アサンジに対する戦争は報道の自由に対する戦争
2018年7月15日
TD originals
Mr. Fish / Truthdig
2012年以来、ロンドンのエクアドル大使館に閉じ込められ、3月以来、外部世界との通信を拒否されていて、差し迫る追放と逮捕に直面している様子のジュリアン・アサンジを、既成マスコミが擁護し損ねているのは驚くべきことだ。アメリカ政府の狂った目標である、発行者の引き渡しは、大企業支配国家に対するあらゆるジャーナリズムの監視や調査を犯罪にする判例になってしまうだろう。漏洩や内部告発が、反逆罪にされてしまう。支配層グローバル・エリートの行動を、完全な秘密で包み隠すことになる。もしアサンジがアメリカ合州国に引き渡されて、刑を受ければ、ニューヨーク・タイムズや、ワシントン・ポストや他のあらゆるマスコミ組織は、連中の大企業支配国家報道がいかに手ぬるかろうと、同じ過酷な検閲を受けることになるはずだ。前例ができれば、ドナルド・トランプの最高裁は、国家安全保障を名目に、あらゆる発行者や編集者や記者の逮捕と投獄を熱心に続けるはずだ。
レニン・モレノのエクアドル政府が、アサンジを追い出し、彼をイギリス警察に引き渡す準備をしている兆しが増している。モレノと外務大臣、ホセ・ヴァレンシアは、アサンジの運命を“決める”ためイギリス政府と交渉していることを確認した。数週のうちに、イギリスを訪問予定のモレノは、アサンジは“相続した問題”で“靴の中の石”だと言い、彼を“ハッカー”と呼んだ。モレノ政府の下で、アサンジは、もはやエクアドルで歓迎されていないように見える。今や彼の唯一の望みは、母国オーストラリアか、亡命者として進んで受け入れてくれる他の国への安全な通行だ。
“エクアドルは、この問題の解決策を探している”とヴァレンシア外務大臣はテレビで述べた。“避難は永遠ではなく、これは避難者の権利の侵害でもあるので、この状況が、我々が見直すことなしに、何年も続くと期待することはできない”
アサンジに大使館での亡命を認め、昨年彼をエクアドル国民にしたモレノの前任大統領、ラファエル・コレアは、アサンジの“運命はもう長くない”と警告した。アメリカ南方軍代表団を歓迎した翌日、アサンジの通信を断ち切った-モレノが“アメリカ合州国の最初の圧力で、彼を大使館から追い出すだろう”と彼はモレノを非難した。
健康を損ねていると報じられているアサンジは、性犯罪容疑に関して尋問に答えるためのスウェーデンへの引き渡しを避けるべく、大使館に亡命した。彼にいわせれば、こうしたでっち上げの容疑で、スウェーデンに拘留されてしまえば、アメリカ合州国に引き渡されるだろうことを彼は恐れていたのだ。2017年5月に、スウェーデン検察は“捜査”と、イギリスに対する引き渡し要求を止め、アサンジを性犯罪で起訴しなかった。ところが、イギリス政府は、アサンジは、それでもなお、保釈条件に違反しているかどで、逮捕、投獄されると言っている。
アサンジ迫害は、反資本主義や反帝国主義の報道機関に対する広範な攻撃の一環だ。深刻な社会的不平等や、帝国の犯罪に対する責任を認めることを拒否している支配者層には、連中の強欲や、愚かさや、略奪を正当化するイデオロギーの隠れ蓑がもはや残されていない。グローバル資本主義と、そのイデオロギー的正当化、新自由主義は、民主主義や富の均等な配分のための勢力としての信用を失っている。大企業が支配する経済・政治体制は、右翼ポピュリストにも、他の国民にも憎悪されている。このおかげで、大企業支配と帝国主義を批判する人々、既にマスコミ世界の端に追いやられている、ジャーナリスト、作家、反政府派や知識人は、彼らにとって危険で、主要な標的になっている。アサンジは、標的リストの最上位だ。
一週間前、ダニエル・エルズバーグ、ウイリアム・ビニー、クレイグ・マレー、ピーター・ヴァン・ビューレン、スラヴォイ・ジジェク、ジョージ・ギャロウェイや、キアン・ウェストモーランドなどの何十人もの他の人々とともに、WikiLeaks発行者の自由を要求する36時間の国際オンライン徹夜の祈りに参加した。ニュージーランド・インターネット党党首、スージー・ドーソンが徹夜の祈りを組織した。エクアドル政府に対するアメリカ合州国による圧力強化の一環で、エクアドル当局によって、3月に、外部世界とアサンジのあらゆる通信が遮断され、彼との面会が停止されて以来、三度目のUnity4J徹夜の祈りだ。3月以来、アサンジは弁護士とオーストラリア大使館の領事館員との会見しか認められていない。
金曜日、米州人権裁判所は、政治的亡命を求めている人々は、大使館や外交事務所に避難する権利があると裁定した。政府は、亡命が認められた人々のその国からの安全な出国を保証する義務があると裁判所は述べている。裁定はアサンジの名前をあげてはいないが、WikiLeaks共同創設者の空港への安全な通行を拒否しているイギリス政府に対する強力な叱責だ。
批判する人々に対して、支配者層はもはや反論できない。そこで連中は、よりむき出しの支配手法に頼っている。手法には、検閲や中傷や誹謗(アサンジの場合、悲しいことに成功した)、ブラックリストや、財政的な締めつけ、脅迫、諜報活動取締法による投獄、批判する人々や、反体制派の人々への、外国の工作員や偽ニュース流布者というレッテル貼りなどがある。商業マスコミが、こうした非難を拡声し、信ぴょう性皆無なのに、絶えざる繰り返しによって、共通の言葉になってしまっている。1920年代と、1950年代の赤の恐怖時代、何万人もの良心的な人々のブラックリストや投獄や国外追放が、復讐の念を持って戻ってきたのだ。これは新たなマッカーシズムだ。
ロシアは選挙に影響を与えようとしたのだろうか? 疑う余地はない。政府はそういうことをするのだ。カーネギー・メロン大学のドヴ・レビィン教授によれば、アメリカ合州国は、1945年から、2000年までの間に、81の選挙に介入した。彼の統計には、ギリシャ、イラン、グアテマラやチリなどの国々で、アメリカが画策した無数のクーデターや、キューバでの悲惨なピッグズ湾侵略は含まれていない。アメリカは、ロシアの粗野な人物、ボリス・エリツィンの再選選挙運動に、25億ドルという大金を間接的に資金援助した。
だが、ロシアは、民主党支配体制が主張しているように、選挙を、トランプ有利に変えたのだろうか? そうではない。トランプは、ウラジーミル・プーチンの傀儡ではない。彼は、労働者男女の権利や強い願望などどうでも良いグローバル資本主義に支配された経済・政治体制から生じた憤怒と欲求不満を利用したイギリスのナイジェル・ファラージやボリス・ジョンソンや、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトルなど、右翼ポピュリストの波の一環なのだ。
民主党支配層は、先進世界の大半のリベラル・エリート同様、大企業資金が無ければ、開かれた政治プロセスでは、権力の座から追われるはずだ。チャック・シューマーやナンシー・ペロシを含む、党エリートは大企業支配国家の産物だ。選挙資金と選挙の改革は、党支配層が一番主張したがらないことだ。連中のご主人大企業を失うような、社会・政治計画を主張するようなことは決してしない。この近視眼と、むき出しの私欲が、ドナルド・トランプの二期目を保証するかも知れない。トランプに忠実な愚かな分派に更に力を与えるかも知れない。これは政治体制への信頼性を浸食し続ける可能性がある。だが民主党エリートにとっての選択肢は明らかだ。政治的に忘却されるか、デマゴーグによる支配に耐えるかだ。彼らは後者を選んだ。連中は改革には興味がない。彼らは、支配階級内部の腐敗を暴露するアサンジのような連中全員を沈黙させると固く決めているのだ。
民主党支配層は、合法化された賄賂というアメリカの体制の恩恵を得ている。ウオール街や化石燃料産業の規制緩和の恩恵を受けている。果てしない戦争の恩恵を受けている。プライバシーや適正手続きの権利を含む市民的自由の制限の恩恵を受けている。軍隊化された警察の恩恵を受けている。緊縮政策の恩恵を受けている。大量投獄の恩恵を受けている。民主党支配層は独裁政治の障害ではなく、幇助者だ。
トランプやファラージやジョンソンなどのデマゴーグは、もちろん、大企業略奪体制を変える意図は毛頭ない。それより、むしろ、連中は略奪を加速するのだ。大企業のための膨大なアメリカ減税成立で、それが起きている。彼らは大衆の怒りを、イスラム教徒、不法就労者、有色人種、リベラル、知識人、芸術家、フェミニスト、LGBTコミュニティーやマスコミなどの悪魔化された集団に向けるのだ。ドイツの第一次世界大戦での敗北と、それに続く経済崩壊で、ユダヤ人が不当に罪を負わされたのと同様に、悪魔化された集団が社会的、経済的機能不全の原因にされる。ゴールドマン・サックスのような腐敗の最中にある大企業が大儲けし続けている。
大半がエリート大学を出て、ハーバード・ビジネス・スクールのような大学院で育てられた大企業幹部連中には、こうしたデマゴーグは不作法で俗悪に見える。彼らは連中の愚かさや、権力欲や、無能さに当惑している。それでも、彼らは、社会主義者や左翼政治家が、自分たちの利益を妨げたり、政府支出を兵器メーカーや、軍隊、私営刑務所、巨大銀行やヘッジ・ファンド、化石燃料業界、チャーター・スクール、私営準軍事部隊、私営諜報企業や、大企業が国を食い物にするのを可能にするよう作り上げられたお気に入りの計画に向けるのを避け、社会福祉に向けたりするのを許すより、連中の存在に耐えているのだ。
皮肉は、大統領選挙に重大な介入があったことなのだが、それはロシアからのものではない。民主党は、リチャード・ニクソンが使った、あらゆる汚い手を超えて、登録簿から何十万人もの予備選有権者を消して、予備選挙で投票する権利を否定し、ヒラリー・クリントンに票がゆくようスーパー代議員を利用し、クリントン選挙運動のために機能するよう民主党全国委員会を乗っ取り、MSNBCやニューヨーク・タイムズなどのマスコミ記事を支配し、ネヴァダ州幹部会を盗み取り、クリントン選挙運動に何億ドルもの“闇の”大企業資金を費やし、予備選ディベートで八百長をした。おそらくトランプを打ち破れていたはずのバーニー・サンダースから指名を盗み取ったこの介入は全く触れられない。民主党の支配体制は腐敗した候補指名プロセスを改革するようなことは一切しないだろう。
WikiLeaksは、クリントン選挙運動対策責任者ジョン・ポデスタの電子メール・アカンウトからハッキングした何万ものメッセージを公開してこの腐敗の多くを暴露した。メッセージが、サンダース指名を阻止する民主党指導部の取り組みや、ウオール街でのもうかる講演を含む、クリントンのウオール街との緊密なつながりを白日の下にさらし、暴露した。クリントン財団の利益相反に関して、また、クリントンが予備選挙討論での質問情報を事前に得ていたのどうか、深刻な疑問も引き起こす。
この理由で、民主党全国委員会は、反ロシア・ヒステリーや、アサンジ迫害を率いているのだ。大統領選挙で不正をする取り組みとされるものでの、ロシアとトランプ選挙運動の共謀者として、WikiLeaksとアサンジを名指しする訴訟を起こしている。
だがロシアの手先として攻撃されているのは、アサンジとWikiLeaksだけではない。例えば、トランプに対する戦いで、民主党側についているワシントン・ポストは、匿名ウェブサイトPropOrNotに投稿されたブラックリストに関する記事を、批判的な分析もせずに載せた。ブラックリストの中身は、PropOrNotが、何の証拠もなしに“ロシア・プロパガンダを忠実におうむ返し”していると主張する199のサイトだ。これらのサイトの半分以上が、極右、陰謀論ものだ。ところが、約20のサイトは、AlterNet、Black Agenda Report、Democracy Now!、Naked Capitalism、Truthdig、Truthout、CounterPunchやWorld Socialist Web Siteなどの重要な進歩派メディアだ。Propagand or Notの略であるPropOrNotは、こうしたサイトがロシアのために“偽ニュース”を流布していると非難したのだ。ワシントン・ポストの見出しは実に明確だった。“ロシア・プロパガンダの取り組みが、選挙中‘偽ニュース’が流布するのを手助けしたと、専門家たちは言う”
何の証拠も提示しないだけでなく、PropOrNotは、一体誰がそのサイトを運営しているかも明かしていない。それなのに、その批判は、標的にされたサイトへのトラフィックを無くすため、グーグルや、Facebookや、TwitterやAmazonでのアルゴリズム導入の正当化に利用されたのだ。これらのアルゴリズム、というか、その多くが軍隊や、治安機関や、監視機関から雇われた、何千人もの“評価者”に監督されるフィルターが、“アメリカ軍”や“不平等”や“社会主義”や、ジュリアン・アサンジやローラ・ポイトラスなどの個人名のキーワードを探し回るのだ。アルゴリズム導入以前は、読者はジュリアン・アサンジという名を入力すると、標的とされたサイトのどれかの記事を見ることができていた。アルゴリズムが導入されて以来、検索結果は、読者にワシントン・ポストのような大手サイトしか表示しないのだ。標的とされた大半のサイトに対する、検索結果からのトラフィックは激減し、多くは半分以下になった。この隔離は、ネットの中立性廃止によって、更に悪化する。
アメリカの破綻した民主主義の現実を取り上げたり、帝国の犯罪を暴露したりするあらゆるメディアが標的にされる。2017年1月の国家情報長官報告書は、私が“On Contact”という番組を持っているRTアメリカに7ページ費やしている。報告書は、ロシア・プロパガンダを流布しているかどで、RTアメリカを非難してはいないものの、内部告発者、反帝国主義者、反資本主義者、Black Lives Matter活動家、水圧破砕反対活動家や、支配体制側が沈黙させたがっている二大政党以外の候補者を含む反体制活動家や批判者を出演させて、この放送局は、アメリカ社会内部の分裂につけこんでいると主張している。
もしアメリカ合州国に、大企業の資金や、商業マスコミから自由で、大企業の支配下にない公共放送があれば、こうした反体制派の意見も、議論で取り上げられるはずだ。だが、そうではない。ハワード・ジンや、ノーム・チョムスキーや、マルコムXや、シェルドン・ウォリンや、ラルフ・ネーダーや、ジェイムズ・ボールドウィンや、スーザン・ソンタグや、アンジェラ・デイヴィスや、エドワード・サイードが、かつては公共放送に良く出演していた。今やこうした批判者たちは出入り禁止になり、コラムニストのデイヴィド・ブルックスのような気の抜けたおべっか使いに置き換えられた。RTアメリカは、外国代理人登録法(FARA)のもとで登録するよう強いられた。この法律は、外国の組織で働くアメリカ人に、外国代理人として登録することを要求している。FARA登録は、沈黙させる取り組みでの、サンジを含めあらゆる自立メディアに対する広範な攻撃の一環だ。
2017年、WikiLeakによる、Vault 7として知られている8,761のCIAファイル公開が最後の侮辱だったように見える。Vault 7には、コンピューター・システムや、スマートフォンのような装置に不正侵入するのにCIAが使うサイバー・ツールの記述があった。元CIAソフトウェア・エンジニアのジョシュア・アダム・シュルトが、文書漏洩とされるもので、諜報活動取締法違反容疑のかどで起訴された。
Vault 7の公表で、アメリカ合州国は、アサンジを孤立させ、大使館から追い出すようエクアドル政府に対する圧力を大幅に強化した。当時のCIA長官マイク・ポンペオは、この漏洩に対して、アメリカ政府は“言論の自由の価値観を我々に対して使うアサンジと彼の同僚連中の自由裁量をもはや許すことはできない”と述べた。ジェフ・セッションズ司法長官は、アサンジ逮捕は“優先事項”だと述べた。
動員で、アサンジを守れるかどうかは我々次第だ。彼の生命は危険にさらされている。エクアドル政府は、彼の基本的な権利を侵害し、彼の亡命を、一種の幽閉に変えた。彼のインターネット・アクセスを遮断して、通信し、世界の出来事を知っておく彼の能力を奪っている。この孤立化の狙いは、アサンジを大使館から追い出し、ロンドン警察に逮捕され、イギリス刑務所に投げ込まれ、更にポンペオ、ジョン・ボルトンやCIA拷問長官、ジーナ・ハスペルの手に渡されるように圧力をかけることだ。
アサンジは、大企業支配国家と帝国主義の犯罪を暴露したかどで迫害されている勇敢で大胆不敵な発行者だ。彼の擁護は、我々の最も重要で基本的な民主的権利の政府による弾圧に対する戦いの最前線だ。アサンジが生まれた国、マルコム・ターンブル首相のオーストラリア政府には、国民として、彼にその権利がある、彼を保護するよう圧力をかけなければならない。オーストラリア政府が、中に入って、イギリスとアメリカとエクアドル政府によるジャーナリストに対する違法な迫害を止めなければならない。オーストラリア政府は、オーストラリアへの彼の安全な帰国を保証しなければならない。もし我々がアサンジを守り損ねれば、我々は自分たちを守り損ねることになる。
記事原文のurl:https://www.truthdig.com/articles/the-war-on-assange-is-a-war-on-press-freedom/
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大本営広報部、この話題を扱っているのだろうか?
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