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2018年11月20日 (火)

フーシ派を打倒する戦術としてのアメリカとイギリスのイエメン停戦要求

2018年11月16日
Finian CUNNINGHAM
Strategic Culture Foundation

 一見、それは肯定的な動きのように思われるかもしれない。トランプ政権とロンドンは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦に、イエメンでの法外な戦争を停戦するよう圧力をかけている。ワシントンとロンドンは、交戦中の両陣営に、1カ月以内に和平交渉に入るよう要請もしている。

 そのどこが悪いと、皆様は問われるかもしれない。そう、2014年末に、イエメンを支配した反抗者フーシ派は言っている。アメリカ、イギリス、フランスに軍事的に支援されたサウジアラビアに率いられた連合により、イエメンは、これまで3年間侵略下にあった。中東で最も貧しい国に対する容赦ない戦争は、国連によれば、住民の2分の1以上、1400万人の人々に飢餓の危険がある、数十年中で世界で最もひどい人道的危機をもたらした。

 それゆえ、適切な法的、道徳的行動方針は、単に停戦や協議だけではない。欧米に支援されたサウジアラビア・首長国連合が、即座にイエメンに対する犯罪的侵略を止めることだ。要するに、イエメンの主権問題への外国による干渉を止めろということだ。

 アメリカのジェームズ・マティス国務長官とイギリスのジェレミー・ハント外務大臣の停戦に対する最近の呼びかけは、イエメンでの大変な人々の苦難に対する人道的懸念によってかり立てられているように思われる。

 だが、彼らの勧告を子細に読むと、本当の狙いは、彼ら政府が大いに支援するサウジアラビア連合の血まみれのイメージをきれいに磨き、第二に、イエメン政治に、外国の過度な影響力をもたらす交渉枠組みにフーシ派を誘い込むことにあるのを示唆している。

 先週、2015年3月からイエメンを攻撃し、一般人の恐ろしい死者の数をもたらしていた、サウジアラビアと首長国軍用機向けの空中給油飛行を停止したとワシントンは発表した。サウジアラビアと首長国による空襲無差別殺害は、欧米マスコミに軽視されているものの、十分記録に残されている。欧米マスコミは、奇怪にも、少なくとも、これまでの2年間、全く変化しないイエメン死者数10,000人を繰り返し続けている。空襲による実際の死亡者数は不明だが、50,000人付近である可能性が高い。

 もし公式の人道的懸念が本物であれば、イエメンでの殺人作戦に対するアメリカ、イギリス、そしてフランス軍の支援は、数カ月、いや何年も前に止めらていたはずだ。

 これが疑問なのだ。ワシントンとロンドンとパリが、なぜ突然、停戦と、それに続く政治的協議要求に取り組んでいるのだろう?

 一つの要因は、疑いなく、サウド家につながる暗殺者によるサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギの野蛮な殺人だ。10月2日に、イスタンブールのサウジアラビアの領事館で、カショギが残酷に殺され、遺体が細かく切り刻まれ、業務用の酸に溶かされたとトルコ当局は考えている。トルコ当局によって得られた録音テープが、反体制派ジャーナリストに対する殺人計画に、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子を巻き込んだ。

 カショギ殺害のぞっとするような詳細と、サウジアラビア支配者が彼らの残酷さを包み隠すため発表した露骨な嘘で、ワシントンとロンドンとパリのサウド家との親密な結びつきに対する巨大な圧力が盛り上がった。大衆の怒りが、数10億ドルの武器取り引き契約をキャンセルする制裁をリヤドに課すことを要求したのだ。

 恐ろしいカショギ問題と、このようなサウジアラビア専制政権との、アメリカ、イギリス、フランス政府の関係にまつわる深刻な不面目が、これら欧米列強に、広報上の被害防止対策を開始するよう促したことは重要に思われる。

 欧米列強と、そのサウジアラビア傀儡が、傷ついた公的イメージを修復する機会を、イエメン戦争がここで提供することになったのだ。

 イエメンに停戦を押しつけることで、ワシントンとロンドンとパリは「人道的苦難」を軽減する目的で、サウジアラビアに対し「強硬になって」いると主張できる。停戦に対する欧米の要求に対応する素振りをすることで、同様に、サウジアラビアは、人道的関心から折れるのだと主張できる。

 しかしながら、そのような言い訳も、全人口の80-90パーセントが食料品や他の重要な供給を頼っている紅海の港ホデイダ市を、サウジアラビアと首長国に後援される現地民兵が封鎖するのを止めなかった。換言すれば、欧米に後援されたサウジアラビア連合は、フーシ派反抗者と、多数のイエメン人を屈伏させるため飢餓戦術を使っているのだ。それは恐ろしい戦争犯罪だ。

 マティスが停戦で呼びかけているのは、イエメン内の全重火器を、国際連合平和維持軍の支配下に置くことだ。そこから反抗者が、首都リヤドを含め、サウジアラビアを酷く悩ませるミサイル攻撃しているフーシ派反抗者が、サウジアラビア国境から撤退することもワシントンは要求している。フーシ派は空襲に反撃して、サウジアラビアの領域を襲っているのだ。

 アメリカ、イギリスとフランスが得ようと努力しているのは、第一に、カショギ殺害に関する不愉快な報道からの休息だ。もしイエメンを巡る「人道的呼びかけ」が欧米大衆の怒りをなだめるのに成功すれば、これら政府は、サウジアラビア政権に高額な武器契約を売りつけ、いつもどおりの仕事を続けることが可能になるだろう。

 第二に、 欧米とサウジアラビア双方の公的イメージを磨き上げる「和平交渉」にフーシ派反抗勢力を引き込むことで、同様に重要なのは、反抗者の革命政府に、妥協を受け入れるよう強要できることだ。サウジアラビアが支援する追放されたイエメン指導者マンスール・ハーディ残党と一緒に交渉参加することで、フーシ派は、必然的に譲歩し、追い出された連中、打倒され信用を失った政権との妥協・和解を受け入れなければならない。

 フーシ派が権力を掌握して以来、サウジアラビアで亡命生活しているマンスール・ハーディは、その汚職と、サウジアラビアとアメリカの傀儡であることで、大半のイエメン人からあしざまに言われている。追放された彼の残党は、欧米メディアによって、いつも決まって、偽って「国際的に認められたイエメン政府」と呼ばれている。

 彼が2015年初め、国から屈辱的に逃げた際、フーシ派反抗勢力は既に民衆反乱の先頭に立つのに成功していた。反抗勢力はシーア派イスラム分派を自称しているが、全てが彼らが多元的ガバナンスのため、比較的民主的な綱領を持っていたことを示唆している。

 追い出されたマンスール・ハーディの、サウジアラビアとアメリカのスポンサーは、2015年3月末、対イエメンの航空戦を開始して、自分たちの傀儡の打倒に反撃した。イギリスとフランスも、軍用飛行機やミサイルを提供して、儲かる大虐殺に参加し、この戦争は以来絶え間なく、ずっと継続している。

 欧米マスコミが語るもう一つの嘘は、反抗する人々はイランの代理人だというもので、このウソは、イエメンに対する欧米が後援する犯罪戦争を「正当化する」ために使われる嘘だ。イランは外交的にフーシ派を支援しているが、武器供給の証拠はない。たとえあったとしても、それが何だろう?それがイエメンと国民への爆弾投下攻撃を正当化するはずはない。

 イエメンとその国民に加えられた破壊は、欧米マスコミに無視された。報道の欠如にもかかわらず、欧米大衆は恐怖と自分たちの政府の共謀に気付いている。飢餓や基本的な薬の欠如のせいで死につつある骸骨のように痩せた子供たちやの痛ましい映像が、いかに卑劣なほど不十分で遅ればせながらとは言え、若干の行動をとらせるまでに、ワシントンやロンドンやパリを恥じ入らせた。

 アメリカとその欧米同盟国の停戦とイエメン協議に対する最近の勢いは、博愛主義によるものではない。それは、彼らと、そのサウジアラビア傀儡政権双方の血まみれになったイメージを糊塗するための身勝手なPR活動だ。イエメン戦争は、フーシ派革命に対する政権交代への欧米の無駄な取り組みにより、胸が悪くなるような死体安置所になっていることが知られている。フーシ派を強制的に交渉に追い込むことで、欧米列強は別の戦術によって政権交代目的を実現し、同時にPR上の利点を得ることを望んでいるのだ。

 もしワシントンやロンドンやパリがイエメンで苦しみを終わらせるのに本気なのであれば、彼らはイエメン人が外国の干渉なしで、彼ら自身の政治的将来を決定することができるよう、侵略を即座に止めるよう要求するはずだ。だが、サウジアラビアに協力しての、イエメンに対する彼らの干渉が、この犯罪侵略戦争が始まり、継続している理由なのだから、欧米列強は、そうはするまい。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/11/16/us-britain-push-yemen-ceasefire-as-tactic-defeat-houthis.html

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 最近購入した文庫、興亡の世界史『近代ヨーロンパの覇権』「学術文庫版へのあとがき」を先に読み始めたら、356ページこうにあった。これから本文拝読の興味は高まるばかり。

フランスの有名な新聞である『ルモンド』は、2017年6月17日付(電子版では16日付)の社説において、いわゆるグローバル企業の経営トップたちの年俸が異様に高く、所得格差の現状はほとんど「非現実的」とみえるほどひどい状態だ、と指摘している。例としてあげられているのは日産・ルノーを率いるカルロス・ゴーンの1500万ユーロ、GMトップの2200万ドル、業績不振で解任されたフォードの元トップですらじつに1700万ドルといった、とてつもない数字である。

 日本会議の看板と思っていた人物、無関係ですと公言。腐敗した体制のお仲間、皆様、息をするようにウソをつく。下記、今朝の日刊IWJガイドから一部をコピーさせて戴く。

■<新記事紹介>「私は歴史修正主義者ではないし日本会議とは何の関係もない」!? 植村隆氏による名誉毀損裁判の判決を受け、櫻井よしこ氏が日本外国特派員協会での11.16 記者会見で弁明連発!墓穴掘りまくり!!

 「私はリビジョニスト(歴史修正主義者)ではないし、日本会議とは、何の関係もありません」

 記者会見の冒頭、司会者から「リーディング・リビジョニスト(歴史修正主義の指導者)」と紹介され、日本会議との深い関係も指摘されたジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「一方的な見方をしているのではないか」と述べ、「話の前提が間違っている」と強く否定しました。

 今朝の日刊IWJガイドに、拝読中の『知ってはいけない2――日本の主権はこうして失われた』著者インタビューの知らせ。日産会長逮捕の目くらまし大本営洗脳番組と比較にならない重要本のインタビューと個人的に思う。日産会長が、戦争を始めたり、消費税を上げたり、水道民営化や、移民を推進するわけではない。売国を推進するのは東京地検特捜部が決して手を出さない連中だ。

【広告連動企画・IWJ_Youtube Live】14:30~「新刊『知ってはいけない2――日本の主権はこうして失われた』~岩上安身による作家・編集者矢部宏治氏インタビュー」
YouTube視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501
ツイキャス視聴URL: https://twitcasting.tv/iwakamiyasumi

 これから、『街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋』の最新記事 これを見ずして大法院判決を語るな   なんだそんなことだったのか、日韓請求権協定 で紹介されているビデオを拝見予定。

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