アメリカの力を破壊しつつあるワシントン
2017年10月16日
Paul Craig Roberts
アメリカ国内や、世界中の読者の皆様が、中国が今後、石油購入と販売を中国の兌換通貨で行うと発表を、どう解釈すれば良いのか知りたがっておられる。
これは、ロシアと中国によるアメリカ・ドルに対する攻撃だろうか? ドルは弱体化し、石油の取引に使われる通貨として見捨てられて、崩壊するのだろうか? これらの疑問を読者の皆様はお持ちだ。
私の意見は下記の通りだ。
アメリカ・ドルの価値は、中央銀行、企業や個人が、資産や富を、ドルで保持することに満足しているか否かに依存している。もしそうであれば、どの通貨が石油取引に使われようとどうでもよい。もしそうでなければ、たとえあらゆる石油がドルで取引されようとも、どうでもよくなる。何故か?
もし人々がドルを保持したくなければ、人々は取引完了次第、ドルを投げ出し、他の通貨や金に変えるだろうからだ。中国が行っているのは、保持するのにより魅力的な通貨となり得る通貨の創造だ。
中国の兌換通貨が、アメリカの権力に対する動きだという可能性はあるが、私は違う見方をしている。私はそれは、アメリカの権力に対する保護だと見ている。ワシントンが、世界通貨の役割を濫用し、ドル支払いの仕組みを、他の国々に経済制裁を課し、支払い決済制度から排除すると脅すのに利用しているので、中国とロシアはドル体制との関係を絶ちつつあるのだ。
言い換えれば、ワシントンは、公正な制度を運営するのではなく、世界通貨の役割を、他の国々を支配するのに利用しているのだ。ロシアと中国は支配されるには余りに強力なので、ドル体制を振り捨てているのだ。もし他の国々が続けば、ドルは他の国々に対するアメリカによる支配の道具であることを終えるだろう。
これを言い換えれば、ブレトン・ウッズが、ワシントンに、世界金融制度に対する責任を持たせたのだ。現在、ベネズエラに対してしているように他の国々を不安定化させるためにドル体制を利用して、ワシントンは委ねられた権限を濫用しているのだ。アメリカの金融、事業権益や、他の国々の外交政策や国内政策に対するワシントンの権限を推進するため、世界通貨の役割をワシントンが濫用したことが、世界準備通貨としてのドルの役割を廃絶する力を作動させたのだ。
ワシントンの思い上がりと傲慢さが、アメリカの力を破壊しつつある。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2017/10/16/washington-destroying-american-power/
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大本営広報部が、必至に避ける話題、「小選挙区」に東京新聞が触れているのに感心。一部を引用させていただこう。
2017年10月24日 朝刊
今回の「有権者発」のテーマは、衆院の選挙制度です。衆院選の結果を受けて「多くの有権者は安倍政権を支持していないのに、自民党が今回の衆院選で勝った。小選挙区制度に問題がある」との指摘を受けました。
本紙の集計で、自民党の小選挙区での得票率(有効投票総数に占める自民党候補全員の得票総数)は約48%でした。それなのに、小選挙区の議席占有率は約74%です。自民党には、小選挙区に投票した人の二人に一人しか入れていないのに、四分の三の議席を獲得した計算になります。
今回の投票率は戦後二番目に低い53・68%。有権者のうち半分近くの人は投票に行きませんでした。このため、全ての有権者のうち、何割の人が自民党に投票したのかをみる絶対得票率を計算すると約25%。自民党には有権者四人のうち一人しか投票しなかったことになります。
後略
大本営広報部と違って、大企業の支援がない独立メディアは懐具合が大変なようだ。貧者の一灯を考えている。
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