フリードマンの戦犯宛てラブレター
Daniel Larison
2017年11月24日 7:46 AM
The American Conservative
2017年5月20日、サウジアラビア、リヤドの王宮で、当時の副皇太子ムハンマド・ビン・サルマーン・アル・サウドと握手するレックス・ティラーソン・アメリカ国務長官。(公式ホワイト・ハウス写真 Shealah Craighead)
時に新聞は軽々しい、くだらない記事を載せるが、トム・フリードマンはムハンマド・ビン・サルマーン(MBS)絶賛記事で、そうしたもの全てを圧倒した。
全て下から始まり、チュニジア以外では惨めに失敗した他のアラブの春と違い、これは、サウジアラビアの32歳のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子によって、トップダウンで率いられており、もし成功すれば、サウジアラビアの性格のみならず、世界中のイスラム教の内容や形も変えることになる。その成功を予言するのは阿呆だけだが、応援しようと思わないのは阿呆だけだ。
この全てを額面通り、あわてて受け取るのは、阿呆だけだと言う方がより正確だろう。著名コラムニストが外国指導者の広報担当者として働いていることに報道する価値など無いと思うが、彼の歪曲した主張を無批判に是認してくれる相手に説明する主要な場を与えられるのは、皇太子にとっては大いに有益だ。応援団がそうだと言っている通り、彼が熱心な“改革者”である証拠だと受け取ってもらえる、この長い記事に、本人の不興を買うような内容は事実上皆無だ。皇太子が画策している劇的大量逮捕の後、サウジアラビアで、皆が自由に彼の批判ができると思っているかのように、MBSによる粛清について悪く言う人は見当たらなかったとフリードマンは言う。
この記事は、フリードマンによるお粗末な上っ面世界分析の最新例として片づけたいところだが、不幸にして、彼がMBSの虫の良い主張を熱心に支持しているのは、皇太子に対する欧米全体の余りに典型的反応だ。欧米の評論家は、寛容や改革について適切なことを言う外国指導者を常に探しており、そうした発言をする人物を見つけると、懐疑心を投げ捨てて、そうした指導者の“応援”を開始しがちだ。フリードマンは、MBSプロパガンダの針と糸と重りをそっくり飲み込んだのだ。
この反汚職の動きも、MBSが開始した並外れて重要な取り組みの二番目に過ぎない。第一は、サウジアラビアのイスラム教を、1979年に転換する前の、より開かれ、より進歩的な方向に戻すというものだ。
サウジアラビアは、最も憎しみに満ちた破壊的な形のイスラム教の一つを、世界中に何十年も広めており、シーア派イスラム教に対する宗派的憎悪をかき立てるために様々なことを行っており、過去十年間一層激化している。たとえ1979年以前のサウジアラビアのイスラム教が、現在のものより“より開かれ、より進歩的”であったにせよ、イランに対する敵意を口実に、地域の国々不安定化に多忙な同じ人物が“より開かれ、より進歩的な”イスラム教を作り出すことに本当に関心があるなどとは、私は一瞬たりとも信じない。これは現在サウジアラビアとその同盟国が、現在イエメンでしでかしている膨大な犯罪をだまされやすい欧米人に見過ごさせるための言い分に過ぎない。
フリードマンは、一度だけイエメンに触れたが、それもほとんどMBSが彼に言ったことの繰り返しだ。
サウジアラビアが後押しする人道上の悪夢であるイエメンでの戦争は、現在イエメンの85パーセントを支配していると彼が言うサウジアラビア寄り正統現地政府に有利な方向になりつつあると彼は主張するが、それ以外を支配している親イランのフーシ派反政府派が、リヤド空港に向けてミサイルを発射した事実を考えれば、何であれ100パーセント以下の状態は、いまだに問題含みなのだ。
イエメンにおける“人道上の悪夢”への言及はあるが、フリードマンは、その悪夢を作り出す上で一体誰に一義的責任があるのかについては一言も言っていない。サウジアラビア率いる封鎖強化は、集団懲罰という言語道断の行為で、たった一発のミサイル攻撃に対する奇妙な過剰反応だと言ってもよさそうなものだが、一言も言っていない。フリードマンのインタビューは、同盟による封鎖強化が、すぐさま国連が何十年間で最悪の飢餓になると警告するものをもたらしているさなかに行われたのに、この長い記事で、経済封鎖や飢餓という単語を探しても見つからない。誰かがミャンマー軍トップとの会話を詳しく書いて、彼らが現在行っている大虐殺について、一言も触れないことを想像願いたい。MBSの計画に関する彼の熱烈で熱狂的な記述で、フリードマンはまさにそれをやっているのだ。彼のイメージをきれいに見せるためなら、MBSは喜んで著名欧米マスコミを起用するだろうが、サウジアラビア政府の戦争犯罪を粉飾して、彼を喜ばせるマスコミは、自分たちの威信を大いに損なっている。
記事原文のurl:http://www.theamericanconservative.com/larison/friedmans-love-letter-to-a-war-criminal/
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もっと激しい非難の記事も読んだ。表現が卑猥で訳す気になれない。
Moon of Alabama氏による、And Then The Clown Prince Told Friedman: 'Suck On This.'
前にも書いたが、大昔、彼の『レクサスとオリーブの木―グローバリゼーションの正体』を購入したのは恥ずかしい思い出だ。読む気力がわかず、数年前に捨てた。何が書いてあったのか全く知らない。
昨日夜、相撲後の国営大本営広報呆導に驚いた。
ロシアのプーチン大統領が、自分の選挙出馬の邪魔になる外国マスコミを弾圧する法律を作った、という趣旨のいいぐさ。おまけのように「アメリカでのロシアの報道機関RTに対する扱いに対応して」と言った。
電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みーんなロシアのせいなのだ。
国営大本営広報で、アメリカ司法省が、RTに外国代理人登録を強制したという「報道」を見たことはない。民放は「報道」したのだろうか?
どちらの大本営広報呆導も真面目に見ていないので確信はない。
相撲暴力沙汰ばかりたれ流す詐欺呆導機関、本当に深刻な問題には一言も触れない。たとえば種子法廃止。
「種子法」廃止の裏に米政府と多国籍企業の影!「TPP違憲訴訟の会」が行政訴訟へ!岩上安身による元農水大臣・山田正彦氏インタビュー! 2017.11.16
なんともおぞましいモルモット属国に暮らしていることが悲しくなる。
大本営広報部で、元農水大臣・山田正彦氏が、こうした事実を語る可能性は皆無。大本営広報部は彼に出演・発言の機会を与えないはずだから。
大本営広報部を信じて見ている方々と、IWJ購読者の方々は、全く別のものの見方になるだろう。
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コメント
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種子法廃止問題にご理解いただき有難うございます。
これと水道民営化は、全国民の健康、ひいては命に直結する問題ですので、度々クドイ様ですが語らずにはいられないのです。
さて、この種子法廃止の発端は、TPP交渉開始時点に遡ります。
TPP交渉と同時に進められていた日米並行協議に於いて、当時、甘利が「日本なんてどうなってもいい」と吐き捨てた本当の意味はこれだったのだと思います。
そこで突き付けられたのは、日米二国間交換文書の中に「規制改革推進会議を設置し、外国投資家の意見を取り入れる事」の文言を加える事だったのだろうと推測できます。
その証拠に、それはTPP批准後、ただちに実施されました。
規制改革推進会議というのは、規制改革会議をより強制力の強いものにしたものです。
規制改革会議、産業競争力会議、経済諮問会議、これらは民間議員で構成された議会で、自民党から出される立案の殆どはここから出てきたものです。
つまり、こちらが本当の国会であると言っても過言ではない存在なのです。
そして規制改革推進会議は、外国投資家の意見(実際には命令)を国会へ通す役目を担っているという訳です。
言わば国会の奥の院であり、CSISの出先機関と捉えれば解り易いでしょう。
そういう訳で、TPPの如何に拘わらず、日米並行協議で交わされた(殆ど一方的な要求)内容が今、実行に移されているという事です。
要するに、TPPに於ける非関税障壁撤廃の部分が先行実施されているという事です。
気になるのはISDSの扱いですが、強制力があるところをみると、ヤバイ予感ですね。
本当にもう、日本人はモルモットです。
モルモットと言っても、若い世代には通じないかもしれませんので、念の為解説しますと、実験動物の総称です。
現在はラットを使う場合が多いのですが、昔はモルモットというウサギネズミを使って実験をしていたので、実験動物と言えばモルモットと呼ぶのが一般的だったのです。
日本人はかなり昔からモルモットだったのですが、極端な例は、先の大戦で原爆と水爆の実験台にされた事です。
それ以後は尚更です。
他国では使われていない新しい化学物質が農業や医療に使われ、今では忘れられていますけれども、様々な公害病が発生しています。
そして現在は、農薬などは残留規制をユルユルにされ、どれだけの日本人が何時まで健康を保てるか?と言わんばかりの実験が開始されています。
医薬に関しても、インフルエンザワクチンとか、子宮頸がんワクチンとか、抗がん剤などで試されているのが現状です。
水道も民営化されたら、何を混入されるか分かりません。
現在でも、何らかの持病を抱えている人が多いのに、これから食料の大半が遺伝子組み換えになったら、一体どうなってしまうのか、想像しただけで気が滅入ります。
後日につづく・・・
投稿: びいとるさいとう | 2017年11月27日 (月) 21時48分