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2019年3月 9日 (土)

メイン号を忘れるな。ベネズエラでのCIA介入

2019年3月1日
デイビッド・ローゼン
CounterPunch

 1897年1月、旧西部の画で有名な19世紀の画家フレデリック・レミントンは、キューバに対するスペインの残虐行為をウィリアム・ランドルフ・ハーストのニューヨーク・ジャーナルのために描く仕事でハバナに滞在していた。彼はハーストにこう電報を送った。「万事穏やかだ。問題はない。戦争はないだろう。私は帰りたい。」ハーストが答えた。「滞在していて欲しい。君は画を提供し、私は戦争を提供する。」

 一年後の1898年2月15日、戦艦メイン号がハバナ港で謎めいた爆発をした。ウィリアム・マッキンリー大統領はアメリカとスペインの間で高まる緊張を観察するために1月25日に戦艦をハバナに送られるよう命令した。爆発で、乗組員354人のうち、268人が死亡し、アメリカ国民に衝撃を与えた。

 アメリカ報道機関は見出しで「スペインの背信行為!」「戦艦メインの破壊は敵の仕業だ!」と宣言して激怒した。ハーストとジャーナルは「メイン暴挙の犯人発見」のために50,000ドルの賞金を提供した。「メインを忘れるな、スペインにはうんざりだ!」がスローガンになった。

 今日に至るまで、何が爆発を起こしたか誰も知らない。最初の報告は、船は機雷で沈没したと主張した。後の調査、1911年のものと、1974年のものは、炭塵爆発だったという仮説をたてた。それでも、人々は破壊活動だったと信じ、一部の人々は、新聞の読者を増やすためのハーストによる秘密の仕業だったと憶測した。

 マッキンリー大統領がスペインとの平和を維持しようと努める一方、セオドア・ルーズベルト海軍次官が主戦派を率いた。彼は強く主張した「戦争がおきなければならないなら、戦争を起こさせよう。私はむしろ戦争が間もなくおきることを望む。平和派の叫び声は、この国が戦争を必要としていることを私に確信させた。」

 1898年4月21日、アメリカはスペインに戦争を宣言した。アメリカとスペイン間の外交関係破綻を加速した挑発、メイン号沈没が戦前の緊張を頂点に至らせた。戦争は10週続き、アメリカが勝利した。アメリカはキューバ(いまだにグアンタナモ湾を支配しているが)を一時的に支配し、フィリピン(1946年まで)支配と、プエルトリコとグアムの進行中の支配を勝ち取った。挑発は機能し得るのだ。

* * *

 ベネズエラでマドゥロ政権を打倒する作戦で多分CIAが演じた、多分演じ続けるだろう全体的な役割を、アメリカ人は決して知ることはないだろう。(「国家安全保障」という主張が真実を隠すために使われる。)  トランプ政権の悪のトロイカ、マイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン国家安全保障補佐官は、マドゥロ政府征服をたくらんでいるように思われる。もっと酷いことではななくとも、ベネズエラを不安定にすべく、アメリカ軍産複合体の他の政府機関とともに、CIAがリクルートされていると想定可能だ。そう考えれば、ベネズエラ国内クーデター、あるいはアメリカ軍事介入を合法化するため、もう一つのメイン号沈没のような挑発行為が画策されるのではないかと想像できる。

 1823年に、ジェイムズ・モンロー大統領が「モンロー主義」として知られるようになった声明を出して以来、アメリカは地球全体で数え切れない国の事件に積極的に介入した。1946年の設立以来、特に中南米とカリブ海で、不安定化キャンペーンあるいは徹底的クーデターを通して、アメリカ介入で、CIAは重要な役割を果たしてきた。

 1954年から2002年の間の,一ダース余りのCIA介入を見直しは、ベネズエラで一体何が展開しているかもしれないかの示唆に富んでいる。

 グアテマラ、1954年 - CIAはユナイテッド・フルーツ社を支持し、ハコボ・アルベンス大統領に対し、いわゆるPBSuccess作戦を開始し、グアテマラ市に爆弾を投下した。

 ハイチ、1959年 - CIAは傀儡独裁者フランソワ・デュヴァリエを打倒するための大衆運動を止めるため介入した。ある報告によれば「100,000人以上の人々が殺害された」。

 ブラジル、1964年 - CIAはアメリカ多国籍企業に課税すると脅した民主的に選出されたジョアオ・ゴラール大統領に対するクーデターを支持した。

 ウルグアイ、1969年 - CIA工作員ダン・ミトリオーネはオペレーション・コンドルの一部として治安部隊に拷問を教え込んだ。CIAは軍事独裁政権を据えたフアン・マリア・ボルダベリーが率いたクーデターを後押しした。

 キューバ、1961年 -1959年のキューバ革命のあとの、 CIAに支援された亡命キューバ人による失敗したピッグズ湾侵略を監督した。フィデル・カストロを殺害するCIAの再三の試みが失敗した。

 ボリビア、1971年 - CIAはフアン・ホセ・トレス大将に対するクーデターを画策し、猛烈な独裁を押し付けたウゴ・バンセルを据えた。

 チリ、1973年 - CIAは、サルバドール・アレンデ大統領に対するアウグスト・ピノチェト大将のクーデターを支持し、17年続く独裁を押し付けた。

 アルゼンチン、1976年 - CIAは、ペロン主義者を打倒する汚い戦争の一環として、クーデターで、ホルヘ・ラファエル・ビデーラ大将を就任させた。

 エルサルバドル、1979年 - CIAは、オスカル・ロメロ大司教(1980年2月)と4人のアメリカ人修道女(1980年12月)の暗殺で頂点に達した大衆反乱を恐れて、1979年のクーデターを支持し、1984年、CIAはホセ・ドゥラテ選挙運動の資金を調達した。

 グレナダ、1983年 - CIAは、1981年にマルクス主義政府を不安定にする取り組みを始め、83年、約1,000人のアメリカ人学生を守るという口実で、アメリカ海兵隊員がこの島を侵入するに至った。

 パナマ、1989年 - CIAは長年の工作要員で麻薬密売者マニュエル・ノリエガを打倒するために「大義名分」作戦を計画し、一般人3,500人を殺害した。

 ペルー、1990年 - CIAは、自ら国家情報院局長と命名し直し、議会を解散して、最高裁判所裁判官を閉じ込めたアルベルト・フジモリの大統領選挙を支援した。

 ベネズエラ、2002年 - CIAは、クーデターの企てで、ウゴ・チャベス大統領を短期間退位させた反乱派陸軍士官連中を支持した。

 CIAは同様に、地域で、多数の他の政治、軍事作戦に関係していた。

* * *

 2月15日、アメリカは、メイン号沈没の121周年を迎えた。以来、アメリカは世界中の国々で、多数の軍事、政治干渉に関与した。1947年に創設されて以来、CIAは外国干渉の主要な連邦組織で、ベネズエラ不安定化でも重要な役割を演じている可能性が高い。ベネズエラにおけるCIの役割について情報はほとんど報じられていないが、示唆に富むうわさが広がっている。

 今月早々、ベネズエラのバレンシアで政府当局に差し押さえられたマイアミ国際空港からの21便の空輸貨物機が、反マドゥロ勢力向けの可能性が高い、19丁のライフル銃、望遠鏡つき照準や、無線アンテナや他の物質を輸送していた。航空会社は搭載していたもののすべてを知らなかったと主張した。便をチャーターした企業のGPS-エアは、同社が武器を送ったといういかなる主張もはねつけた。「銃を[マイアミ]空港から送ろうとするのはばか者だけだ」とGP-エアの貨物輸出マネージャー、セザール・メネセスが語ったとマクラッチーが報じた。

 去年、CIAがマドゥロ大統領暗殺未遂に関係していたといううわさが広がった。2018年2月にテレビ放送演説をしていた際、爆発で催しが中断し、マドゥロは後に「私は[コロンビア大統領]フアン・マニュエル・サントスがこの攻撃の黒幕であるのに疑いを持っていない。」と述べ、コロンビアに攻撃の責任があるとした。トランプ補佐官ボルトンは、フォックス・ニュースで「私はこれにはアメリカ政府が関与していないと実にはっきり言うことができる。」と強く主張し、いかなるアメリカの関与も否定した。

 アメリカの軍・諜報機構、特にCIAがベネズエラ政府転覆工作で果たしている役割をアメリカ国民が知ることはありそうにない。キューバやパナマやグレナダのような壮大な古い感覚の直接軍事介入はありそうもないように思える。不幸にして、おそらく悪のトロイカ、ペンスとポンペオとボルトンは、メイン沈没に似た挑発事件をたくらんでいる。

記事原文のurl:https://www.counterpunch.org/2019/03/01/remember-the-maine-cia-intervention-in-venezuela/

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 ベネズエラ大都市で停電。カラカスでは帰宅時の地下鉄が停止し、膨大な人数が歩いて帰宅という。大統領は、アメリカの妨害工作と非難している。

 国営与党洗脳放送局、「ニュース」なるものは極力見ないが、311が近づいて、洗脳「ニュース」とは大分違うドキュメンタリーが放送されている。

 属国の傀儡売国政党も官僚もおぞましいほど劣化しているが、お手本である宗主国の議会も十分ひどい。

 下院で、オマール下院議員のまともなイスラエル批判を封じるための反ユダヤ決議が画策された。数日前のデモクラシーナウの下記インタビューでは、決議案投票が、無期限延期されたと日本語説明にある。  (インタビューは当然英語)

 米議会では長い間 米・イスラエル関係に疑問を呈することが許されなかったが それは変化しつつある。


 決議案強行成立したと別の新記事にある。下記は、ハーレツと、Press TVのもの。

House Passes Resolution Denouncing anti-Semitism Triggered by Ilhan Omar Comments

US House passes broad anti-hate bill after pressure from allies of Muslim congresswoman


 属国「マスコミ」には、それらしい記事、見当たらない。昼の痴呆番組、話題はゴーン釈放と過剰覚醒剤による女性死亡が主要話題。いつもの阿呆連中がはやし立てる。属国の国政崩壊は全く放置して。

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コメント

米軍によるべネスエラへの軍事介入はあるのか?

2月27日収録の映像(YouTube)で元共同通信社の,ラテン・アメリカ専門記者の伊高浩昭氏のお話を伺うことができた( 「緊急!べネズエラ~米国軍事介入はあるか」) 。
さすがに専門記者であっただけあって中南米に詳しいお方である。たとえば食料配給制度(クラフト) 。
身分証があれば安く物資をまとめて買えるそうである。また都市部では食料が不足することもあるが地方ではそういうことはない。バナナやタロイモなどが十分あるそうだ。
また例えば,医薬品や食料などの外国からの人道支援・援助は国連を通すか,あるいは米州機構を通してできるのに,米国が直接ベネズエラに持ち込むのはおかしいというご批判である。圧巻は米国が経済封鎖をしてベネズエラを困窮させているにも拘らず,米国が人道支援をするという摩訶不思議な行為であるという論理矛盾を衝くご指摘である。
ところで2月1日,駐日べネスエラ大使セイコウ・イシカワ大使がべネスエラの事情を説明されている(両方とも YouTube あるいはサイト「飛騨の山猿@飛騨マーベリック新聞」で見ることができる) 。イシカワ大使のいうところと伊高氏のお話で意見が相違する点はないので若い方には両方みられることをお勧めしたい。但し,一点だけ明らかでない点がある。それは難民300万人の話である。
イシカワ大使は批判者に対して「オフィシャルなもの」つまり公式な文書でその実情と人数を報告してほしいと主張されているが,伊高氏は話を裕福な階層(例えばフロリダに別荘をもつ)でお金があるので脱出できるというのである。欧米のマスゴミは,飢餓で大変だから難民となってべネスエラから出て行くという意味で「難民300万人」を使っているが,裕福な人々が300万人もいるとは思えない。トランプ大統領がメキシコ国境に壁建設を主張して政府を一部・一時閉鎖させたが,押し寄せる難民がべネスエラ発だという印象操作をしている気がする。
昔,香港の夜景を100万ドルの価値があると形容していたが,100万の他に「300万」という数字は米国 CIA が好きな数字であるみたいだ。たとえば中国の新疆ウィグル自治区では100万から300万人のウィグル人が教育再生キャンプや強制収容所で入れられ拷問などを受けていると批判されている。しかしその実態はないとしても300万という数字が使われている。裏を返せば100万とか300万という数字がメディアに流れたら,米国CIA が後ろに控えていると思って間違いないだろう。
さてエリック・ロンドン氏は, 「コロンビア・サミットで『後戻りはあり得ない』とペンスはベネズエラを戦争で恫喝(wsws,2019 年 2 月 26 日)」の中で,ワシントン・ポスト紙
の報道の仕方に疑問を呈している; 「難民申請ためのアメリカ入国が禁じられた後、アメリカ-メキシコ国境のメキシコ都市の路上で何千という移民が現在寝ていることに、ポスト記事は言及しなかった。」

人道支援するならばこちらの解決が先であろう。
さてイシカワ大使が触れず,俄かに浮上してきた「米軍による軍事介入」の可能性について述べれば,伊高氏は「軍事介入の可能性は高い」とされる。その理由は軍事介入が北朝鮮への「見せしめ」になるというのである。いわゆるべネスエラ政権のリビア化である。ペンス米副大統領は「後戻りはない」と念を押している。
しかし小生は「軍事介入の可能性は低い」と考える。その理由は第一に,米朝ハノイ会談は玉虫色に終わってその評価が定まっていないが,北朝鮮は今日なお核ミサイルを持っている。
しかしべネスエラは核をもっていない。リビアも核を持っていなかったから仏米中心のNATO 軍に滅ぼされた。したがって「見せしめ」にはならないと考えるからである。しかし見せしめでなくても「後戻りできない」以上,「 軍事介入はある」かもしれない。米国追従のリマ機構も,国連も戦争だけは反対だと言っている。左寄りの党と極右政党連合政権のイタリアは米国の「内政干渉」に反対である。ローマ・カトリック教会は話し合い路線を強調している。そこで振り上げた拳をペンスはどうするのか。
おそらく“Nose Blood”作戦にでるのではないだろうか。ちょっと鼻自が出る程度のチョッカイである。トランプ大統領がシリアに 60 発近くのミサイルを撃ち込んだが被害はほとんどなかった。これと同じことをやる可能性がある。シリア支援のロシアは黙っていたので今回もそのようになる可能性が高い。そしてあくどいグアイド氏は米国に裏切られる。2019 年 3月 3 日 (日)の本サイト翻訳記事にあるようにグアイド氏は『更なる偽旗工作に向かうベネズエラ。アメリカ傀儡のグアイドは裏切られないよう用心したほうが良い』のかもしれない(Finian Cunningham 2019 年 2 月 26 日 RT)。
しかし第二の理由になるが,べネスエラには 100 億ドル以上を投資している中国と,ロシアがいるから戦争にはならないのではないのか。国連安保理で米・中露は拒否権を連発。また先月,ロシアの Tu-160 はべネスエラの小島(カリブ海)に現れべネスエラ空軍と共に飛行している。Tu‐160 の射程は WH や NY に及ぶ。フロリダにある南方作戦本部は目と鼻の先。伊高氏によれば,米空母 2 隻がカリブ海に待機しているようだが,キュ-バからも近い。
シリアでは地中海のロシア戦艦からミサイルが発射され,ロシア兵を殺した英米仏の特殊部隊が殲滅されたことがある。その後始末に大変だっただろうが,いつ何時,ロシア爆撃機や潜水艦から発射された原子力推進の超音速ミサイルが現れるか分からない。 伊高氏の予想と小生の水晶玉(中国で購入)の予想のどちらが当たるだろうか。それとも二人とも的を外すのだろうか。

追記: 去年の暮れから技術的な理由(IT無知)で投稿できませんでした。知り合いの助けがありこれからは投稿できると思います。食欲が減退されるかもしれませんがよろしくお願いします。

追記 2: またご返事遅れて申し訳ありませんでしたが,娘たちが加藤周一に関する鷲巣力先生の本を購入してくれたようです。衆参同時選挙に合わせて日本に帰れたらいいと思っております。

追記3:フォ-ブス紙の元編集長 B.フルフォ-ド氏によれば,プエルトリコは財政破綻して一般国民に電気が行きわたらないそうだ。電気代が払えないそうだ。電気事業の民営化進むとこうなるのだろう。問題は,べネスエラへの人道支援物資(USAID)がプエルトリコ発だったということである(rt.com の写真) 。他国よりアメリカ領プエルトリコの人道支援が先だろう。

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