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2019年3月 7日 (木)

夢想の国の安倍首相:日露平和条約の可能性に関するセルゲイ・ラブロフ外務大臣発言

ギルバート・ドクトロウ
2019年2月24日

 通常ロシアの日曜日は、大半の欧米の日曜日と同様、ニュースのない日だ。ところが、今日モスクワはその規則を破り、ロシア観察者にとって、二つの極めて重要な国際問題の展開を示したのだ。一つは、日本に関して本記事で、もう一つは今日後刻別記事で分析するが、INF条約終了がロシアの軍事政策にとって意味すること、つまり、アメリカが近い将来、先制攻撃という聖杯に手を出して、アメリカに対する攻撃能力を除去することだ。

 これら二つの進展の共通点は、非常に厳しいメッセージがどのように伝えられたかだ。長年にわたる安倍晋三首相の平和条約への期待に対する決定的打撃は、ウラジーミル・プーチン大統領によってではなく、側近の一員、セルゲイ・ラブロフ外務大臣によって、INF条約終了後のロシア武器開発計画の詳細説明に関しては、ロシア通信社ロシア・セヴォードニャ社長のドミトリー・キセリョーフによって。

 ラブロフがメッセージ伝達役を引き受けた。

 被害が大きい制裁をロシアに課し、個人的に、彼の国に対して彼に対して情報戦争を行うけれども、我々に話をするとき、アメリカとヨーロッパが戦争が可能だ疑って納得させられた回数はプーチンの非常に紳士的な態度と穏やかな言葉のために可能であると何度となく私は述べている言った。

 わずか数週間前、私は彼に、元ソ連書記長ニキータ・フルシチョフのやり方で、時折テーブルを叩いて、我々自身を奮起させるよう、我々の適切な注目を得て、我々の現在の政策がモスクワとの核対立に導く前に、我々のマスコミと政治支配層的に進路を修正することを要求するよう、私はしきりに促した。

 実際、ロシア連邦議会での最近の年次教書演説で、ウラジーミル・プーチン大統領は、より強硬な路線を語ったが詳細は語らなかった。彼はテディ・ルーズベルトの格言の実践者なのだ。「穏やかに話せ、だが大きな棍棒を持って。」

 だが、プーチンがしたのは、大統領として彼自身では言えないことを言う権限を彼の側近に与えることだ。

 その関係で、ここでロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣への注意を喚起したい。ラブロフ外務大臣は常に上司の命令を受けてきた。最初の任期二期で直接プーチンに報告していた間、彼は強硬姿勢をとっていた。ドミトリー・メドベージェフ大統領の任期中報告していた際、ラブロフは欧米に対して非常に寛容だった。そして今、特にここ二週間、ラブロフは欧米に敵意をむき出しにした。

 一週間前、ミュンヘン安全保障会議で、彼のQ&Aの際にそれを目にした。海洋管理協議会MSCのイシンガー議長は、シリアの責任を引き受けたロシアを慶賀し、クレムリンが、どのようにアサドが自国民に対し、これ以上の大虐殺を犯すのを阻止するつもりか尋ねるワシントン・ポスト記者の典型的に陰険な「質問」をぶつけた。ラブロフは一瞬もためらわなかった。ラブロフは、私が何と言おうと、ジャーナリストは書きたいことを書くだろうから、そうすれば良いと言って、質問を無視した。

 応酬はモスクワの視聴者を喜ばせ、次の二日間、ロシア・マスコミで報じられた海洋管理協議会の主な話題だった。ペンス副大統領とアンゲラ・メルケル首相の間の冷ややかなやり取りは、欧米による言葉の侵略に対し、自国政府が反撃するのを見て大いに喜んだロシア人によって、さほど重要ではないとみなされたのだ。

 セルゲイ・ラブロフの今日のニュースは、ロシアとの平和条約はすぐにも実現可能だと徹底的に固執し、ロシアの堪忍袋の緒を完全に切った安倍晋三首相に対する効果的な嫌がらせだ。安倍首相の話を聞いていると、南千島列島を日本に返す平和条約文書の点線の上に署名するため、友好的な1対1でのサミットで、もう一杯の酒のグラスを献じるべく、友人ウラジーミルをもう少しのおだてるだけで良いと想定するだろう。東京によれば、ロシアは日本が1945年以来の島の占領に対す賠償金を求めないことを喜ぶべきなのだ。

 昨年秋、ウラジオストクでの東方経済フォーラムで、名誉ある賓客としての安倍首相プレゼンテーションについて、日本の首相は仲間外れで、基調演説者の中で彼だけ、日本が技術的、経済的な原動力で、ロシア(ソ連)が沈滞して貧しかった1970年代と80年代に立ち返った条件で協力を説明した、と私は書いた。

 韓国、中国、モンゴルは、全て等しく両国関係者に奉仕する内容で、ロシアと自国の相互関係を強調するプレゼンテーションを行った。日本に千島列島を譲与すれば、東京とアメリカ軍の連合が世界ミサイル防衛システムで、アメリカ基地をそこに配置して、ロシア包囲を更に拡張するのに使われれば、ロシア国家安全保障を危険な状況に陥れるというロシアの実存的関心事を安倍首相はいかなる形でも取り上げなかった。

http://www.mid.ru/ru/foreign_policy/news/-/asset_publisher/cKNonkJE02Bw/content/id/3540803を参照。小生の日本語訳、ロシア東方経済フォーラムで大恥をかいた安倍首相

 中国とインド外務大臣との共同会談のためのハノイ訪問と、それに続く中国訪問に先立ち、今日まさしくロシア-ベトナム関係から始まり、更に広範に、アジア諸国との関係、長いテレビ・インタビューの最後にラブロフの日露関係発言がなされた。インタビューは様々な範囲の問題をカバーしたが、アメリカ-ロシア関係が際立ち、多分3分の1の時間が当てられていた。私に言わせれば、日露関係でインタビューは終わった。

 そして特に、日本の問題と平和条約を含め、言及した全ての話題で、ラブロフは、いかなる外交的な曖昧さもなく、簡潔で荘重な透明度で語った。私は今日ロシア外務省ウェブサイトにロシア語で掲載された書き起こしの私による翻訳を以下にあげておく。

http://www.mid.ru/ru/foreign_policy/news/-/asset_publisher/cKNonkJE02Bw/content/id/3540803

    「2019年2月24日、ベトナム・テレビと、中国のテレビ局CTVとフェニックスに対するロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣インタビュー

    質問:日本側は、この6月のロシアのウラジーミル・プーチン大統領日本訪問時に、両国が平和条約に関する枠組み協定に署名するだろうという希望を表明しました。あなたはこの計画が実現され得るとお考えですか? さらにアメリカ・ミサイル防衛システムを設置する日本の計画は、ロシア側にとって重要課題の一つです。あなたは外交努力でこの脅威を取り除くことができると思われますか?

    ラブロフ: ウラジーミル・プーチン大統領のG-20サミット参加のための日本訪問に関し、安倍首相と次の定例会談を行うことに対する計画を持っているという日本側の発表については、彼らの良心にまかせよう。

    いかなる問題に関しても、いかなる人為的期限の締約国ではないのだから、このようないかなる合意にも至っておらず、合意できたはずもない。 我々は繰り返し日本の皆様にこれを説明している。

    私が最近の説明はそれほど昔ではなく、ミュンヘンで、その時私は河野外務大臣と会った。しかも、今まで誰もいかなる枠組み合意草稿も見たことがない。我々の隣人日本が一体何を心に思い描いているか私は知らない。

    第二に、我々の立場は非常に単純だ。複雑な問題を解決するには、適当な雰囲気のみならず、経済、政治、国際関係で本当の中身を保証しなければならない。我々が現実の状況を見ると、安倍首相は議会で、彼は絶対に日本の条件で、平和条約問題を解決する計画だと語っている。正直に言って、彼がどのようにこの確信に至ったのか私は知らない。

    ウラジミール・プーチン大統領も私も他の露日協議に参加している人々の誰も日本の同僚に、このような声明のいかなる基盤も示していない。シンガポールで、G-20首脳会議の際に、ウラジーミル・プーチン大統領と安倍晋三首相が、1956年宣言をもとに、平和条約の作業を速めることが必要だと言った事実は、逆のことを示している。我々は日本の条件の上でではなく、この文書の条件で対話を行っている。それにはこう明らかに書かれている。まず平和条約を締結する。

    そしてこれは私が何度も言った通り、日本の隣人は全ての千島列島に対するロシア連邦の主権を含め、第二世界大戦の結果を丸ごと認めるのが必要なことを意味している。

    日本の同僚が、国連憲章で定められている形で、第二世界大戦の結果に同意することを望まないのは、むしろ奇妙だ。憲章は戦勝国に行われた全てのことには議論の余地はないと述べている。

    たとえ日本がこの地域に関して、サンフランシスコ講和条約や、他の文書について彼ら自身の解釈があるとしても、彼らは国連憲章を批准している。批准したことを無効にするのは適切ではない。それはうまくいかないだろう。

    更に概括的に言えば、まず、新しい質の関係を作る合意があった。おそらく日本は、ロシア連邦に対する制裁の全てではなくとも、あらゆる種類の制裁に参加している。これは到底友好的な姿勢と考えることはできない。国連で、ロシアに対する全ての決議で、日本はアメリカと連帯して投票している。ロシア連邦によって提案された案についての投票となると反対か棄権だ。一般に日本は国連における立場をワシントンと調整している。

    我々は日本が他の国々と協力するのに反対しないが、当然アメリカは、中国とならんで、ロシアを主敵と呼んでいる。

    質問:日本に対するアメリカの影響力を感じておられますか?

    ラブロフ:そのような影響力がどの程度あるのか私は知らないが、確かにこれは論じられている。最近、5月末、ドナルド・トランプ大統領が日本を訪問する予定だと発表された。交渉の話題の一つは、ロシア連邦との平和条約の問題だろう。もし、これほどまで、日本の独立の欠如が示されるなら、私が付け加えるべきものは皆無だ。

    日本がアメリカと軍事的に同盟している事実も大きな要因だ。アメリカは、日本のどこであれ、アメリカ軍を配置する権利を持っており、既にロシアと中華人共和国に危険を引き起こす彼らのミサイル防衛システムを設置している(我々は繰り返し、これについて話している)。

    繰り返そう。アメリカが我々を主な敵だと宣言している中で、これが起きているのだ。表明された目的と違って、これは我々の関係を改善せず、大いに悪化させることを、我々が見なければ大変な間違いだ。

    我々は隣人と対話を続ける用意ができている。我々は大いに有望だと考えている。我々は非常に良い文化的、人道的協力を行っている。日本におけるロシア文化フェスティバル「ロシアの季節」は大いに人気がある。いくつか、とても良い共同経済プロジェクトも行っている。けれどもこれは決してロシア連邦のみに有利な活動ではない。これらは日本企業が関心を持っているプロジェクトだ。

    企業はロシア経済に大いに興味を持っているはずだが、私の理解では、公式の方針に抑制されている。講和条約が日本の条件で調印されれば、即座に、日本からの投資というの形で天からの贈り物をしてくれるという信号を我々は時折受ける。我々はそれに同意しているわけではない。

    最後に、我々がどのように関係を改善する必要があるかに関する合意の中には、お互いの世論で好印象を作り上げる必要性がある。長年、ロシア-日本合意で書き留められているように、平和条約に関する決定は、両国民に支えられものであるべきだ。

    だが日本で「北方領土」と「不法占拠」という言葉が、教科書のみならず、省庁の活動を裏付ける多くの政府文書に載っているのを見ると、まさに逆反対に働いている。

    御存じの通り、最近、日本政府は望んでいる結果をほぼ実現しつつあるという考えを公式に大いに語っている。これがロシアで引き起こしている反応を見れば、我々の日本の同僚が、この解決で、我々に彼らの意見を押し付けようとする形で行動することがどれだけ間違っているかを世論調査が示していることがわかるだろう。さらに彼らは賠償金を求めないことを約束している。

    今年2月20日、ウラジーミル・プーチン大統領が連邦議会演説で述べたように、我々は込み入った作業を続け、両国民に受け入れられるであろう平和条約の、このような問題の解決のための条件を引き出すことを可能にする協定で結果を達成するつもりだ。当面は、これらの条件はまったく欠如している。

記事原文のurl:https://gilbertdoctorow.com/2019/02/24/shinzo-abe-in-cloud-cuckoo-land-russian-foreign-minister-sergei-lavrov-on-the-chances-for-a-japanese-russian-peace-treaty/

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 矢部宏治氏新刊『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読み始めた。何と、本の内容全文が英語に翻訳されて公開されているのだ。http://visionrj.com/?p=736
 日本が実質的にアメリカ軍支配下にある事実が世界中の人々に分かってしまう。ロシア外務省も、当然矢部宏治氏の書籍や、この英語訳を読んでいるだろう。残念ながら、ラブロフ外相の発言がおかしのではななく、的確な批判に正面から答えられない傀儡政治家や大本営広報部がおかしいのは明らか。

 「マヨネーズに埋没する安倍首相の沖縄基地計画」という英文記事がある。これもロシア当局は読んでいるだろう。

Abe's Military Base Plan for Okinawa Sinking in Mayonnaise: Implications for the U.S. Court and IUCN

 ラブロフ外相がワシントン・ポスト記者の愚問を切って捨てたことは、例えば下記記事にある。

https://sputniknews.com/russia/201902171072499444-lavrov-journo-assad/

 昨日の国会中継もひどかった。意図的に隠蔽したか直接質問していない委員長。にやにや笑いながら野党質問をおちょくる法制局番犬。なんとも下劣な属国支配層。

 ハーバー・ビジネス・オンラインに上西充子教授記事がある。
小川淳也議員による根本大臣不信任決議案趣旨弁明を悪意ある切り取り編集で貶めたNHK

 大政翼賛会そのもの。呆導機関。今日は、彼のインタビューが拝聴できる。

 日刊IWJガイド「本日午前11時30分より、岩上安身による立憲民主党・無所属フォーラムの小川淳也衆議院議員インタビューを、全編フルオープン配信!」 2019.3.7日号~No.2366号~(2019.3.7 8時00分)

 インタビューは、公共性と公益性に鑑みて全編フルオープンで配信します! ぜひ、以下のURLからご覧ください!

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【IWJ_Youtube Live】11:30~「統計不正問題の本質は『アベノミクス偽装』!成長信仰の掛け声は選挙のためのウソ!~岩上安身による会派『立憲民主党・無所属フォーラム』小川淳也衆議院議員インタビュー」
YouTube視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501
ツイキャス視聴URL: http://twitcasting.tv/iwakamiyasumi
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