ワシントンの不快な習慣実演がシリアで計画されつつある
2018年8月30日
Martin Berger
New Eastern Outlook
ワシントンがシリアに対してしかけている代理戦争は、極端に屈辱的混乱以外の何者でもないように見えるが、それを終わりにするという代わりに、ホワイト・ハウスは、方針転換に忙しい。シリアでの軍事駐留を強化する意図をはっきり示しながら、トルコでは非合法化されているクルド労働者党、PKKを支援し続けながら、今アメリカはずっと追求してきた目標である飛行禁止空域を設置するという任務に取りかかろうとしている。
この目標を実現するため、ペンタゴンは、北シリアの複数の都市に、トルコ軍が行う作戦を監視するのに使用されると考えられているレーダー・システムを配備した。アンカラとワシントンの関係は、ワシントンがトルコに対してにらみを利かせるということになれば、史上最悪ということになろう。アメリカの政策立案者たちが、シリアのあらゆる部分から、イドリブに呼び集めている多数の過激派戦士の分遣隊を守るため、北シリア上空で防衛の傘をパッと開こうとしているのは明らかに偶然ではなく、この動きの背後の根拠が見て取れる。もし飛行禁止空域計画が実現すれば、ダマスカスをまだ倒すことができるという希望を失っていない、膨大な量の軍事訓練を受けたこの貴重な精神病質者を、ワシントンが無駄にしたくないのは明らかだ。
アレッポ県北部のコバニと、サリン地域に、既に三つの本格的なレーダー施設と、総計13台の可搬型システムがあり、シリア上空監視に使用される予定だ。シリア国内の飛行禁止空域の急な設置は、シリア・アラブ共和国に対する欧米軍事侵略の新段階となる。このシナリオは、ワシントンは、イラクとリビアで既に実験済みで、これが、アメリカ・シンクタンクが、シリアにおけるこの選択肢を、ほぼ十年にわたって推進している理由だ。
シリア内の飛行禁止空域が宣言されてしまえば、次は、シリアの飛行場を破壊するため、アメリカが率いる連合が高精度兵器を使用し、シリア国軍から近接航空支援を奪うのだ。この計画が実現するようなことになれば、飛行禁止空域に進入するあらゆる飛行機は探知され、破壊される。2011年の昔、ワシントンは、リビアで全く同じ経緯を辿り、リビア軍施設への攻撃を防ぐことが可能なレーダー施設や、発射台を破壊する前に、まずリビア飛行場を使えなくした。
とは言え、国連憲章によれば、国際平和と安全保障を維持する権限は、国連安全保障理事会の肩にかかっていることを忘れてはならない。ワシントンもイギリスのような従順な属国にも、もし他の国々の権利が、彼らの行動によって侵害された場合、連中がやりたい放題のことをする特権はないのだ。国際平和と安全保障に対する何らかの脅威が出現した際、行動指針を決定するのは安全保障理事会だ。国連安全保障理事会に、北シリアに飛行禁止空域を設定するよう強制する最後のあがきの企みで、アメリカ合州国と同盟諸国は、またしても、ダマスカスに罪をなすり付ける最後のあがきで、今回はイドリブで、新たな化学兵器による挑発を仕組みつつある。
著名なレバノン人専門家ニダル・サビの意見によれば、アメリカとフランスとイギリスがシリアに対して言っている恫喝は、正当化として提示されるイドリブでの化学兵器攻撃という形の口実があれば、対シリア武力介入になりかねない。この専門家によれば、この挑発は、今、ホワイト・ヘルメットとして世界的に知られている、様々なテロ集団の共犯者によって仕組まれつつある。
化学兵器攻撃を行うため、外国人“専門家”がイドリブ県のKafer-Zait村に既に到着している。この地域の本当に自立した情報源によれば、ホワイト・ヘルメットが、化学兵器を、Afs村から、アハラール・アル・シャームとして知られているテロ集団の倉庫に、二台の大型トラックを使って送付した。この致死的な荷物には総計8人のホワイト・ヘルメット代表が付き添い、テロリスト・リーダーに受け入れられた。後にほぼ半分の致死的弾薬兵器が、南イドリブの別の場所に、そこで行う二度目の偽旗攻撃のために移送された。これらの毒物はKafer-Zait村に対して使われると考えられている。そこで現地住民の集団が化学兵器中毒で苦しんでいるふりをし、中東中で主要メディアによって流布される神経を傷つけるような映像撮影のためホワイト・ヘルメットが雄々しく救援に駆けつけられるようにするのだ。
この偽旗攻撃は、アメリカが率いる連合がしかける、シリア国民に対する全面攻撃の開始となるだろう。主要メディアによれば、アメリカ戦艦が、シリア中の様々な標的に対して、総計56発の巡航ミサイルを発射する準備をしている。更に、この一斉射撃は、カタールにあるアルウデイド・アメリカ空軍基地からのJASSMミサイルを搭載したB-1ランサーによって支援されることになっている。
挑発から、ヒステリー、報復と政権転覆へと至る、このアメリカ外交政策の欠陥ある行動様式には何ら目新しいものはない。だが、それをシリアで使えば、実質的に、国際法と世界の安全保障の終焉となる。ワシントンは敵を非合法化する企みの背後に隠れ、大胆にも国際法の限界を踏みにじれると思っている。しかもワシントンが、不快な習慣を隠すことができずに、ダマスカスからいかなる承認も得ること無しに、細長いシリア領土を違法占領しているのみならず、シリアに対する、更なる侵略行為をしかけるのに、この事実を利用しようとしているのは実に注目に値する。ところが、シリア空軍が破壊されれば、親ダマスカス部隊は、国際テロ勢力に対して持っている最後の強みを失うことを誰も議論しようとしない。
しかも、ロシアは、過激派戦士に対する空爆実行に極めて積極的だ。ワシントンは、国連安全保障理事会から禁止区域設定の承認を決して得ることはできず、飛行禁止空域設定の一方的な宣言は、事実上、シリア、ロシア、トルコとイランに対する宣戦布告を意味する。含意は明白だ。ロシア空軍は逃げず、アサドの攻勢の大きな支援になっている爆撃作戦を放棄することはあるまい。
シリア聖戦士は“二つのシャイタン”がお互い地獄の業火で破壊し合おうとするなら、ひたすら喜ぶだろう。
しかし、アメリカ合州国とイギリスにとり、そのような可能性は深刻な結果をもたらしうる。アメリカでは、シリアにおける政権転覆に、ワシントンが固執している背後の理由は、一体何なのか疑う人々の数は増加し続けており、トランプ政権が進んで無視している、あらゆるリスクに本当に値するのか気がかりなものになっている。中東至る所で、あらゆる類の過激派戦士を訓練しているアメリカ人教官連中は“次世代のヌスラ戦線”を育てていると冗談を言うが、こうした技術が、EUとアメリカの内部で試されることになるだろうと知っても皮肉を言っていられるだろうか。
マーティン・バーガーは、フリーランス・ジャーナリスト、地政学評論家。オンライン誌“New Eastern Outlook”独占記事。
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様子見だろうか。イスラエルが、ダマスカスをミサイル攻撃したという。
昨夜の種子法とTPPを正面から扱う報道番組に驚いた。まだ、まっとうな人々がおられるのだ。問題点を指摘する山田正彦元農林水産大臣の意見も紹介された。それに続く、外国人記者番組での、日本の女性差別指摘も立派。ロシア・セボートニャ記者の方は、ロシアでは医師の7割が女性だと説明。パネルにロシアはなかったが、エストニア、リトアニアがそうだった。ただし脳外科では、94%だか、96%だかは男性だという。先進国のふりをしているが、実態は後進国に近いという正論もあった。宗主国が操る同じ売国傀儡連中が70年以上、支配すれば、腐敗は当然。まともな主張は、全て排除される。
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コメント
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この数年私は一年の多くをロシアで暮らしている.日本に戻ると,「ロシアでは医療技術が貧困で大変でしょう」,などと同情されるのだが,そんなことはない.この前ユジノサハリンスク(旧称豊原)で胆管結石の検査を受けたのだが,最新のMRT(日本ではMRIというのかな)核磁気共鳴断層撮影装置を使い,ここの記事にあるように,女性の医師が詳しく診てくださった.二年前のデータでは結石があったのに,消失しているというのだ.ここは交通事故も多いのだが,地の利を生かしてヘリコプターが飛んでくる.勿論救急治療の専門家が同乗している.ただ外国人にとり,困った点はホテルが他の極東都市のに比べ,二倍半も高いことだ.私はコルサーコフ(旧称大泊)との中間にある,唯一林檎が採れる窪地地帯(日本時代はここに林檎農園があった)にダーチャという別荘をもち,そこで不自由なく暮らしている.質素だが,それゆえに精神性の高い人生をおくっているという実感がある.ロシアの野末で客死するのもいいなという感じだ.
投稿: 十三湊淳之介 | 2018年9月 3日 (月) 15時49分