ロシアと中国、新たな経済地理を構築
2017年11月16日
F. William Engdahl
11月8日、ロシアの巨大採掘集団ノリリスク・ニッケルは、ロシア、ザバイカリエ地方、チタ郊外で、最先端技術のビストリンスキー採掘・加工工場の操業を開始したと発表した。このプロジェクトで注目すべき点は、中国の参加と、四年前、ビストリンスキーの膨大な銅と金と磁鉄鉱埋蔵は、いかなる市場にも接近しがたく、全く未開発だった事実だ。これは、ロシアと中国の緊密な協力、特に、以前、新経済シルク・ロードとして知られていた中国の一帯一路構想の結果、成長しつつあるユーラシア全体の経済地理変貌の一例だ。
ビストリンスキー採掘・加工コンビナートは、鉱石の総埋蔵量3億4300万トンと推計されている15億ドルのプロジェクトだ。この巨大プロジェクトは、ニッケルとパラジウムの世界最大の生産者で、プラチナと銅の最大生産者の一つノリリスク・ニッケルと、ウラジーミル・ポターニンが設立したロシアの天然資源基金、CIS天然資源基金と、中国のHighland Fundの共同所有だ。新しい採掘コンピナートは、ロシアのシベリア極東にある中国国境から鉄道で約400キロだ。
中国の参加は驚くべきことではない。中国は世界最大の銅輸入国で、大半の新たな鉱産物は中国へと向かうのだ。ユーラシアを横切る何千キロもの新たな高速鉄道建設を進める中国の一帯一路構想(BRI)は、銅や鉄鋼や鉄鉱石の大規模な需要増加を生み出している。新たなロシアの採掘プロジェクトには、道路、鉄道支線という全く新たなインフラ建設も含まれ、これはこれまで未開発の荒野だった場所での膨大なインフラだ。ロシア極東で最大の民間プロジェクトである鉱山は、2019年にフル稼働する予定だ。
アムール川に架橋
ロシアと中国の間で起きている経済地理変容のもう一つの例は、中国で黒竜江と呼ばれるアムール川の橋梁建設だ。新たな橋は、中国とロシアを、中国最北西の地域、哈爾浜と結ぶ。世界最大の国、ロシア連邦を横切る壮大な距離を理解するために言えば、アムール川橋は、チタ近郊の新たな中国-ロシア銅採掘コンビナートの約1000キロ東にある。
2019年に開通予定の新しい橋は、ロシアのユダヤ人自治州と中国の黒竜江省との間での貿易を促進する、長さ2km以上に及ぶ鉄道・道路橋という重要インフラ・リンクとなる。新たな橋の主な即効的恩恵は、香港のIRC Limitedが所有するユダヤ人自治州にあるキムカン露天掘り鉱山鉄鉱石の経済的輸送だ。鉄道部分には、標準軌(1435 mm)と、ロシア軌間(1520 mm)があり、自動車とトラック輸送用の2車線道路がある。
2016年、数年に及ぶ交渉の後、中国とロシアのパートナーの間の長年にわたる不信感を克服して、橋梁建設が始まった。橋は、新経済シルク・ロードの中国-モンゴル-ロシア経済回廊(CMREC)への輸送統合を可能にすることで、中国の巨大な一帯一路構想につながる。アムール橋は、黒河市と、アムールとゼヤ川が合流するロシア、アムール地区の行政の中心、ロシア極東の都市ブラゴベシチェンスクを結ぶ。橋は更に、ロシアのシベリア横断鉄道と、太平洋のロシア主要商業港、ウラジオストックとも接続予定だ。
黒竜江-ブラゴベシチェンスク橋は、2016年3月、中国に設立された黒竜江橋会社と呼ばれるロシア-中国ジョイント・ベンチャーで、ロシア内の子会社が六ヶ月後に設立された一つの会社が運営する。
中国-モンゴル-ロシア経済回廊
2014年、タジキスタン、ドゥシャンベでの会合で、 中国の習近平主席、ロシア ウラジーミル・プーチン大統領と、モンゴルのツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領が、中国の一帯一路構想の六優先回廊の一つで、一帯一路構想の一部を形成する最初の多国間協力計画となる中国-モンゴル-ロシア経済回廊(CMREC)の創設に合意した。CMRECは、中国の一帯一路構想と、ロシアが提案しているユーラシア経済連合と、モンゴルのステップ・ロード計画を結び、地域経済統合を推進する。CMRECには、二本の主要交通大動脈がある。一本は、中国の北京-天津-河北地域から、フフホト市、更に、モンゴルとロシアに向かう。もう一本は、中国の大連、瀋陽、長春、哈爾浜と満州里から、新たな大規模ロシア-中国銅プロジェクトの現場であるロシアのチタにまで延びる。
ドルを使用しない中国-ロシア投資
9月、ウラジオストックで、CMREC三国のトップは、エネルギー資源、鉱物資源、ハイテク、製造業、農業と林業、サービス貿易を拡大するより緊密な協力と、教育、科学技術、文化、観光、医療と知的所有権での協力に合意した。これは冷戦緊張時に、酷く未開発で、お互いに孤立していた三国の地域の大転換を保証するものだ。
同じウラジオストックでの、第三次東方経済フォーラムの9月7日の会談で、中国は、1ロシアとの将来の地域経済協力プロジェクトに資金を供給する50億ドルの基金の設立を発表した。中国国務院副総理汪洋が、投資は製造業、資源開発、インフラ、農業と観光を対象にする予定だと述べた。
これに2017年7月、習近平のモスクワ訪問が続き、そこで両国は一帯一路とユーラシア経済連合構想の両方のものを含むロシア・プロジェクト用の人民元資金供給利用を可能にする新たな100億ドルの中国-ロシア人民元投資協力基金の設立を含む、一連の経済協力協定に調印した。中国海南でのプロジェクトは、文化・芸術への取り組みを優先分野として、産業・革新パーク、ハイテク医療、観光、社会インフラを開発するための50000万ドル(人民元換算値)投資を主張している。海南は、中国海のシルク・ロード・インフラの主要ポータルだ。
更に、ロシア-中国開発基金は、モスクワ北西の旧トゥシノ飛行場に、15億ドルに相当する投資総額で、ロステク・ビジネス・パーク、住民15,000人用のアパート、学校と診療所を含む巨大プロジェクトを開発中だ。開発には主要テナントの一つとして、ロシア国営企業ロステク社が関与しており、デベロッパーは、ロシアの投資会社Vi Holdingだ。
ロシアと中国の投資基金間で、ロシアのExport and FRC Internationalとともに、打开套娃(ダーカイタオワ) - 中国語で“マトリョーシカを開ける”ことを意味する商標名のプロジェクトをたちあげることにも合意した。プロジェクトの狙いは、遺伝子組み換えではない、生態学的に清潔なロシア農産物の更なる成長と中国市場輸出の促進だ。
しかも中国は、モスクワで、中国ICBC銀行を通して、人民元での決済サービスを提供する許可を、ロシアから得た。これにより、中国とロシアは、両国相互の経済投資で、ドル・リスクを効果的に回避する。
ユーラシアの国々全体に新たな経済地理を構築するこうした進展の全ては、2001年9月以来、ワシントンがやってきたことと全く対照的だ。ブラウン大学のWatson Institute of International and Public Affairsの新たな研究によれば、2001年以来、ワシントンは、アフガニスタンやイラクやシリアやパキスタンでの戦争に 、ペンタゴンが公式推計で主張している額の三倍以上、驚くべき5.6兆ドルを費やしてきた。
そうではなく、アメリカ合州国が、5.6兆ドルを、アメリカの朽ちた8兆ドルの道路、鉄道、水道、配電網のインフラ不足の再構築に使っていたらと想像願いたい- アメリカ人と世界にとって、一体どの様な向上だったろう。彼らは、世界にとって、本当に全員の利益になるロシア-中国による新興ユーラシア開発の平和的協力も想像できるはずだ。
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の政治学学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2017/11/16/russia-china-build-up-a-new-economic-geography/
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朝から晩まで、相撲暴行問題一辺倒。横綱の品格は問うが、首相の品格は問わない、品格と無縁の大本営広報部と茶坊主・太鼓持ち。
宗主国大統領が、羽田や成田でなく、横田に飛来し、アメリカ軍兵士への演説から、属国訪問を開始し、武器大量契約と、米日FTAについて話したことの方がよほど重大に思えるのだが。カエルの王国大本営広報部は、違う。
そこで、今朝の孫崎享氏メルマガのタイトルをコピーさせて頂こう。
高田昌幸著「なぜ記者は権力のポチになるのか」(「月刊日本」よりの転載) 現在の新聞報道の80%は当局の発表を伝える「発表報道」。メディアの役割は「権力監視」と言われるが、軍部を監視したことはないし、GHQを監視したこともない。
参加ゲスト、拝聴している衝撃的インタビュー登場の方々がずらり。
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コメント
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ロシアと中国は対等な関係で健全な貿易を目指している訳ですね。
ロシアは遺伝子組み換え作物の栽培は禁止というのが特に良いです。
羨ましい。
一方、こちら傀儡独裁属国は何週遅れの一退一路。つまり「この道しかない」という名の衰退戦略まっしぐら。
恐らく未だ安倍晋三という人間は自分が何をやっているのか理解していないのではないか、と思うのが正常な思考力を持つ人の見解というものです。
自由貿易などという悪徳詐欺商法に乗せられてか、または解っていてワザと日本人を絶滅させようとしているのかは定かではないけれども、得体の知れない何者かに憑依かれている様ではありますな。
ここのところ、主要農作物種子法廃止についてツイッターやFBで流れている事に対抗してか、マスコミがTPPに対応する為の農業強化とか支援やらを報道してますね。、あ、これはヤフーニュース限定なのかな?
その農業強化とか支援というのが曲者でして、これは種子法廃止に絡めて出してきた種子運用規則に於ける農業競争力支援法の事を指して言っているのであって、決して一般農家を支援する訳ではないので、農家の方は勘違いをなさらない様に願いますよ。
農業競争力支援法というのは、バイオ科学企業(モンサント、住友化学、三井化学、など)が開発した種子(今のところ種籾だけど何れ大豆、麦、トウモロコシ、ワタも予定されている)を優先させる為に、これまで公的研究機関(農業試験場など)が開発、管理し農家へ提供してきた品種を300種から数種類まで絞り込み、しかもそれらの開発過程で蓄積してきたノウハウを無償でバイオ企業へ提供せよ。というものです。
ワザワザ研究員まで出向させてまで献上するというのだから尋常ではないですよ。
完全に狂っているとしか言い様がありません。
軒を貸して母屋まで差し上げます、という人が世界中の何処を探したら居るのかって話です。
そんな人間は安倍しか居ないんですよ。
もはや農家には選択の余地すら与えられないのです。
恐らく、農家への支援があったとしても、歪な条件付きに違いないのです。
例えば、「バイオ企業と契約したら補助金を出す」とかね。
すると、農家は何処も青息吐息ですから、わらをも掴む気持ちで罠に掛かってしまう訳です。
それはそうでしょう。バイオ企業との契約は、最初の年は無償で種籾が提供される上に、補助金も貰えるとなれば、苦しい経営から逃れたい一心の農家にとっては救いの手に見える筈です。
しかしそれは地獄への切符でしかない、と警鐘を鳴らしておかねばなりません。
それは、インドのワタ農家が辿った道と同じだからです。
良いのは最初の年だけ。
次年度からは厳しい管理下で、何もかも企業の言う通りに生産しなければならないのです。
そうです。栽培ではなく、管理生産なのです。
販売先、ルートも指定、生産高も指定、使用農薬や化学肥料の使用量も指定、機械器具も指定、マージンも指定。
最初は無料でも、次年度からは種籾価格は在来種の7倍以上。
これでは、もし相場が少しでも下がったら、たちまち大赤字です。
このやり方はコンビニ経営とよく似てます。
従って、この毒牙に掛かった農家は、借金額が一定の額に達するまで強制的に経営を強いられるのです。
そして最後は、保険金をたっぷり掛けておいて・・・。
という具合です。
更に恐ろしいのは、このバイオ企業が開発したハイブリッドF1種にしても、これから開発される、というか、公的種子を遺伝子組み換えしたものにしても、これを栽培した圃場だけではなく、花粉伝播によって在来種を無農薬で栽培している様な真面目な農家の稲までハイブリッド化してしまう点です。
すると、その稲に入り込んだGMOの遺伝子を、バイオ企業が見つけて因縁をつけてくる訳です。
「この稲にはウチとこの遺伝が入っとるやないか、オドレ盗みおったな、どないオトシマエつけてくれんねん」とね。
まるっきし立場が逆に思えますが、これが多国籍巨大資本のやり方なのです。
裁判すらできない農家は、泣く泣くバイオ企業の要求通りに契約する外はない訳です。
こうして、あっと言う間に全国の農地がGMO化されてしまうのです。
我々消費者国民は、国内産の高額なGMOを買うか、アメリカ産の防カビ剤浸けで輸入されてくるコメを買うか、という二択しか残されないという事になるのです。
これはどう見ても、日本人を絶滅させようとしているとしか思えないでしょう。
投稿: びいとるさいとう | 2017年11月25日 (土) 20時35分