サウジアラビアに対してトランプは寛大だが、皇太子は懸念すべき
2018年11月22日
Melkulangara BHADRAKUMAR
Strategic Culture Foundation
11月20日の、サウジアラビアを支持することに関するトランプ大統領声明は、異常な率直さゆえ、アメリカ外交年代記に独特な文書として残るだろう。部外者が、アメリカ外交政策は全く自己中心的で、計算高く、無節操で、実に傍若無人だと考えるのと、アメリカ大統領が、それを確認するのは全く別物だ。
火曜のトランプ声明にある衝撃的メッセージは、アメリカ「例外主義」が全くのたわごとだということだ。トランプは前進したがっている。ジャマル・カショギが何だろう?
そうは言うものの、トランプ声明は多かれ少なかれ想定通りだ。一言で以下のように言い替えられる。「アラブの首長連中は金の卵を産むガチョウだから、我々は彼らを決して殺さない」。
ところが、わき筋もある。最も重要なのは、トランプは、サウジアラビア皇太子ムハンマド・ビン・サルマーン擁護を用心深く避けていることだ。それどころか、ジャマル・カショギ殺人に関して「全ての情報を評価し続けている」諜報機関が、近い将来「皇太子はこのいたましい事件を知っていた。彼はしたのかも、彼はしなかったのかも!」と証明さえするかもしれない可能性を彼は排除していない。
トランプは自信がないか、あるいは公的に認めている以上に多くを知っているかのいずれかだ。重要なのは、トランプがサルマーン国王と皇太子を区別していることだ。トランプはこう付け加えている。「いずれにせよ、我々はサウジアラビア王国と共にある。彼らはイランに対する我々の非常に重要な戦いで、これまで偉大な同盟国だった。我が国やイスラエルや、地域内の他の全パートナーの権益を保障すべく、アメリカ合州国は断固、サウジアラビアのパートナーでありつづける。」
トランプは、アメリカにとってのサウジアラビアの重要性も列記している。アメリカの対「過激イスラム・テロ」戦争に資金を出す自発的意志、(軍装備品購入に関する1100億ドルを含め)4500億米ドルをアメリカ経済に「使い、投資する」合意、そして「…石油価格を妥当な水準に保つという私の要請に対応してくれている」こと。
これは結果的に、サウジアラビア指導部に多言を弄せずに、今後のトランプの期待を効果的に伝える賢明な方法だった。これがトランプにとって「ウイン・ウイン」なのは実に明らかだ。
一方、カショギの「ひどい」殺人を非難し、カショギ殺人に対するサウジアラビアの公式姿勢に、これ見よがしに距離を置き、彼は道徳的に優位な立場に立っている。とりわけ、トルコによる更なる暴露の可能性があるので、状況が本質的に進展するにつれ、彼の姿勢を変え、微調整する余地を生み出すことになっている。
いずれにせよ、トランプは、カショギ問題に関し、サウジアラビアを単刀直入に罰したり、アメリカ-サウジアラビア関係を危険に陥らせたりするのを拒否している。彼は国益を守り、「アメリカ・ファースト」を強く主張することで、それを正当化している。確かにトランプは国内有権者を考慮しており、政治的直感で、アメリカ議会が、サウジアラビアに反対する行動をとるよう彼をごり押しし駆り立てないだろう感じているのだ。
このような「寛容」さに応えて、サウジアラビア政権が彼の要求を満たして互恵関係を示すよう、トランプが期待しているのは確実だ。大中東でのアメリカ軍事行動に対する気前よい資金提供、アメリカ兵器業者に大規模商談をもたらすアメリカ・ファーストへの物惜しみない投資、価格上昇を阻止する水準に石油生産を維持すること(アメリカ経済にとって重要だ)。
だが、こうしたことで重要な点は、サウジアラビアが政策訂正する必要性をトランプが考えていないことだ。イエメンでの戦争に関してさえ、彼は何の要求もしていない。
ところが、トランプは、カショギ事件で、現在のサウジアラビア指導体制を支持の一言も言わなかった。特に、皇太子に関する彼の声明、アメリカ人が良く言う「すべての選択肢がテーブル上にある」は、ひいき目に見ても曖昧だ。
決定はまだ下されておらず、皇太子としてのムハンマド・ビン・サルマーンの継続は、障害になるかもしれないと、おそらくトランプは予想する。実際、サウジアラビア皇太子に対するトランプ声明は示唆に富んでいる。
大きな疑問は、トランプ声明が国際世論でどのように見られるかだ。良かれ悪しかれ、それがアメリカ同盟諸国に基準として奉じられるのだ。平たく言えば、トランプは、カショギ事件の隠蔽を望んでいるという信号を出しているのだ。欧米秩序においては、わざと曖昧な言葉で話す二重語法や、偽善はありふれているので、このような恥知らずの現実主義が、欧米の感受性に道徳上のジレンマを引き起こしたり、衝撃を与えたりすることはありそうにない。リビアとイラクが二つの目立つ例だ。
この発言で、アメリカの道徳的権威は悲惨なほど傷ついた。ひどく傷ついたのだ。アメリカの世界的立場にとって、特にトランプの対イラン・キャンペーンにとって、悪影響があるはずだ。声明中の彼のイランに対する猛烈な非難には何の信頼性もない。
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ジャズピアニストの前田憲男氏逝去。
大本営広報部白痴製造番組、昨日の話題、カリスマ経営者、離婚問題、一家殺人。カショギ事件の片鱗も、このトランプ宣言に関する論評も、洗脳番組で見たことがない。書いている自分が悲しくなってくる。
入管法改悪、衆院通過に、「誠心誠意答弁している。」と自民党幹部。こういう連中が命令して作る「道徳」教科書、奴隷洗脳教本。自民、公明議員が、誠心誠意質問答弁しているのを見た記憶なし。次は、水道民営化。
大本営広報部呆導ではなく、以下のIWJ中継を拝見しようと思う。
【IWJ・Ch4】14:00~「日本外国特派員協会主催『外国人労働者受入れ問題について』 ―外国人技能実習生問題弁護士連絡会 共同代表・指宿昭一弁護士 記者会見(同席:カンボジア人技能実習生、中国人技能実習生)」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch4
「日本外国特派員協会」主催の記者会見を中継します。これまでIWJが報じてきた外国人技能実習生関連の記事は以下のURLからご覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E6%8A%80%E8%83%BD%E5%AE%9F%E7%BF%92%E7%94%9F
【IWJ・Ch6】19:00~「市民連合シンポジウム『安倍政権にかわる新しい選択肢』」
視聴URL: https://twitcasting.tv/iwj_ch6
「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」主催のシンポジウムを中継します。登壇予定者は、立憲民主党 福山哲郎幹事長、国民民主党 平野博文幹事長、 日本共産党 小池晃書記局長、社会民主党 吉川元幹事長、自由党 森裕子幹事長、無所属の会 大串博志幹事長。
これまでIWJが報じてきた市民連合関連の記事は以下のURLからご覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%E5%B8%82%E6%B0%91%E9%80%A3%E5%90%88
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