ウィキペディアにおける問題とデジタル革命
2019年4月11日
Paul Craig Roberts
昨日(2019年4月10日)ある読者が、ウィキペディア項目で私が「現在のロシア政府とその政策を声高に主張する支持者」として中傷されていると警告してくださった。読者は同様に、デイリー・ビースト記事が、私を「プーチン崇拝者」と呼んでいると教えてくださった。読者はウィキペディア項目を編集しようとしたがうまくゆかず、それで彼は、それに注意するよう私に促してくださったのだと言う。
私にはウィキペディア項目を書いた人物が私を中傷するつもりだったのか、知らなかっただけなのかどうかはわからない。だが反体制意見はウィキペディア上で誹謗される。それは我々の多くにとって進行中の問題だ。何年も、読者や私を知っている人々が、ウィキペディアの私の記述を訂正されているが、訂正されるとすぐ消され、中傷が復活する。
ウィキペディアの問題は、選り抜きの専門家や集団が説明するより、誰でも発言できる時の方が、真実が現れる可能性が高いという信念に基づく理想主義の手法であることだ。この理想主義手法には利点がないわけではない。イデオロギー的な敵がなく、言説を支配するのに懸命な連中にとって脅威でない話題や人々の場合には、大変うまく機能するかもしれない。
問題は、もし人や話題が議論の的の、特に公式説明の誤りを立証したり、体制と意見を異にしたりするとそうなる。我々が暮らしている「マトリックス」では、本当のことを言う人は、自分たちの狙いを推進するため言説を支配している連中に歓迎されない。本当のことを言う人は沈黙させられるか、完全に非難され、そうした人々の信用は中傷で失墜させる慣習になっている。それで、私や多くの他の人たちは、9/11に関する公式の証明されていない説明を否定する事実情報を提供すると「陰謀論者」だ、イスラエルによるパレスチナ人虐待や、アメリカ外交政策への影響力を非難すると、反ユダヤ主義者だ、ウクライナやシリアや、欧米で軍事衝突を回避するプーチンの努力について誤解を招かぬよう、はっきりさせると、「ロシアの工作員」あるいは「プーチンの手先」だと非難される。
インターネット前の時代、人々を中傷するのは難しかった。新聞編集者は、事実の間違いを修正したり、事実の集合に対して異なる解釈を提供したりする投書は受け入れたが、中傷は避けた。これは中傷が決して起きなかったことを意味しないが、インターネット時代ほど奔放ではなかったのだ。
ウィキペディアやインターネットのコメント欄やソーシャル・メディアは、いかなる訂正より先に、人を中傷し、世界中に中傷を広めるのに理想的にびったりだ。だからデジタル革命は、CIAや国務省やモサドのような行政機関や、イスラエル圧力団体や、企業や私的既得権益利益団体、ネオコンのようなイデオロギー活動やアイデンティティ政治や言説の支配で推進したい狙いを持っている政治家にとって天のたまものだった。
多くの人々にとっては金が最高の価値なので、公式説明に異論をさしはさむ人々を中傷するために雇われる人々の供給は無限だ。中傷はコメント欄からを始めることができ、更に、ソーシャル・メディア、更にウェブサイトやウィキペディア上へと広がる。
ジュリアン・アサンジやエドワード・スノーデンやマニングのような真実を語る人々や、その発言が、強力な民間や政府の既得権益に不都合な内部告発者が中傷されるのだ。
中傷は効果的だ。真に受けやすい、情報を良く知らないか、誤った情報を与えられた人々はあふれている。彼らは中傷を額面通りに信用し、中傷された人や考え方を避ける。ジュリアン・アサンジの迫害が画策されているのが実に明快なのにもかかわらず、多くの人々が、彼を「裁判官から逃れているレイプ犯人」や「ロシアのスパイ」や「政府や人々に対するゆすり」と見ている。
要するに、泥の方が事実より良くはり付くのだ。それがデジタル時代における真実の未来に対して、私が楽観的ではない理由だ。多くの人々はデジタル時代を、真実が栄える時代と見ている。私は彼らの考えは理解する。彼らの信念に事実がないわけではない。だがデジタル時代は、印刷時代と異なり、ウソを実に容易に広めることができるので、ウソが繁栄できる時代でもあるのだ。
例えば、私に対する記述「現在のロシア政府とその政策を声高に主張する支持者」や「プーチン崇拝者」をお考え願いたい。私はロシア政府のネオリベ経済政策に対する良く知られた批判者だ。マイケル・ハドソンと私は共同でロシア政府のネオリベ経済政策を批判し、それがロシア経済に有害であることを明示した。ワシントンやイスラエルの侵略に対して、もう一つの頬を向けるプーチンの政策に対する懐疑論者として知られている。私はプーチンの壮大な自制心を正当に評価し称賛するが、プーチンの断固とした態度を取る気のなさが、激怒を退け損ね、逆に、遅かれ早かれ熱核戦争をもたらすような更に多くの攻撃を促してしまうという懸念を私は表明している。
ロシア政府は私にしばしばインタビューするロシア・マスコミと同様、私の立場に気が付いている。私の立場は国際的に読まれている私のウェブサイトでも明らかにしている。デイリー・ビーストやウィキペディアはなぜ私の立場を曲解して伝えるのだろう?
発言者がきちんと責任を取る人々で、しかも彼らが見識ある監督者に慎重に監督されている場合に限りウィキペディアやコメント欄はうまく機能する。だがそれではウィキペディアがそれを避けるべく作られた「同業者による審査を受けた記事」に戻ってしまう。
歴史的に使者は殺され、真実を語る人々は中傷を予想しなければならず、あるいはもっと酷くて、ジュリアン・アサンジはロンドンのエクアドル大使館で今朝逮捕された。人類は劣化している。政府が悪事を働く。悪に抵抗する人々に対して、最悪のことが行われる。真実は、真実を話す人物の犠牲なしでは語ることができないのだ。
私が真実を語る人々について語る際、私はその動機が真実を語ることである人々について語っている。真実が彼らの狙いなのだ。私は真実を語る人々が絶対に間違うことがなく、常に正しいと言っているわけではない。私は彼らがそうであろうと努力していると言っているのだ。彼らは意図的にウソを書いたり、人を欺いたりはしない。
真実は意見ではない。真実を語る人々に、自分は意見が違うと言っても無意味だ。彼らの事実は間違っているという反論することは可能だ。もっと良い事実の説明があると反論することはできる。
私の経験で、意見が違うと言う際、たいていの人々は、彼らは彼らの感覚や感情により合った別の説明をより好むことを意味している。例えば、率直なイスラム教徒女性の議員に対して使えるので、今、保守的なラジオ番組が、9/11事件の公式説明を採用したのと全く同じように、彼らはトランプが嫌いなので、多くのアメリカ人は途方もないロシアゲートのうそを信じたのだ。事実は、信念がどういうものかとは全く関係ない。いずれの場合も、真実では気持ちが安らがないか、ウソにすれば当面の狙いに役立つので、事実は抵抗を受けるのだ。
私はウィキペディアで私について書かれた記事を読者が監視し、修正しようと試みるのには決して反対しない。それは継続するプロセスで、多くの読者の献身が必要だろう。私に対する攻撃の背後の連中は多くの金があって、多くの人を雇っており、読者が作業を終えるやいなや、連中が読者の作業を消去できるのだ。
デジタル革命と、その制御機構は、我々がディストピアに陥る見込みは、印刷時代に可能であったより遥かに高い。だがデジタル革命は、多分人間性に対するさらに大きな脅威を意味している。それは人を解雇するのだ。
人はすべてが自動化された場合、一体何をすべきだろう? もし技術ばかが好き勝手にすれば、我々はまもなく自動車運転を許されなくなるだろう。
人は労働の必要がない時、何をするのだろう? マサチューセッツ州ウォルサムの企業ボストン・ダイナミックスは倉庫労働者に取って代わるロボットを考え出した。予測では、今後10年にわたり、4000万人以上のアメリカ人がロボットによって労働力から押し出される。
誰が雇用されていて、ロボットによる製品を購入する金を持っているかについて誰か考えたのだろうか? 我々が海外移転された製造や専門サービス職に代わるものを約束されたように、我々はあらゆる類の新しい、より良い仕事を約束されることに疑いはない。約束された仕事は決して現れなかった。これは技術革新反対論ではない。ロボットが人に取って代わるようにする設計のために全員が雇用されるわけにはゆかないのだ。
どの倉庫も利益を増やそうとして急いで従業員を解雇し、倉庫内の製品に対する個人消費に対する集約的効果は誰も考えないだろう。倉庫は失業者を支援するために、彼らが得た利益を税金で返さなければならないのだろうか? もし倉庫内の製品を買うための、仕事から得る収入が人々になければ、倉庫は利益を得られるのだろうか? ロボット時代には、人命維持のため、利益は社会化されなければならないことを意味するのだろか?
技術に対する知的な方法は、人の必要を排除する技術でなく、人の能力を高める技術に焦点を合わせることだろう。
話者が話しているものと違う発言内容を放送するため、話をする際に、人の口の動きを、リアルタイムで変更することを可能にする技術が、スタンフォード大学で実現したか、実現しつつある。この技術で可能になる悪事は許容できない。テレビは、人が自分を破滅させるよう意図されたことを話しているのを見せることで、歓迎されないどの政治家や指導者も破滅させることができるのだ。もし人々がそれを理解すれば、誰も自分が出席していない演説は信じないだろうから、それはテレビで放映される演説の終わりを意味するだろう。
人々は既に現実を理解することが困難であることに気がついている。リアルタイムで現実を改ざんできる技術の出現は、事実と虚構が識別できなくなる未来の前兆だ。この技術の意図しない結果は、真実の死だろう。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2019/04/11/the-problem-with-wikipedia-and-the-digital-revolution/
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大本営広報部「安倍政治の支持者は4人に1人しかいない現実」を伝えず隠すのが仕事。
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