ロシア・スパイへの毒ガス攻撃: ノルド・ストリーム 2が、より大きな標的なのか?

Finian CUNNINGHAM
2018年3月10日
イギリスにおける元ロシア・スパイに対する謎めいた明らかな殺害の企みの影響は、ヨーロッパ全体に広がっている。
予想通り、事件はイギリス・マスコミでの反ロシアの主張を煽り立てるのに利用された。しかし、更に、欧州連合は、イギリスの主権に対するロシアによる攻撃とされるものに対するイギリスとの“団結”を示すよう圧力を受けている。
元イギリス当局者たちが、イギリス国内へのロシアによる侵害とされるものを巡るEU諸国の団結の欠如を悲嘆していると報じられている。EUは、ロシアによる違法行為なるものを暗黙の内に承認して、イギリスとの“団結”という義務的声明を出して答えた。
日曜、イギリスにおける、亡命クレムリン工作員セルゲイ・スクリパリに対する明白な致死的毒ガス攻撃へのロシアの国家的関与という非難は、適正手続きの嘆かわしい無視と平行している。
66歳のスクリパリと彼の娘が集中治療に急送された事件から数時間後、イギリス・マスコミは、ロシア工作員が、報復暗殺を試みたと憶測している。
スクリパリは、2010年、イギリス国外の政治経済やその他の秘密情報収集、情報工作を任務とするMI6への二重スパイによる国家反逆行為のかどで起訴された後、ロシアから亡命した。彼はイギリス南部の都市ソールズベリーに暮らしているが、そこの公園で、33歳の娘とともに麻痺しているのを発見されたのだ。
イギリス人テロ対策当局者たちは、使用された化学物質は特定せずに、二人は猛毒の神経ガス攻撃の犠牲者だと明らかにした。彼らは、そのような致死的な作戦を実行する攻撃、あるいは攻撃者は、国家ぐるみのものに違いないと主張している。イギリス警察は攻撃を実行した機関をまだ明らかにしていないが、イギリス・マスコミは、ロシアの関与という無責任な憶測に早速飛びついた。この憶測は、ボリス・ジョンソン外務大臣などの政府閣僚が当てこすりをして、あおられている。
ロシア外務省は、モスクワの関与という非難を“更なる無責任なロシア嫌悪”だと切って捨てた。
過去8年、イギリスで公然と暮らしている、不祥事を起こした元スパイに報復するため、今月の大統領選挙を前に、ロシアが危険な作戦を実行するだろうという考えは、信憑性に欠ける。欧米マスコミにおいて、既に高まっている反ロシア・ヒステリーを考えれば、クレムリンが、そのような計画を考え出すなど笑止千万だ。
とは言え、証拠は、スクリパリ暗殺の企みで、軍用化学兵器が使用されたことを示している。著名イギリス人毒物学者、アリステア・ヘイ博士が、ラジオ・フリー・ヨーロッパで、今週攻撃で使用された化学物質は、ソマンやタブンなどのサリンやVXと関係する有機リン毒物のどれかであった可能性が高いとかたった。これらは人肌に一滴付けただけで殺人できる神経ガスだ。
化学兵器に関するイギリス政府顧問が、急いたロシア非難を警告したのだ。“現段階で、誰かを非難するのは、余りに早急すぎると私は思う”と、この専門家は述べた。
国際的に尊敬されている毒物学者が、あえて語っているのは、使用された物質の極端な致死性ゆえに攻撃の性格は“軍隊能力”を帯びているということだ。
ロシアが関与していないと仮定すると - 上記理由からして、もっともな仮定だが - 疑問はこうだ。一体どのような国家機関が、これ実行したのだろう? 一体何の目的で?
ここでは特に、ロシアと全ヨーロッパの関係を破壊させることを狙う機関に焦点が当てられている。上記の通り、毒ガス攻撃事件を巡るロシア非難の影響の一つは、EUに、モスクワに対して厳しい対応を示すようにというすぐさまの圧力だ。
元駐ロシア・イギリス大使、トニー・ブレントン、ヨーロッパ諸国を、イギリスへの支援が足りないと非難したと報じられている。
“トニー・ブレントン元大使によれば、元ロシア・スパイが、ソールズベリーで、毒ガス攻撃された後のロシアに対する戦いで、欧州連合はまたもや、イギリスを支援しそこねている”とデイリー・エクスプレスが報じている。
別の元イギリス外務省顧問、イギリスのBrexitを巡るEUの辛辣な論争ゆえに“クレムリンは、イギリスがアメリカとEUに同盟がなく、スクリパリ事件に関して何もできないのに付け込んでいる”と主張している。
ロシアが関与しているというこの論理は錯乱している。だが示唆に富んでいる点は、モスクワに対するより広範な敵対的対応にヨーロッパを巻き込むという意図された効果だ。
確かに以下の論議は不確かだ。だが一考に値する。
先週、アメリカが率いるロシア-EU ノルド・ストリーム 2プロジェクトを駄目にする政治キャンペーンは、新たな弾みを得た。
110億ドル、1,200キロのガス輸送パイプラインは、来年の完成が近づいている。
ポーランド、エストニア、リトアニアとラトビアの外務大臣が、ワシントン DCを訪れ、ノルド・ストリーム 2と、どうすれば潰せるかいう特定の話題で、レックス・ティラーソン国務長官と会談したとボイス・オブ・アメリカが報じた。
ポーランドとバルト諸国は、伝統的なヨーロッパへのエネルギー源ロシアを置き換えるアメリカによるガス供給を主張している。この問題は戦略的重要性が非常に大きい。ヨーロッパ消費者にとってずっと高価な結果となるにもかかわらず、ヨーロッパ諸国が、アメリカ・ガス輸出に切り替えることへの支援を、トランプ大統領は強く主張している。
ノルド・ストリーム2プロジェクトは、ロシア国営企業ガスプロムと、五社の私営エネルギー会社イギリス、ドイツ、フランスとオランダのパートナーシップだ。
しかし、プロジェクトは、ウクライナ、クリミアに関して、そして、アメリカとヨーロッパの選挙への“干渉”とされるものに対するロシアに対する非難を巡る政治的影響に晒されている。
ドイツとオーストリア政府、ロシアとの新ガス・ネットワークの強力な支援者だ。先週、オーストリアのセバスティアン・クルツ大統領は、モスクワを訪れ、ウラジーミル・プーチンと会談し、ノルド・ストリーム 2支援を表明した。
とは言え、猛烈な反ロシア・イデオロギー政治が傑出しているポーランドとバルト諸国は別としても、EU政権内部には同様にノルド・ストリーム供給に反対する分子もいる。彼らは、そのような仕組みは、ヨーロッパ内政に対する余りに大きな影響力をモスクワに与えてしまう。そのような主張をする連中は、親NATOで、親ワシントンであることが多い。
要は、ロシア-EUガス・パートナーシップを駄目にするためのキャンペーンに、先週のポーランドとバルト諸国政府閣僚代表団ワシントン訪問で見るように新たな弾みがついていることだ。もちろん連中はドアを押し開けているのだ。アメリカの国益は、ヨーロッパへのガス供給国としてのロシアを打ち負かすという目的と深く結びついている。
すると、ロシアをはめるよう仕組まれた、イギリスにおける暗殺の企てのタイミングは、ヨーロッパの世界的エネルギー市場を巡る戦略的闘争の好都合な時期のものだ。亡命ロシア・スパイ殺人未遂とされるものを巡り、モスクワに対して“より強硬”となるよう、巨大な圧力がEUにかけられているように見える。求められている“より強硬な”対応は、ノルド・ストリーム 2 ガス・プロジェクトのキャンセルである可能性がある。
もしこれが、EU-ロシア関係を切り裂くための最近の取り組みの動機なのであれば、実行犯らしきものとして絞られるものは以下のものへと変わる。モスクワを排斥する狙いで、セルゲイ・スクリパリと彼の娘を殺害しようと、おそらくイギリスや東ヨーロッパの共犯者と協力したアメリカ国家機関だ。
写真: politico.eu
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/03/10/russian-spy-poison-attack-nord-stream-2-bigger-target.html
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財務大臣が「ゆうむ」というのが、わけがわからなかった。「有無」のことだった。呑気な夫妻は知らん顔。
岩上安身氏インタビュー、大本営広報部では、決して伝えない情報満載、必見だが、拝見するには時間が必要。
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