カスピ海ゲーム: 接続市場を奪いあう中央アジア‘スタン’
'パイプライニスタンには長い歴史があるが、一帯一路構想により、中国が状況を変える上で最も有力な国になった
PEPE ESCOBAR
2018年4月20日
アジア・タイムズ
カスピ海は全ユーラシアのガス・パイプライン・システと、貿易回廊の重要拠点
アゼルバイジャンで、 大統領選挙が行われた。予想通り、現職のイルハム・アリエフが、金王朝並みの86%の得票で、連続四期目の大統領の座を確保した。
欧州安全保障協力機構(OSCE)のOffice for Democratic Institutions and Human Right (ODIHR)が“必須手順の無視が蔓延しており、深刻な不法行為や透明性欠如の無数の例がある”と強調した。アゼルバイジャン選挙委員会はそのような意見は“根拠がない”と回答した。
そして問題丸ごと消滅した。一体なぜか? 欧米の戦略的観点からすれば、アゼルバイジャンのソ連後の石油独裁体制には、まったく手が及ばないためなのだ。
これは、第一次ビル・クリントン政権時代に イランを迂回するため、故ズビグニュー“大チェス盤”ブレジンスキーが推進したバクー-トビリシ-ジェイハン(BTC)パイプラインと大いに関係があるのだ。BTCが、事実上、 私がパイプラインスタンと呼ぶ、新たなグレート・ゲームで、エネルギーの章を解き放ったのだ。
現在バクーは、砂漠の荒れ地アラトで、西(トルコと欧州連合)、南(イランとインド)と北(ロシア)を同時に結ぶ新たな港 (“ユーラシアのハブ!”)に大きな期待をかけている。
アラトは、新シルク・ロード、別名、一帯一路構想BRI最大の輸送/製造/接続拠点としても考えられている。この戦略的位置は、BRIの中央接続回廊をまたいでいる。新たに開通したバクー-トビリシ-カルス鉄道につながり、カフカスを中央アジアと結んでいる。ロシアとインドをイラン経由で結ぶ国際南北輸送回廊ともつながっている。
輸送回廊は大騒ぎだ。アゼルバイジャンにとって、石油とガスは、2050年までしかもたないかも知れない。だから、これからの優先項目は、物流拠点となることを目指す移行努力だ。カスピ海最大の拠点になることを目指すのだ。
(カスピ海)両岸は引きつけ合うだろうか?
バクーの動きは、ユーラシア統合におけるパイプライニスタンと接続回廊の第一線の役割を再考させ、促進させる。全体図は、カスピ海エネルギー輸出の“第三の道”ヨーロッパ行きを最終的に示しているかも知れないが、当面は主にロシアと中国が中心だ。
今年、トルクメニスタンは“偉大なシルク・ロードの心臓部”として自ら積極的に売り込んでいる。とはいえ、デジタル接続性というより、古代のシルク・ロード史跡復活に注力している。
しかしながら、トルクメニスタンから、 ウズベキスタンとカザフスタンを経由して、新疆に向かう、年間550億立方メートル(bcm)を輸送する、1,800キロの中央アジア-中国 ガス・パイプラインが、2009年に開通した際、アシハバードは、BRIを予期していた。
アシハバードとモスクワは、延々小競り合いを続け、最終的に、二年以上前、ガスプロムは、トルクメン・ガスのロシア輸入を完全に止めた。
そして、これにより、モスクワではなく、北京が、中央アジア最大のエネルギー顧客、そして貿易相手国として登場することになったのだ。
その特異な慣行ゆえに、トルクメニスタンは結局、輸出市場の多様化には決して成功しなかった。トルクメニスタンは、スイッチをロシアから中国に切り替えたが、儲かるヨーロッパ市場には出られなかった。
加盟諸国が、共通エネルギー政策の輪郭にすら合意できないのに、EUは、ガスプロムだけでなく、エネルギー源の多様化が必要だというのが、ブリュッセルでは、長年のスローガンだ。
ヨーロッパ企業は、カザフスタンでこそ大規模油田を開発している。だが“青い黄金”パイプライニスタン戦線では、中央アジアからヨーロッパ向けに送られるガスは皆無だ。
トルクメニスタンから、カスピ海経由、トルコ、そして更に先へと続く、結局決して建設されなかったパイプライン、ナブッコ茶番が過去のトラウマ体験の典型だ。
アゼルバイジャンとトルクメニスタンは、実際、カスピ海対岸の猛烈な競争相手だ。不規則に広がるシャー・デニス・ガス田からの自国ガスが、ヨーロッパに売れる可能性を高めるので、バクーはナブッコの失敗を喜んだ。ナブッコの大きな問題は、大半のガスが、現在中国に送られていることを考えた場合、トルクメニスタンの本当のガス産出能力を巡るミステリーだった。
ことを複雑にしている要素は、依然、法的に不確定なカスピ海(海なのか、湖なのか?)を通るあらゆるパイプラインは、ロシアにもイランにも歓迎されていないことだ。
ガスプロムには、ノルド・ストリームと、トルコ・ストリームによってヨーロッパ市場でのシェアを増やす計画がある。イランは、カタールと協力して、巨大な南パース・ガス田から、イラン-イラク-シリア・パイプラインの改良版で、ヨーロッパ市場に入り込むことを狙っており、これは、シリアにおける戦争の理由の重要な一つなのだ。
TAP、TANAPと出会う
だから結局、カスピ海ガスのヨーロッパ市場への接続という点で、唯一現実的なパイプラインスタン作戦は、年間10bcmのガスを、バクーから送る小規模な、45億ユーロ(55.5億ドル)アドリア海横断パイプライン (TAP)になる。
長さ、わずか878km(北ギリシャ 550km; アルバニア 215km; アドリア海 105km; 南sイタリア 8km)のTAPは、2020年3月に稼働すると予定されている。
TAPは、ガスをアゼルバイジャンのシャー デニス 2から西トルコに送る、より野心的な、80億ドルのいわゆる南部ガス回廊、アナトリア横断天然ガス・パイプライン(TANAP)のある種の延長だと言えよう。TAPとTANAPはギリシャ-トルコ国境で接続する。
アゼルバイジャンがヨーロッパに賭け、トルクメニスタンが中国に賭けている様子の比較は勉強になる。
更に、ロシアと中国とアメリカとEUを対象とする独自の“複数ベクトル”外交政策を推進するカザフスタンがある。
同時に、アスタナは、BRIの主要結節点で、ユーラシア経済連合(EEU)加盟国で、上海協力機構(SCO)加盟国で、EUメジャーやアメリカ巨大石油企業の投資を歓迎している。
いずれ、北京は、カザフスタンを除く、あらゆる中央アジア“スタン”の主要貿易相手国という戦略的優位を享受し、一方、モスクワは、安全保障提供者、貿易相手国、外国投資の源、何百万人もの中央アジア人国外居住者の雇用主、ソフトパワーの中心(ロシア語は、中央アジアでは、共通語で、ロシアTVや文化は、いたるところにある)という複数の役割を維持することになろう。
しかも、この全てが、BRIとEEU両方の枠組み内のものなのだ。
イランとトルコは、全体像の中で、どうなるのだろう?
カスピ海の国家としてのアゼルバイジャンは、トルコと深い人種的、言語的つながりがある。ところが、バクーは、アタチュルクの精神に則った非宗教主義を奉じており、これはトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領のイスラム教色に染まった新オスマン帝国主義とは相いれない。
ことを複雑にする大きな要素は、アンカラとモスクワが、トルコ・ストリームで協力していることだ
- 要するに、シベリアから黒海海底経由でヨーロッパに送るものは、パイプライニスタン、アゼルバイジャンのガス輸出と直接競合するのだ。
イラン自体は、中央アジア全体に大きな文化的、言語的影響力がある。実際ペルシャは、歴史的に、中央アジア全体で、主要とりまとめ組織だった。イランは、南西アジア(欧米が中東と呼ぶ)でも、中央アジアでも大国だ。
しかし、道路、鉄道、橋、トンネル、パイプラインや、光ファイバー・ネットワーク構築で形成されるBRI環境の中で、中央アジアで状況を変える上で最も有力な国は、トルコやイランやロシア以上に、中国であり続けるだろう。
中国企業は既に、カザフスタン石油生産の約25%、トルクメニスタンのガス輸出の事実上全てを保有している。しかも彼らは主要BRIノードとして、バクーに目をつけている。
中国帝国の影響力が中央アジアを横断し、遥々北東イランまで広がっていた唐王朝のデジタル版復活とでも呼ぶべきか。カスピ海が間もなく中国の湖になるのに賭けますか?
記事原文のurl:http://www.atimes.com/article/caspian-games-central-asian-stans-vie-connectivity-market/
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『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』を拝読し、下記IWJインタビューも拝聴したことがある、あの蓮池透氏が、パフォーマンスに怒っておられるようだ。
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国会で議員に北朝鮮の「工作員」と名指しで侮辱!?された『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』著者「拉致被害者家族会」元事務局長蓮池透氏に岩上安身が訊く!第1弾 2016.1.27
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二・二六事件、五・一五事件前夜?
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