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2018年12月17日 (月)

サウジアラビアがアメリカ同盟国ではないと想像してみよう

ケイトリン・ジョンストン
2018年12月14日
medium.com

 サウジアラビアが主導する対イエメン戦争で、地球上で最もひどい人道的危機を終わらせるため起きる必要があるだろう多くの措置の第一歩として、アメリカ上院は、56対41の投票で、最終的にアメリカの参加を終わらせる法案を成立させた。

 合同決議は、アメリカ無人機がイエメン領空をパトロール飛行し、アルカイダに対する「対テロ戦争」で死の雨を降らせるのを可能にしており、下院共和党が無関係な農場法案に付属させた信じられないほど低俗な付帯条項のため、今年下院を通過することができない。アメリカは既に先月時点で、空爆作戦で、サウジアラビア戦闘機への燃料補給支援を終わらせているので、サウジアラビアとアラブ首長国連邦へのフーシ派反抗者に対する若干諜報と偵察援助の他には、戦争に対する実際のアメリカ参加に関して、決議が多くを変えるとは思われない。トランプはどんなイエメン決議も拒否権を行使すると予想されるが、上院決議は拒否権行使に対抗できる大多数の賛成で通過したわけではない

 それでも、一歩ではある。これまで法外なほど異議申し立てを受けていない行政府の戦争権限に、議会が若干の抑制と均衡を課すことに向かって、アメリカ政府を、アメリカの親密な同盟国サウジアラビアによって行われているイエメンに対する恥知らずな戦争犯罪への反対の方向に動かすことでも、正しい方向への歩みだ。最後の部分は、考えるのにほんの少し時間をかける価値があると私は思う。

 Armed Conflict Location and Event Data Projectの研究は、この戦争で、我々が(何年も、彼らがイエメンについて言及しようと感じたごく稀な機会に主流メディアから聞かされる、10,000人という数字の8倍、最高80,000人が亡くなっていることを示している。この数が、サウジアラビアによる冷酷な輸入封鎖と、農場、漁船、市場、食物貯蔵場所やコレラ治療センターを意図的に目標設定した空襲の結果、飢餓やコレラで亡くなった他の数えきれない何万人もの人々ではなく、軍の暴力による死のみであるのを指摘しておくのは重要だ。5歳以下の子供だけでも、飢餓による死亡者数で、およそ85,000人と信じられている。

 キャピトル・ヒルの官僚がのんびり退屈な書類作成をし、外交官が神政湾岸専制君主と友好関係を築いている間に、それが起きている。もしサウジアラビアがアメリカの同盟国でなければ、この問題は全く異なる扱いを受けるだろう。

 去年5月、当時のレックス・ティラーソン国務長官は、アシスタントで強烈な対イラン・タカ派のブライアン・フックからメモを受け取った。メモは、国務省操作の微妙な点について苦闘する政治新米ティラーソンを教育するよう意図されており、ワシントンの同盟者と、敵と交渉するためのワシトンの標準的プロトコルを展開していた。アメリカの敵、具体的には、人権を侵害している中国、ロシア、北朝鮮とイランをあげ、人権を侵害しているアメリカ同盟者の例として、エジプト、フィリピンとサウジアラビアをあげ、人権問題は、同盟国ではなく、敵に圧力をかけるためのものだとフックは書いてた。

 「エジプトやサウジアラビアやフィリピンなどのアメリカ同盟諸国の場合、対テロを含め、様々な重要な理由で良い関係を強調する上で、人権に関し率直に困難な妥協をするわが政権は完全に正当化できる」フックは書いていた。「現実的な成功する外交政策のための一つの有用な指針は、同盟者を区別し、敵より良く扱うべきだ。さもなければ、我々にあるのは、より多くの敵と、より少ない同盟者ということになる。アメリカ同盟国に関して、理想と利害関係の均衡を保つのはよくあるジレンマだ。我々の競争相手に関しては、ジレンマはより少ない。我々は海外でアメリカの敵の強化を目指していない。我々は彼らに圧力をかけ、競争し、出し抜くことを目指している。この理由で、我々は中国、ロシア、北朝鮮とイランとのアメリカ関係に関し、人権は重要問題と考えるべきだ。これはそうした国々の中で行われている道徳的問題の慣習に対する懸念のためだけではない。戦略的に、こうした政権に人権を強要して、代償を課し、圧力をかけ、彼らから主導権を取り戻すためだ。」

 実際これは、国務省のような公式政府機関のみならず、主流メディアを含め非公式なものでも、アメリカ政府で同様に見られる類の行動だ。残忍な警察の対応で、抗議参加者が大量逮捕され、目を撃ち抜かれ手を吹き飛ばされたのに、富豪に雇われた評論家連中が無視し、論評の一つのささやきもないのをご覧願いたい。もしこれがロシアで起きていたら全て口コミで素早く広がり、大衆の意識に無理やり押しつけられるのを知っている。

 もしサウジアラビアが「同盟国」ではなく「敵」陣にいれば、我々は、ほぼ4年間、イエメンでの殺戮に関する一定のマスコミ報道を見ていたはずだ。一年以上、イエメンに一度も言及しないMSNBCは、去年涙ぐんで、シリアで起きたとされる「独自で恐ろしい」サリン毒ガス攻撃を報道したのと同じ緊急性で、主流メディアを含め、死に瀕した子供たちを描写しており、定期的にそうしていたはずだ。イエメンの餓死しそうな子供たちは棚上げされるのでなく、欧米の意識の最前線にあって、それを止めさせようという要求が津々浦々で叫ばれていたはずだ。

 本当にそうなのだ。「協力者」陣営から「敵」陣営に移行するという一つの愚かで、思慮の無い変更で、イエメンの大虐殺に対する欧米世界の応答で、天と地の違いをもたらすだろう。サウジアラビアの皇族は中傷されるだろうし、その中傷は制裁に対する支持と世界の舞台からサウジアラビア王国を押し出す戦略をでっち上げるのに使われるだろう。不満の種を蒔くため、CIAの機密活動が実行され、不満の炎をかき立てるのを助けるため、飢餓制裁が、サウジアラビア一般国民を標的にするだろう。侵略か、計画されたクーデターによって、政権転覆が行われるだろうし、その後、静かに全てアメリカ・ドルでのサウジアラビア石油輸出にすぐさま移行する傀儡政権が据えられるはずだ。

 その間、サウジアラビアと仲良くし続けようとするほど彼が愚かなら、神に祈ろう。ロシアとの共謀以上に、サウジアラビアとの共謀の遥かに多くの証拠がある。全く中身の無いロシアゲートは、サウジアラビア政府との直接の金融的つながりに関する遥かに具体的で明白な物語、サウジアラビア皇太子の密使によるトランプの2016年当選を手伝うという申し出、トランプの義理の息子ジャレッド・クシュナーが「彼の支配下にある」というサウジアラビア皇太子ムハンマド・ビン・サルマーンによる発言に取って代わらているはずだ。トランプの身の毛がよだつような輝く球体の写真は、それだけで、主流のサウジアラビア・ゲート陰謀論者を難治性ヒステリーにするはずだ。

 もしサウジアラビアがアメリカ同盟国でなければ、9/11事件直後に侵略されただろうし、強制的に政権を変えられていたはずなのだから、もちろんこれのどれも決して起きる可能性はなかったろう。

 けれどもサウジアラビアは、アメリカ同盟国で、しかもに非常に緊密だ。オイル・ダラー取り引き、主要な要衝としての位置、社会病質的な狙いを推進する上で、膨大な富を、政府の不透明なベールの背後で自由に動かす能力は、アメリカで中央集権化した帝国の世界支配の容赦ない探求の上で値段のつけようがない資産になった。これは帝国がたまたまMbSで味わうかもしれないどんなつまらないことにもかかわらず、どのようなジャーナリストの不運な骨のこぎりとの遭遇にもかかわらず、事実であり続ける。

 中東を支配する争いは、この世界エリート権力の最重要優先事項の一つであり続けているので、彼らは死んだ子供たちの少数の山に、重要な同盟を妨げさせないため、できる限りすべてのことをしようとしているのだ。イエメンでの虐殺は現在、世界中で起きている最も悪いことの一つで、働いている力関係のせいで、我々は傷を癒やす上院の快い票決以上にもっと多くのことが必要だ。それは一歩だ。我々は前進し続けなければならない。

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記事原文のurl:https://medium.com/@caityjohnstone/imagine-if-saudi-arabia-was-not-a-us-ally-31ad56fe9876

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 石油が出ない同盟国、つまり属国は、かわりに、ありとあらゆるものをむしり取られる。畜産を含む農業、漁業、保険、水、国防という名目でのポンコツ戦闘機や、イージスアョアを含むがらくたの押しつけ、傭兵基地建設その他もろもろ。膨大な富を、政府の不透明なベールの背後で自由に動かす傀儡政府の能力は、アメリカで中央集権化した帝国の世界支配の容赦ない探求の上で値段のつけようがない資産になった。これは帝国がたまたま三代目連中で味わうかもしれない、どんなつまらないことにもかかわらず、事実であり続ける。

 たまには嬉しいニュースもある。
「日立、英原発計画を凍結へ 安倍政権輸出案件、全て暗礁に」という報道。
人の顔をした怪物以外には、日本の庶民にとっても、世界にとっても良い話題。

 とはいえ現実は、日刊IWJガイドの最初にあるように、棄民政策着々進行中。
フランスと違い、世界最大の属国民は、ゆでがえる状態。大本営広報部洗脳によるものなのか、はじめから、ぼけているのか、素人には分からない。得票率と同じ支持率25%ならわかるが、倍近くある不思議。度し難い縁なき衆生?

 植草一秀の『知られざる真実』記事のように「消費税増税とともに消える安倍内閣」となって欲しいもの。以下は、日刊IWJガイドの引用。水道民営化がゆきつくところ。

 岩手県雫石(しずくいし)町の一部地域に水道を供給している民間会社が利用者に新たな料金負担を要求し、支払わなければ水道の供給を停止すると一方的に通知している問題で、本日17日が支払いの期限とされています。

※「新たな料金負担しなければ水停止」 雫石、業者通知で混乱(岩手日報、2018年12月9日)
https://www.iwate-np.co.jp/article/2018/12/9/30640

 雫石町長山岩手山の住宅やペンションなど35軒に水道を供給している宮城県仙台市の民間会社「イーテックジャパン」は12月8日、住民説明会を開き、井戸水を汲み上げるポンプの電気料金負担を住民に要求。同社は経営悪化のために9月、10月分の電気料金を滞納していますが、この電気料金負担を住民に押しつけるだけでなく、電気料金を支払えなければ井戸水を汲み上げるポンプは動かせないというのです。

 イーテック社は住民説明会で、「なんでこっちが頭を下げるのか。うちは水道供給を止めた方が赤字は減るんですよ」などと述べました。しかし、住民の中には、同社の身勝手な方針に屈することなく、「経営悪化を理由に料金を追加請求するのは不当」であると主張する人々もいるといいます。

※水道法改正の裏で…民間業者「水を止める」と住民“脅迫”(日刊ゲンダイ、2018年12月16日)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/243861

※住民有志、支払い拒否へ 雫石・民間水道料問題(岩手日報、2018年12月15日)
https://www.iwate-np.co.jp/article/2018/12/15/41137

 12月10日に閉会した臨時国会では、水道事業の管理・運営権を民間業者に「委託」する改正水道法が、強行採決を経て成立しました。水道事業が民営化されたことで、今後、雫石町のような事例が続出することが強く懸念されます。

 この雫石町の問題は、日本全国の住民の「命」にも関わる非常に大きな問題です。水道民営化の危険性を訴え続けてきたIWJは、本日17日から動画班の八重樫拓也記者を雫石町に派遣し、現地の状況をお伝えします。

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