中国はなぜ電気自動車が好きなのか? 北京とワシントンとローマ帝国の滅亡
2018年12月15日
Caleb Maupin
New Eastern Outlook
数字は自ら物語る。1月から10月までに、746,000台の新エネルギー乗用車が中国で販売された。2018年末までに重要な技術中枢都市深セン市の全てのバスとタクシーが電動になるだろう。大連市の中央区は2020年までにこの基準に達することを期待されている。2014年から2017年までに、中国の製造業者が、358,000台の非化石燃料のバスを製造した。
ドイツ国際協力公社のサンドラ・レッツァーの電気自動車に関する発言をウォール・ストリート・ジャーナルが引用している。「中国はレースでの唯一の国です。全て中国自動車メーカーです。」
新エネルギー自動車推進は、習近平と共産党が布告した「中国製造2025」技術プロジェクトの中核だ。2009年から2017年までに、電気自動車に補助金を提供するため、中国政府は480億ドル使った。
一方、ホワイトハウスは違う方針を打ち出している。12月3日、ホワイトハウス国家経済会議委員長ローレンス・クドローは、電気自動車を製造するアメリカ自動車メーカーへの助成金が、まな板に載っていると発表した。彼は「我々は終了を望んでおり、助成金を終わらせるつもりだ、オバマ政権による他のものも」と発表したが、発表はアメリカが製造した自動車への、中国の40%関税を終わらせるトランプと習近平間合意後に行われた。
中国が電気自動車を死にもの狂いで推進し、他方リーダーのアメリカは気が進まないように思われるのはなぜだろう? これまでのところ、アメリカ政府による唯一の動きは、自動車メーカーへの僅かな助成金だったが、この小さな動きさえ縮小間際だ。
化石燃料経済:人類のための経済刑務所
欧米先進国資本家の徒党が世界経済支配者として出現して以来、石油は不可欠だった。ジョン・D・ロックフェラーのスタンダード・オイルの末裔は、エクソン・モービルとして知られる最大の超石油メジャーで、世界的に成功している。1938年に石がアラビア半島で発見され、まもなくイギリス人は、武器や他の支援で、サウド家に権力を掌握させようと努力した。
ロシア帝国は、ロスチャイルド銀行王朝と、様々なスイス、イギリスの石油会社にアゼルバイジャン油田の利用権を与えた。1917年のロシア革命後、ソ連新政府によって差し押さえられた石油を奪還する無駄な努力のためボルシェビキ赤軍と戦うべく、イギリス軍が、アゼルバイジャンに派兵された。
ウォール街とロンドンはグローバル石油市場を買い占めた。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートや他の専制的属国が、中東での彼らのアクセスと支配を保証している。ナイジェリアの貧困に陥り腐敗した国家機構は、BP、シェル、エクソン・モービルやシェブロンのために無制限のアクセスを可能にしている。水圧破砕で、アメリカは輸入国ではなく、輸出国となった。
1917年のロシア革命は、諸国がこの経済的な枠組みに対抗するためのドアを開いた。1920年、ボリシェビキは、バクーで「東洋諸民族大会」を召集した。最終的にソ連は、石油豊富な中東での、愛国的士官やバース党運動や、アフリカと中南米全体の様々な社会主義者や民族主義者と提携するようになった。
冷戦時に始まったプロセスの結果、ロシアやベネズエラやイランや少数の他の国々は自国石油資源の支配権を掌握した。彼らはウォール街、ロンドンの独占者と競争して、現在石油を輸出し、収益を独自の経済を構築するために使ってきた。これらの国は、独占権を確保し、彼らを市場から押し出す狙いの欧米銀行家による絶えざる破壊活動と妨害行為と戦っている。独立して石油を輸出していたイラクとリビアの社会主義政府は、直接人道的大惨事に導いているアメリカによって率いられた介入や難民危機やテロの増加によって倒された。
ジョージ・W・ブッシュ政権時代、石油価格が1バレル110ドル、歴史上最高の一つにまで急騰した。更に、オバマ政権下の2014年、石油価格がある時点で、27ドル以下の壊滅的に低いレベルに落ちた。これら劇的な変化は全世界の人々に大きな問題をもたらした。石油中心とする経済で、発展途上国は、欧米銀行家の傀儡政府や、お雇い家臣によって行われる利己的操作のなすがままにされた。
国家活性化という中国の夢
世界的石油金融システムが出現すると、五千年の歴史をもつ中国文明社会は前例がない屈辱に直面した。イギリスは、中国に阿片輸入と、保護関税を設定しないよう強いて、二度のアヘン戦争を行った。ドイツ、イギリスと他の西欧列強は日本を支持し、経済的に中国を破壊し、発展を阻止した。
だが中国人は反撃した。孫文博士の民族主義運動が中華民国を生み出し、蒋介石が孫文の理想を裏切った後、中国共産党は新しい国を作る戦いの先導に力を注いだ。
欧米の経済的支配と国内の後進性に対する戦いで、民族主義の中国国民党が1920年代に得ていたと全く同様、中国共産党はソ連から重要な支援を受けた。1930年代に、ソ連は鉄鋼の最大生産国になり、文盲をなくし、水道と電気を全国にもたらし、世界大国になった。ソ連はその巨大な石油資源の採取、精油を始めた。
1949年、中国共産党が権力を握ると、ソ連と緊密に提携した。中国最初の製鉄所と多くの発電所は、ソ連の援助で建設された。中華人民共和国の最初の11年間、ロシアとの深いレベルの友情と協力があった。
1961年以降、中国はソ連の支援を受けなくなったが、工業化の努力を続けた。中国は1966年に大規模中国パキスタン友情ハイウェー建設を始めた。これは世界で最も高い所に位置する道路で、2018年に勃興した中国パキスタン経済回廊(CPEC)の基礎になった。
中国の弱点の一つは、国内石油資源がごくわずかしかないことだ。中国共産党が国家近代化と工業化の道に進むにつれ、外国石油と天然ガスに対する依存度が増した。
中国は様々な国から石油を輸入しているが、石油市場は、ウォール街とロンドンの銀行家に支配されたまま、彼らが発展途上国を支配するのを可能にしている。中国の石油の多くが海路で輸入されるため、中国が南シナ海で安全保障を維持することが非常に重要になった。近年、この海域での、アメリカ軍と中国軍間の緊張が増加した。
中国は、同様、アメリカに支配されたパナマ運河に代わる選択肢を作り出そうと努力した。現在、中国はニカラグア社会主義政府と共に、貿易船舶用の代替経路を構築する400億ドルのプロジェクトで働いている。
ローマ帝国の滅亡から学ぶ
化石燃料経済は、ウォール街とロンドンの世界経済支配に欠くことができない。この理由で、彼らは技術的進歩を危険だと考えている。一方、自身化石燃料に大きく依存しているイランやロシアのような国を含め、世界中の多くの国が、石油を基本とする国際秩序から脱出する取り組みを進める中国と手を結んだ。
最近、ブラックベリー社上級副社長ケイヴァン・カリミが、中国は新エネルギー自動車のみならず、運転手不要の面白い可能性でも世界をリードしていることを最近はっきり語った。カリミのこの発言が引用されている。「自動運転が成功すれば、私は中国がリーダーになると思う。インフラがないために、試すだけの他の全員と比べ、インフラがあるので、自動車を生産し、実際道路に送り出せる事実によって、中国はリーダーになると信じている。」
ローマ帝国の滅亡を、技術的進歩の受け入れを拒否したことに帰する人々は多い。新しい農業技術や、道具や商品を生産する方法を開発するのではなく、ローマ人は自分たちの農業生産の衰退を見過ごしたのだ。彼ら自身の生産能力が低下するなか、ローマ人は、他国民を征服し、彼らの収穫と資源を略奪し、穴埋めするだけだった。
生産力を高めようとするのをやめたためローマ帝国は崩壊した。ローマは社会進歩を抑え、他国や国民を押さえつけることに頼るという規則の協定を、世界と結んだのだ。
他方、中国は急速に自身を変え、反対のアプローチにおけるグローバルな超大国としてのその地位を復活させた。中国共産党はマルクス主義と歴史の物質主義に導かれて、人間の進歩を不可欠であると考える。さらに、1978年、中国は、改革と開放を始め、公然とマルクス主義をゆがめ、貧困を崇拝した四人組として知られる極左主義者の徒党を追放した。
歴史は前進しており、中国は歴史とともに前進するつもりだ。だが依然、疑問は変わらない。アメリカは時代遅れの経済の枠組みを残しておこうとするつもりなのだろうか? ウォール街とロンドンの銀行家が確実に超利益を生んでいる間、アメリカ国民は、古代のローマ人のように、生活水準と生産能力が減少してゆくのを見ている。彼らは、政府に優先順序を変えるよう強いることが可能だろうか? 時間がたてばわかるだろう。
Caleb Maupinはニューヨークに本拠地を置く政治評論家、活動家。彼はボールドウィン-ウォレス大学で政治学を学び、オキュパイ・ウォール街運動に鼓舞され、参加していた。オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。
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異神と絶望が統一会派という暗いニュースを読んだ。ローマ属国滅亡史の本でも探そうか。日刊IWJガイドには、あきらめずに戦う方々の記事もある。
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