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2018年2月 7日 (水)

ベネズエラでピノチェト式クーデターを計画しているトランプ政権

Wayne MADSEN
2018年2月5日
Strategic Culture Foundation

退行するドナルド・トランプ政権は、ニコラス・マドゥロ大統領の社会主義政府を打倒するため、ベネズエラでの軍事クーデターを計画している。レックス・ティラーソン国務長官が、中南米とカリブ地域の諸国歴訪出発前に、テキサス大学で講演し、中南米では、危機の時期に、軍が政治に介入することが多いと述べた。

ティラーソン発言は、中南米におけるアメリカの暗い過去の場面を呼び起こした。さらに悪いことに、ティラーソ ン“それが書かれた頃と同様、現代でもあてはまる”と強調して、1823年の帝国主義的モンロー・ドクトリンを呼び起こしたのだ。アメリカ史で終始、モンロー・ドクトリンは往々にして、ワシントンの言いなりになる“バナナ共和国”を樹立する目的で、中南米における軍事介入を正当化するのにアメリカ合州国に利用されてきた。

BBC報道によれば、ティラーソンは、この発言の前に“政権転覆を主張ているわけではなく、いかなる計画された行動に関する諜報情報も持ち合わせていない”と述べていた。1973年9月11日のチリの社会主義者大統領サルバドール・アジェンデに対する中央情報局(CIA)が支援した残虐なクーデター前、リチャード・ニクソン大統領の国家安全保障顧問ヘンリー・キッシンジャーが似たような発言をしていた。公式には、民主的に選ばれたチリ政府の不安定化に関する、アメリカのいかなる関与も否定しながら、陰でキッシンジャーは、アジェンデの打倒、暗殺で、チリ国軍と協力していた。チリ・クーデターから11日後、国家安全保障顧問の職を維持しながら、ニクソンに国務長官に任命されて、キッシンジャーは報奨された。

1999年にマドゥロの前任者ウゴ・チャベスが権力者の座について以来、CIAは少なくとも一度は、クーデターはすぐさま覆されたが、軍事クーデターを試みており、2002年には、幾つかの“カラー革命”風街頭抗議行動や混乱や経済戦争やチャベスとマドゥロを権力の座から追い出すためのCIAが起動したゼネストがあった。

エクソン-モービル元CEOのティラーソンは、ベネズエラの国有石油会社ペトロレオス・デ・ベネズエラS.A. (PdVSA)に対する、拘束されないアメリカによる支配に長らく目をつけていた。ティラーソンの中南米訪問日程が、ベネズエラに対する彼の計画を漏らしている。ティラーソンは、トランプの人種攻撃的言辞を巡り、アメリカ合州国と関係がこじれている国メキシコを訪問予定だ。ティラーソンとトランプの国家安全保障顧問のH. R. マクマスター中将は、メキシコの現在の大統領選挙戦に干渉していると、ロシアを、一片の証拠も無しに非難した。左翼MORENA党候補者、最有力候補のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドル、略称“AMLO”は、彼がロシア権益集団から資金提供を受けたという濡れ衣をかわさなければならなかった。ワシントンのお気に入り、右翼候補ホセ・アントニオ・ミードは、AMLOはロシアに支援されていると非難した。AMLOは、麻薬で腐敗した制度的革命党 (PRI)から立候補し、冗談めかして“アンドレス・マヌエロヴィッチ”と名前を書いたジャケットを着ることが多いミードの非難は、話にならないと言っている。

メキシコの他、ティラーソンはアルゼンチン、ペルー、コロンビアとジャマイカも訪問する。ティラーソンの立ち寄り先が彼の真の意図を暴露している。トランプの不動産開発業者仲間マウリシオ・マクリが支配するアルゼンチンと、スキャンダルまみれのペドロ・パブロ・クチンスキ大統領がトランプを称賛しているペルーは、米州機構や他の国際機関内で、反ベネズエラ行動を率いている。コロンビアは、ベネズエラに対するCIAが支援する武装集団や諜報活動の基地として機能している。アメリカ率いる対ベネズエラ経済制裁のおかげで、コロンビアは現在、何千人ものベネズエラ経済難民の本拠で、対マドゥロ・クーデター向け歩兵人材の格好の供給地となっている。ジャマイカを除いて、ティラーソンの中南米での立ち寄り先全てが、ベネズエラで、マドゥロを平和裡に権力の座から外すことを狙う国々の集団リマ・グループのメンバー諸国だ。

ティラーソンのジャマイカ立ち寄りが、ベネズエラから輸出される割安の石油の恩恵を受けているカリブ共同体(CARICOM)のいくつかの島嶼国をベネズエラ勢力圏から引き離すことを狙ったものであることは明白だ。BBCによれば、ティラーソンは、テキサスで、マドゥロの究極的な運命に関してジョークまで言った。“もし彼[マドゥロ]にとって、台所が暑くなりすぎれば、彼はキューバのお友達連中に、海岸にある素敵な大農場をくれるように手配できるはずだ。”政府を支持するベネズエラ人にとって、ティラーソンの“冗談”は、チャベスが、2002年4月のクーデターで一時的に退けられた後、ベネズエラのオルチラ島にあるアントニノ・ディアス海軍飛行場に監禁されたことを思い起こさせるものだった。クーデターが失敗していなければ、アメリカ合州国は、チャベスを、キューバのグアンタナモ湾にあるアメリカ海軍基地で、抑留者収容所を経由し、キューバに亡命させるつもりだったと考えられている。

明らかにエクソン-モービルに今も肩入れしているティラーソンは、International Telephone and Telegraph(ITT)社長のハロルド・ジェニーンが果たした役割を再度演じているのだ。ジェニーンはCIAと協力し、1970年大統領選挙で、アジェンデの競争相手ホルヘ・アレッサンドリに100万ドル提供した。ITTは、チリでの1973年クーデター策謀者連中を財政的に支援したことも発見されている。1964年、ジェニーンとITTは、CIAと協力してto overthrow民主的に選ばれたブラジルのジョアン・グラール政権。現在、it isトランプ政権内のエクソン-モービルのまわし者 - ティラーソン - ベネズエラで、マドゥロを打倒しようとして、ITTとジェニーンの役割を演じるのに残業している。それぞれ、ブラジルやアルゼンチン元大統領で、そして将来の大統領になり得たはずのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァやクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネルをでっちあげた濡れ衣で投獄した。アメリカ“砲艦外交”が西半球で復活したのだ。

メキシコ・シティーでの記者会見で、メキシコのルイス・ビデガライ外務大臣は、マドゥロ政権を打倒するためのベネズエラでの軍事クーデターというティラーソンの考え方をはねつけた。記者会見には、ベネズエラとロシアに対して歯に衣を着せずに物を言う敵、カナダのクリスティア・フリーランド外務大臣も出席していた。

ティラーソンは心底からのベネズエラ憎悪は、マドゥロやチャベス以前からのものだ。1976年、ティラーソンがエクソンで働き始めた一年後、ベネズエラのカルロス・アンドレス・ペレス大統領がベネズエラの石油産業を国有化した。国有化された資産の中には、ベネズエラ内のエクソン’s holdings。ティラーソンが同社を支配していた時代、2007年に、チャベスはエクソン-モービルの資産を再度国有化した。エクソン-モービルとティラーソンはカラカスによる補償を巡ってベネズエラと戦った。エクソン-モービルは、この件を 世界銀行での仲裁にもちこみ、ベネズエラに、同社に150億ドルを支払って補償するよう要求した。世界銀行は、わずか16億ドルの補償を決定し、この行為はティラーソンを激怒させた。エクソン-モービルへの補償を巡る小競り合いで、ベネズエラが勝利したことを、ティラーソンは決して忘れていない。今ティラーソンは仕返しをしようとして、チャベスの後継者マドゥロを権力の座から追い出しを狙っているのだ。

2015年、エクソン-モービルは、ベネズエラの東、ガイアナ沖の係争中の領土エセキボで石油事業を開始した。ベネズエラとガイアナは、この件で国際仲裁を求めたが、それも、エクソン-モービルを率いるティラーソンが、ガイアナの子会社エッソ探査・生産ガイアナ社に、係争地域で探査を続けるよう命じるのを止めなかった。ティラーソンと彼のボストランプにとって法的取り決めも、それが印刷されている紙の価値もなさそうだ。

ジャマイカ滞在中、ティラーソンは、ジャマイカ石油精製企業ペトロジャムのベネズエラの株、49パーセントを買い取るよう、アンドリュー・ホルネス首相に頼るだろうと予想されている。ティラーソンは、ペトロカリブ・エネルギー協定同盟により、ベネズエラ石油業界との協力協定を確立しているカリブ諸国に、“ロシア風”経済制裁をベネズエラにも拡張するトランプの懲罰的な大統領命令13808号に応じるべく、これら合意を取り消すよう服従させたいのだ。ハイチ、ニカラグア、ジャマイカ、ガイアナ、ベリーゼ、ホンジュラス、バハマ、スリナム、セントクリストファー・ネイビスやセントルシアなどの国々のペトロカリブ・エネルギー協定を取り消させ、カリブ諸国に、より高価な石油とガソリンを、エクソン-モービルから購入するよう強制し、エクソン-モービルの利益を増やすことしか、ティラーソンは考えていない。

ティラーソンは、トランプ政権の醜い顔を中南米に見せた。第二次世界大戦以来、未曾有の避難民大量移動として、アメリカ合州国内の何百万人もの不法入国中南米人居住者を強制送還したいだけでなく、中南米中のトランプの気に入らない政権を、残虐なクーデターによって変えたいのだ。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2018/02/05/trump-administration-planning-pinochet-type-coup-in-venezuela.html
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9/11 サルバドール・アジェンデの遺言 (1973)を昔訳した。

話題のAH-64とMain Rotorとで、過去の宗主国記事を捜すと、例えば下記がある。

Failure Analysis of the Main Rotor Retention Nut from AH-64 Helicopter

Failure Analysis of an AH-64 Main Rotor Damper Blade Rod End, P/N 7-211411186-5

興味深いインタビューが目白押し。

日刊IWJガイド・番組表「本日17時半から! 岩上安身による 日本共産党 辰巳孝太郎参議院議員 インタビュー!/さらに8日21時からは木村真 豊中市議インタビュー(後編・その2)を再配信!/ニューヨーク市場で株価急落を受けて日経平均株価も急落!黒田日銀総裁は『経済はしっかりしている』!? 本日20時からは岩上安身による弁護士『アベノミクスによろしく』著者・明石順平氏インタビュー(後編)を緊急再配信!/スタッフ緊急募集中!」2018.2.7日号~No.1973号~

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コメント

 チャベスの子供達の闘いとその勝利を嬉しく感じていた私にとってこの記事は不吉極まりないものです。ですが、確かに不穏な雰囲気は伝わってきます。
 現大統領のニコラス・マドゥロ氏は軍隊出身ではなく文民政治家であり、ウーゴ・チャベス氏の後継者となった人物です。チャベス政権下の2002年のクーデターでは、チャベス氏は一旦監禁・幽閉されましたが多くの人民の支持と出身母体である陸軍に強い影響力を持っていたことが彼の復活に繋がりました。
 医師の道を志しその後政治家となったチリの社会主義者、サルバトール・アジェンデ氏は1973年の"忌まわしき"911"によって打倒されてしまいましたが、その彼も文民政治家でした。この文脈から推するに、マドゥロ氏の先行きは軍をどれほど掌握しているかにかかっているのかも知れません。私は、ベネズエラの人々がマドゥロ氏を見捨てずに共に闘い続けていく姿を見続けたいと思っています。

 西欧世界でその存在が忌避されている社会主義ですが、社会主義の本質は「民衆一人一人が主体的にその国の経済を未来を選択する」ということです。つまり、社会主義とは民主主義の一つの形態です。民主主義を信奉していると思しき西欧世界が社会主義をかように敵視し憎悪するのでしょうか。言わずもがな、皆さんもその意図は分かっているでしょう。
 彼らの行為は卑劣極まりなく、横車を押すようにキャタピラーでひき潰すことで新たな憎しみを生んでいます。自分さえよければ良いのです。アメリカや西欧諸国に生まれた豊かな者たちはそれをごく当然の事とし、自分たちがその地位にいることを自然の摂理であるかのように振る舞います。自分たちが貧しき家庭に、貧しい国に、紛争地域に生まれ落ちたら、ということは皆目見当がつかないぐらい彼らの想像力は欠如しています。

 マスメディアは、真実の全体像を報道することはせず、フレームに切り出された一部の事実が真実であるかのように私たちに押し付けてきます。全体像を知り得ない私たちがそんな彼らの風説を信じた挙句、世界が混乱と格差と憎悪の連鎖に晒されてしまいます。私たちがそれを支持したかのように扱われてしまうのです。人々がそれを望んだ、選択した、と言い逃れできるように。マスメディアは自分たちの罪を人々に擦りつけて免責しているのです。
 これまでの歴史が伝えてきたように、マスメディアは写真映えするシーンを見つけて事前に確保します、まるで予告があったかのように。それは一つのイベントなのです。いわゆる極悪の独裁政権を打倒する決定的瞬間を捉えるのがマスメディア子飼いのカメラマンや報道ジャーナリストのお仕事なのです。

 マドゥロ大統領率いるベネズエラがこの不穏な状況を無事に乗り越えることができるか否かは、この世界に希望を持ち得るか否かを判断する一つの試金石だと私は思います。これまでに、西欧から見て異質なとされる、あまりに多くの社会が潰されてきました。
 グローバルヒストリーと称される1968年を経験した者たちがこの世を去りつつある現在、残される私たちとその後を担う若者たち、そしてこれから生まれてくるであろう未来の若者たちの希望の一つとして、チャベスの子供達のベネズエラが存続し続けて欲しい、と私は切に願っています。

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