マスコミの偏向を浮き彫りにするアヘド・タミミとバナ・アラベド、二人の少女の物語
公開日時: 2017年12月20日 22:09
編集日時: 2017年12月21日 12:24
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2017年12月20日、ヨルダン川西岸の村ベイトゥニアにあるイスラエルが運営するオフェル刑務所の軍事法廷に出廷するパレスチナ人アヘド・タミミ(右)、©Ahmad Gharabli / AFP
一人は占領されているヨルダン川西岸の、もう一人は東アレッポの、中東の二人の少女に関する欧米マスコミ報道を比較すると、マスコミがアメリカ外交政策に左右されていることが明らかになる。
月曜日夜、イスラエル軍部隊が、17歳のパレスチナ人少女アヘド・タミミを逮捕した。彼女は今軍事刑務所に捕らわれて、判決を待っている。しかしアメリカの主要マスコミを見ていては、それを知ることはできないはずだ。それは、タミミ報道 - というか報道の欠如 - が、2016年10月、ほぼ一夜にしてマスコミの話題になった8歳のシリア人少女、バナ・アラベドの場合とは著しい対照だからだ。
アヘド・タミミは、イスラエルによる50年間の占領に対して毎週抗議行動をしている、ヨルダン川西岸のほんの僅かの村の一つナビサリフ出身だ。毎週金曜日、彼らがイスラエル軍が近隣の入植地のために差し押さえた泉に向かって行進しようとする際、数十人の村人に国際連帯団結の活動家も参加する。デモ行進する人々を弾圧するため様々な戦術を駆使し、負傷させ、時に殺害する重武装したイスラエル兵士に、彼らは必ず止められる。イスラエル兵士は、村を集団的懲罰の標的にすることが多い。
アヘド・タミミは、パレスチナ時間の午前4時に両親の家からイスラエル人によって強制的に拉致された。彼女は子供活動家だ。子供だ。pic.twitter.com/oHGB585mTT
- asad abukhalil (@asadabukhalil) 2017年12月19日
アヘドは著名な反占領活動家バッセムと、ナリマン・タミミの娘だ。彼女の父親バッセムは、2012年、イスラエル軍が非暴力活動のかどで彼を投獄した際、アムネスティー・インターナショナルによって「良心の囚人」と呼ばれた。2012年、あちこちで見かけられた、イスラエル兵士と対決する当時12歳のアヘドの写真で、彼女は当時のトルコ首相レジェップ・タイイップ・エルドアンに評価された。
2015年に、アヘドの弟、11歳のムハンマドの首をしめたイスラエル兵士を蹴ったり、かみついたりする彼女たちが撮影され、タミミの写真は再び一気に広まった。2016年、アメリカ国務省は、彼女の“子供留置反対/Living Resistance”講演ツアーの一環であるアヘドのアメリカ入国ビザ発給を拒否した。
先週金曜日の抗議行動中に、イスラエル兵士が、14歳のムハンマドの頭を、ゴム弾で銃撃した。彼は現在、医療行為から生じた昏睡状態にある。アヘドと、いことの20歳のヌールが、彼女の自宅入り口を塞いでいるイスラエル兵士と対決し、押している様子を映した日曜日撮影されたビデオが、あらゆるイスラエル・メディアで報じられた。 ビデオはあらゆるイスラエル・メディアで広く流布され、評論家たちは、その場で、少女を攻撃しなかった兵士の自制心を称賛した。
逆に、イスラエル軍は、タミミの家を翌朝早々、暗闇に紛れて急襲し、アヘドを逮捕した。母親のナリマンは翌日逮捕され、従兄弟のヌールは夜のうちに逮捕された。我々がオフェル軍事法廷に、アヘドに逢いに行った水曜日、正式に逮捕されたわけでもないのに、父親のバッセム・タミミは尋問に召喚された。
イスラエル指導部は一家に対する集団懲罰を誓い、イスラエルは今や十代のアヘド・タミミの両親も拘留している https://t.co/B8RIV1QJNw
- 電子インティファーダ (@インティファーダ) 2017年12月20日
極右「ユダヤ人の家」党党首[Bayit Yehudit]のイスラエル文部大臣ナフタリ・ベネットは、タミミと彼女の従兄弟ヌールに“人生を監獄で終えるよう”要求した。対照的に、ベネットは、負傷したパレスチナ人を殺害するところを撮影されたイスラエル兵士エロル・アザリアは、18カ月の禁固刑から解放されるべきだと述べた。
アヘド逮捕の人目をひく特徴にもかかわらず、アメリカ・メディアのバナ・アラベドへの執着とはどぎつい対照で、アメリカ・メディアは事実上の沈黙を維持している。
2016年9月、アレッポでのシリア政府軍と聖戦戦士集団の戦いが激化する中、7歳のアラベドのツイッター・アカウントが出現し、何十万人ものフォロワーを、ほぼ一夜にして得た。アカウントは、アルカイダ系列のヌスラ戦線支配下にある東アレッポ地域からのものだとされているが、インターネット・アクセスがほとんどできないのに、どうしてツイートできたのかは不明だ。未成年者の承認を禁じるルールに違反して、承認されたツイッター・アカウントだ。
CNN司会者ジェイク・タッパーなどの著名マスコミ人が何百万人ものツイッター・フォロワーに、“フォロー@アラベドバナ”と促し11歳のアラベド・アカウントを後押しした。(タッパーは、彼のフォロワーに、2017年4月の今は削除されているツイートで、アラベドをフォローするよう再度呼びかけた。)
彼女は母親ファティマの助けを得て、アサド政府を打倒するため、飛行禁止空域と、アメリカ軍によるエスカレーションを、更には第三次世界大戦まで、ツイートで呼びかけた。ほぼ流ちょうだったツイートとは対照的に、 アラベドの会話はブロークンで - 彼女が英語をほとんど、あるいは全く理解していないことを示している。シリア軍とヒズボラによるアレッポ解放が近づくと、アラベドのアカウントは、彼らの手による彼女の死が迫っているとツイートした。数週間後、彼女と家族は、アルカイダの敗北後、シリア政府との合意で、聖戦戦士とその家族がバス移送されたアルカイダが支配する北シリアのイドリブ県に現れた。
その期間、アラベドは、終始欧米マスコミの呼び物記事だった。ワシントン・ポストは、彼女を“現代のアンネ・フランク”と呼んだ。CNNは視聴者に、アラベドは生き残ったと断言した。
2017年4月、CNNのアリシン・キャメロタが、明らかに台本にのっとって、アラベドにインタビューした。“アサド大統領に、どんなメッセージを伝えたいですか?”とキャメロタが質問した。“とても悲しいです。たくさんの人が死に、誰も助けませんでした。”と彼女は答えた。
5月、アラベドはトルコ国籍を獲得し - アヘド・タミミ同様 - トルコのエルドアン大統領と写真撮影した。トルコ国営メディアのアナドル通信社とのインタビューで、アラベドは英語を理解せず、何を言うべきか、母親に教えられていたことが明らかになった。
まもなく、『ハリー・ポッター』シリーズの著者J・K・ローリングの支援を得て、彼女は巨大出版社サイモン・アンド・シャスターとの出版契約を結んだ。‘ディア・ワールド’という題の224ページの本は、アラベドの物語を“バナ自身の言葉で記録し、母親のファティマによる短く心を打つ章もある。
10月に彼女の本が刊行されて以来、アラベドはアメリカでの宣伝ツアーに乗り出した。英語も上達し、彼女はロサンゼルスでの目立つ映画上映や、もちろんCNNにも出演した。
アラベドはタイム誌にも新たな記事が載ったが、一方タミミは、欧米マスコミ報道管制の中、有罪判決率99.8%のイスラエル軍事法廷での判決を待っている。
記事原文のurl:https://www.rt.com/usa/413798-tamimi-bana-media-bias/
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下記の記事を思い出す。
2012年10月22日に訳した記事 誰も耳にしないマララ達
2013年11月5日に訳した記事 マララとナビラ: 天地の差
そして、この記事で触れられている2017年7月28日に訳した記事。
バナ・アラベドの利用: アレッポのテロリストを糊塗するため両親が子供を利用
この話題、実は、IWJ岩上安身氏による、東京大学名誉教授・板垣雄三氏の下記 インタビューを拝聴して、それと気がついたもの。英語ニュース見出しで、何度か見かけて、気になってはいたが、こういう内容とは知らなかった。
しかし日本の主要マスコミを見ていては、それを知ることはできないはずだ。
「核」が結ぶシリア・イラン・北朝鮮――中東と極東で同時に高まる戦争の危機! 中核に位置するパレスチナ問題を紐解く~岩上安身による東京大学名誉教授・板垣雄三氏インタビュー(後編)
イランの反政府抗議デモはしつこく流し、エルサレムのイスラエル首都認定についても、画像を流すが、イスラエルの理不尽な行動、大本営広報部大政翼賛会で見た記憶、ほとんどない。
数日前、 アヤトというパレスチナ人少女が自爆攻撃をし、被害者も少女で、イスラエル人のラヘルだった事件の今を追う番組を民放で見て驚いた。、
自爆攻撃した少女の家族は、イスラエルの圧力でばらばらの暮らしを強いられていた。
ラヘルの母親は、パレスチナ人の生活はずっと良くなったと断定していた。
二人の母親のテレビ電話での対話は論争になってしまった。
リモコン装置に、投げ銭ボタンが付いていれば、押していたに違いない。
この出来事に関するドキュメンタリー『エルサレム ふたりの少女~自爆テロ 母たちの対話~』 BS世界のドキュメンタリーで放映されたようだ。捜すと、今も映像は残っている。
http://qlipso.veoh.com/m/watch.php?v=v16723334psJpGN3K
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