他の湾岸諸国とは一味違うオマーン
2019年5月20日
Andre Vltchek
New Eastern Outlook
このかつての「隠者スルタン国」を訪れる全員が容易に証言することができる。オマーンは中東湾岸地域の他の国と「異なっている」。国民は暖かく、おしゃべりで誇り高い。オマーンはバーレーンやサウジアラビアより貧しいにもかかわらず、極端な不幸がないので、実際により豊かに思われる。国民は明らかに面倒をきちんと見てもらっている。
ラマダン中、サウジアラビアにいると、法外な食品の浪費や俗悪な富の見せびらかしのお祭り騒ぎが毎日のように行われる。オマーンはその代わりに、隣接するイエメンで子供たちを、静かに救おうとしている。
空港従業員のムハンマドが私に説明してくれた。
「我が国は隣接するイエメンに、いつも週二便を運行しています。ラマダン中、便数は増えます。我々の飛行機は重傷や重い病気の男性や女性や子供をオマーンに連れて来ます。ここで彼らは一流の無料の医療を受けます。彼らは我々自身の国民であるかのように、我々の医者は彼らの生命を救おうとしています。イエメンの人々は我々の兄弟です。」
過激なまでに反シーア派のサウジアラビア王国政権が、石器時代に戻そうとして、実際にイエメンの広大な地域に爆弾を投下しており、オーマンの隣国アラブ首長国連邦(UAE)が最も重要なアデン港を含めイエメンの沿岸地域を占拠していることを考えると、これは非常に衝撃的だ。
オマーンの良い点について、シリアには言うべきことは山ほどある。私はシリアのいたるところで称賛を聞いた。
逆に、オーマンの人々は概してシリア政府を称賛する。全員ではないが、確実に過半数が。オマーンはダマスカスとの外交関係を常に維持しており、合法的なシリア政権を不安定化したり、打倒しようとしたりする連合には一度も加入したことがない。この全てが、何年にもわたり欧米とイスラエルのため、何百万人ものシリア国民を残忍に扱った様々のテロ組織に資金を注ぎ支援してきた国、カタールやサウジアラビアと実に対照的だ。
*
オマーン領土には、いかなるアメリカやEUの軍事基地もない。オマーンは基地を必要としていない。オマーンは誰に対しても戦争をしておらず、地域のどの政府も打倒しようとしていない。戦略爆撃機や米海軍艦船や「米中央軍」の受け入れは、オマーン支配者が国の繁栄を保証するために望む方法ではない。
その代わりに、マスカット海岸近くに壮大なオペラ劇場が、そのすぐ隣に豪勢な公共の芸術殿堂がある。いくつかの豪奢な5つ星ホテルのすぐそばにもかかわらず、砂浜は公共のままだ。見たところオマーン支配者は音楽と芸術が好きだ。芸術や音楽が阻喪させられたり、「ハラーム(禁止)」と見なされて、露骨に禁止されたりするサウジアラビアのような国との衝撃的な対照だ。
私はオーマンの人々と話をして、彼らはその人生や、彼らの国が進展している方向に満足しているように思われた。
私はモスクを出て、男性たち(イスラム教スンニ派)の集団を止めて、現在アメリカからの差し迫った脅威に直面しているイランに対する彼らの感情と、スンニ派とシーア派の分裂について尋ねた。
シーア派は「我々の兄弟だ」と彼らは答えた。
「ここは、シーア派イスラム教徒を殺すサウジアラビアとはまったく違います。人々の大部分がシーア派なのに、酷い悪意で扱われ、しばしば全く不幸に暮らさなければならない、バーレーンとば全く違います。我々は区別せず、シーア派を差別しません。オマーンでは、異宗派間で結婚しますが、大仰なことではありません。時々我々は一緒に断食を終えて、お互いに贈り物をします。我々は隣人が困難に陥れば、お互いに助け合いますが、スンニ派かシーア派かは全く重要ではありません。」
この国のほとんどの人が、イランとその国民に対する大きな同情を感じている。
私の運転手は、テヘランとシラーズに九回旅行している。彼はイラン文化や、イランの人々の優しさと決意を称賛している。ワシントンにより課されている非合法な制裁なしに、彼らは自身の生活を送る完全な権利があると、彼は強く信じている。
礼拝者の団体も、シリアとその政府に、そして今、世界を作り直している二つの国に対して大きな称賛を示した。
「ロシアと中国がなければ、アメリカとその同盟国はとっくに我々全てを飲み込んでいたはずです。」
パレスチナ人に対する彼らの支持や、イスラエルの行動やアパルトヘイトに対する彼らの怒りは、他の湾岸諸国のような偽善的でも「理論的」でもなく、本物のように思われる。
前回訪問時さえ、オマーンで常に居心地良く感じるが、常に欧米に広められている世界的な狂気の時代に、今回私はこの広い心を持ち、世界的状況を素晴らしく理解している「忘れられたスルタン国」の智恵と優しさと礼儀正しさ大いに感銘を受けた。
*
これまで常に、オマーンはこのような優しい思いやり深い国だったわけではない。過去、そのイスラム戦士は、ソマリアから今のケニア、遥か先のタンザニアまで、アフリカ東海岸を植民地化し略奪した。ヨーロッパ人同様、オマーン人は奴隷貿易をしていた。
けれどもことは変化し、最終的にオマーンは内向性の国に変わり、何十年もの間そういうものであり続けた。それから、オマーンが「世界に開き」始めたとき、オマーンはそれ自身の条件で、外国の利害関係に従属せずに世界に開いたのだ。
オマーンのドゥクム港は、現在、イギリス艦船に理論的に「開いている」が、オマーンは周囲に位置しているサウジアラビアやカタールのようには、いかなる永久米軍基地も受け入れていない。
オマーンはイランと非常に親密な関係を維持しており、欧米からの圧力はこの現実を変えるのに成功していない。
そして今「世界」に対してオマーンは開かれているが、「世界」はもっぱら「欧米」を意味するわけではない。
もちろん、私の好みでは、まだ余りに多くのAFPや他の欧米報道機関や情報源による現地紙記事がある。オマーンの人々は欧米によって世界のあらゆる場所に注入されている「公式言説」の影響を受けずにはいられない。だがそれは話題のごく一部に過ぎない。オーマンの人々とつきあってみて、彼らが世界に関して、他の湾岸諸国よりよりずっと知識があることを私は悟った。
特に重要なことは、中国がオマーンの緊密な友好国、同盟者になっているということだ。この互恵関係は根付くだろう。
私の良い知人で湾岸に駐在している中国外交官が匿名を条件に語ってくれた。
「中国とオマーンは1,200年以上の深い友好関係があります。早くも西暦750年、偉大なオーマン人旅行家アブ・オベイドは中国の広州に旅して、中国・オマーン間の友好的交流と、中国文明社会とアラブ文明社会間交流の嚆矢となりました。」
驚くことに、それは欧米(ヨーロッパ)が、「周辺地域」の人々と同様、それ自身の人々を略奪し殺していた歴史的時期に起きていた。
2019年4月30日、オマーン・オブザーバー紙は、記事「一帯一路構築における重要なパートナーのスルタン国」で駐オマーン中国大使李凌冰女史にインタビューした:
李凌冰大使は、古代以来、一帯一路での二国間の伝統的な友好関係と、スルタン国の重要な役割を指摘して、一帯一路構想におけるサルタン国の重要な役割を強調した。
オマーンと中国は去年戦略的提携を発表し、一帯一路協力文書に署名した。オマーンは公式に「一帯一路」の友人の世界に加わったとマスカットの中国大使館で行われた記者会見で彼女は述べた。彼女はスルタン国と中国が長い歴史の伝統を共有しており、オマーンは重要な地理的位置を享受しており、「一帯一路」を構築に参加する上で、自然条件の優位性を持ったドゥクムやサララやソハールのような良い港があると指摘した。
オマーンは欧米に植民地化され略奪された地域の真ん中にある一つの「健全な」国であるように思える。オマーンの支配者は、ワシントンやロンドンやパリやテルアビブとの恥知らずな協力を通して少数に集まる途方もなく大きな富より自国民の幸福に一層興味を持っている。
オマーン国民で国連事務所地域責任者のハメド・アルハマミ博士によれば、「オマーンは多くの分裂がある地域では特別な場所です。我々は中立的な公正な役割を果たし、他人のことに干渉せず、自分の職分を守ります。我々はイエメンやシリアのように人道主義的見地からそうできる場合には、困窮している国や人々を支援します。」
オマーンは誰の植民地でもない。今中国と親しい。イランとも親しい。それは打ちのめされたイエメンの人々に手を貸し、シリアのために、できることをしている。オマーンは欧米とも、湾岸の他の国々とも友好関係を維持しており、誰の命令も受けない。オマーンは何十年間もこのようにして生き残ることに成功したのだ。
結果として、オマーンは中東の大部分の人々に好まれ、深く尊敬されている。
Andre Vltchekは哲学者、小説家、映画製作者で調査ジャーナリスト。彼は Vltchek’s World in Word and Imagesの創作者で、China and Ecological Civilizationを含め、多くの本を書ている作家。オンライン誌 「New Eastern Outlook」独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2019/05/20/oman-not-like-the-rest-of-the-gulf/
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昨年、偶然、興味深いドキュメンタリー番組を見た。『ザ・ノンフィクション』"アラブ王女の叔母"に密着 衝撃の事実が続々
今になって『興亡の世界史 シルクロードと唐帝国』(講談社学術文庫)を読んでいる。実に興味深い前書き。ところが最大ネット・ショップの星印、シリーズの他の本より少ない。読んでみると「書評」というより「中傷」、日本会議的歴史観を木っ端みじんに粉砕されていることへの鬱憤にしか思えない。映画『主戦場』そっくり。著者は教科書検定で日本の歴史教育が歪められていることを指摘している。日本会議による理不尽な番付など無意味だが、最大書店の評価は有象無象の声が直接反映されるひどい仕組み。著名人による「1431夜」と大違い。海のシルクロードという言葉もある。
大本営広報部の呆導番組は見ず、『ウラミズモ 奴隷選挙』を読み終えた。繰り返すが、ジャーナリズムのはずのものが虚報洗脳と化している中、フイクション小説が、ジャーナリズム活動をしているのだ。
次作予告編の中に、ウラミズモでは、過去の犯罪もさかのぼって追求でき、たとえば、TPP不報道罪、TPP不告知罪、TPP不当採決罪、TPP国家転覆罪、TPP国富海外流出罪、不正選挙罪、国会侮辱アホ発言棒読み罪等、がんがん創出した とある。そうあって欲しいもの。
念のため、巨大ネット書店の「書評」を見ると、想像通り、でたらめ酷評があった。日本語を読めない異常人物のたわごと。このエセ評価のために、全体評価が押し下げられている。著者が「アマゾンやグーグルーに日本で税を払わせる」というのは、実にごもっとも。この謀略巨大企業で、オンライン購入して儲けさせる心理、小生にはわからない。
これから、日刊IWJガイドを拝読する。
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