西部戦線異常あり
Finian Cunningham
2018年6月22日
スプートニク
今月早々、アメリカ率いるNATO軍事同盟が、ロシアの西側面における軍事力増強大規模エスカレーションを誓った。この展開は、29国が加盟する同盟は、必然的に、危険な戦時体制へと進むというロシアの長年の懸念を浮き彫りにしている。
6月7日、ブリュッセルでのサミットで、NATO加盟諸国の国防相が、東ヨーロッパからロシア西国境まで前線展開される軍隊と海軍と空軍の新たな巨大動員を承認した。この構想には、アメリカ東海岸バージニア州ノーフォーク、もう一つはドイツのウルムを本拠とする二つの新NATO司令部が含まれている。
30日以内に展開可能な、30,000人の兵士、30の飛行中隊と、30隻の大型戦艦というNATO軍の大西洋両岸における協調促進が公式の目的だ。
計画は大規模介入に対する"即応体制強化"が狙いだと、イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は述べた。この"介入"が、東ヨーロッパ、特にバルト諸国とポーランドに対する攻撃を計画しているとNATO幹部が一貫して非難しているロシアのことなのは明らかだ。
最近、ペンタゴンのジェームズ・マティス長官は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がアメリカのヨーロッパとの同盟を傷つけようとしていると非難した。だから戦争動員計画は、共通の敵ロシアに対する同盟強化を狙った手段に見える。ロシアが実際の敵というわけではない。NATOにとって一体化のために利用するのに便利なお化けに過ぎない。
ヨーロッパの隣人諸国を攻撃する意図に関する主張に、ロシアは一貫して反論してきた。モスクワは、そうした主張は、ばかげた妄想だと言っている。
強烈な親NATOの、元エストニア大統領トーマス・ヘンドリク・イルヴェスさえ、最近、バルト海地域は、いかなる軍事的脅威にもさらされていないことを認めた。
だが「事実で、うまい話が邪魔されないようにしろ」という表現がある。NATOと、その国防産業シンクタンクが何度となく繰り返し言っている、この"うまい話" (実際は与太話だ)というのは、ヨーロッパをむさぼり食うために、ロシアの熊が爪に磨きをかけているというものだ。それが、ウクライナ紛争、そして以前にはジョージアが、あれほどまでに意図的に歪曲され - ばかばかしいNATOの不安デマに対し、ひどく必要としている材料を手に入れるために、ロシアを悪魔として描いている理由だ。
NATOが軍事力増強を新たに発表して二週間後、ポーランドとリトアニアに近い"ロシアのカリーニングラード領にある核兵器施設を、ロシアが改良しているのを写したとされる衛星写真を、欧米マスコミが報じたのは単なる偶然とは思えない。
この与太話は、"悪のプーチン"と彼の"ソ連の夢"は健在で、ヨーロッパの安全保障を危険にさらしているという欧米大衆の恐怖に対する不安の回復剤を狙ったものだ。
もちろん、ポーランドやバルト諸国の猛烈に反ロシアの政治家連中は、ロシアに悪漢役を振りつけるまね事に大喜びで熱中する。今年初め3月、ポーランドは、ペンタゴンと、ロシア侵略から国を"守る"ものとして喧伝されているパトリオット・ミサイル迎撃システムの50億ドルの契約に署名した。
ここで容易に見て取れるのは、東ヨーロッパにおけるNATO拡大は、アメリカとヨーロッパの兵器販売を増やすための、笑えるいかがわしい商売だということだ。嬉々としてこのゲームを演じているヨーロッパのおべっか使い政治家連中は、元ノルウェー首相イェンス・ストルテンベルグのように、将来NATOや、そのシンクタンクで楽でもうかる仕事にありつくのだ。
しかし、ロシア西側面での執拗なNATO拡張には、何かもっと邪悪なものがあるように見える。軍産複合体のための不正な商売での儲け以上のものがあるのだ。ソ連が存在を止めた1991年の冷戦終結以来、この拡張は続いている。
長年のパターンが、アメリカ率いるNATO同盟が、イデオロギーが動因の体系的なロシアに対する戦争計画で動いていることを示している、とカナダを本拠とする戦争犯罪弁護士のクリストファー・ブラックは考えている。最近発表されたNATO動員部隊は、モスクワに敵意を抱かせ、紛争を始めさせようという本格的な措置がというのが彼の見解だ。
30,000人のNATO兵士計画について、ブラックはこう述べた。"兵士たちを単に脚を鍛えるため森の中を歩かせたり、金を使ったりするのが狙いとは思いません。こうした新司令構造の設置は兵員と物資の大量で迅速な移動の準備、対ロシア戦争準備の重要な一歩です。"
ロシア西側面でのNATOの軍事力強化を、この弁護士は、1941年6月、ナチス・ドイツが、ソ連に対して始めたバルバロッサ作戦と呼ばれる悪名高い攻勢になぞらえさえしている。
現在12,000人のドイツ兵士が、同盟が東ヨーロッパで続行中のアトランティック・リゾルブ作戦の一環として、リトアニアでのNATO軍事演習を率いていると彼は指摘する。アメリカとイギリスとカナダの戦闘兵と機甲師団が、現在ロシア国境の国々に恒久的に駐留している。現在のNATOによる軍事力強化の唯一の前例は、まさに77年前の今週に開始された、ナチスの悪名高いバルバロッサ作戦だとブラックは言う。
"カリーニングラードのロシア核兵器に関する主張の誇張や、より一般的には、バルト諸国に対する侵略疑惑は、モスクワに対する偽旗挑発のための欧米マスコミ・プロパガンダ・キャンペーンの一環に見えます"とブラックは言う。"イギリスでのスクリパリ毒ガス事件やシリアでの化学兵器による残虐行為にまつわる主張を含め無数のそうした挑発を目にしています。"
疑問はこうだ。なぜ今なのか? 一体なぜNATO戦争機構は、ロシアに対する戦争状態を明らかに強化するのだろう?
クリストファー・ブラックはこう推測している。"必ずしも他の紛争と直接結びつく訳ではありませんが、間接的には、バルト諸国から、ウクライナ、ジョージア、アルメニア、イラン、イラク、シリア等の線に沿って、ロシアに対してかけられている全体的圧力の一部です。シリアとウクライナでのNATOの失敗が、これを促進させたことは否定できませんが、ロシアが転げ回り、死んだふりをしない限り、これは、いずれにせよ計画にあったのだと私は思います。"
とは言え、シリアとウクライナでのNATO加盟諸国による秘密戦争の重大な挫折が、他の場所、ロシアの西玄関先で、同盟が、対ロシア攻勢を強化しているように見える要因だというのは重要であるように思える。
ロシアによるシリア介入は、アメリカ率いるアサド大統領に対する政権転覆戦争を止める上で決定的な出来事だった。あの計画が、地政学的、戦略的に、極めて重要な中東におけるアメリカと、その同盟諸国による極めて重要な策略だったことからして、ロシアの軍事的成功は、帝国の計画者たちには嬉しいこととしては受け取られなかったと推論することが可能だ。
それに加え、欧米の政治指導者の一部は、NATOがロシアに向かって押し進む危険に気がついていないこともあり得る。そのような考えは、ばかげていると熱弁を振るう政治家連中がいる可能性さえある。
例えば、トランプ大統領は数週間のうちに、ウラジーミル・プーチンとの会談を計画している。アメリカ大統領は、アメリカとロシアとの関係を正常化するため、プーチンと会談を本気でしたがっているのかも知れない。トランプは、ロシアに対する攻撃的態度をNATOが益々強化していることを知らされていない可能性がある。要するに、好戦的な動態は彼には制御しきれないのだ。
NATOは、戦争による利益と、紛争と、特にロシア嫌いの根深いイデオロギーによって推進されている戦争のための装置なのだ。これは解体されるべきだ。
実際、トランプのプーチンとの友好的会談は、NATOの戦争屋連中を更に駆り立てる出来事になりかねない。
本記事で表明されているFinian Cunninghamの見解や意見は、もっぱら著者のものであり、必ずしもスプートニクの公式な立場を反映するものではない。
記事原文のurl:https://sputniknews.com/columnists/201806211065638131-syria-nato-trump-russia/
-----------
昨日拝聴したインタビュー、スイスの直接民主制、そして競争力のお話も実に興味深いが、日本の危機的状況も、カウフマン氏に伝わったに違いない。
スイスは一人あたりGDP世界2位!国際競争力世界一!いったい スイスと日本の違いは!? スイスの「直接民主制」を東アジアにも! 岩上安身によるブルーノ・カウフマン氏インタビュー 2018.3.13
大本営電気洗脳箱ほとんど見ていない。個人的興味と、かけ離れた話題しか扱わないので。 たとえば、ナンパ塾! 電気代と頭脳の無駄。
沖縄慰霊の日 「辺野古移設、平和に逆行」翁長知事 という話題、ネットで知った。
中学生の詩の朗読もネットで拝聴した。
澤藤統一郎の憲法日記
この上なく感動的な「平和の詩」と、この上なく凡庸なアベ来賓挨拶と。
梅田正己氏のご本、二冊目まで購入し、そこそこ読んでいるが、お話を伺ってから、残りの本を購入させていただこう。影響で、本居宣長に関する本を読み始めている。
日刊IWJガイド・日曜版「<IWJが報じた1週間のまとめ> 大阪府北部で大きな地震、青森県六ヶ所村と東京都杉並区で首長選挙、沖縄では『慰霊の日』、東京電力は福島第一原発2号機に投入するロボットを公表!6月17日(日)〜6月23日(土)/6月26日火曜日は、森友問題で新文書を突きつけて安倍政権を追及した、共産党の辰巳孝太郎参院議員に岩上さんがインタビュー!/6月28日木曜日は、 岩上さんが書籍編集者・前高文研代表の梅田正己氏にインタビュー!日本の『神国ナショナリズム』を古代史から読み解いていきます!/今日、サッカー・ロシアワールドカップの日本代表対セネガル代表戦が日本時間深夜0時キックオフ!『Hampanai』大迫勇也選手の活躍に注目!/6月に入ってから3分の2となる22日までのご寄付・カンパは、皆様からのご支援のおかげで今月の目標額の88%まで!ですが、第8期も7月末の期末まで残り1ヶ月と7日。まだまだIWJの財政はピンチです!なにとぞ緊急のご支援をよろしくお願いいたします!」2018.6.24日号~No.2110号~
« アメリカ... 自らの最悪の敵 | トップページ | ホンジュラスにおけるアメリカの政策が、現在の大量移民のお膳立てをした »
「NATO」カテゴリの記事
- ガザについて連中は嘘をつき、シリアについても嘘をついている(2024.12.03)
- 対シリア戦争を再燃させるアメリカと同盟諸国(2024.12.02)
- ロシアとの戦争でアメリカが負ける理由(2024.12.04)
- ロシア新形ミサイルが、いかにゲームを変えつつあるのか(2024.11.29)
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
「ロシア」カテゴリの記事
- 対シリア戦争を再燃させるアメリカと同盟諸国(2024.12.02)
- ロシアとの戦争でアメリカが負ける理由(2024.12.04)
- ロシア新形ミサイルが、いかにゲームを変えつつあるのか(2024.11.29)
- ドイツを消滅させたいと願うEU精神病院院長(2024.12.01)
「Finian Cunningham」カテゴリの記事
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
- バイデンの哀れなATACMS挑発をプーチン大統領が無視すべき理由(2024.11.21)
- ドイツがアメリカのポチでいることの破滅的代償を示す選挙混乱とフォルクスワーゲンの苦境(2024.09.10)
- 内部の敵…激怒したイスラエル国民という、これまでで最大の脅威に直面しているネタニヤフ首相(2024.09.06)
「シリア」カテゴリの記事
- ガザについて連中は嘘をつき、シリアについても嘘をついている(2024.12.03)
- 対シリア戦争を再燃させるアメリカと同盟諸国(2024.12.02)
- フィクション 歩きながら政治について語る二人のアメリカ人(2024.07.20)
- イスラエル・アメリカ関係の様々な神話やストレスを粉砕したイランの無人機攻撃(2024.04.19)
« アメリカ... 自らの最悪の敵 | トップページ | ホンジュラスにおけるアメリカの政策が、現在の大量移民のお膳立てをした »
コメント