見捨てられた労働者階級
2018年1月24日
Paul Craig Roberts
現代の大きな悲劇の一つは、白人リベラル/進歩派/左翼が労働者階級を見捨てたことだ。もはや、労働者階級が、被害者集団で、ウオール街や巨大銀行や資本家が加害者だということはなくなったのだ。今では迫害者は白人労働者階級で、それ以外全員が被害者集団だ。三十年にわたり、収入や機会が縮小し続けてきた労働者階級、自分たちのために働く政治家を持てず、民主党にさえ見捨てられた階級が、どういうわけか億万長者たちを押しのけ、彼らに代わってアメリカを支配している強力な搾取者なのだ。ヒラリー・クリントンに“トランプ支持のみじめな連中”とレッテルを貼られた落ちぶれ果てた労働者階級が、一体どうして、アメリカの支配者でありえよう?
資本家たちは、彼らの権力を、その収入と富を最大化させるために使うが、アイデンティティ政治では、白人男性は、権力を、人種差別、女性蔑視、同性愛差別をするのに使うのだ。しかも、同性愛者、優先される少数派や、女性などの被害者集団とは違って、白人男性is人数割り当て、政治的公正や、ヘイト・クライムによって保護されていない。白人男性には書物で、あらゆる悪口を書かいてもかまわないが、被害者集団の一員を傷つけたり、脅かしていると見なされることを一言いうだけで、強力な白人男性は、感受性訓練に送られたり、失業者の群れに入らされたりする。真実を語ることが可能なら、被害者集団を構成しているのは、白人異性愛男性であるのは明らかだ。
あらゆるイデオロギーと同様に、アイデンティティ政治は事実が見えない。イデオロギーは事実に基づくものではない。アイデンティティ政治、ユダヤ教以外の宗教を信じる「ゴイ」の社会を崩壊させるよう作られているユダヤ文化のマルクス主義に基づいており、うまくやっている。
アイデンティティ政治には、広範囲に及ぶ理解を歪める影響力がある。例えば、ドナルド・トランプが大統領として当選した結果の積極的なものの一つが、野生生物・環境保護団体の活性化だ。こうした団体が大企業の助成金に依存しており、それで大企業幹部がそうした団体の理事になり、こうした団体の闘争心は弱まった。国定公園やフロリダ州の保護沿岸水域などの環境に対するトランプの総攻撃が、それを復活させつつある。
環境・野生生物保護団体の雑誌は、一層戦闘的になって結構なことだ。例えば、シエラの今月号に、“阿呆の金”というソフィア・ジョーンズによる記事がある。コロラド州の巨大採掘企業ニューモント・マイニングによる、同社の採掘事業を拡大するための、ガーナの小農場差し押さえに関する記事だ。
このアメリカ採掘企業は、どうにかして、おそらく賄賂を払って、ガーナ政府、あるいは誰であれ、ガーナ政府を代表する人物から、ニューモントにとって最小限の経費で、採掘企業は、ガーナ国民を彼らの土地から立ち退かせて良いという許可を得たのだ。ニューモントからの、たった343ドルの支払いで、彼女と家族が自給自足していた自分の土地から、ヤー・コナドゥは退去させられたと、ソフィア・ジョーンズは書いている。
記事は、水資源の破壊や、性的な興味を持った若い女性が、結果として生じる妊娠に無頓着な同社に雇われている男性にさらされることなどを含む、ニューモントによる土地買収の悪影響の数々を書いている。
私が確認できる限り、ソフィア・ジョーンズは正確な情報を書いている。おそらくアイデンティティ政治の影響で、資本家による搾取についての記事で、彼女が集中力を失い、代わりに男性による女性搾取に焦点を当てているのを指摘して彼女の信頼性を貶めるのが私の意図ではない。記事で、悪者はニューモントではなく、異性愛の男性になっている。
私がお勧めするこのシエラ記事をお読みになれば、アイデンティティ政治のおかげで、ソフィア・ジョーンズが、資本家による搾取に焦点を当て続けられなくなっているのをご理解頂けよう。グローバル資本主義が世界中で人々の生活を破壊しているのに、性的搾取の話で、強調が薄められている。
世界中を搾取する資本主義にとって、アイデンティティ政治は資本主義から注意をそらす便利なしろものだ。国を経済的に略奪する方法は、人々の関心をジェンダー政治に向けてることだと決めている大企業の企画担当者連中が目に浮かぶ。
シエラ掲載のソフィア・ジョーンズ記事の欠点は、世界的な資本主義者による搾取から関心をそらせていることだ。言い換えれば、アイデンティティ政治は、本当の搾取者が誰かを隠すことで支配階級に役立っているのだ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2018/01/24/abandonment-working-class/
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野中広務氏が亡くなった。昔の自民党には偉い人がいたのだ。小選挙区制以前は。沖縄を大切にしておられた。「何人死んだ!」という野次阿呆が今の売国傀儡の典型。
原子力発電について的確な発言をしておられた吉岡斉九州大学教授も、十日ほど前に亡くなられたばかり。拝読したのは『原子力の社会史 その日本的展開』『脱原子力国家への道』。
トランプ米大統領、とうとうTPP復帰の可能性に言及。バノン追放以来、益々巨大資本優先路線が露骨になっている。ISD条項によって、国民生活は徹底的に破壊される。全員ヤー・コナドゥさんのようになりかねない。企業は利益を損なったと国を訴えられるが、国民の利益が損なわれたと、政府が企業を訴えることができない無茶な仕組み。売国奴大本営広報部は、絶対、TPPのこの問題に触れない。
孫崎享氏の今日のメルマガから一部を引用させていただこう。
ISD条項については、これまでもしばしば言及されてきているものと承知するが、日本に投資している外国の企業が、日本の法律、裁判、行政によって被害をうけたと判断する時には、日本の司法に救済を求めるのでなく、国際仲裁裁判所に訴えることが出来るという制度である。この際、その法律や裁判が健康・生命への配慮、地域の発展、労働者の保護と言う広い社会的正義、必要への配慮がほとんどなされず、企業に害を与えたか否かの論点で判断される。
大本営広報部白痴製造装置は、人気アナウンサーのセクハラでも追いかけるのだろうか?大本営広報部は、本当の搾取者が誰かを隠すことで支配階級に役立っているのだ。
これから下記を拝読する。
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