中国との世界的対立回避
中華人民共和国はシェルドン・アデルソンの中国カジノを標的に報復すべき
Ron Unz
2018年12月13日
The Unz Review
大半の読者が御存じの通り、私は無計画な政治ブロガーではなく、時事問題の主要ニュースを追いかけるより、長い論文を書くことを好んでいる。だが全ての規則には例外があり、迫り来る中国との直接世界規模対決の危険はそうしたものの一つだ。
先週の世界最大の遠距離通信装置製造企業ファーウェイCFO孟晩舟の逮捕をお考え願いたい。香港からメキシコへ旅行する際、突然8月のアメリカ令状で、彼女がカナダ政府によって拘留された時、孟女史はバンクーバー国際空港で飛行機を乗り変えていた。1000万ドルの保釈金で釈放されているが、彼女はニューヨーク市法廷への犯人引き渡しに直面し、伝えられるところでは彼女は、2010年にイランに対するアメリカの一方的な経済貿易封鎖に違反しようと企んだかどで、連邦刑務所で最高30年の刑を受ける可能性がある。
「ニューヨーク・タイムズ」と「ウォールストリート・ジャーナル」の一面トップ記事を含め、アメリカの主流メディアが、この重要記事を報じたが、私はほとんどのアメリカ人読者が、この国際事件の異例の重みと世界史の進路を変える可能性を完全に認識しているのか私は疑問に思っている。一人の学者が述べている通り、数人の中国外交官を殺害したベオグラードの中国大使館に対するアメリカによる故意の1999年爆撃の出来事以来、これほど中国政府と国民両方を憤慨させたことはない。コロンビア大学のジェフリー・サックス教授は正しく「中国実業界に対する、アメリカのほとんど戦争宣言」と表現した。 (日本語訳「対ファーウェイ戦争」 )
このような反応はほとんど驚くべきではない。1000億ドルの歳入で、ファーウェイは中国で最も国際的に成功した高名な会社で、世界最大で最も先進的な遠距離通信装置製造業者として位置付けられている。孟女史は長年そのトップ経営者であるのみならず、その巨大な企業家の成功で中国の国民的英雄として確立した会社創設者任正非の娘でもある。
カナダの空港で飛行機を乗り換える間の、わかりにくいアメリカの認可違反の告訴に関する彼女の拘留は、ほとんど誘拐に等しい。もし中国が、中国の法律に違反したかどでフェースブックのシェリル・サンドバーグを拘束していたら、しかも、もしサンドバーグが同様にスティーブ・ジョブズの娘だったら、アメリカ人がどのように反応するだろうかと一人のジャーナリストが尋ねた。
実際、私が思いつく最も近い類似は、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が今年早々レバノン首相を拉致し、人質として拘留したことだ。後に、最も裕福なサウジアラビアの何百人もの臣民に同じことをして、最終的に彼らを解放する前、彼はまんまと、彼らの家族から身の代金として1000億ドルほどゆすり取った。サウジアラビアの反体制派分子「ワシントン・ポスト」コラムニストのジャマル・カショギがトルコのサウジアラビア大使館で骨のこぎりで殺され、手足をばらばらにされた件では、彼はとうとう、無理をしすぎて、失敗したのかも知れない。
彼がいなければ、アメリカにとって、明らかに世界のどこに最も狂気の政府はないのだから、実際、我々はムハンマド皇太子に多少感謝すべきなのだ。現状は、我々は首位を争っているに過ぎない。
冷戦終結以来、アメリカ政府は、自身を最高の世界覇権者と見なし、益々妄想を抱いた。結果として、アメリカの法廷が外国や彼らの主要企業に対し、巨大な財政的罰則を適用し始めたが、アメリカ以外の国々は、この無作法にうんざりしていると私は思う。多分このような行動は、ヨーロッパの従属的な属国諸国に対しては、まだおこなうことが可能だが、最も客観的な基準による中国の実体経済の規模は数年前にアメリカのそれを上回り、まだ遥かに高い成長率を維持しており、今十分に大きい。アメリカの全く不正直な主流メディアは決まってこの現実を覆い隠すが、それにもかかわらず現実は本当のままだ。
主要ハイテク企業経営者の一人を拘留し、投獄することで、強力な中国との悲惨な世界的対決を挑発していることで、現在の政治エリート集団の支配下でのアメリカの行動について、私が数年前にした発言を思い出した。
遥かにどぎつい生物学的比喩を利用すべく、哀れな犬が狂犬病ウイルスに感染しているのを想像願いたい。ウイルスは脳を持っていないかもしれず、その体重はホストの100万分の1より少ないが、それが中枢神経系の支配を掌握した途端に、動物の大きい脳と全てが無力な操り人形になる。
かつて友好的だったファイドウは泡をふき、空に向かって吠え、触れられるあらゆる他の動物を噛もうと走り回る。友人や親類は犬の苦境を悲しく思うが、避けられないことが起きるまで、感染を避けようと、ずっと離れていて、やがて可哀相なファイドーは最後に死んでドタリと倒れる。
中国のような普通の国は、アメリカのような他の国々も当然同様に普通の方法で振る舞うものと期待しているため、非常に驚かされた衝撃で、孟女史拘留に対し、彼らの効果的対応が遅れたのは確実だと思う。1959年、リチャード・ニクソン副大統領がモスクワを訪問し、良く知られているように、共産主義と資本主義の相対的長所について、ニキータ・フルシチョフ首相との激しい「台所討論」に関わった。もしニクソンが「反ソ連扇動」のかどで、即逮捕され、10年間の捕虜収容所刑期を宣告されたら、アメリカはどう対応していただろう?
国際的人質拘束への自然な対応は、報復的な国際的人質の拘束だから、危機が解決されるまで、アメリカのトップ経営者は中国への訪問をあきらめることに決めたと新聞は報じた。ゼネラル・モーターズは、アメリカでより、中国で一層多くの自動車を販売しており、中国は同様、アメリカのほぼすべてのiPhoneの製造元だが、ティム・クックやメアリー・バラや彼らの部下幹部は、近い将来、中国訪問しそうにはなく、同様に、グーグルやフェースブックやゴールドマン・サックスや主要ハリウッド・スタジオのトップ経営者が、無期限拘留覚悟で危険をおかすことはあるまい。
カナダは、アメリカの命令で孟女史を逮捕しており、今朝の新聞は、多分交渉の小さな切り札として孟女史釈放を促進するため、前カナダ外交官が突然中国で拘留されたと報じた。だがこのような措置に大きな効果があるのを私は疑っている。我々が伝統的な国際慣習をあきらめ、ジャングルの法律を採用した途端、一連の本当の権力と支配を認識することが非常に重要になるが、カナダはこの問題では、単にアメリカの政治的操り人形の役を果たしているだけだ。人形遣いではなく、操り人形の恫喝で、多くの効果を得る可能性が高いだろうか?
同様に、アメリカの主要ハイテク企業幹部のほとんど全員が既にトランプ政権と非常に対立しており、たとえそれが可能だとしても、彼らの一人を拘留しても、アメリカ政治指導部を動かす可能性はほとんど高くないだろう。それより程度は弱いが、アメリカの主要企業幹部の圧倒的多数にも同じことが言える。彼らは現在ホワイトハウスで采配を振るっている人々ではないのだ。
トランプ大統領自身はこの非常に危険な事件で、本当に、最高位の操り人形以上の何なのだろう? イランに対するイスラエル・ロビーによる国際制裁キャンペーンを厳しく強いるため、世界平和とアメリカ国家安全保障という利益が犠牲にされており、アメリカで最も極端なイスラエル擁護熱狂者の一人、国家安全保障担当補佐官ジョン・ボルトンが逮捕に青個人的に信号を送っていたことに我々は驚くべきではない。一方、トランプ自らが貿易問題を巡り、習中国国家主席と会っていた同じ日に、トランプ自身が、これらの計画を全く知らないまま、孟女史が逮捕されたという信用できる報告がある。事件は、トランプに対する意図的な平手打ちだったとさえ示唆する人々もいる。
だが、ボルトンの外見上明白な関与は、共和党政界内で、巨大な財政的影響力で、イスラエル寄り政策と地域のイスラエルのライバル、イランに対する敵意に、圧倒的に熱心だったトランプの長年の後援者、億万長者のカジノ大物シェルドン・アデルソンの中心的役割を明確に示している。
非常に高齢なアデルソンが孟女史逮捕で直接個人的な役割を果たしたかどうかは明確からほど遠いが、彼は確かに現状を引き起こした政治情勢を促進する上での中心人物と見なさなければならない。多分我々の現在の中国と戦いにおける、究極の黒幕の人物として彼は描かれるべきではないが、存在している政治黒幕が、確かに彼の手足となって働いているのだ。文字通り、もしアデルソンがホワイトハウスに一本電話をすれば、トランプ政権は、その日のうちに、孟女史釈放をカナダに命じると私は思う。
アデルソンは、その330億ドルの財産で、アメリカで15番目に裕福な男性としてランクされているが、彼の富の大部分は中国のマカオでの極めて儲かるカジノ所有権に基づいている。結果的に、中国政府は、孟女史逮捕に対し、究極的に責任があり、彼の親イスラエル派の手先が、アメリカ外交政策を支配している人物の財政的喉笛に手をかけているのだ。中国が、この巨大な未利用の政治的影響力の源を十分に理解していることを、私は極めて強く疑っている。
長年にわたり、アデルソンの中国マカオ・カジノは、あらゆる種類の政治的贈収賄スキャンダルに関与しており、そのような動きは、中国社会や大半の中国国民にほとんど悪影響がないのだから、少なくとも一時的に、彼らを即座に閉鎖するための妥当な根拠を中国政府が見いだすのは極めて容易だろうと思う。公式の贈収賄や他の犯罪行動の長い実績がある彼ら自身のカジノのいくつかを閉鎖する中国政府に、国際社会が不平を言えるだろうか? 最悪、他のカジノの大物が、追加の中国カジノ設置に今後金を投資するのに気が進まなくなっても、習主席の反汚職政権に対する深刻な脅威にはほとんどなるまい。
私は金融の経験がないので、アデルソンの中国カジノの一時的操業停止による正確な影響を推計しなかったが、もし結果として、ラスベガス・サンズ社の株価が下落し、24時間以内に、アデルソン個人純資産の価値が50-100億ドルに減り、彼が即刻注目するのが十分確実になっても私は驚かない。一方、永続閉鎖の脅威は、多分中国が影響を持っているシンガポールにも及び、アデルソンの個人的富のほぼ完全な破壊をもたらすかもしれず、類似の措置は、同様に中国マカオで残りの賭博を独占している全ての他の狂信的イスラエル擁護派アメリカ億万長者のカジノに適用され得る。
孟女史の突然の拘留に対し責任がある政治的操り人形連中の連鎖は確かに複雑で暗くて陰気だ。だが中国政府は既に、まさしくそのその連鎖の最上位に位置する人物、シェルドン・アデルソンの財政の生死に対する絶対権力を握っている。もし中国指導部がその力を認識し、有効な措置をとれば、孟女史はすぐさま、最も深い国際政治的な謝罪を伴って、帰国の飛行機に乗せられるだろう。そしてファーウェイやZTEや他の中国のハイテク企業に対する将来の攻撃は繰り返されるまい。
この国際政治ポーカーゲームで、中国は実際ロイヤルフラッシュを手にしている。唯一の疑問は、彼らが持ち札の価値を認識しているかかどうかだ。私は彼らがアメリカと世界全体のため、認識するよう願っている。
記事原文のurl:http://www.unz.com/runz/averting-world-conflict-with-china/
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RTフランスの女性記者が黄色いベスト運動デモ取材中、顔を殴られた。
RT France reporter struck in face covering Yellow Vest protest
記者は病院にいったとのこと。
Truthdig記事を翻訳させて戴いているChris Hedges氏の新刊『AMERICA: THE FAREWELL TOUR』の6章、Gambling。トランプ大統領のカジノを巡る興味深い話。『デザインされたギャンブル依存症Addiction by Design』も引用して、ギャンブルにはまる心理も説明されている。これから日本を襲うシステムの実態、楽しいものではない。小生、大昔アトランティック・シティーで、スロット・マシンに触った記憶しかなく、今後どこかカジノに行く予定も皆無。アメリカ・カジノに出かけるのが娯楽という仕事の同僚と知人がいる。食事や雰囲気が楽しいそうだ。人様々。
2014年7月29日、下記翻訳記事を掲載した。
ニュージャージー州アトランティック・シティーのカジノ閉鎖、アメリカの悪化する雇用危機の兆候
昨夜の『NEWS23』辺野古レポートに驚いた。品川正治氏がご存命なら激賞されただろうレポート。非難する連中がいるのにびっくり。普天間飛行場と辺野古と高江、一度見学しただけ。嘉手納基地は道の駅から二度眺めたことがある。道の駅の展望台、中国人観光客だらけなのが不思議だった。彼らには嘉手納道の駅、格好の観光地のようだ。
対照的なアメリカ国防省日本支部長や監房長官の木で鼻をくくった回答。見聞きするのもおぞましい。傀儡ゾンビー集団。害務大臣の四回「次の質問をどうぞ」を思い出す。昔はかない期待もしたものだった。日刊IWJインタビューに案内があった昔のインタビューではかない期待を思い出せる。
【かくも人は変わりうるのか!? 河野太郎ビフォー・アフターのビフォー2011 再配信301・IWJ_Youtube Live】20:00~「『原発利権を作ってきたのは自民党。我々の責任は当然ある』 ~岩上安身による自民党・河野太郎議員インタビュー」
YouTube視聴URL(冒頭以降は会員限定): https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867
ツイキャス視聴URL(冒頭のみ): https://twitcasting.tv/iwakamiyasumi2011年におこなわれた岩上安身によるインタビューで、原発利権を作ってきた自民党の負の側面に向き合う発言をしていた河野太郎外相ですが、12月11日の会見で記者の質問を4回連続で無視するという変節ぶりを露呈しました。
2011年5月に収録した岩上安身による自民党・河野太郎議員インタビューを、冒頭のみフルオープン再配信、その後は会員限定で再配信します。IWJがこれまで報じてきた河野太郎氏に関する記事は以下のURLからご覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E6%B2%B3%E9%87%8E%E5%A4%AA%E9%83%8E
グリーン・ゾーン: アメリカ軍ゴルフ場地図という翻訳記事の後に、沖縄と本土のマスコミについての品川正治氏発言を引用させていただいている。再度転載しよう。
『激突の時代』の連続講座・第4回 第11章 日本のマスコミ から、ごく一部を引用させていただこう。225ページから、226ページ。太字は小生が加工したもの。
国民に怒りを持たせない
マスコミの現在の姿勢を言で言ってしまえば、とにかく国民に怒りを持たせない、あるいは怒りの的を外してゆこうというものです。そういう役割をご本人たちが意識しておられるかどうかは別として、私はその点を非常に問題視しています。
私は沖縄で発行されている「琉球新報」と「沖縄タイムス」の二紙をとっていますが、この二紙は、国民の不満を「怒りにまではしない」という報道姿勢は持っていません。そこが日本のマスコミ全体と大きく違うところです。
もちろん沖縄の問題では、事実関係を報じるものとしては、大手全国紙でもしばしば一面をにぎわせています。非常に大きな紙面形成になってもいます。けれども、沖縄の二紙と本土のマスコミとでは、どこが違うかというと、「怒りを起こさせない」という本土と、「そうではない。本当の事実を知らせないといかん」という沖縄─この違いが大きいでしょう。
沖縄の新聞を読み始めた頃、本土とどこか違うと感じたのですが、そのことはすぐに分かりました。それ以来、この点を非常に強く意識しています。占領支配と日本マスコミ
それではなぜ、日本のマスコミは全体として「怒りを起こさせない」となってしまったのか。その本を正せば、第二次大戦での日本の敗戦と、その後の米軍を中心とする連合国の占領支配に遡ります。
以下略
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