« 視よ、青ざめたる馬あり、之に乘る者の名を死といひ | トップページ | 中国とロシアにとっての経済学授業 »

2017年9月15日 (金)

トランプが北朝鮮との戦争を始めない理由

Mike Whitney
2017年9月8日
Counterpunch

ドナルド・トランプは北朝鮮と戦争を始めるつもりはない。そういうことは起きない。

アメリカ合州国が、そのような大規模作戦のための地上軍を持っていないのみならず、より重要なのは、北朝鮮との戦争が、いかなる戦略目標の役にもたたないことだ。アメリカは半島上に、望んでいる体制を既に確保している。韓国はアメリカ軍占領下にあり、経済・金融体制は、アメリカが支配する欧米体制に首尾よく組み込み済みで、北東アジア大陸における戦略的な位置が、急速に台頭しつつあるライバル、中国とロシアを包囲し、支配するために使用する重要な兵器システムを配備する極めて重要な場所となっている。

そこで、戦争で一体何が実現できるのだろう?

皆無だ。ワシントンに関する限り、現状こそ最高なのだ。

そう、トランプが支配しているが、彼は北朝鮮との核戦争を引き起こしかねない何か常軌を逸したことをやらかしかねない衝動的な素人だと、多くの人々が思っているのを私は承知している。それは起こり得るが、可能性は極めて小さいと思う。お気づきと思うが、トランプは、外交政策を、将軍連中に事実上委譲しており、将軍連中は、何を言い出すかわからないというトランプの評判が大いに効果があるのを利用している外交政策支配体制の有力メンバーと緊密に協力している。例えば、激しい言辞(“炎と怒り”や“標的に狙いを定め、装填済み”などの)によって、トランプは“中国領をスパイするのに利用可能な強力なAN/TPY-2レーダーを有し、中国やロシアとの核戦争の際に、アメリカ軍基地と軍隊を防衛するよう迎撃ミサイルは設計されている”THAADミサイル・システム配備に対する大衆の反対を多少抑えるのに成功した。

THAADは、ワシントンから見ればささいなものに過ぎない北朝鮮を狙ったものではないのは明らかだ。これは“アジア基軸”戦略を進めるため、アメリカが秘かに推進している軍備増強の重要な一環なのだ。

トランプのけんか腰は、弾道ミサイルと核兵器の実験を加速するという北朝鮮の対応も促した。北朝鮮の対応は昔からの反目をかきたて、リベラルな文在寅大統領による融和の取り組みを損なうのに役だった。同時に、北朝鮮の振る舞いは、何よりも韓国に戦術核兵器を配備したがっている極右集団の立場を強化した。右翼受けを狙って、北朝鮮と韓国との間の敵愾心を悪化させ、トランプは両国統一の取り組みを受け流すのを助け、アメリカ軍による占領継続の正当化を強化した。言い換えれば.

危機が、半島に対するワシントンの支配力を強め、アメリカ支配層陰の実力者の権益を拡大したのは明らかだ。トランプ自身が、この計画を彼自身で考えついたとは私には到底思えない。これは、彼の移り気な性格を、いかにして自分たちに有利に利用するか考え出した陰の政府ハンドラー連中の仕業だ。

北朝鮮の核兵器について一言

国民が飢餓の瀬戸際にあるのに、北朝鮮指導部は核兵器と弾道ミサイルに浪費したいなど望んでいない。だが彼らにとって他にどのような選択肢があるだろう? あらゆる政府の主要責任は自国民の安全を保証することだ。過去70年にわたり、50カ国もの主権政府を打倒してきた、あるいは打倒しようとしてきた国家と依然、法律上戦争状態にある場合、国がそれを実現するのは困難だ。朝鮮戦争は条約を締結して終わったのではなく、休戦協定で止まっていて、つまり戦争は継続中で、いつ何時燃え上がりかねないのだ。しかも、ワシントンは、北朝鮮政府の形を軽蔑しており、彼らを権力の座から追い出す好機を待っているのに過ぎないので、北朝鮮と協定に調印する気はない。この点において、トランプも大半の前任者連中と差異はない。彼は平壌の指導部を憎悪しており、それを隠すつもりも皆無だ。

結論はこうだ。アメリカは、戦闘を再開し、国民を殺害し、都市を灰燼に帰することはしないという、いかなる書面の保証も北朝鮮に与えることを拒否している。そこで当然、北朝鮮は自衛手段を講じたのだ。もちろん金正恩は、もし核兵器を侵略行為で使用すれば、コリン・パウエルがのんきに表現したように、アメリカ合州国が“北朝鮮を練炭に変える”ことを十分承知している。だが、彼には領土的野心も、火の玉に包まれたいという強烈な願望もないので、金正恩は北朝鮮の核兵器を使用しようとはしない。彼の核兵器は将来ワシントンとの交渉での切り札に過ぎない。唯一の問題は、ごく僅かな不十分なミサイル実験をハルマゲドン風のドラマに仕立て上げた方が、アメリカの地政学的権益に役立つので、トランプに取り引きする気がないことだ。ワシントン以上に危機をうまく利用する方法を良く知っているものはない。

トランプは現在の危機に至った歴史を何か知っているのだろうか? 1994年に、もしアメリカが北朝鮮の控えめな要求に合意すれば、北朝鮮は核兵器開発計画を止めることに同意していたことを彼は知っているだろうか? アメリカがこれらの条件に同意したが、協定の責任は果たし損ねたことを彼は知っているだろうか? 北朝鮮は合意の下の誓約を守ったが、結局アメリカに裏切られるのにうんざりして、プルトニウム濃縮計画を再開したことを彼は知っているだろうか? アメリカ合州国が約束を破り、協定を終わらせたことが、現在北朝鮮が核兵器を保有している理由だということを彼は知っているだろうか?

これは憶測ではない。歴史だ。

以下は、いわゆる枠組み合意の概要を説明しているIndependent紙記事の抜粋だ。

“1994年の枠組み条件下で、北朝鮮は“アメリカ合州国との政治・経済関係の完全正常化と引き替えに”核開発計画を凍結し、最終的に廃止することに同意した。これは下記の四つを意味していた。

原子力の喪失を補うため、アメリカが率いるコンソーシアムが、2003年までに、北朝鮮に二基の軽水炉を建設する。

それまでアメリカは北朝鮮に年間500,000トンの重油を供給する。

アメリカは経済制裁を解除し、北朝鮮をテロ支援国家リストから外し、おそらく最も重要なのは、依然、1953年の朝鮮戦争休戦の条件に従っている政治関係の正常化だ。

最終的に、双方が“核兵器使用の脅威”に対する“正式な保障”をすること(“1994年のアメリカと北朝鮮との協定はなぜ失敗したのか そしてトランプがそれから学べること”、Independent)

これは双方の要求に合致する完全にわかりやすい協定だった。北朝鮮は、必死に要求していた国家安全の保障と並んで、いささかの経済的特典を得て、見返りに、アメリカは、あらゆる核施設を監視でき、それで大量破壊兵器の開発を防げる。全員がそれぞれ望んでいたことを得たはずだった。一つだけ問題があった。アメリカが、最初から怠慢を始めたのだ。軽水炉は基礎段階以上には決して進まず、重油供給は益々にまれになった。対照的に、北朝鮮は協定書を律儀に遵守した。北朝鮮は期待されていた以上のことまでした。実際、同記事によれば、協定が発効して四年後:

“アメリカも国際原子力機関も、北朝鮮による‘枠組み合意のあらゆる点で根本的な違反は無い’ことに満足した。しかし自らの誓約については、ワシントンは守り損ねた。” (Independent)

おわかりだろう。北朝鮮は約束を守ったがアメリカは守らなかった。実に単純だ。

実際には一体何が起きたのか、一体誰に責任があるのかについて、概してマスコミは誤って描き出すという事実を考えれば、これは重要な点だ。責任は平壌にあるのではなく、ワシントンにあるのだ。同じ記事を更に引用しよう。

“自分の誓約について、ワシントンは守り損ねた。軽水炉は決して建設されなかった。重油出荷は遅延することが多かった。ずっと前から削除の範疇に合致していたのに、2008年まで、北朝鮮は国務省のテロ支援国家リストから削除されなかった。最も重要なのは、法律上、決して終わっていない戦争を、1953年の停戦協定を平和条約で置き換えることで、正式に朝鮮戦争を終わらせるためのいかなる行動も行われなかったことだ。アメリカは北朝鮮を攻撃しないという“正式な保証”は、六年後に枠組みが調印されるまで、なされなかった”(Independent)

2000年に、ブッシュが大統領に当選した際、事態は更に悪化した。北朝鮮は、ブッシュによる悪の枢軸演説に含まれ、“アメリカが武力を行使するよう備えておくべきならずもの政権”のリストにも載せられ、ペンタゴンは韓国との共同軍事演習を強化し、火に油を注いだだけだった。最終的にブッシュは協定をすっかり放棄し、北朝鮮は核兵器開発を再開した。

もちろん広報活動をのぞけば、ブッシュよりずっと良かった訳ではなかったオバマの登場となった。The Nationで秀逸な記事でティム・ショロックが指摘しているように、オバマは、六カ国協議を妨害し、より厳しい“検証計画”を受け入れさせるため北朝鮮に圧力をかけるべく、エネルギー支援を中断し、平壌との“直接対話という考え方を放棄し”、“韓国との一連の軍事演習に乗り出したが、これが彼が政権にある間に規模もテンポも拡大し、今や金正恩との緊張の核心となっている。”

オバマは“仲裁人”というイメージによって、彼の残虐行為や侵略を隠すことこそできたものの、北朝鮮との関係は悪化し続け、状況は目に見えてひどくなった。

一体何が起きたのか、そして、一体誰が悪いのかについての簡潔な記述であるショロック記事の以下抜粋を検討しよう。

“同意された枠組みで、北朝鮮はプルトニウムによる核兵器開発計画、100発以上の原子爆弾を製造する前述の十分な濃縮を十年にわたって停止した。“人々が知らないのは、北朝鮮が、1991年から2003年の間、核分裂性物質を全く製造していないことだ。”

“…枠組みは、ブッシュ政権まで有効だった。1998年、国務省のラスト・デミングは議会でこう証言した。“枠組み合意のいかなる点でも根本的な違反は無かった。”

“平壌は全ての中距離、長距離ミサイルの開発、実験配備停止の用意があった。”

“1997年には、アメリカ合州国が約束した石油提供をなかなかせず、敵対的政策を止めるという誓約を引き延ばしていると、北朝鮮はひどく文句を言っていた”

“この背景で、アメリカは約束を果たさなかったという平壌の確信は深まり、1998年に、北朝鮮は“他の軍事的選択肢”を探し始めた。

“ブッシュは枠組み合意を破棄して、一年前の2002年1月、彼が北朝鮮を“悪の枢軸”の一環と呼んで引き起こした関係悪化をさらに劣化させた。それに応じて、北朝鮮は、国際原子力機関査察官たちを追い出し、2006年に最初の原爆となるものの製造を始め、今日まで続いている第二次の核危機を引き起こした。”  (“北朝鮮との外交は、かつて機能していたし、再度、機能可能だ”、ティム・ショロック、Nation)

現在、北朝鮮は水素爆弾を保有し、ワシントンは、いまだに愚かなゲームを演じている。この似非危機丸ごと、ワシントンの帝国主義的謀略を隠すために考えられた巨大な煙幕なのだ。トランプは、金のミサイル実験を、アメリカが世界で最も急速に成長しつつある地域で支配的立場につけるよう、ペンタゴンの軍事的触手をアジアの奥深く広げる口実に利用しているのだ。ワシントンが過去百年間やってきたのと全く同じゲームだ。不幸なことに、連中はこれが大得意なのだ。

マイク・ホイットニーはワシントン州在住。彼は、Hopeless: Hopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion (AK Press)にも寄稿している。Hopelessはキンドル版もある。fergiewhitney@msn.comで、彼と連絡できる。

記事原文のurl:https://www.counterpunch.org/2017/09/08/why-trump-wont-start-a-war-with-north-korea/
----------
北朝鮮問題、宗主国軍事産業を肥やすための一層の隷属と臨戦体制推進の口実。宗主国の中ロ封じ込め戦略のための手駒を買ってでているだけのこと。インドでの原発建設も同様。

ゲーリングは言っています。「もちろん国民は戦争を望んではいない。なぜ畑にいる貧しいまぬけが、自分の命を戦争にさらそうなどと望むだろう?だが、結局、政策を決定するのは国家指導者だ。国民はいつでも指導者達の命令に従わせることができる。連中に、我々は攻撃されているのだと言って、平和主義者は愛国心に欠けると非難するだけで良いのだ。これはどこの国でも同様に機能する。」

ハワード・ジン「歴史の効用とテロリズムに対する戦争」を語る

隣国ではなく、自国の異常な政権、大本営広報部マスコミこそ恐ろしい。傀儡政府の暴挙こそ、容認できない。

残業代がつかない法案に賛成という突然の案を労働組合を名乗る組織が引っ込めたあと、それが出てくるというエライ世の中。

■■■ 日刊IWJガイド「臨時国会の最重要法案『働き方改革関連法案』に決定! 『安保法案』と同じ『一括法案』で『残業代ゼロ』『裁量労働制の拡大』狙う!/『新幹線を止める前に原発を止めろ!』北朝鮮のミサイル攻撃を想定し高浜原発運転停止を訴える河合弘之弁護士に、本日、岩上安身がインタビュー!」2017.9.15日号~No.1827号~ ■■■
(2017.9.15 8時00分)

« 視よ、青ざめたる馬あり、之に乘る者の名を死といひ | トップページ | 中国とロシアにとっての経済学授業 »

アメリカ」カテゴリの記事

アメリカ軍・基地」カテゴリの記事

北朝鮮」カテゴリの記事

地震・津波・原発・核」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1335849/71716925

この記事へのトラックバック一覧です: トランプが北朝鮮との戦争を始めない理由:

» 北朝鮮バッシングと併進する朝鮮学校への差別 [時事解説「ディストピア」]
朝鮮総連「金正恩委員長を決死の覚悟で擁護」…中央常任委員会が声明 (http://dailynk.jp/archives/96193) 先日の声明を受けて、一部(というより大半)の極右論者が歓喜に震えている、 もとい、怒り心頭に発しているが、そもそも総連が北朝鮮が擁護することは 言うほど...... [続きを読む]

« 視よ、青ざめたる馬あり、之に乘る者の名を死といひ | トップページ | 中国とロシアにとっての経済学授業 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ