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2018年12月20日 (木)

もしフランスの黄色いベストが勝利したら何が起きるだろう?

2018年12月17日
Andre Vltchek
New Eastern Outlook

 もしパリの抗議行動参加者が勝利し、フランス政府が彼らのすべての要求に屈服したらどうだろう?

 もし税金が減らされ、賃金が上がり、マクロン大統領が退任したらどうだろう?

 私はただ燃料税について話をしているのではない。それを課す試みは既に断念された。1カ月に100ユーロという最低賃金の増加 - 既に政府が上げるのに同意していることの話をしているのではない。

 私が話をしているのは、実際、多くの抗議行動参加者が切望しているように思われる根本的変化だ。大多数のフランス国民のための大きな減税、気前が良い賃金上昇と、全員のための社会的便益の拡張。

 それで、もし黄色いベストが、このすべてを勝ち取ることに成功したら、それから何が起きるだろう? 誰が利益を得るだろう? 同様に、誰が損をするのだろうか?

*

 最近、読者の一人が、フランスは軍事予算を減らすべきで、節約された何十億というユーロから容易に抗議行動参加者に必要な資金調達をすることが可能だと書いて来られた。

 もう一人の読者が、フランス(あるいは彼らを「エリート」と呼ぼう)の最も金持ちの国民が重く課税されるべきで、このようにして蓄えられた金は、貧しい人々や、下流中産階級の間で再配分することが可能だと書いて来られた。

 「合理的」に聞こえるだろうか? そう確かに。合理的で論理的だ。 唯一ごく小さな欠陥は次のことだ。我々全員決してそのようなことが起きないだろうとを知っている。

 マクロン大統領は、まさにこれらいわゆるエリートによって王座に引き上げられたのだ。お返しに、金持ち連中は、その特典が保証され、さらに肥大するのを期待する。

 NATO加盟国(この場合フランス)が突然、軍事予算を削り、節約されたものから、貧しい人たちと中産階級のために、様々な新しい社会福祉プログラムの資金調達を始めると想像するのは、非現実的で、子供っぽくさえある。

 もしフランス政府が本当に「根本的な」何かをすることに決めたら、資金は一体どこから来るのだろう。少なくとも我々の超資本主義時代の標準から見て、急進的なこと。自国民に耳をかたむけたら?

 遠回しに言うのはやめ、率直に具体的に私の質問をさせて戴こう。「もし黄色いベストのあらゆる要求が満たされたらどうだろう。誰がツケを支払うだろう?」

*

 このすべてを関連づけてまとめるため、私はハノイ、社会主義ベトナムの首都でこのエッセイを書いている。

 しばらく前、私はこの都市に住んでいたことがある。私はここでほぼ3年過ごし、当時、まだ貧しく、人々は戦争を覚えており、フランス植民地政策さえ覚えている人もいた。

 到着直後、最も私に衝撃だったのは、ベトナムの人々が、アメリカを「許す」ように思われる一方、彼らはフランスの植民地主義者を許すようには見えないことだった。

 「なぜ?」 私は友人たちに尋ねた。「それはどうして可能なのか? (欧米で「ベトナム戦争」として知られている)「アメリカの戦争」中、アメリカ爆撃の壊滅的に激しい作戦は、何百万人ものベトナム人やカンボジア人やラオス人の生命を奪う状態で、ひどく残忍ではなかっただろうか?」

 「もちろん、そうだった」私は簡単に説明された。 「けれども我々は戦い、ひどい損失と困難にもかかわらず、我々は比較的短時間にアメリカを破った。それは単にアメリカだけではない。連合メンバー諸国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、タイと、もちろんフランスとも。」

 そして物語は続いた。

「フランス人は、ずっと長く我々を占領し、ひどく苦しめた。彼らは同じく、連続的に、我々を屈辱的な目にあわせていた。彼らは我々を奴隷にし、拷問にかけ、女性たちを連行し、レイプし、彼らは我々が持っていたすべてを盗んでいった。」

 私が暮らしていた場所の近くに、ギロチン、拷問部屋、隔離独房が設置されている悪名高い「中央刑務所」があった。今そこでは、フランス人入植者によって捕らえられたベトナム愛国者の女性たちを拷問にかけ、レイプするために使われた怪物のような道具が展示されている:ビールびん、電線、つえ。

 植民地化されたインドシナが何を持っていたにせよ、壮大な劇場、鉄道、地下鉄、公園や大学建設の資金調達のため、盗まれて、フランスに持ち去られた。そう、今黄色いベストが正しくも言っている通り、その名が知れ渡ったフランス社会制度の形成に助成金を支給するために、フランスの「エリート」と、彼らが完全に支配している政治制度によって解体されつつあるのだ。

 ベトナムの人々は、勇敢にフランス人と戦い、ディエンビエンフーでの象徴的な戦いで、最終的に彼らを打ち破った。だが勝利した共産党勢力が相続したベトナムは、荒らされ、分割され、その資源や芸術作品(有名な作家で、後のドゴール政権の文化大臣となったをアンドレ・マルローを含め、数人のフランスの知識人が、そこで若者として生活したとき、「インドシナ」から芸術作品を盗んだことを告白した)さえも剥奪された国を受け継いだのだ。

 言うまでもなく、これまで、フランス企業は、採鉱や他の新植民地主義プロジェクトを通して、東南アジアの多くの地域を残酷に略奪しており、アフリカや中東やラテンアメリカの様々な地域でも同様だ。

 今ハノイや、プノンペンやビエンチャンで、「インドシナ」の人々に(なんと侮辱的で奇異な名前だろうか、植民地時代に、フランス人によって世界のこの部分に与えられた!)がパリで黄色いベストを支持しているかどうか尋ねてみよう。もし彼らがパリで譲歩を勝ち取れたら、アジアのに生活を改善するだろうと思うかどうか尋ねてみよう。

 あなたは答えは何か、想像されているだろうか?

*

 パリ街頭で戦っている人々の要求が間違っているとは私は言わない。間違ってはいない。 彼らは絶対に正当だ。

 フランスのエリートは残忍で、利己的で、しかも変態的だ。アメリカ大統領全員が、もっぱら破壊的な軍事コングロマリットを含め、巨大企業に奉仕しているように)、現在のフランス政府も、もっぱら彼らに奉仕している。「彼らは去るべきだ」、彼らは姿を消し、論理的な人間進化のパターンに譲歩するべきなのだ。社会主義、平等主義の社会。

 だが連中は去る準備ができていない。逆だ。連中は何世紀も、地球中を略奪しており、今連中は、連中自身の(これまで強奪品を分け合うのに慣れていた)国民を略奪するまでに至ったのだ。

 フランス国民は略奪されるのに慣れていない。何世紀もの間、彼らは良い生活をしてきて、過去数十年の間は、彼らは「極めて良い」暮らしをしていた。 彼らは世界中のどこより、最も惜しみない恩恵を享受していた。

 誰がそれに対して支払っただろう? それは、今まで、パリで、他の大都市で、あるいは地方の人々人に重要だっただろうか? 彼らが過剰な量の食物とワインを生産していたとき、だが、同様に、彼らが、政府から、何も多く生産しないように求められたとき、フランスの農民は、なぜ彼らが気前良い助成金を得られるのか考えていただろうか? 彼らはいくつかの旧フランス植民地で、これらの助成金がどのように徹底的に農業部門を破壊したか調査するため、セネガルに、あるいは西アフリカの他のところに、しばしば旅行しただろうか? 彼らはそこの何百万人もの生活が完全に破壊されていたことを気にかけただろうか? あるいはインドネシアやブラジルに関して、フランス企業が、積極的に、食品と飲料生産を乗っ取り、結果的に、現地の収入が、場合によっては、フランスの収入のたった10%のままなのに、多くの貧しい国での食品価格がパリの二倍、あるいは三倍に急上昇したことに対しては?

 食物は一例に過ぎない。だがこの文章は、少し違ったことについてのものであるべきだった。黄色いベストについて、もし彼らのすべての要求が満たされたら何が起きるであろうかについて。

*

 もし、フランスを、欧米全体を、その植民地と新植民地の多くを支配している体制が、本当に怪物のようで、ひねくれて、残忍であることに我々が同意するなら、我々はその体制は、普通のフランス国民のより低い税金と、より高い賃金と、より良い医療と教育のつけを支払わないだろう、という論理的結論に到達せざるを得ない。

 もし抗議行動参加者の要求が満たされれば、請求書に対して支払いをするよう強いられるだろう他の誰かがいるはずだ。可能性として高いのは、何千万人も、あるいは何億人もが「重荷を課される」だろう。彼らはフランス、あるいは欧州連合に暮らしてはいないだろうし、あるいはどこか近辺でさえないだろう。

 黄色いベスト運動の抗議行動参加者はこれについて考えているだろうか? 彼らにとって、それはほんの少しでも重要だろうか?

 それは過去にも、考えてはいなかった。ジャン・ポール・サルトルのようなわずかな人々がまだ生きていた頃は、これらの疑問は定期的に問われていた。しかし最近はそうではない。今はそうではない。シャンゼリゼでの、この反乱の間も。

 フランスの人々は、フランスの都市や地方における生活の質を改善するために、一体何百万の人々が死ななければならないか疑っているだろうか?

 あるいは多分、「埋め合わせるため」、社会支出をカバーするため、どこかの国が侵略され「ねばならない」のだろうか? それはイランだろうか? それとも、ベネズエラ?

 「ニューヨーク・タイムズ」はフランスの地方に関する記事の一つで、人々が晩餐のために妻をレストランに連れて行く余裕さえないと不平を言っていると報じた。それは本当に重大だが、それがイランやベネズエラに対する戦争や、その結果としての略奪を正当化するだろうか、あるいは数十万もの西パプア人の大虐殺の口実になるだろうか?

*

 私は、略奪された世界中いたる所の人々同様、正真正銘の国際主義者に、黄色いベスト運動が、単に、世界中のに多くの他の人々を犠牲にして、自己本位に、フランス国民の生活を改善する利益のために戦っているわけでないことを確信させるのを助けるようなことを提案したい。

 彼らは以下のことを理解しているのを示すべきだ。彼らは他の人たちに、無関心でないことを示すべきだ。彼らが資本主義と帝国主義に反対で、絶対的に地球のあらゆる地域での植民地政策と人々と彼らの資源を略奪すること反対だと、はっきり言うべきだ!

 フランス人だけでなく、全ての人の自由と平等と友愛のためだと彼らは言うべきだ!

 より多くの賃金、より低い税金と、もっぱらフランスに暮らす人々のためのより良い利益のためだけでなく、これは本当の革命、世界を良くするための本当の戦いだと言うべきだ!

 それが残された貧しい植民地化された国々の略奪から来るのであれば、彼らは決してどんな恩恵も、余分の金も受けとらないと言うべきだ。

 もし彼らがこのすべてを語り、彼らが本当に心からそう思っていることを実際に示せば、私は「革命万歳!」と大声で言い、抗議行動参加者に心から加わらねばなるまい。

 しかし彼らがそうするまでは、彼らの勝利が、他の人々、何百万もの他の人々を傷つけないことを私が確信するまでは、フランスの地方の誰かが妻を晩餐のためレストランに連れて行く余裕があるかどうかについてより、ベトナムやパプアの人々について、イラン、アフリカ、シリア、あるいは中東全てについて、私はずっと懸念し続けるだろう。

Andre Vltchekは哲学者、小説家、映画製作者と調査ジャーナリスト。 彼は Vltchek’s World in Word and Imagesの創作者、革命小説Auroraと数冊の他のの著者。 彼の最新の本はRevolutionary Optimism, Western NihilismThe Great October Socialist Revolution。オンライン誌 「New Eastern Outlook」独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/12/17/what-happens-if-the-french-yellow-vests-win/

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 孫崎享氏の今日のメルマガは

トランプ、米軍、シリア撤退を発表、国防長官、中央軍司令官、安全保障担当補佐官等の反対押し切り発表。シリアからの撤兵はトランプの選挙公約。議員らも強い反対表明。米軍シリア駐留の最大目的はアサド大統領を脅威と見、その排斥図るイスラエル擁護

 2018年12月1日The Asia-Pacific Journal Japan Focusに下記の記事が掲載された。『属国』の続編に思える新刊The State of the Japanese State Contested Identity, direction and role抜粋だろうか。 沖縄についての記述が多い。内容は実に悲しい事実だが、日本政治について常々思っていることが、立派な学者により英語で書かれ、偏屈な老人の妄想ではなかった証明ではあるだろうと苦い満足感を感じている。日本語版を期待している。The Asia-Pacific Journal Japan Focusも寄付金募集の時期。

 Grappling with Clientelism: The Japanese State and Okinawa under Abe Shinzo

 なお「Japan’s Client State (Zokkoku) Problem 日本の属国問題」で

 前の本『属国』の概念が主流の見解から極端にかけ離れていたが、五年後、元高級官僚の孫崎享氏の『戦後史の正体』の中で確認されたこと、何とも苦い満足感を覚えると筆者は書いておられる。記事は英語だが、クリックすると日本語本pdfが読める。

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