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2018年7月 5日 (木)

トランプの経済戦争で目新しいのはツイートだけ

2018年6月29日
F. William Engdahl

 ロシアから中国からイランからベネズエラやEUに至るまで、味方も敵も同様に、計算ずくの攻撃、進行中のトランプ政権の経済戦争、いわゆる関税戦争の唯一新しい部分は、敵をめんくらわせるために、ツイートを武器として活用している大統領だ。少なくとも1970年代初め以来ワシントンは、アメリカが製造した商品によるもの、世界準備通貨としてのドルによる世界支配を強制するため、経済的恫喝と不安定化による同様な戦術を開発している。1971年8月15日以来、ほぼ50年間、ワシントンとウオール街は、自分たちの支配的な立場を利用して、インフレになった紙のドルを世界に押しつけ、金融バブルと、それに続く、不可能な水準までの債務の積み上がりと、崩壊を引き起こした。

 いわゆるトランプ“貿易戦争”を理解する上で、最も重要な点は、それが、貿易やら、アメリカの貿易相手国との貿易や通貨不均衡を是正するものでは全くないということだ。世界は、1971年にニクソンと顧問たちによって、ひどくおいてきぼりにされたのだ。

 1971年以来のアメリカ経済は、事実上、アメリカ合州国を、主として工業製品を製造する国から、あらゆる投資の唯一の目的が、お金からお金を生むことだという国に変わり、金融収入の源へと変えられたのだ。1960年代末には自動車とトラックの世界最大メーカーだった、アメリカ経済の中核ゼネラル・モーターズのような企業が、同社のGMAC自動車ローン金融部門を使って世界経済カジノで賭をする投機に引き込まれ、アメリカ不動産バブルが、2007年3月に破裂した際、賭けは大失敗し、GMは国有化され、ウオール街巨大銀行は、納税者と米国連邦準備制度理事会によって救われた。

 拙著『Gods of Money』で詳細に書いた過程は何十年にもわたって起きた。2000年までに、ウオール街の銀行や投資基金が、本質的にアメリカ経済全体を支配するようになった。製造業の雇用は、言われているように、中国やドイツや他の“強欲な泥棒連中”によってではなく、1980年代以来、企業にその製品の健全性ではなく、株価にのみ注力するよう押しつけてきた、全く同じウオール街の銀行の圧力により、海外への“移転”を強いられたのだ。レバレッジド・バイアウトや株主価値がキャッチ・フレーズになった。ウオール街銀行に財務利益を認めて貰えなければ、企業幹部は首になる。それで今日残ったものは、基本的に、サービス経済で、債務で膨らんだ消費者経済、もはや偉大な産業のリーダーではないアメリカ合州国だ。いわゆる上位1%のアメリカ人少数支配者が、維持できないものを維持するため、世界中から同様の貢納金を要求しているのだ。トランプの貿易・経済戦争は、1970年代に機能したものを、半世紀後に繰り返そうとする自暴自棄の策略だ。

 ‘第二のアメリカ革命’

 アメリカのかつては偉大な産業経済の破壊的変質の根源は、1970年代の変質だ。国家による赤字支出が、景気後退や不況の悪影響を緩和できると主張した1930年代後の、ケインズ経済学の優勢は、ジョン・D・ロックフェラー IIIが、『第二のアメリカ革命』と題する著書で主張した、電気事業や上下水道や道路などの国営企業の規制緩和、民営化体制に取って代わられた。同時に、シカゴ大学経済学者ミルトン・フリードマン周辺の自由市場モンペラン・イデオローグが、ウオール街や、ロックフェラー周辺のアメリカ財界にもてはやされた。フリードマンは、自由市場経済の導師となり、1980年代に、ロナルド・レーガンとマーガレット・サッチャーの二人に助言した。彼の自由市場の教理は、国際通貨基金に定着し、中南米全体や、ソ連や東ヨーロッパという旧共産主義経済で、経済ショック療法と規制緩和を主張するのに利用された。

 現在のワシントンによる関税・経済戦争の鍵になる出来事は、1971年8月15日、ニクソン大統領による一方的なアメリカ・ドル金兌換停止の決定を巡る出来事にさかのぼる。

 ニクソンの貿易戦争ゲーム

 1971年8月のニクソン大統領による、アメリカの金へのドル兌換停止決定は、233兆ドルと推計される現在の膨大な世界的過剰債務を生み出した遥かに大規模な変質となったもののごく一部に過ぎない。そうした債務の大半は、ドル建てで、中国や日本やEU諸国などの中央銀行が保有していた。

 1971年夏よりずっと前、アメリカ政権は、主要貿易相手国、日本とヨーロッパの欧州経済共同体(EEC)同盟諸国、特にドイツとフランスに対する懲罰的な事実上の貿易制限を成立させることで、議会に許可を与えていた。1960年代末、日本とEECの経済が、当時最新式の産業技術に基づいた経済再建で、戦争による破壊から本格的に登場した。アメリカの製鉄所や自動車工場は、比較すれば、戦時の産物、戦後直後の投資だった。ドイツとフランス製品の輸出は、アメリカ以外でも、大いにもてはやされた。

 その結果、こうした経済は、相対的に膨大な金額のドルを中央銀行口座に蓄積し始め、1971年、外国が保有する債務は約610億ドルとなった。1944年の条約上、アメリカ合州国の義務で、いつでも中央銀行は、そうしたドルに対して、連邦準備金制度理事会に、アメリカの金を要求することができた。連邦準備金制度理事会の公式金備蓄は、250億ドルから、1971年初めには、わずか120億ドルに急減し、中央銀行が膨れ上がるドルの価値を、益々懸念するにつれ、その傾向は雪だるま式に膨れ上がった。ワシントンとウオール街は、ブレトン・ウッズ条約の金兌換条項を、アメリカのグローバル権力を劇的に削減しかねない厄介ものと見なしていた。

 金とドル

 金兌換停止には、まず基本的に、ヨーロッパや他の国々からの繊維製品と靴への輸入割り当てを課した新たな議会法を用いたワシントンによる脅しが先行したした。ヨーロッパの自動車や他の製品に対しても割り当て拡大して、威嚇につかわれた。

 1970年代、アメリカ貿易政治は、事実上、ほぼ半世紀後のトランプ政権のものと、良く似ていた。1970年5月、デヴィッド・ケネディ財務長官は、もしアメリカの貿易相手国がアメリカが輸出を増やすことを可能にする措置を講じなければ、議会はアメリカ合州国への輸入を制限する措置を講じると恫喝した。“そうした黒字の解消に向けて積極的行動をする特別な責任があるのは貿易黒字国ではあるまいか?”貿易不均衡の主な理由が、アメリカ企業がヨーロッパとアジアの企業を買収し、こうした国々の国際収支黒字を強制していることであり、アメリカ輸出品にはヨーロッパや日本製品に対する競争力がもはやない事実を十分承知しながら、ケネディはそう要求したのだ。

 ワシントンは、ヨーロッパ人が“善意の無視”と呼んだ政策を使って、EEC内の通貨関係を混乱させるべく、民間資本を、特にドイツに自由に流入させた。ドイツの余剰ドルは急増した。アメリカ輸出を押し上げ、危機を緩和できたはずの動きである大幅に膨れ上がったドルを切り下げるのではなく、ワシントンは、EEC諸国、何よりもドイツに、通貨を切り上げて、不安定な時期に、輸出品の競争力を削ぐよう要求した。日本の場合、ワシントンは、円を、およそ20%切り上げを要求し、さもなくば特定範疇の日本製品のアメリカ合州国輸出に対する関税制限に直面すると言ったのだ。

 ニクソンのモーリス・スタンズ商務長官はヨーロッパに対し、攻撃的姿勢をとった。彼は“多くの点で、我々は、他の世界の国々にとって、カモおじさんだ。”と宣言した。

 アメリカ人経済学者マイケル・ハドソンは、それをこう特徴付けた。“アメリカ合州国はヨーロッパとアジアに真っ向から挑んだ。服従するか‘殺害できない限り、指導者を攻撃するな.’”という適切な戦術上の格言という条件のもとで報復するかだ。彼らは、報復せず屈し従った。アメリカ貿易法案は、アメリカだけが、世界の覇権国家として、GATTや、あらゆる貿易相手国と結んだ他のあらゆる法的取り決めから免除されるという宣言だった。

 その時点で、ワシントンがドイツ連邦銀行総裁カール・ブレッシングに猛烈な圧力をかけていたドイツを除く、フランスに率いられたEEC中央銀行が、余剰ドルの金への引き換えを始めた。1966年、ドイツ当局者が増大しつつあるドイツの余剰ドルをアメリカの金に引き換えることを検討していると示唆すると、ワシントンはドイツがもはやドルを“支持”しないなら、アメリカ軍はドイツを撤退するとドイツ連邦銀行総裁カール・ブレッシングに言ったのだ。

 同盟諸国による更なる金引き換えの脅威を無くすべく、1971年8月15日、ロックフェラーのチェース銀行元幹部だった当時の財務次官ポール・ヴォルカーに側面を守られ、リチャード・ニクソンが、連邦準備理事会金割引窓口の永久的閉鎖を発表した。同時に、ニクソンは、もはや金の裏付けがない、ドル額面価値が驚異的にインフレした無限のドルを受け取るよう、EECと日本に強制するための恫喝手段として、大半のアメリカ輸入に対し10%関税を課した。アメリカ政府のインフレ尺度にってさえ、アメリカ国民が、1970年、385ドルで購入できた食品や衣料や他の生活必需品に、現在は2,529ドル必要だ。これがニクソンによる金兌換停止の直接の結果だ。

 ニクソンとウオール街は、ペンの一振りで、 外国へのドル債務に対する金による上限という脅威を取り除いたのだ。債務は急増し、ワシントンとウオール街は、現在、世界貿易体制をドル化し、そこでは、アメリカ財務省による経済制裁は、友好国にも敵国にも、ワシントンの要求に足並み揃えて従うよう強制するための戦争兵器として、ありふれたものと化した。中国はそのハイテク製品の大半が、依然、アメリカ製チップとプロセッサーや他の先進技術に依存している状態で、ドル体制に挑戦する用意があるだろうか? 習近平の「中国製造2025」経済戦略は、その状態をなくすことを狙っている。同様にアメリカに大量輸出しているEU企業はイランとの石油貿易や他の投資を継続することで、二次的経済制裁の危険を警戒している。

 現在トランプ大統領は、ドイツや中国に対し、根拠無しに“通貨操作国”とツイートで恫喝し、ペンタゴン軍事支配の傘下にいられる特権に対し、国防費負担を大幅に増やすよう、NATO同盟諸国に要求している。1970年代のものから、アメリカの経済的な脅しの手口は変わっているものの、中身は変わっていないのだ。

 William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書。本記事はオンライン誌“New Eastern Outlook”独占。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/06/29/only-thing-new-about-trump-economic-wars-are-tweets/

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準強姦事件を巡るBBC報道映像、全て削除されているという。そういう手筈だけ一流。
トップの顔が現れた瞬間、音声を消すか、テレビを消すかしているが、呆導バラエティーを聞いていのも苦痛になってきた。ゴミ情報を知りたくて聞いているわけではない。どれほど強烈な争点ずらしをしているかを確認する目的。
下記インタビュー、こわいもの見たさで拝見するつもりだったが、ドタキャン。この機会に、ラブキン氏インタビューを拝聴しよう。

日刊IWJガイド「岩上さんによるエイブラハム・クーパー師インタビュー中止のお詫び/<再配信>本日午後8時『【ガザ侵攻】敬虔なユダヤ教徒だからこそ、現代の帝国・イスラエルを批判する~岩上安身によるモントリオール大学教授ヤコブ・M・ラブキン氏インタビュー 2014.8.5』を再配信!/東海第二原発が安全対策に関する再稼働審査に合格!? 40年も運転したオンボロ原発の危険性を明らかにすべく、岩上さんが関西学院大学災害復興制度研究所の青木正美氏に、7月10日(火)インタビュー!/水道民営化を進める安倍政権は災害時の給水について何も考えていない!? 政府側の緊張感のない答弁があからさまに!/『危険性は社会通念上無視し得る程度にまで管理・統制されている』!? 大飯原発住民訴訟で名古屋高裁金沢支部が1審判決の運転差し止め命令を取り消し!?/ワールドカップという華やかな舞台の影で…父親を誘拐されていたサッカー・ナイジェリア代表主将の選手が、大きな不安を抱えながらも試合に出場。一方、PK戦でゴールを外したコロンビア代表の選手にはSNS上で殺害予告が/7月29日(日)【IWJファンドレイジング in Hot Summer 2018】開催まで残り24日!予約は参加予約受付フォームよりお早めにどうぞ!/今期合計3万円以上ご寄付・カンパをいただいた方でご希望の方全員に感謝を込めて前回12月のファンドレイジングイベントの新作DVDをプレゼント! 第8期も7月末の期末まであと残り26日。先月末以降、ご寄付・カンパが足踏みしており、厳しい状況です。なにとぞ期末のご支援をよろしくお願いいたします!/会員新特典!! サポート会員の方でご寄付・カンパをくださった方の中からご希望の方を抽選で岩上さんのインタビューのスタジオ見学にご招待!この機会にぜひサポート会員への切り替えご検討を!」2018.7.5日号~No.2121号~

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