するとすぐ、イギリスは飢えたドイツに対して、ウィルソン大統領がしていたすべての約束を破る、搾取的なベルサイユ条約の受け入れを強いる食糧封鎖を実施した。
20世紀の最も有名な経済学者ジョン・メイナード・ケインズを含め一部の知的な人々が、誰が戦争を起こしたかに関するもみ消し行為であるベルサイユ条約は、未来の戦争を保証すると述べた。そして貪欲で不正な支配体制ではなく、彼らが正しかったのだ。
真実を告げる彼の努力ゆえに、ハリー・エルマー・バーンズは、偽歴史を書くよう金をもらったドイツの工作員だと宮廷歴史家連中に断言された。バーンズ説は人数的に全く劣勢でだったので、大戦の歴史は20世紀を通じて、大部分、偽のままだった。
2014年にケンブリッジ大学のクリストファー・クラークが『夢遊病者たち ――第一次世界大戦はいかにして始まったか』を出版して、バーンズは正当化された。クラークは大戦が、ロシア政府の2人の大臣とフランスの大統領による、皆が欲しがる領土をドイツとトルコから盗むための陰謀に起因したというバーンズの証拠を補強した。
だが戦争から百年たった今、気にかける人々がいるだろうか? 3人の邪悪な男の陰謀のせいで、戦争で亡くなった全ての人々も、つらい思いをした遺族も亡くなり、もはやいない。世界の意識は、一世紀にわたる虚偽の歴史、今度は第二次世界大戦で、再びドイツが、そのせいにさせられた虚偽の歴史によってゆがめられたのだ。
乞ご期待、第二次世界大戦についての嘘は一層壮大だ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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ロバーツ氏「世界戦争に邁進」で バーンズについて書いておられる。原文は、2014年3月28日。2014年3月31日に掲載した。記事題名で、映画『主戦場』を思い出した。
世界最大の属国、宗主国侵略戦争に直接派兵し、金も血も流すべく邁進している。ポチが名誉心で壊憲を強行するはずがない。ご主人の命令だ。理不尽な参戦に世論が反対するのを阻止するため、憲法を緊急事態条項で全権委任法に変え、ファシズム体制を整えようとしているだけ。
「団長は戦争でこの島を取り戻すことには賛成ですか? 反対ですか?」「戦争しないとどうしようもなくないですか?」という人物の元所属先、ISのようなものだという意見を拝見した。ローマ字でかけば、たしかにISで始まる。状況をひっくり返すため支配体制が作り出した過激派だという点で指摘は正しいだろう。体制が泳がせているのだから辞職させられないのだろうか。傀儡支配層の本音代弁にすぎない。
メディアには、言論の自由の保障を実行する能力も意図もないのだから、憲法による言論の自由の保障を一掃するのは簡単なのだ。
孫崎氏のメルマガ題名をコピーさせていただこう。
国会議員の「言論の自由」と日本維新の会の議員(発言当時)・丸山穂高氏の「戦争しないとどうしようもなくないですか?」発言。言論の自由と言っているが、憲法第二章で戦争の放棄、99条で国会議員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」。
会談記録であれ、統計であれ、なんであれ、ファシズム実現に不都合なものは隠蔽する。消して、見えなくする。日刊IWJガイドによれば、「辺野古新基地埋め立て現場の上空映像が撮影禁止になる!? ドローン規制法改正案が本日可決・成立の見込み」という。
日刊IWJガイド「辺野古新基地埋め立て現場の上空映像が撮影禁止になる!? ドローン規制法改正案が本日可決・成立の見込み!」 2019.5.17日号~No.2437号~(2019.5.17 8時00分)
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