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2017年11月10日 (金)

サウジアラビアの長いナイフの夜事件裏話

王子、閣僚や億万長者が リヤド・リッツ・カールトン'収監'され、サウジアラビア軍は騒然としていると言われている。

Pepe Escobar
2017年11月7日
Asia Times

サウド家のサルマーン国王は、強力な“反汚職”委員会を設置し、息子のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子、略称MBSを委員長に任命した。

うまいタイミングで、委員会は、11人のサウド家の王子、4人の現閣僚や何十人もの元王子/閣僚を全員汚職のかどで拘留した。高額銀行口座は凍結され、私有ジェット機は地上に釘付けになった。著名な被告人はリヤド・リッツ・カールトンに“収監”された。

アジア・タイムズが7月に予想していた通り、サウド家内部で、戦争が勃発した。何ヶ月も、MBS対する進行中のクーデターにまつわる噂が飛び交っていた。現在起きているのは、そうではなく、MBSによる、もう一つの先制クーデターだ。

不透明なサウド家と何十年も取り引きをしている一流の中東事業/投資情報源が、待ち望んでいた見方を教えてくれた。“これは見かけよりも遙かに深刻だ。アブドゥッラー前国王の二人の息子、ムタイブ王子とトルキー王子を逮捕したのは致命的な失敗だ。これは今や国王自身を危険にさらしている。国王に対する敬意だけが、MBSを守っていたのだ。軍内にはMBSに反対するものが多数おり、彼らは自分たちの司令官の逮捕に激怒している。”

サウジアラビア軍では大騒ぎという表現は控えめだ。“彼は軍隊丸ごと逮捕しないと、安心できないはずだ。”

ムタイブ王子は最近までサウジアラビア王位後継者として重要な競争相手だった。しかし、拘留されたものの中で一番の重要人物は、ツィッター、シティバンク、フォー・シーズンズ、Lyftや、最近まで、ルパート・マードックのニューズ・コーポレーションの主要株主、キングダム・ホールディングスの所有者、億万長者アル-ワリード・ビン・タラル王子だ。

アル-ワリード逮捕は、重要な切り口とつながっている。完全な情報支配だ。サウジアラビアには情報の自由は皆無だ。MBSは既に全ての国内マスコミを支配している(知事任命権とともに)。だが、サウジアラビア・マスコミは野放しだった。MBSの狙いは、“あらゆる巨大メディア帝国の鍵を握り、サウジアラビアに移転させることだ。”

一体どうしてこういうことになったのか?

粛清の背後にある秘密

当時のアブドゥッラー国王“排除”の可能性に関する2014年の秘密討議から話は始まる。しかし“王家を解体すれば、部族の忠誠心を崩壊させ、サウジアラビアが三つにわかれてしまう。石油を確保するのもより困難になるはずで、何であれ壊れた組織は、混乱を避けるために維持しなければならない。”

その代わりに、当時シリアのサラフィー主義聖戦戦士を積極的に育成していたバンダル・ビン・スルターン王子を追放するという結論に達し、治安機関の支配者を、ムハンマド・ビン・ナーイフに変えた。

アブドゥッラー国王からの王位継承は円滑に進んだ。“権力は三つの主要氏族の間で、共有された。サルマーン王(と彼の愛息、ムハンマド王子); ナーイフ王子の息子(別のムハンマド王子)、そして、亡くなった王の息子(国家警備隊司令官のムタイブ王子)。実際は、サルマーン王は、MBSに采配を振るわせた。

そして、実際、大失敗が続いた。サウド家は、シリアでは、政権転覆の取り組みで敗れ、イエメンに対する勝てない戦争は行き詰まっており、MBSは、両国にまたがる砂漠、空虚の地を活用できずにいる。

サウジアラビア財務省は国際市場での借金を余儀なくされた。緊縮政策支配になったが、MBSがコート・ダジュールでのんびりすごしながらほぼ5億ドルのヨットを買ったというニュースが流れては、決して受けは良くない。シーア派指導者ニムル師の斬首が徹底した政治的弾圧の象徴だ。東部州のシーア派のみならず、西部のスンナ派諸州でも、反乱がおきている。

政権の人気が激しく急落すると、MBSは2030年構想を持ち出した。理論的に、これは、石油からの移行だ。アラムコ株の一部売却。新産業の導入の取り組み。不満を鎮めるため、主要な王子たちを忠誠にしておくための王家からの支払いと、手に負えない大衆への未払い賃金の遡及払いか行われた。

ところが、サウジアラビアでは、外国人が生産的な仕事の大半を占めているので、2030年構想は、機能し得ない。新たな雇用をもたらすには、新たな(技能を持った)労働者を一体どこから得るかという問題が生じるのだ。

こうした進展の中、MBSに対する嫌悪感は決して増大が止まることはない。“現在の支配者に反対して、連携している三つの主要王家集団がある。前のアブドゥッラー国王の家族、前のファハド国王の家族と、元皇太子ナーイフの家族。”

バンダルの後釜、ナーイフは、ワシントンと密接で、対テロ活動のおかげで、中央情報局では極めて人気がある。今年早々の彼の逮捕は、MBSが権力闘争に着手したと解釈されて、CIAとサウド家非常に多くの派閥を怒らせた。

情報源によれば、“CIAお気に入りのムハンマド・ビン・ナーイフを逮捕しても、丸くおさめていれば、許されていた可能性があるが、MBSは、シーザーではないくせに、ルビコン川を渡ってしまった。CIAは彼のことを、全く無用と見なしている。”

以前のスデイリー族(MBS無しの)と、シャンマル族(故アブドゥッラー国王の部族)との間の権力共有に回帰して、ある種の安定が得られる可能性がある。情報源は、サルマーン国王逝去後“MBSは王位を奪われ、王位はもう一人のムハンマド王子(ナーイフの息子)にわたる。ムタイブ王子は彼の地位を保持しよう。”と見ている。

MBSは、まさにこの結果を防ぐべく行動したのだ。だが情報源は頑固だ。“近い将来に、政権転覆がおきるはずで、それがまだ起きていない唯一の理由は、老国王が家族の中で好かれているため。エジプトのファルーク国王時代のように、軍で紛争がおきて、アメリカ合州国に友好的でない支配者が出現する可能性があるかも知れない。”

‘穏健派’サラフィー派聖戦主義者はいるだろうか?

粛清前、サウド家は、サウジの政府系投資ファンドと、アラムコ新規株式公開による収入で資金を調達して、風力と太陽光発電で動く、理論的には2025年までに完成する予定だった紅海海岸で、サウジアラビア、ヨルダンとエジプトにまたがる5000億ドルの地域 、一種のドバイの真似を絶えず喧伝していた。

並行して、MBSは、サウジアラビアの将来は“我々が奉じてきたもの、世界とあらゆる宗教に開かれた穏健なイスラム教に単に戻れば良い”だけの話だと言って、苦境から抜け出すもう一つの策を取り出した。

一言で言えばこうだ。たまたま、あらゆる表現や宗教の自由の原則に向かない、王家の私有財産で、あらゆるサラフィー派聖戦主義イデオロギー・マトリックスが揃っている国家が、単にMBSがそう言ったからとて“穏健な”国家に単純に移行できるはずがない。

さしあたり、粛清やクーデターや反クーデターの山が常態になるはずだ。

記事原文のurl:http://www.atimes.com/article/inside-story-saudi-night-long-knives/
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長いナイフの夜事件(ドイツ語: Nacht der langen Messer De-Nacht der langen Messer)とは、1934年6月30日から7月2日にかけ、ナチスが行った突撃隊などに対する粛清事件。

「中東の戦争に莫大な戦費を出させられ、武器を買わされ、国庫は空っぽ。対策を取ろうとすると、宗主国から内政干渉される」ということだろうか?

「アジアにかぎらず宗主国の戦争に莫大な戦費を出させられ、ポンコツ武器を買わされ、出兵もさせられ、国庫は空っぽ。対策を取ろうとすると、宗主国から、内政干渉される」だろう。サウジアラビアと違って、この列島は油が出ないのだが。

岩波書店『世界』12月号、特集は「政治の軸」再編の行方 を読み始めた。
「希望に助けられた安倍自民」

「メディア批評」。電気洗脳箱を見ている方々、紙媒体を読んでいる方々の一体どれほどの比率の人数が、こうしたまっとうなマスコミ批判を読むのだろう。すくなくとも小生の幼なじみは読んでいない。自民・希望支持者の幼なじみから、飲み会の誘いが全くこなくなった。つまはじきになったのだろう。断る手間も省けて、ほっとしている。

今日の日刊IWJガイドは

日刊IWJガイド・番組表「自民党が年内に改憲素案をまとめ、早ければ来年の通常国会で『改憲発議』へ〜いよいよ憲法改正目前!? 野党からは『野党こそ改憲の議論をリードすべき』などと明後日な論調も!/速報・大袈裟太郎氏が逮捕/希望の党は『改憲勢力』になるのか? 『踏みとどまる』のか? 11月10日の共同代表選に立候補した玉木雄一郎候補と大串博志候補をIWJが直撃! スタンスの違いが明らかに!」2017.11.10日号~No.1883号~

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