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2019年2月 9日 (土)

プーチンは礼儀正し過ぎるのか?

2019年2月4日
Paul Craig Roberts

 下記のギルバート・ドクトローの記事は、とんでもない挑発に対する、プーチンの並外れた自制について、私自身が表明してきた懸念と同じ意見だ。私は欧米指導者連中に全く欠如している自制ゆえにプーチンを称賛していする。にもかかわらず私は、戦争を阻止しているこの自制が、戦争に導いているかもしれないという懸念を表明した。第二次世界大戦に関する多くの歴史家が、断固とした態度を取るより、対立状況を沈静させようとしたイギリスのチェンバレン首相の善意が、ヒトラーに戦争するよう元気づけたと結論している。

 ソ連のどの指導者に対して、あるいは彼らについて、プーチンにするように話をした欧米政治家は皆無だという点において、ドクトローは確かに正しい。状況は、イギリス政府がロシアとの戦争に準備をしていると宣言する極端な無謀さの極みに達している。ソビエト時代、イギリス政府は決してこれほど不合理に挑発的なことを発言したことがないはずだ。ロシアは数分でイギリスを地表から消し去ることができるのに、イギリス防衛大臣は、イギリスは対ロシア戦争を準備していると宣言しているのだ!

 プーチンは、欧米には彼と同種の人物がどこにも存在しない、知的な、礼儀正しい、親切な、道理をわきまえたリーダーだ。彼ははぐらかさず、メモも、耳に答えをささやく補佐もなしで、全ての質問に答えて、何時間も、しばしば敵対的な記者たちの前に立つことができる唯一の政治指導者だ。プーチンは皆の敬意に値する。その代わり、彼はロシアとともに、画策された悪魔化キャンペーンを受ける。これがどのように平和を促進するだろう? 理解できないほど強力な核兵器の時代に、欧米のこのような無責任な行動がどうして正当であり得よう?

 ドクトローはプーチンが、並外れた自制心の道理をわきまえた人で、誰も彼の感情を害することを恐れないほどだと言う。状況は不安定だ。遅かれ早かれ、プーチンは断固として譲らない態度に出るか、ロシアの主権を失うか、ロシア人の間での彼の支持を失わねばならなくなるだろう。もしプーチンが余りに長い間待てば、彼の足は、彼らが沈黙させられることができないという点に至るまで、「欧米指導部」を構成する政治家が持っているばか者が戦争の太鼓を叩くポイントで低下することができる。

 ワシントンの愚かさはもう一つの理由で異常だ。ワシントンは、プーチンのロシアを制裁し、悪者にし、村八分にすれば、プーチンを排除できるだろうと考えている。その可能性はあるだろうが、傷つけられたロシア人と軍の愛国心は、プーチンの代替物としてワシントンの操り人形を作り出しはするまい。彼らは中傷する連中を懲らしめるため、ロシアの威力を使う、プーチンほど控え目でないロシア国家主義者を産み出すだろう。

どちらの結果も、戦争と我々全員の死をもたらすのだ。

ウラジーミル・プーチン、欧米に語る。「我々はあなた方を埋葬する!」

ギルバート・ドクトロー

 私は正当な理由から、このエッセイに「フェイク・ニュース」風題名をつけた。彼にとっても、我々のためにも、ロシア現職大統領は余りに優しすぎるという事実に皆様の注目を引くためだ。彼は1956年にしたような、かつてのソ連党実力者風脅迫をしない。彼は国連会議で演説する際、ニキタ・フルシチョフがしたように、目の前の机に靴を打ちつけはしない。そのおかげで、現在、我々欧米人は、ロシアを窮地に追い詰める外交政策を追求して、ロシアとの熱い戦争の危険を冒していることに気付かない。誰も戦争を欲していないなどと自分に言い聞かせたとて、戦争が我々の心から遠ざかることはないのだ。

 上述した彼の行動や、初のスプートニク打ち上げや、政権転覆目的のソ連軍ハンガリー侵略や、我々に戦争をするため製造していた非常に強力な水素爆弾の大気圏内実験のおかげで、フルシチョフは攻撃的で、無作法な人、危険な国のトップとして、欧米の大衆にも政治支配層にも強い印象を与えた。

 フルシチョフは、欧米がソ連を受け入れないのは、地球の生活がなくなるのと同じことだと我々が理解するのを可能にし、我々に「平和共存」政策を提案した。従って、フルシチョフと彼の国を、わが国は常に敬意と恐れを抱いて扱った。我々は彼を失礼な人物だと考えたが、誰も彼のことを、今政治家やマスコミが、ウラジーミル・プーチンを表現する際に、いつも言うような、凶悪犯やジャーナリスト殺人犯とは呼ばなかった。当時は、世界が欲しがるものを何も生産しない国ロシアを「国でなく、ガソリンスタンドだ」とか、ただひどい行動をする地域大国だと誰も言わなかったが、何十年も昔、キューバ・ミサイル危機後、冷戦状態に多少の安定性と予測可能性に与えるべく確立された連絡回線さえ含め、全ての関係を切断し、この「のけもの」ロシアを孤立させるのを正当化するのにバラク・オバマはこの全ての口実を使った。

 フルシチョフやソビィエト社会主義共和国連邦の他の政府指導者と比較して、プーチン大統領は、非常に文明的な方法で行動し、語る。現在でさえ、新冷戦での欧米との永続する対立で、ロシアには厳しい経済制裁が課され、未曾有の規模の挑発的NATO軍事演習がロシア国境で行われる中、プーチンは平和を保持し、彼の考えでは、あっと言う間に武力衝突に至りかねない緊張のエスカレーションを避ける狙いで、欧米を、まだ「同僚」や「パートナー」として語っている。

 プーチンの手腕は何に由来するのだろう? KGBでの勤務より、彼の過去が多くを意味しているのを理解しなければならない。1990年代、彼はサンペテルブルグのリベラルな市長アナトリー・サブチャクの市庁で働いた。海外投資担当副市長として、多数のヨーロッパやアメリカらの実業家や政治家に会ったのだ。彼は市長の親欧米派取りまきの一員で、1999年に大統領の職についた際、リベラルな僚友の多くを側近においた。彼らは今も、クレムリン政治で影響力ある党派を構成している。

 大統領の座についた初日から、プーチンは、NATO、より一般には欧米に、ロシアが統合されることを望んでいた。ワールド・トレードセンター攻撃後、プーチンはジョージ・W・ブッシュに電話をかけた最初の国家指導者で、アメリカがアフガニスタンでタリバンに対して開始するであろう作戦の後方支援のため、アメリカ軍に快く中央アジアにおけるロシアの裏庭を開放し、多いに助力した。

 不幸にして、プーチンの互恵的な暖かい関係や統合への希望は拒否された。今ワシントンは、ロシアを長期凋落している、取るに足りない力しかない国と見なしている。2002年、安定性と透明度に対するロシアの関心にへの無視し、戦略上の兵力の均衡をアメリカに優位に変える政策を追求し、1972年から始まった、最初の画期的武器制限条約の一つ、弾道弾迎撃ミサイル制限条約からアメリカは脱退した。この後、現在まで続く、ロシアと欧米間の関係悪化の進展を我々は目にしている。これに続いて、2018年3月1日、連邦議会に対する施政方針演説で、最先端技術を使った「非対称」と呼ばれるロシアの新兵器システム開発をプーチン大統領がとうとう公式に語るのを目にしたのだ。当時、彼は完ぺきな明快さで、しかし冷静な威嚇的でない言葉で、これらの兵器がアメリカが、自国に対する先制核攻撃無力にする可能性を保証するため適所に配置している全兵器を突き抜けることが可能だと述べた。ロシアはアメリカの12分の一しか軍事予算がないにもかかわらず、アメリカと、もちろんNATOとの、全面的な戦略的均衡を取り戻したと彼は主張した。

 2018年3月1日のプーチン演説は、大統領選挙運動のさ中で、ロシア国民に向けたものだった。それは同様に、アメリカ政界と軍に対するものでもあった。残念ながら、アメリカやヨーロッパ国民に対して、フルシチョフがかつてしたように、ぶっきらぼうに語ったわけではなかった。それで我々は、うたた寝状態を許されている。

 現在、ロシアが30分以内に、アメリカおよび/またはヨーロッパを灰燼と化すことが可能な世界唯一の国である事実を我々は無視する傾向がある。シリアで、ウクライナで、もしかすると間もなベネズエラで、ロシア軍や彼らの代理部隊近辺でのアメリカ軍による作戦から生じうる戦争の危険の感覚が我々には欠如している。アメリカでは、民間と軍の指導者間には信頼性の高いコミュニケーションが欠如しており、あらゆる当事者間の相互信頼が全体的に欠けている。

 旧冷戦の間は、大陸間弾道ミサイルあるいは爆撃機による攻撃の誤報は、誤報と判断するための一定時間があった。現在は、警報から飛来する完全破壊まで、15分しかないのだ。国家指導部を殺害する可能性がある先制攻撃を予知した場合、迎撃ミサイル発射は自動化されており、「デッド・ハンド(死者の手)」原則で作動する。結果的に、60年代の映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』でスタンリー・キューブリックが見事に描いた最後の審判の日のシナリオが、大衆には全く見当がつかなくとも、現在機能しているのだ。

 読者の皆様!アメリカやヨーロッパの人々と開かれた外交をせず、我々を適度に怖がらせないので、我々が正気に返り、我々の政治家やメディアに同じように行動するよう強いないので、ウラジーミル・プーチン大統領はロシア国民にも、我々にも、ひどい仕打ちをしていると私が申し上げている理由はこれなのだ。

https://russia-insider.com/en/putin-soft-he-should-learn-scare-west-khrushchev-did/ri26105

出典:GilbertDoctorow.com

 ギルバート・ドクトロウは゛1965年以来、ロシア事情評論家。ハーバード大学(1967年)を極めて優秀な成績で卒業し、元フルブライト奨学生で、コロンビア大学(1975年)の優等な成績の歴史博士号を保有。研究終了後、ドクトロウは、ソヴィエト社会主義共和国連邦と東ヨーロッパを中心に企業経営経験を積んだ。25年間、彼は地域担当マーケティング、一般経営担当として、アメリカとヨーロッパの多国籍企業で働いた。1998年-2002年、ドクトロウはモスクワでロシア・ブッカー文学賞委員長を勤めた。

 ニコライ2世下のロシア憲法の歴史に関する彼の学位論文に基づく多数の学術的論文はいまも出版されており、オンラインで入手可能。ドクトロウはまた、ズヴェズダー(サンペテルブルグ)や、ロシアの文化、政治的生活の問題に関するルスカヤ・ムイスリ(La Pensee russe、パリ)や、コンティネント(アレクサンドル・ソルジェニツィンが後援した雑誌)を含めロシア・マスコミに良く寄稿していた。彼はベルギーの日刊紙 La Libre Belgiqueのポータルで、国際問題に関する分析記事を定期的に寄稿している。

 ドクトロウの現在の研究の関心は、アメリカ地域研究の傾向。2010-2011年度のコロンビア大学ハリマン研究所客員教授。

 Paul Craig  Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

 ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2019/02/04/is-putin-too-polite/

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 ほぼ一年前、同じPaul Craig Roberts氏による下記の記事を翻訳した。

プーチン大統領の一般教書演説 2018年3月1日

 テレビ朝日小川彩佳アナウンサー退社記事を読んだ。「報道ステーション」を降ろされた後の状況全く知らなかったが、AbemaTVニュース番組AbemaPrimeの司会だったという。
AbemaTV、ボーッと生きてんじゃない名前を聞いた瞬間驚いて一度も見ていない。
岩波書店『世界』3月号の南彰氏の「記者の連帯がなぜ必要か」を拝読して納得した。
AbemaTV、サイバーエージェントと朝日テレビが出資して設立した株式会社が運営。
「放送番組の「政治的公平」などを定めた放送法四条の枠外にある。」という。
南彰氏の記事には、2017年10月の衆院選挙公示の二日前に首相が生出演した様子が書かれている。信じられないヨイショ番組。見聞きするに耐えない。
「報道ステーション」首相にも直言するような小川彩佳アナウンサーを降板させ、AbemaTVニュース番組の司会に移動というのは、素人からみれば、イジメそのもの。

 リテラに記事がある。
小川彩佳アナ退社もうひとつの要因! テレビ朝日の安倍政権忖度、『報ステ』外しで追い込まれ…

 女児殺害報道は豊富だが、成人女性排除に関する報道、極めてわずかな理由、言われなくともわかる。女児問題にふれて発言するトップを見て「ワニの涙」という言葉を連想。国民を虐待している本人に言われたくはない。

 成人女性ということでは、発言したら嫌がらせに下着が届く 女性7人「屈しない」 という記事、その受取人払いの注文ハガキ、何と山口県で投函されているという。

 成人女性に対する犯罪の極みを批判する小林よしのり氏が、元TBS記者、ジャーナリストから、名誉毀損などによる損害賠償をもとめる訴訟を起こされているという。

 外国人弁護士から一万円の献金をもらったと、辻元清美衆議院議員を「袋叩き」している大本営広報部、片山地方創生担当相の口利き疑惑追及は甘い。

 日刊IWJガイド「『野党叩き』に精を出す大手メディア! 片山さつき地方創生担当相の口利き疑惑はなぜ追及しないのか!」 2019.2.9日号~No.2340号~ (2019.2.9 8時00分)

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