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2018年5月20日 (日)

ワシントンのユーラシア地政学を形作るブレジンスキーの亡霊

2018年5月14日
F. William Engdahl

 これまで実に際立っているトランプ大統領の最も顕著な特徴の一つは、ツイートやスキャンダルという意図的な巧妙な煙幕を消し去ると、実際の政策展開が、少なくとも1992年にさかのぼるワシントン地政学の基本戦略に、どれほど正確に従っているかという点だ。イラン核合意離脱の最近の嘆かわしい、全く違法な一方的な決定にもこれは当てはまる。ロシアに対する容赦ない冷戦風悪者化キャンペーンや、陰険な新経済制裁実施もそうだ。トランプ政権が中華人民共和国に対してはじめた迫りくる貿易戦争もそうだ。

 アメリカのトランプ大統領は、衝動だけで行動するとか、予測できないとかいう、広く信じられている考えとは逆に、事実は逆だろうと私は考えている。トランプ政権の戦略的地政学的政策は、大統領本人のものではなく、権力者、実際に支配をしていて、時に陰の政府と呼ばれる恒久的支配体制による対応なのだ。その政策の地政学が、彼らが一体誰を大統領になるのを認めるかを、かなりの程度まで決定しているのだ。

 現在のワシントン外交政策が最初に公式に構築されたのは、父親ブッシュの下で、ディック・チェイニーが国防長官だった1992年のことだ。ソ連が崩壊し、ブッシュは意気揚々と、アメリカは唯一の超大国だと宣言した。チェイニーの国防副長官、ポール・ウォルフォウィッツが、1994年-1999年、防衛戦略ガイダンス策定責任者だった。それは無遠慮なもので、後にテッド・ケネディ上院議員が、帝国主義者と表したほどだ。編集されていないウォルフォウィッツ・ドクトリンの中に、“第一の目的”は“旧ソ連地域であれ、他の地域であれ、かつてソ連がもたらしたようなスケールの脅威をもたらすような[アメリカの一方的行動に対する]新たなライバルの再出現を防ぐことだ…統合的に管理すればグローバル・パワーを生み出すに十分な資源がある地域を、いかなる敵対的勢力にも支配させないよう、我々は尽力しなければならない”とある。ジョージ・W・ブッシュの下で、2002年、イラク戦争の準備段階で、単独覇権主と、予防戦争の行使、アメリカ政策の中心だと宣言して、ウォルフォウィッツ・ドクトリンは、ブッシュ・ドクトリンとして再浮上した。

基本的地政学

 この記事の題名に戻って、現在のトランプの下でのアメリカ外交・国防政策が一体何かを強調するために、故大統領顧問ズビグニュー・ブレジンスキーの1997年の著書、The Grand Chessboard: American Primacy and its Geostrategic Imperatives『ブレジンスキーの世界はこう動く―21世紀の地政戦略ゲーム』から引用しよう。これは、ブッシュ-ウォルフォウィッツ・ドクトリンのブレジンスキーの地政学的挑戦と予防戦争という考え方を、アメリカという唯一の超大国支配に対する抵抗が現在現れているという文脈への適応に他ならない。

 もちろん、ブレジンスキーは、CIAと、サウジアラビア諜報機関と、パキスタンISIが訓練した、ムジャヒディン・イスラム主義テロリストを利用した、ジミー・カーターによる、ソ連軍に対するアフガニスタン戦争の立案者だった。

1997年、“ユーラシアを支配することが可能で、アメリカにも挑戦するユーラシアの挑戦者が決して出現しないようにすることが極めて重要だ”と彼は書いていた。彼は更に、declared、“可能性として、最も危険なシナリオ、イデオロギーではなく、相補う不満で団結した‘反覇権’同盟だ…中国、ロシア、おそらくはイランの大連合…Avertこの不測事態…ユーラシア外周の西と東と、南で、同時に、アメリカの戦略地政学的技能を必要とすることになる”

 これに、ロシアと中国を、アメリカ覇権に対する最大の潜在的脅威と規定する最新のペンタゴン国家防衛戦略文書を加えこれを、2015年に経済制裁を解除して以来、ロシアと中国とイランの間の、特にシリアでのつながりの深まりと組み合わせると、ワシントンが一体何をしているのかが明かになる。私が唯一の覇権国に対するユーラシアの挑戦と呼ぶ、ロシア、中国、イランを粉砕するため、連中は徹底的に取り組んでいるのだ。

 ブレジンスキーが指摘した通り、支配継続というアメリカの目的にとって、ロシアと中国とイランの間に、人種的、宗教的、あるいは他の差異かあることは重要ではない。2001年9月以来、アメリカ外交政策は、こうした差異にもかかわらず、彼らが、国家主権の防衛と考えるもののため、この三国が一層協力することを強いている。

標的ロシア…

 最近の色々な出来事を、1997年のブレジンスキーのユーラシア警告の視点から見てみよう。何の証拠も無しに、ロシアのせいにされたイギリスの、いんちきなスクリパリ毒ガス攻撃事件を、ワシントンは支持していた。ダマスカス郊外での偽化学兵器攻撃は、国連憲章や国際法のあらゆる前例を無視した、違法なアメリカ爆撃急襲の口実に利用された。あれは思い返して見れば、ロシアのあり得る反応を探るための実験以外の何者でもなかった。アメリカ・トマホークや他のミサイルが命中しようと、しまいと、イスラエルや、他のアメリカ同盟国が、シリア国内のイラン攻撃をエスカレートする前例が確立されたのだ。

 更に、世界第二位のアルミ・メーカー、ルサールのデリパスカのような“プーチンのオリガルヒ”に対する新たな壊滅的打撃を与える極悪非道の経済制裁が行われている。ワシントンは、新経済制裁の口実をでっちあげようとさえしていない。連中は、理由は、ロシア政府が“世界中で様々な悪意ある活動”に関与していることだと言っている。

 新経済制裁は、たとえ新経済制裁の前に購入したものであれ、制裁対象のロシア企業の株を保有しているあらゆる欧米の銀行や投資家を罰するのだ。これは、あらゆる点で、戦争より酷くはないにせよ、武力戦争同様、アメリカ財務省による極めて破壊的な新形金融戦争なのだ。911のすぐ後、この手が開発され、以来、経済的グローバリゼーションの下、貿易と、中央銀行の外貨準備の上で、世界が依然圧倒的に、アメリカ・ドルに依存しているという事実を利用する破壊兵器にまで洗練されている。

 ロシア人オリガルヒや企業に対する最新のアメリカ経済制裁では、将来、欧米資本市場で借り入れることが阻止されるだけではない。近年、対象にされたロシア企業に、何十億ドルも投資した非ロシア人投資家は、ロシア資産を保有しているかどで、換金するか、二次的経済制裁の目に会うかで、うろたえることを強いられた。だが一体誰が買うだろう? 既に主要EU証券決済機関の二社、クリアストリームと、ユーロクリアは、制裁対象のロシア証券の決済を拒否するよう強いられている。彼らはロシア株を保有しているかどで、経済制裁にも直面する。たとえば、中国国営銀行が市場からドルを借りていれば、彼らは今や事実上、制裁対象ロシア企業と事業をすることを禁じられている。

標的中国…

 ワシントンは、シリアとウクライナを巡って、プーチンのロシアに対する圧力を強化しながら、同時に、中国との貿易を最初の梃子として利用する、壊滅的経済戦争であることが明かなものの初期段階を開始した。ワシントンは、私が前の記事で指摘したように、中国経済を、今後十年で、主導的ハイテク製造国という立場に押し上げようという戦略を中国に強制して廃棄させることを狙っているのだ。戦略は「中国製造2025」と呼ばれるもので、習近平の戦略目標、一帯一路構想、経済シルク・ロード・プロジェクトの中核だ。

 「中国製造2025」のもとで、ハイテクで世界のリーダーになろうとする中国の動きを標的に、ワシントンが一体何を計画しているかの一端が、中国の主要通信機器メーカー、ZTEと、アップル社に対する有力な挑戦者、華為技術に対する扱いだ。4月、ZTEは通信機器をイランに売ったとされることで、ワシントンによる制裁対象となった。アメリカのサプライヤーは、極めて重要な部品を、中国ハイテク集団に供給することを禁じられている。アメリカから猶予を勝ち取ろうとする中、同社は一時的に操業を中止している。

標的イラン…

 ドイツやフランスや他のEU諸国の猛烈な抗議にもかかわらず、トランプは一方的にイラン核合意を破棄した。狙いが、壊滅的打撃を与える経済制裁を、イランに再度課して、2015年以来、始まった脆弱な進展を破壊させることなのは明らかだ。EUがイランとの合意を破棄するのを拒否している事実も、最終的には、アメリカによるイラン経済制裁は、イランと商売をしているEU企業の経済制裁もすると脅しているので大して意味はない。

 最近のトランプによる、イランとの核合意破棄の一環として、アメリカは、中国や日本やEU諸国など他の国々に イラン石油のあらゆる購入契約をやめる180日間の猶予を与えた。イランからの何十億ドルの航空機購入注文があったエアバスなどのヨーロッパ企業は、キャンセルを強いられた。8月6日、アメリカ・ドル購入、金や他の金属による貿易や、航空や自動車産業は制裁される予定だ。11月4日、アメリカ経済制裁は、イランの金融・石油企業を標的にして、以前、アメリカ財務省経済制裁リスト対象になった個人に対して行った経済制裁を再開した。

 イランの脆弱な経済を危機に陥れるべく、アメリカ財務省による正確に狙った経済制裁という壊滅的新兵器使用が明かな狙いだ。同時に、NSC顧問ジョン・ボルトンは、新たなカラー革命のこころみを開始するため、イランのテロ組織、ムジャヒディーン・ハルク、MEKのを再活性化を主張しているという報道もある。2012年、クリントン国務長官によって、MEKは、アメリカ国務省のテロ・リストから外された。

アメリカ中央軍、CENTCOM

 各国の具体的な詳細や、各国に対するワシントンの行動から一歩下がって見ると、ユーラシアの三大国-ロシア、中国、イランは、体系的に、標的にされており、これまでのところ、程度の差はあれ成功していることが見えてくる。

 2月末、アメリカ中央軍、CENTCOMの司令官ヴォーテル陸軍大将が、DoD Newsのインタビューに応じた。そこで、ロシアと特にロシアのシリア関与や、中国の新一帯一路構想や、ジブチや他の場所の中国軍事基地を例にあげるのに加え、ヴォーテル大将は、両国のイランとの結びつきに触れた。ヴォーテル大将は“ロシアも中国も、イランと多次元のつながりを育てている。包括的共同作業計画のもとでの、国連経済制裁解除が、イランが上海協力機構加盟申請を再開する道を開いた”と述べた。

 皮肉にも、事実上の三正面戦争の同時開始は、現時点では経済戦争のレベルだとは言え、三大国に対して、一層密接に協力するという戦略原則を生み出している。中国はイラン石油の最大購入国だ。ロシアは、軍事備品を供給しており、それ以上のことも交渉中だ。この三国中国、イラン、ロシアいずれにとっても、ワシントンの地政学的三正面戦争を目の前にして、不信や差異がどうであれ、自己保存の目的で、これまでになかった以上に協力する以外良い選択肢はないのだ。

 F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、オンライン誌“New Eastern Outlook”に独占寄稿。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/05/14/brzezinski-s-ghost-shapes-washington-eurasia-geopolitics/

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昨日は、IWJの岩上安身氏による放送大学名誉教授・高橋和夫氏インタビューを拝聴。今日は下記を拝聴予定。

日刊IWJガイド・日曜版「<本日のタイムリー再配信>本日午後8時より「岩上安身による東京大学名誉教授・板垣雄三氏インタビュー(後編)1/2」を再配信!さらに午後7時から【働かせ方改悪を許すな!シリーズ特集】として「5.16『働き方改革虚偽データ疑惑』野党合同ヒアリング/
ボルトン米大統領補佐官が北朝鮮の非核化に『リビア方式』で臨むと発言! 北朝鮮の抗議に対しトランプ大統領自ら火消し役に!/日本大学アメリカンフットボール部監督・常務理事の内田氏『一連のこの問題は、すべて私の責任』と監督辞任を表明するも、大学役職の進退については答えず」も再配信します!」2018.5.20日号~No.2075号~

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