緊急会合で、ばつの悪い目にあったヘイリー大使
パトリック・J・ブキャナン
2018年1月9日 12:01 AM
イランに向かって“アメリカは、あなたがたが何をするか注目している”と、金曜日、ニッキー・ヘイリー国連大使がイラン国内での暴動に関する安全保障理事会の緊急会議で述べた。会議後、彼女もアメリカも、ぶざまだった。
フランス大使は、各国が自国内の混乱に、どのように対処するかは理事会の関心事項ではないとヘイリーに諭した。ロシア大使は、国連は、アメリカのオキュパイ・ウオール街粉砕や、ミズーリ州警官のファーガソン事件への対処方法を検討するべきだと提案した。
50年前、マーチン・ルーサー・キング暗殺後、100のアメリカ都市が火に包まれた。軍隊が出動した。1992年、ロサンゼルスは、ロドニー・キングを殴りつけたLAの警官たちがシミ・バレーで無罪放免された後、二十世紀最悪のアメリカ暴動に苦しんだ。
こうした暴動に対する我々の対応は、国連の業務対象なのだろうか?
1946年の設立以来、国連はわが国の主権問題に干渉しないよう保守派は要求していた。今我々は、国連には加盟諸国内の国内騒乱を監督する権限があると認めるのだろうか?
金曜日の会議は、イラン大使が、安全保障理事会は、イスラエル-パレスチナ問題や、アメリカが支援するサウジアラビアの対イエメン戦争で引き起こされた人道的危機を取り上げてもよいのではと提案した後、立ち消えになった。
このエピソードはexposes malady ofアメリカ外交政策。政策は、整合性、一貫性、道徳的な明快さに欠け、友好国と敵国を別の基準で処遇し、反射的な介入主義者だ。
こうして、アメリカは、冷戦終結時に享受していたほぼ普遍的な称賛と尊敬のほとんどを失ってしまった。
この驕慢な世代が全てを蹴り飛ばしたのだ。
お考え願いたい。イランのこの混乱への対応は、トランプ大統領が“信じられないほど素晴らしい仕事”をしていると評した、わが国の同盟者フィリピンロドリゴ・ドゥテルテに責任があるとされている何千件もの麻薬密売人の裁判なしの殺害よりひどいだろうか?
これは、2012年のアブドルファッターフ・アッ=シーシー将軍による選挙で選ばれた大統領エジプト、ムハンマド・ムルシー暴力的な打倒や、シーシーがムスリム同胞団団員を何千人も投獄していることと比較して、どうなのだろう?
現在、イランは本当に中東で最悪の状態にあるのだろうか?
ハサン・ロウハーニーは、57パーセントの票で当選した大統領だ。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーンを、誰が皇太子と将来の国王として選んだだろう?
ウラジーミル・プーチンも、我々の同盟者であれば許されるもので、民主主義に対する犯罪だと非難されている。
ロシアでは、キリスト教は栄えており、プーチンに反対する候補者が立候補している。ロシア・マスコミの中には、年中彼を批判しているものがある。
サウジアラビアやアフガニスタンで、キリスト教はどうなっているのだろう?
プーチン政権は何人かのジャーナリストの死に責任があるとされている。しかし、我がNATO同盟国トルコでは、世界のどの国より遥かに多数のジャーナリストが刑務所に投獄されている。
マグニツキー法は、一体いつトルコに適用されただろう?
アメリカは、その“価値観”に逆らう罪のかどで敵国を激しく非難するが、我々にに従えば、同盟諸国は寛大に赦免するのを世界は余りにも頻繁に目にしている。
18月間というもの、民主党全国委員会とジョン・ポデスタ電子メールをハッキングして、クレムリンが“わが国の民主主義”に対して攻撃したことを巡るエリート連中の激怒を我々が見聞きしない日は一日とてない。
2015年、中国が過去、現在のアメリカ政府職員、そして志望者の何百万人もの個人ファイルをハッキングしたことが明らかになったのを一体どれだけの人が覚えているだろう?
中国はキリスト教徒を迫害しているが、70年間のレーニン主義者支配の後、ロシアはキリスト教復活を支持した。
プーチンのロシアでは、共産党が彼に対する候補を立てている。中国では、共産党が政治権力を絶対的に独占しており、誰も習近平に対抗して立候補しない。
中国が西沙諸島と南沙諸島と南シナ海全体を併合しても、いくじなく抗議しただけなのに、ロシアは、ロマノフ王朝ではロシア領として認められていたクリミア半島を、無血で取り返したことで果てし無く厳しく非難されている。
ロシア経済の数倍で、人口は10倍の中国は、唯一の超大国というアメリカの立場にとって、遥かに大きな挑戦者だ。すると、この中国寄りの理由は一体何だろう?
アメリカ外交政策が一貫性と道徳的な明快さに欠ける理由の中には、我々アメリカ人には、もはや、一体何が我々の死活にかかわる権益か、一体誰が我々の本当の敵なのか、一体何が我々価値観なのか、あるいは、良き神聖な国はどのようであるべきかについて合意がないことがある。
JFKのアメリカはオバマのアメリカより良い国だったのだろうか?
第二次世界大戦と冷戦で、我々は明快な道徳を得た。ヒトラーに立ち向かうかぎり、ヨシフ・スターリンのような道徳上の怪物であっても、我々は手を組んだ。
1946年のウィンストン・チャーチルの“鉄のカーテン”演説から、冷戦終焉までは、レーガンの表現によれば“悪の帝国”に、我々とともに立ち向かう限り、たとえピノチェト将軍やシャーのような独裁者であっても、聖人のキャンプで歓迎だ。
しかし、世界中を民主主義に変えることが、もはや世界におけるアメリカの任務ではない今、わが国の任務は一体なんなのだろう?
1962年、ディーン・アチソンは言った。“イギリスは帝国を失った”“しかし、いまだその役割を見出していない。”
同じようなことが、今、我々に対して言われて然るべきだ。
パトリック・J・ブキャナンは、新刊書『ニクソンのホワイト・ハウス戦争: 大統領を生み出し、破壊し、アメリカを永遠に分裂させた戦い』の著者。
記事原文のurl:http://www.theamericanconservative.com/buchanan/haley-calls-embarrassing-emergency-meeting-at-the-u-n/
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知りたいことは報じず、興味がないことを報じる大本営広報呆導、昨夜は見なかった。
びいとるさいとう様がコメントで書いておられるように、おかしな連中が「劇場」を演じているのは、より重要なことを隠す行動だろう。某掲示板、絶賛の書き込みに満ち、疑念を呈するコメントは罵倒されている異様な状態。
キオスクで見るタブロイド紙の見出し、残念ながら、購入する気力がなかなかでない。一紙は、そもそも買うつもりはない。
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人権侵害国 日本はNATO軍に空爆されるだろう
物騒な題名だが,あらためて故・加藤周一の『私にとっての二十世紀』を読んでいる。その中にユ-ゴスラビアの話が出てくる。ユ-ゴが人権侵害をしたからアメリカ軍を主力とするNATOが国連の承認なしにユ-ゴを攻撃したという。EUに遅れて加盟したクロアチア。ユーゴは分解したが,クロアチアのツジマン首相らはセルビア系の民族を迫害・殺傷の上弾圧した。しかしNATOはクロアチアには空爆をしなかった。なぜならクロアチアはハプスブル家(ドイツ語文化圏)の一員であるからである。
しかるにユ-ゴの大統領ミロシィヴィッチは「人権蹂躙(=民族浄化)」のゆえに国際司法裁判所に訴えられ死亡後に「無罪」となる(しかるに民族浄化はあったのかどうか)。ユ-ゴは解体され,中国大使館は予定通り爆撃された。彼の亡霊はアメリカ合州国を彷徨い,警察官は人権を無視し一般市民を証拠なく投獄,虐殺し始めた。しかし軍備を近代化した現在の中国ならば,アメリカ合州国は反撃されるだろう(中国商工銀行がトランプタワ-の20階に陣取っている以上,米中戦争はあり得ないが)。
欧米NATO部隊のユ-ゴ攻撃は,人権無視という時の政府に対する膺懲(ようちょう)であり私的リンチである(国連のお墨付きがない)。しかし同様にNATOが人権問題を理由にユ-ゴやイラクの国内問題に関与することは,内政干渉である。そこで逆説的だが,ユーゴやリビアを空爆したNATOが沖縄の山城氏を長期拘留した,人権侵害著しい日本政府・司法警察を攻撃しないとも限らないだろう。
ところで,森友学園・加計学園問題は「詰んでいる」。安倍君は二枚腰,三枚腰を発揮してまだ首相を続けるらしいが,安倍・創価学会政権は近いうちに辞職せざるを得ないだろう。首相や関係官僚が逮捕される日は近い。特に籠池夫妻が5ヶ月以上も監禁されているのは安倍権力による人権侵害であるから,ミロシィヴィッチ氏のユ-ゴスラビアが「人権侵害の過度」で国連決議なしに攻撃されたように,日本はNATO軍に攻撃されるだろう。
それはさておき,加計孝太郎氏の経営する岡山理科大学獣医学部今治キャンパスの「認可」は,大学設置審委員たちが脅迫され,自由な討議が制限され,結果的に言論の自由が圧迫された点で憲法違反である。しかし問題はそれにとどまらない。世界中の私立大学が日本に押し寄せてくるだろう。そして私学援助金を分捕るに違いない。
現在テンプル大など日本の教育機関(大学)としては認められていない。しかし教育機関として認めない岩盤規制が取り払われ,規制撤廃(deregulation)の掛け声のもと,あるいは偽TPP11によって「私学」として認可されるだろう。その結果,私学援助が開始され,他の欧米の私学が雪崩を打って私学援助金を頼りに日本に上陸するだろう。さらに土地を破格の値段または無償で提供しないのは,森友・加計学園を優遇する差別である。よって日本政府や地方自治体はISD条項によって外国の私学によって訴えられる可能性が高い。
まずアメリカ合州国の私立大学が日本に参入する。なぜなら,TPP交渉開始と同時に始められたとされる日米並行協議における日米交換文書を政府・官僚は「有効」と見なしているからだ。IWJの岩上氏と山田正彦元農林大臣の対談だったと思うが,TPPがダメになっても経産省官僚らは日米交換文書を現在もなお「有効」だと主張し続けている。
すなわち国会で可決されたわけでもない日米交換文書が有効だとする根拠はない。衆参絶対多数を背景にごり押しをし,種子法を廃止して,公営水道を私企業化(民営化)するなど農民や庶民の健康で文化的な最低限度の生活をする権利を奪おうとしている。これは日本の農民及び日本人民に対する人権侵害に等しい。またTPPは日本国憲法より上位にあるISD条項を含む。よって現憲法のうたう3本柱の一つ,基本的人権の尊重が蔑ろにされる恐れが高い。また現に蔑ろにされている。
さらにまた,憲法53条による国会開設が数か月も無視され,その国会が開会したと思うや2分間で閉じられるなど少数意見の尊重が損なわれた日本。この蛮行は民主主義の否定であり,人権侵害と言わざるを得ない。日本国にこれだけ人権侵害が認められる以上,NATOは,域外であるが,日本国を攻撃すべきだと個人的に考えるが,いかがであろうか。
追記: 人権侵害については大阪地検特捜による村木厚子厚生官僚冤罪事件や,栃木県の足利冤罪事件,フクシマ原発事故難民をはじめとする避難民(20万人以上)に対する環境省・日本政府の人権侵害など,数えるのに暇がない。裁判所が逮捕状まで出したレイプ犯を逃し,被害者の人権を踏みにじった政府の刑事部長などの事例もこれに加えてよいだろう。
追記2: 先日,人生の同行者の友人の母君が癌(ガン)を患ってお亡くなりになられた。まだ60代。本人は十分生きたから死んでもいいと,治療を拒んでいたそうだ。岩手県南部の方である。異国の空からご冥福をお祈り申し上げる。
追記3: 昔,商用でベルリンの壁が崩れる前にハンガリーを訪れたことがある。そして次にクロアチアのザグレブに旅装を解いた。市内は警察官でいっぱいであり,インフレ率は800%と言われていた。星霜30年。それが立ち直ってEUに加盟したのだから驚きだが,ある店の前で老紳士が小生に話しかけてきた。ドイツ語を話すかどうか。
まだそのときは独立していなかったクロアチア。ユーゴの一部であり,旅の案内書には北部ではドイツ語,南はフランス語が一般に通じるとあった。にわか仕込みで覚えたドイツ語。これはいくら。私は日本から来ました。・・・・
付け焼刃のドイツ語力。その老人とは話す勇気がなかったのでフランス語なら少々と答えて国難を逃れた。しかし彼は何について若い旅人と話をしたかったのであろうか。
追記4: 何日か滞在した後気が付いたのだが,町の広場には「市」が立つ。店に並べられた品物が毎日変わる。これは南洋の市と異なる。南洋では毎週日曜,あるいは水曜日に市が立つが扱われる品物はほとんど同じ。ある日カメラを持っている写真を撮っていると,茶目っ気のあるお母さんが小生のカメラと物々交換を申し出てきた。ラジオの組み立て部品が堂々と売られ,冷蔵庫もないこの地方。あのお母さんは今なおご健在であろうか。
投稿: 箒川 兵庫助 | 2018年1月16日 (火) 19時38分
およそネットが普及し始めた頃から2chやSNSにはネット工作員が暗躍しており、これがネット世論にかなり大きな影響を及ぼしてますね。
このネット工作員というのは、銭で動いているだけの者たちです。
この中にはネトウヨの半数ほども参加しており、一般には右翼と見ている人が多いのですが、実態はそういったイデオロギーなどとは全く関係なく、思想信条もなければ国家観も無い者たちなので、体制側にとって都合の悪い事を発言したり書き込む人を多数で攻撃して黙らせるのが仕事です。
彼らは複数のアカウントを持って、ある時はネトウヨに成り済まし、ある時はリベラルを装い、ある時は左翼、という様に、その時の都合に合わせて成り済まし、ネット世論を攪乱したり誘導したりする訳です。
なので必ずしも右翼思想で行動している訳ではないのです。
それで今回、小泉の行動に関しても、懐疑的な見方をする人たちを黙らせる行動に出ている訳で、普段はネトウヨとして言動している同じ人物が脱原発派に成り済まし、リベラルの分断を狙っての行動を執っているものと思われます。
小泉は4年前の都知事選の時にも、俄か脱原発派として細川を担ぎ上げて登場しています。
それでリベラルは大きく分断されてしまったのです。
リベラルの大半は脱原発という点では一致しているのに、グローバリズムや新自由主義に対しては寛容または推進派が多く、こういった人達が主に小泉を信じてしまう傾向にある訳です。
グローバリズムや新自由主義というのは、必ず利権が伴っているものであるという事を念頭に置いて考えるならば、自ずと小泉の行動の本質も推し量れるものと思います。
聞くところによりますと、小泉は原発廃炉利権に一枚噛んでいるとか。
それでなくても、安倍に敵対している様に魅せているのは、本当の本気とは考え難いものがあります。
従って我々が執るべき行動は、出来るだけそちら方面の話題を沸かせない様に静観するのが賢明と思われます。
小泉が原発ゼロを掲げて再び細川と共に行動するのは結構な事だし、格好だけでも安倍に敵対するというならそれも良いでしょう。
小泉の言動は一見、正論の様に見えます。
しかし、よくよく目を凝らして見てみると、評価できるのは原発に関しての考え方のみであって、この脱原発とは相反する筈のグローバル化や新自由主義協定などに関しては推進の立場は変わっていない訳で、これは矛盾していると言えるでしょう。
矛盾のある言動は安倍の言動と同質のものに思えてしまう訳です。
少なくとも、積極的に支持したり応援する程の価値は無いというのが私の見解です。
よって、私的には「勝手にやってちょーだい」です。
今回はこれだけで字数的に限界となってしまいました故、本題は次回へ持ち越します。
投稿: びいとるさいとう | 2018年1月13日 (土) 11時35分