シリア: ホワイト・ヘルメット最後の演技
2018年7月24日
Tony Cartalucci
船が沈没する際、乗組員は乗客より先に救命艇には乗り込まないことが良く知られている。中でも最も高貴なのが、船長と乗組員が船と共に沈むというものだ。すると、より一般的にホワイト・ヘルメットと呼ばれている、いわゆる“シリア民間防衛隊”の卑劣さの水準を我々はいかに評価すべきだろう?
ヨルダン国境とイスラエルが占領しているゴラン高原近くの南シリアで、ロシア空軍力に支援されたシリア軍が、“反政府部隊”の残滓を残虐に扱っていると我々は聞かされている。イギリス外務大臣ジェレミー・ハントがソーシャル・メディアで彼らを表現して言った通り、南シリアの人々は確かに、今までになく“勇者の中の勇者”を必要としている。
ところが、砲声が一番激しい場所に急行する代わりに、ホワイト・ヘルメットは、イスラエル国防軍の支援を得て、コソコソとシリア国境を越えて、ヨーロッパと北アメリカとされているが、国連が彼らを移動させるべく活動しているヨルダンに向かったのだ。
ホワイト・ヘルメットは、ダマスカス政権打倒を目指し、外国が資金提供していた代理戦争の延長以外の何者でもない途方もないウソがこれっきり眠りにつく最後の幕だ。
今やダマスカス打倒は、もはや可能性が無くなった以上、ホワイト・ヘルメットは生き延びるべく、避難している。
芝居の一座
ホワイト・ヘルメットは決して“救援者”ではなく、アルカイダと、その様々な提携集団の広報部門だ。アメリカは、シリアを荒廃させるため長年、テロリストに武器と資金を与えておいて、命を救うための集団に“も”資金提供しているわけではない。そうではなく、ホワイト・ヘルメットの唯一本当の任務は、アメリカとNATOがリビアの破壊を正当化し、実行した手口と同様に、人道的な主題を利用して、代理戦争を補強することだ。
明らかに怪我をしていない人々のビデオ - ほこりと赤いペンキを浴びて - 救援隊員らしきものより、多くのカメラマンが画面に映り込んでいることがよくある、待ち構えている救急車に急ぐ場面。ホワイト・ヘルメット・ビデオの圧倒的多数に欠如しているのは、実際の流血場面、本当の戦争の恐怖と悲惨さ - 大きな傷口、ぶら下がったり、無くなったりしている手足、焦げた肉や髪の毛 - 2011年に、アメリカが支援する代理戦争が始まって以来、本当のシリア人が日々直面しているあらゆる恐怖だ。
2016年、ヨーロッパ中でシリア反政府派によって行われた“セーブ・アレッポ”抗議行動では、俳優が扮装し、ほこりまみれになり、人造血液を塗り付け、シリアを本拠とする仲間のビデオと見分けがつかない光景の中でポーズをとった。シリアで戦争が進行する中、ホワイト・ヘルメットがアメリカとイギリスの政府に資金供給されて、まさに演じていたゲームで批判される代わりの、欧米の大衆を操り、より広範な欧米軍事介入を支持させることを狙った感情に訴える策略の一つだろう。
ホワイト・ヘルメットが戦争プロパガンダを行っているだけでなく、アルカイダと連携している集団のために、そうしていることを暴露する証拠の奔流に対し、あわてて書いた反駁記事で、ガーディアンはこう主張している。
公式にはシリア民間防衛隊として知られているホワイト・ヘルメットは、爆弾が雨あられと降り注ぐ中、瓦礫の中からシリアの一般市民を引き出すべく急行する3,400人のボランティア - 元教師やエンジニアや仕立屋や消防士で構成されている人道団体だ。
シリアで続く内戦中、何千人もの一般市民を救助したことで、彼らは高い評価を得ている。彼らは直接撮影したビデオ映像で、4月の化学兵器攻撃を含む戦争犯罪も暴露した。彼らの活動は、オスカーを受賞したネットフリックス・ドキュメンタリーと、二つのノーベル平和賞ノミネーションを受けた対象になった。
実際、複数のOPCW (化学兵器禁止機関)報告に書かれている通り、ホワイト・ヘルメットは、化学兵器攻撃の証拠を提供したが、それはOPCWが決して検証できない証拠だった。
アルカイダの宣伝屋
OPCWが、証拠を検証できなかった理由は、それを収集し、OPCW調査官に引き渡したとされるホワイト・ヘルメットが、もっぱら、テロリスト戦線 - 特に注目すべきは、アルカイダの様々な提携組織が占領している地域で活動していたためだ。
OPCWは、2017年4月のハン・シェイフンでの化学兵器攻撃とされるものについて、こう報じている(強調は筆者):
…チームにとって、出来事の現場地域訪問のリスクは極めて高いと判断された。それゆえ、チームは申し立ての直後に、観察し、評価し、出来事とされるものの現場を記録するために現場を訪問できず、他の目撃者を、直接戸別訪問することができず、環境試料、および/あるいは、兵器とされるものの残滓を収集することができなかった。
OPCWが検討した全ての証拠と目撃者証言は彼らに手渡されたことを意味している。OPCWは、こう認めている(強調は筆者):
シリア化学兵器違反記録センター(CVDCS)、シリア民間防衛隊(ホワイト・ヘルメットとしても知られているが、以下“SCD”と記す)、シリア・アメリカ医療協会(SAMS)や、シリア Syria Institute for Justice (SIJ)など、いくつかのNGOの代表と連絡することで、FFMは、インタビューすべき多数の目撃者を特定した。これら目撃者たちは証言や関係する証拠をしてくれるものは期待された。
報告書は、攻撃現場に最初に到着したとされるのはホワイト・ヘルメットだったことを認め、攻撃に関する非難の主要な源として、報告書の随所で繰り返し引用している。報告書にはこうある(強調は筆者):
引き渡し時、2017年4月12日と13日に提供されたすべての試料は、SCD [ホワイト・ヘルメット]化学試料部が採取したものだと、チームは伝えられた。試料を採取した化学試料部の一員が引き渡し時に同席し、全ての試料について、情報を提供した。
リスクとして、OPCWチームが証拠そのものを収集するのを妨げたのものについては、“シリア‘ガス攻撃’の死亡者数増す”と題するドイチェ・ヴェレ記事が手がかりを与えてくれる。
ハン・シェイフン市のあるイドリブ県は、大半が、以前アルカイダと連携しているヌスラ戦線として知られていたFateh al-Sham Frontに支配されているタハリール・アル=シャーム同盟に支配されている。
そこがアルカイダのシリア支部、ヌスラ戦線が占領する領土にあるので、OPCWは現場を訪問することができなかった。この事実は現地にそもそも存在していない“穏健反政府派”とされるものに従軍する欧米マスコミの人間を目にすることがない理由でもある。
ところが、ホワイト・ヘルメットは、どこであれアルカイダがいるところにおり、ハン・シェイフン化学兵器攻撃に対応して、試料を収集し、それをOPCWに手渡したとされるアルカイダの“撮影スタッフ・衛生兵”だった。
現場調査は行われておらず、ホワイト・ヘルメットがOPCWに引き渡した試料の出所はどこでもあり得るので、攻撃があったとして、どのような攻撃が行われたのかに関する結論は出ず、まして攻撃をしたかどで、誰も非難できないのだ。ところがハン・シェイフンの出来事で、アメリカ合州国は、シリアの標的を59発の巡航ミサイルによって攻撃することになった。
アメリカに資金提供された挑発者が事件を画策し、証拠を避けたり、欠如したりで、アメリカがシリア攻撃の正当化を急ぎ、2017年6月、シリア政府を攻撃に結びつける証拠の完全な欠如を明らかにするOPCW報告書が刊行されても、欧米は集団で余波を切り抜けるという明らかな例だ。
繰り返し演じられたパターンだ。毎回、化学兵器攻撃とされる現場が、危険なテロリストに占領された領土内にあるため、OPCWは立ち入ることができず、ホワイト・ヘルメットの“化学試料部”が検証不可能な証拠を手渡し、調査が実施され、報告書が刊行され、分析できる前に、アメリカが対シリア軍事攻撃を急いだのだ。
かくして、ホワイト・ヘルメットが、アメリカが、シリアに圧力をかけ、アルカイダに占領された拠点に向け、シリア政府が大きく前進すれば、いつでも軍事攻撃を遂行するのを可能にする戦争プロパガンダの手段として機能していることは実証できる。ホワイト・ヘルメットが“何千人もの一般市民を救っている”という主張については、具体的には、OPCWも、ホワイト・ヘルメットが主張したことを何であれ検証する任務を負った独立組織も、ホワイト・ヘルメットと連中の仲間のアルカイダが占領している領土に立ち入ることができないため、検証することが不可能なままになっている。
ホワイト・ヘルメットは、ホワイト・ヘルメットが、欧米によるシリア軍事攻撃のための一連の口実として利用される非難の主要な源だと認める“オンライン・プロパガンダ機構”の犠牲者に過ぎないと主張するガーディアンなどの連中は、ホワイト・ヘルメットが、主として戦争宣伝屋だという以外、どういう他の結論を導きだせるだろう?
連中最後の演技だろうか?
救助隊員は守ると誓った人々を見捨てることはない。ホワイト・ヘルメットは、明らかに、決して真面目に誰かを守ると誓ったことはない。アルカイダの宣伝部隊として、彼らは、シリア政府の進撃で追い詰められた戦士や他の支援要員と共に避難しつつあるのだ。
ガーディアンは“イギリス、イスラエルによって、シリアから避難したホワイト・ヘルメットの一部を受け入れることに同意”という記事で、こう報じている。
シリアからヨルダンに避難したホワイト・ヘルメットとして知られているシリアのボランティア民間防衛隊約500人のメンバーや家族を、イギリスが喜んで庇護することをガーディアンは把握した。
土曜日夜、イスラエル国防軍により、ホワイト・ヘルメットとその家族が、三つの地点で北イスラエルを横断し、ヨルダンに避難した。イスラエルは、当初、避難者の人数を、800人としていたが、後に人数は、2013年に、この集団をトルコで設立したと見なされている元MI5職員ジェームズ・ル・メズリエにより下方修正された。
かくして、アルカイダと共に、アルカイダのために活動した何百人ものホワイト・ヘルメットとされる連中が、今やヨーロッパと北アメリカ全体に散らばることになる。とは言え、これ自体がホワイト・ヘルメットの最後の演技というわけではない。
北部の県イドリブは依然外国が支援する戦士に占領されている。国境をすり抜けて、イスラエルとヨルダンに行かなかったテロリストは、北シリアで連中の陣地を強化している。シリア軍が北に注意を向け、イドリブ奪還を開始するのは、するかいなかでなく、時間の問題だと言う人々もいる。
そうなった時、ホワイト・ヘルメットはアルカイダの無数の提携者と共にそこに居合わせ、またしても、進展する紛争のさなか、何であれ連中の外国スポンサーが要求する役割を正当化するため証拠をでっち上げ、挑発を画策する戦争宣伝屋の役を引き受けるのだ。
また、たとえ最後のホワイト・ヘルメットが、本当の英雄たちに、治安回復や、弱者救済や、国家再建をまかせて、シリアを脱出したり、シリア国民の中に溶け込んだりしても、ホワイト・ヘルメットが演じた身勝手な策略は、欧米ハイブリッド戦争の標的にされた他の国々での他の代理紛争で繰り返されるだろう。
各国はこれを、シリアを例に、欧米がこの戦術を使い、再び使う警告と受け止めるべきだ。欧米ハイブリッド戦争のあらゆる側面に関し、シリアが身をもって得た教訓は、ホワイト・ヘルメットが人々をそこから救っていると主張しながら、実際は、シリア国民の間に撒き散らした悲劇と悲惨を防ぐため、共有し学ぶべきものだ。
Tony Cartalucciは、バンコクに本拠を置く地政学専門家、著者で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/07/24/syria-the-white-helmets-final-performance/
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大本営広報部、昨日は夜もほとんど見なかった。クーラーで使う電気代のためにも、節約が必要だ。地方発ドラマは見た。出張の余暇を利用して出かけた風景がなつかしかった。
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