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2018年5月17日 (木)

大量虐殺と占領と、より広範な戦争をもたらすアメリカのエルサレム大使館

Finian Cunningham
2018年5月14日
RT
公開日時: 2018年5月14日 16:13
編集日時: 2018年5月14日 16:13

なんと忌まわしいほど皮肉なことだろう。大使館は、伝統的に、外交と平和の象徴だ。エルサレムのアメリカ大使館開設は、パレスチナ人殺戮という奇怪な洗礼を招き、中東における、より広範な戦争の到来を告げている。

それだけでなく、前世紀の民族浄化と土地や家からの追い立てのもっとも恥ずべき出来事の一つ、1948年のナクバ、パレスチナ人にとって「大災厄の日」のまさに70周年に、アメリカ政府は、あの歴史的暴力の後継者イスラエルの味方にぬけぬけとついている。

トランプは、いかなる羞恥心もかなぐり捨てて、イスラエルによるアラブ人の歴史的権利侵害を是認し、地域紛争を煽動している。

恐怖を表現するのは困難だ。イスラエル狙撃兵が、ガザで非武装パレスチナ人抗議行動参加者を銃撃する中、約100キロ離れたエルサレムでは、アメリカの要人や、福音派の牧師たちが、ワシントンの新大使館開設を '神の仕事'として祝福していた。

アメリカのドナルド・トランプ大統領の中東政策は、もしそれを "政策"と呼べるとすれば、完全な狂気に成り下がっている。大半のヨーロッパ諸国が、新外交センター除幕のアメリカ歓迎レセプションを欠席したのも不思議ではない。

トランプは、パレスチナ-イスラエル和平を無謀に無視して、地域を大虐殺へと陥れた。今週、パレスチナや、より広範なアラブ地域を扇動的に無視した後、イラン核合意へのアメリカの義務を破棄が続いた。この国際条約違反後、もしこの合意が崩壊すれば、中東における更なる不安定と、戦争さえ引き起しかねないので、ヨーロッパ、ロシア、中国とイランの外交官がは合意を救うべく急遽出動した。

12月に、トランプがアメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移動すると発表した際は、国連で厳しく非難された。この動きは、エルサレム和平交渉の結果がでるまでは、パレスチナとイスラエルの共有の首都であるべきだという何十年もの国際合意違反だ。

トランプは、彼の決定は単に "現実の反映"にすぎないと述べた。皮肉なことに、アメリカが、イスラエルによる違法なパレスチナ領土占領の黙諾したこと意味する。

公平のために言っておくと、ワシントンによる大使館のエルサレム移転決定は、20年以上前の、1995年に行われた。クリントン、GW ブッシュと、オバマ大統領は、そのような動きは、和平交渉の進展次第だと主張して、実際の行動を、遅らせることを選んでいた。トランプは、今回、既に有効な法律を行動に移したのだ。

しかし彼の宣言は、アメリカが、イスラエルとパレスチナとの間の"公正な調停者"といういかなる装いも投げ捨てたことを意味する。パレスチナ指導部の反感は激しく、現在、アメリカ当局者と会うことさえ拒否している。

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'偉大な平和の日' に、アメリカがエルサレム大使館を開設する中、何十人ものパレスチナ人が射殺される。

逆説的に、トランプは、状況を明らかにするのに貢献している。アメリカは、イスラエルによるパレスチナ領土征服とパレスチナ人弾圧を公然と支持している。今や、ワシントンは、調停の見せかけに隠れるのではなく、あからさまに犯罪的イスラエル政策に加担している。

今週、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、 "イスラエルを再び偉大した"ことで、トランプを称賛した。いつもの厚かましさで、ネタニヤフは、アメリカ大使館のテルアビブからエルサレムへの移転は、平和を促進すると、ばからしい主張をし、他の国々も後に続くよう強く促した。

既にアメリカ政策で証明されている通り、不条理な論理で、パレスチナとイスラエルとの間のあらゆる和平の機会は、徹底的に破壊されている。

イスラエルの容赦のない占領の下で、パレスチナ人がさらされている地獄のような状況が、イスラエル狙撃兵の銃撃を浴びながら何千人もが並ぶという自暴自棄の行為に彼らを追いやっている。

ガザ住民が "帰還大行進"を開始して以来、過去6週間で、約50人の非武装抗議行動参加者がイスラエルの実弾発射で殺害された。アメリカ大使館開設の日、エルサレムでの式典から数時間のうちに、更に何十人もの一般市民が射殺された。

イスラエル司令官は、射殺戦術を行っていて、兵士はイスラエル占領地域とガザ東国境の分離壁にあえて近づこうとする子供すら標的にしていることをあっさり認めている。

ガザ抗議行動は、残虐な占領と、住民が、エルサレム内も含め、もとの家に帰還するのを阻止していることに対する彼らの絶望的な嘆願を強調すべく、普通のパレスチナ人が組織したものだ。約70パーセントのガザ住民は、1948年の大虐殺と、後の1967年戦争で、イスラエル入植者に家を追われた難民の子孫だ。

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ガザでの大虐殺のさなか、エルサレムでの大使館開設に焦点を当てるアメリカ・メディア

国連が違法と規定しているイスラエルによる包囲のもとで、ガザ住民は、海岸沿いの細長い地域から出ることを阻止されている。約200万人の人々 - その半分が18才未満  - は住めない環境の中で生きている。90パーセント以上のガザの水道は汚染されており、電気は、一日にわずか数時間しか使えず、漁師は生活排水が海に直接流れ込んでいる岸から数マイル以上先に出るのを禁止されている。

アメリカ人歴史学者ノーマン・フィンケルシュタインが指摘している通り、ガザは、軍事占領、非人間的封鎖、イスラエル軍が何のおとがめもなく行う大量虐殺にさいなまれており、子供たちは毒を盛られている。最近の抗議行動で、大量殺害が行われているのは、この文脈だ。

これら抗議行動は、1948年5月14日、イスラエルが建国を宣言した70周年に合わせて、計画された。翌日の5月15日は、パレスチナ人や世界中の支持者たちが、むしろ注目したがっている、ナクバ、「大災厄の日」だ。

今週エルサレムでのアメリカ大使館開設というトランプの決定ほど、挑発的で、常軌を犯罪的に逸したものはない。

これは実際、パレスチナと、より広いアラブ地域に対する70年間の残虐な弾圧をアメリカが支持しているというお話にならぬほど無神経な誇示だ。

エルサレムは、イスラム教徒とキリスト教徒にとっての聖地とみなされている。この都市は、ユダヤ人・イスラエル国家の"分割されない首都" だというイスラエルの宣言へのワシントンによる同意は、何億人もの他の信仰の人々にとって、言語道断の打撃だ。正義と、道徳と、長年苦しむパレスチナ人に対する思いやりの原則に基づく普通の世論に対する破壊的打撃でもある。

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アメリカは、パレスチナ人の死には全く無関心 - 元国連人権委員会職員がRTに語る。

パレスチナ人の窮状に、ヨーロッパは大きな責任がある。2006年に、ハマースが議会選挙で勝利した後、EUもアメリカも、イスラエル国家承認を拒否していることを理由に、ハマース新政府制裁に動いた。トランプの下で、アメリカの方がより厚かましく加担しているように見えるとは言え、EUとアメリカによる加担を得て、イスラエルによるガザ封鎖は行われているのだ。

ヨーロッパ政府は、パレスチナ人の権利や国際法に対するトランプの露骨な軽視に当惑しているのかも知れない。だが彼らは、イスラエル占領を支援し、サウジアラビアのような反動的アラブ傀儡政権を支援し、違法な戦争や政権転覆作戦を煽るワシントン政策に迎合して、中東における現在の荒廃に寄与してきたのだ。

トランプの衝動的な振る舞いや無知が - シェルドン・アデルソンのような裕福なユダヤ系アメリカ人からの何百万ドルもの寄付で励まされているのだろうが - 彼らの権利に対する彼の傲慢な無関心から、アメリカにアラブの大衆と正面から衝突する路線を進ませている。まるで、これ以上燃えやすく、できないかのように、トランプは、核合意妨害で実証されている通り、イスラエル-サウジアラビア独裁者連中と全く同じ、イランに対する敵意というという策略を推進している。

ヨーロッパは余りにも長きにわたり、難破船、つまりアメリカ中東政策に自分の体を縛りつけてきた。もし中東における爆発的な暴力や紛争を避けたいのであれば、確かにヨーロッパ政府はそろそろ気づき、アメリカ難破船を見限り、自立した外交政策の主張を始めるべきなのだ。

長年無視されてきたパレスチナ人の権利を支持する本当の和平プロセスと、イラン核合意を崩壊させようというアメリカの企みを拒絶することが、ヨーロッパ人にとって、手遅れになる前に、多少の正気と尊敬を、徐々に取り戻すための、二つの喫緊の課題だ。

本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。

Finian Cunningham(1963年生まれ)は、国際問題について多く書いており、彼の記事は複数言語で刊行されている。彼は農芸化学修士で、ジャーナリズムに進むまで、イギリス、ケンブリッジの英国王立化学協会の科学編集者として勤務した。彼は音楽家で、作詞作曲家でもある。20年以上、ミラーや、アイリッシュ・タイムズや、インデペンデント等の大手マスコミ企業で、彼は編集者、著者として働いた。

記事原文のurl:https://www.rt.com/op-ed/426680-jerusalem-embassy-palestine-violence/
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