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2018年11月22日 (木)

NATO最大の敵は自分自身

2018年11月18日
Ulson Gunner

 事故は起きるものだ。NATOの2018年トライデント・ジャンクチャー軍事演習終了後、ノルウェーで、ロッキード・マーティン製イージス整備したフリゲート艦ヘルゲ・イングスタッド号に事故が起きた。

 石油タンカーとの衝突後、フリゲート艦の船長は全損を防ぐため、船を座礁させるよう命じた。即断はノルウェー水兵の生命を救い、引き上げ作業をより容易にした可能性がある。幸いなことに、生命は失われず、欧米メディアは、わずか8人の負傷者を報じている。

 ヘルゲ・イングスタッド号はノルウェーへの侵略をシミュレートしたNATO演習に参加していた。外交問題評議会CFRが、その記事「NATOのトライデント・ジャンクチャー演習:知るべきこと」で明らかにしている通り、想像上の侵略者は、明白にロシア役だった。

 外交問題評議会記事はこう主張している。

シミュレーションでの侵略者は架空のものだが、演習の環境と規模は、明らかに一つの方向に向けられている。ノルウェーの北極国境を共有するNATOとロシア間の緊張が高まっている。これまでの5年で、ロシアはクリミアを併合し、東ウクライナを不安定にし、シリアの残虐な政権に軍事援助を提供し、欧米の選挙に干渉し、主要な多国間の安全保障条約から離脱するか、あるいは違反したと伝えられている。

 もちろん外交問題評議会が主張していることは、いずれも本当ではなく、論文がロシアに対し突きつけている非難の多くは、ずっと前に大半の欧米メディアさえ放棄したものだ。

 ノルウェーが、決して起きないであろう、ロシアによる侵略に備えるための、このNATO演習のさなかに、高価な船を失った事実は、ヨーロッパの多くが直面する最も重要な脅威は、モスクワによるものではなく、NATO自身によるものであることを示唆している。

 NATOは、楯ではなく、ガンだ

 決して起きないであろうロシアによる侵略に対して準備するため、NATO加盟諸国を主催者としてもてなすのに必要な金額は、ノルウェーにとって、また、軍隊や装備(人員40,000人、航空機120機と、船舶70隻)を演習地域に向けたり/帰還させたりして動かすのに金を使っている他のヨーロッパ諸国にとっても悪影響があるだろう。

 訓練は重要で、信用できる抑止力同様、強い軍を維持することは、西ヨーロッパとロシア両方を含む全ての国にとって重要だ。だが、こうした準備は、国やブロックが直面する可能性のある脅威に比例するべきだ。このような準備は、挑発ではなく、抑止力を作り出すことに向けられるべきなのだ。

 NATOのトライデント・ジャンクチャー演習は、ノルウェー指導部さえ、ほとんどありそうもないと言う「ロシアによる侵略」に対するための本当の準備ではなく、NATOを、より一層ロシア国境に向かう東方拡大を進める演習であるように思われる。

 そのような演習や、その狙いは、NATOヨーロッパ加盟諸国の負担で、主にワシントン(ロッキード・マーティンも含む)の一握りの既得権益集団の役に立つのだ。

 NATOは、主に、ワシントンと、その支配を維持している巨大企業の権益によって動かされ、地球中に、アメリカの野心を広げるために使われる手段になった。NATOのほぼ20年にわたるアフガニスタン占領が、ヨーロッパ防衛の上で、一体どういう関係があるのかについて、信頼できる説明できる人はほとんどいない。

 ノルウェーにとって、アフガニスタンは、少なくとも10人の軍人の墓となり、数十億ドルの経費を飲み込んだブラックホールとなった。

 同様に、北アフリカの国リビアを破壊し、テロの温床に変え、ヨーロッパに殺到し、社会・経済的緊張の源であり続けている難民危機を引き起こしたのは、アメリカに率いられた(ノルウェーの支援も得た)NATOだった。

 この場合、NATOは直接ヨーロッパの安全保障を損ね、ノルウェーの納税者は大惨事の推進を支援したのだ。

 NATOがヨーロッパを防衛していないのは明らかだ。ヨーロッパ防衛を目指す防衛同盟が持つべき正当な管轄区域を遥かに超え、地球の遥か遠い場で、アメリカの野心を推進するために、NATOはヨーロッパを利用しているのだ。NATOがヨーロッパを利用する際、それはヨーロッパの人々のためにヨーロッパ内で、より有効に使われ得たはずの資金を消費しているのだ。NATOの活動の最終結果は、ヨーロッパの安全保障を支えるというより、傷つけている。

 NATOのトライデント・ジャンクチャー演習は、単にロシアとの緊張を高め、その過程で更にヨーロッパの平和と安定を傷つけることを目指す、このプロセスの延長だ。

 NATOがヨーロッパの平和と繁栄を傷つける他の方法

 軍事同盟と防衛準備を越えて、戦争抑止と軍事侵略には選択肢がある。これらの選択肢には経済協力も含まれる。ここで、ヨーロッパとロシア間の、このような協力は、経済的にロシアを孤立させ、ロシアと西の隣人間の貿易や投資は、それを妨害するアメリカが率いる取り組みによって困難にさせられている。

 ロシアを狙う挑発的演習を行うことで、緊張は更に高まるだけで、しかもロシアとヨーロッパ間にくさびをより深く打ち込むアメリカの取り組みが進んだだけなのだ。

 我々に残されたものと言えば、ワシントンの怒りを買わない別の方法皆無のため、東の隣人を敵と見なすように強制されるヨーロッパだ。

 防衛同盟とされているNATOは、それどころか、緊張を促進し、戦争を輸出し、ヨーロッパの岸から何千マイル離れた外国での軍事冒険のため、加盟国の血と財産を消耗しているのだ。これを考えると、ロシアではなく、NATOこそ、今日ヨーロッパが直面する最重要の脅迫であるように思われる。

 Ulson Gunnarは、ニューヨークを本拠とする地政学専門家、ライター。オンライン誌「New Eastern Outlook」独占。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/11/18/nato-s-greatest-enemy-is-itself/

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 安保条約、地位協定も、宗主国、属国産軍複合体のために存在しているだけ。それどころか、緊張を促進し、戦争を輸出し、日本から何千キロ離れた外国での軍事冒険のため、加盟国の血と財産を消耗しているのだ。これを考えると、北朝鮮ではなく、安保条約、地位協定こそ、今日日本が直面する最重要の脅迫であるように思われる。

 大本営広報部、例の経営者問題ばかりのよう。水道民営化のような大問題は、しっかり省く。とはいえ、数日前にBSで、水道民営化を扱う番組をたまたま見て驚いた。せっかくの番組、地上波でないのがみそだろうか?

 ※食い物にされる水道民営化・ダム・治水――国富を売り渡す安倍政権の水政策の裏を暴く!岩上安身による関良基氏インタビュー 2017.4.25
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/375521

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