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2017年6月 6日 (火)

ズビグニュー・ブレジンスキー

Paul Craig Roberts
2017年6月2日

ブレジンスキーが89歳で亡くなり、いずれも、既得権益集団のどれかや、人々が満足する神話に役立つ、大量のプロパガンダや偽情報が産み出された。私はブレジンスキーの専門家ではなく、本記事は彼を弁明するためのものでもない。ソ連時代、ワシントンの誰もが本質的にそうであったように、彼は冷戦戦士だった。

私がウィリアム・E・サイモン名称政治経済学教授職にあった戦略国際問題研究所CSISで、ブレジンスキーは、12年間同僚だった。私がその職に任命された際、CSISはジョージタウン大学の一部だった。ところが、ジョージタウン大学学長は、やはり我々の同僚だったヘンリー・キッシンジャーを憎悪するリベラルの一人で、ジョージタウン大学学長は、彼が良く知らないはずの、ロナルド・レーガンも、その行動ゆえにではなく、発言で、憎悪していた。だから私は歓迎されなかった。CSISに対する私の価値がどうであれ、キッシンジャーは、もっと価値があり、CSISはヘンリー・キッシンジャーを手放そうとしなかった。
そこで、戦略国際問題研究所は、ジョージタウン大学と袂を分かった。ブレジンスキーはCSISに残った。

ソ連科学アカデミー経済研究所内で、長年謄写版複製で秘密裏に出回っていた1971年刊の私の著書『Alienation and the Soviet Economy』が、カリフォルニア大学バークレー校、アーロン・ワイルダスキー教授の序文を添えて、1990年に再版された際、ブレジンスキーは、ロバート・コンクェストや二人のソ連科学アカデミー会員と並んで、表紙に推薦のことばを寄せてくれた。ブレジンスキーはこう書いていた。 “ロバーツ教授によるソ連経済発展解説は時宜にかなっており、既存文献の大きな空白を埋めてくれる。その中でソ連経済が成長し衰退した、マルクス主義の理論的枠組みを理解しようとする専門家にとっても、一般人にとっても、本書は有益だ。”

二つの理由から、私は彼の推薦のことばを引用した。一つは、ブレジンスキーに対する私の見方が偏っている可能性を前もって明らかにするためだ。もう一つは、ブレジンスキーも私も、ソ連を長期的な脅威とは見なしていなかったことを、はっきりさせるためだ。私は、ソ連経済は破綻すると予想しており、実際破綻したが、ブレジンスキーは、ソ連は、民族の境界に沿って分裂すると予想しており、実際、ワシントン監督下で分裂した。我々はいずれも冷戦戦士だったが-私はCommittee on Present Dangerのメンバーで-二人とも、戦争や紛争ではなく、平和的な冷戦解決を好んでいた。ブレジンスキーは、アメリカ単独行動主義に対し制約になっているロシアを潰すと固く決意しているネオコンでは決してなかった。ブレジンスキーは、カーター大統領の国家安全保障顧問として、アメリカ上院が批准を拒否したにもかかわらず、カーター政権が認めたSALT 2を阻止しなかった。

ブレジンスキーは、ポーランドのワルシャワで、1928年に生まれた。彼の父親はドイツとソ連に赴任したポーランド外交官だった。1938年に、ブレジンスキーの父親は、カナダのモントリオールに、総領事として赴任した。モロトフ=リッベントロップ協定と、チャーチルと、フランクリン・D・ルーズヴェルトのヤルタ会談で、ポーランドが“ソ連勢力圏”に組み込まれた結果、ブレジンスキーは、カナダで教育を受け育つことになった。後に彼はハーバード大学で博士号を得て、ハーバード教授になった。ブレジンスキーには、あらゆる陰謀の刻印がある。彼は外交問題評議会とビルダーバーグのメンバーだった。私にとって幸いなことに、私が外交問題評議会メンバーに推薦された際、私は反対投票で落とされた。

ブレジンスキーがポーランド人で、彼の妻も東欧の人であることで、彼がロシアに対し強い憎しみを抱いている理由は明らかだ。とは言え、ブレジンスキーは主戦論者ではなかった。彼はヒューバート・ハンフリーの大統領選挙運動の顧問となり、アメリカのベトナム戦争介入段階的縮小を主張し、ワシントンがベトナム戦争を拡大したことに抗議して、アメリカ国務省の職を辞した。

同時に、彼はジョージ・マクガヴァンの反戦論に反対した。

重要なのは、ブレジンスキーは、ソ連が内的矛盾で崩壊するまで十分長期間、アメリカをもたせるようにしたかった、というのが私の考えだ。ブレジンスキーは、アメリカの世界覇権を押しつけることを狙ってはいなかった。これはネオコンの目標であり、冷戦戦士の目標ではない。レーガン大統領が強調した通り、冷戦で“勝利する”要点は、それを終わらせることにあり、相手に対する覇権を実現することではなかった。国家安全保障顧問として、ソ連をアフガニスタンに誘い込むブレジンスキーの戦略は、ソ連を弱体化させ、それにより冷戦終結を早めることだった。

これは、私自身が実際に経験した事実だ。もし私が正しければ、ブレジンスキーを、ソ連の破壊を願う悪であるのみならず、ブレジンスキーが国家安全保障顧問の座につく三十年前に始まった戦争、冷戦を作り出した冷戦戦士でもあるとして描き出すロシアと欧米両方のマスコミから聞かされているものと、真実は異なっている。

ソ連に対するブレジンスキーの手法が、現在の欧米に対するロシアの手法と同じだというのは、皮肉なことだ。ブレジンスキーは、ニクソン/キッシンジャーの緊張緩和の代わりに、国際法と人権を強調することを好んだ。これは現在、ワシントンや、ワシントン傀儡のNATO諸国に対する、プーチンの手法だ。

映画『Vフォー・ヴェンデッタ』の主人公“V”のように、ブレジンスキーは、ソ連に対して、軍事力ではなく、想像力を使いたがっていたのではないかと思う。もし記憶が正しければ、これが、ブレジンスキーと、武力を好む軍治安複合体や、軍縮を好むサイラス・ヴァンス国務長官との違いだ。

私は『マトリックス』世界に生まれでた。そこから脱出するには、何十年もの、政府部内者としての経験や、思いがけない経験が必要だった。ブレジンスキーも、思いがけない出来事の一つだったのかも知れない。国家安全保障顧問として、数百のソ連ICBMがアメリカに向けて飛行中という知らせで、真夜中に起こされた経験を話してくれたのを覚えている。彼の頭がはっきりする前に、今度は数千のICBMがアメリカ破壊の途上にあると言われた。反撃しても無駄だと思いついたところに、全て、演習情報が、どういうわけか、早期警報ネットワークに送り込まれた間違いだったという三番目の知らせが届いた。

言い換えれば、ブレジンスキーは、核のホロコーストを開始する間違いをどれだけ簡単にしてしまうかを理解していた。ロナルド・レーガンが冷戦を終わらせたがっていたのと全く同じ理由で、彼は冷戦を終わらせたがっていた。ワシントンが対ロシア核先制攻撃を準備しているとロシアに確信させた、本当の元凶は、クリントン、ジョージ・W・ブッシュやオバマ政権なのに、左翼がしているように、ブレジンスキーと、レーガンを元凶にするのは、一種のイデオロギー的愚行だ。

だが、欧米の愚行をこそ、我々は甘受している。我々はこの愚行に、一体いつまで生き延びられるのかこそが疑問だ。

冷戦の基盤である“ソ連の脅威”はでっちあげだったと私は思う。アイゼンハワー大統領が、それについて警告しても全く効果がなかった軍治安複合体によって作り出されたものだった。愛国的な戦争映画や、日本やドイツからの脅威など決して受けておらず、自国政府からのみ脅威を受けている“我々の自由を守るため”亡くなった人々に対する、5月最終月曜日の愛国的な戦没将兵追悼記念日や、7月4日の独立記念日の感情的な感謝が、国家安全保障顧問さえ洗脳するのに成功した。今のアメリカ国民が無頓着なのに何の不思議もない。

冷戦は軍治安複合体が画策したものだったが、犠牲者は多い。ブレジンスキーも彼の人生も、冷戦の犠牲だった。そのために命を失ったJFKは犠牲者だ。何百万人ものベトナム人死者は犠牲者だった。アメリカのナパーム弾を恐れて道路を逃げる裸のベトナム人少女の写真が、冷戦が一体どれほどの無辜の犠牲者をもたらすか気づかせてくれた。アフガニスタンに派兵されたソ連軍兵士たちも、アフガニスタン国民同様に犠牲者だった。

共産党の強硬派連中が、ソ連大統領ゴルバチョフを軟禁し、ソ連の脅威を自ら取り除いた。この準備不十分な介入がソ連を崩壊させた。ソ連の脅威がなくなり、アメリカ軍治安複合体は、膨大な予算を正当化する口実をもはや失ってしまった。

アメリカ人納税者を搾り取るための新たな正当化の口実を探して、足踏みしながら、軍治安複合体は、クリントン大統領に、アメリカは世界の警察官だと宣言させ、“人権”の名において、ユーゴスラビアを破壊させた。 イスラエルとネオコンの入れ知恵で、軍治安複合体は“イスラム教徒テロリストの脅威”を作り出すのに、9/11を利用した。このでっちあげは、今や七カ国で、何百万人ものイスラム教徒を殺害し、四肢を傷つけ、財産を奪い、強制退去させている。

北アフリカから、イラク、シリア、イエメンやアフガニスタンにまで及ぶ国々に対するワシントンによる16年間におよび戦争にもかかわらず、“イスラムの脅威”は、1.1兆ドルものアメリカの軍/治安年間予算を正当化するには不十分だ。結果として、ロシアの脅威が甦らされたのだ。

イスラムの脅威は、アメリカにとって決して危険なものではなかった。ワシントンによる戦争からの何百万人ものイスラム教徒難民を受け入れざるを得なかったワシントン傀儡のヨーロッパ諸国にとってのみ危険なのだ。ところが、あらたに作り出されたロシアの脅威は、あらゆるアメリカ国民にとっても、あらゆるヨーロッパ人にとっても脅威だ。

ロシアは反撃が可能だ。四半世紀、ロシアは、ワシントンが、立ちすくませるような対ロシア核攻撃を準備するのを見つめてきた。最近、ロシア最高司令部は、ワシントンが対ロシア奇襲核攻撃を意図しているとロシア軍が結論付けたと発表した。

このロシアの恐ろしい発表を欧米マスコミは全く報じない。トランプを含め、どの欧米政府高官も、プーチンに電話して、そのような対ロシア攻撃計画は皆無だと保証しようとしていない。

だから、次にブレジンスキーが受け取ったような誤警報をモスクワの相手方やアメリカの国家安全保障会議が受信した際はどうなるだろう? 悪のアメリカ軍治安複合体がよみがえらせた敵意のおかげで、ロシアかアメリカが誤警報を信じ込む結果になるのだろうか?

閣僚を含め無頓着な欧米諸国民は、核による破壊の崖っぷちに自分たちが暮らしていることが理解できない。

皆様に警告する私のように、ごくわずかな人々は“ロシアの毛先”“反ユダヤ主義”や“陰謀論者”と切り捨てられる。“ロシアの手先”“反ユダヤ主義”や“陰謀論者”と呼ばれる情報を耳にしたら、耳を傾けられたほうが良い。こうした人々は、人々に真実を語るためには、迫害されるのも辞さない人々なのだ。

欧米マスコミからも、いかなる欧米政府からも、決して真実は得ることはできない。(http://www.paulcraigroberts.org/2017/06/02/israels-slaughter-us-sailors/を参照(日本語訳はこちら「イスラエルによるアメリカ海軍軍人虐殺」。))

儲けを流れ込み続けさせるために、アメリカ軍治安複合体が敵を必要としているという極めて不安定な状態に、世界中が暮らしているというのが、現在最も重要な真実だ。残虐な事実はこうなのだ。自分たちの利益のため、アメリカ軍治安複合体が、全世界を、核のハルマゲドンの危機に曝しているのだ。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

 ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2017/06/02/zbigniew-brzezinski-paul-craig-roberts/
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Paul Craig Roberts氏、彼の記事に対するいい加減なコメントを許可するサイトには、彼の記事掲載を認めないとおっしゃっている。ごもっともとは思うが、彼のこの記事に対するコメントではなく、関連記事として、当ブログの二つの記事をあげておきたい。

とうとう、国際ペン会長からも、共謀罪への懸念が表明された。
共謀罪は日本の表現の自由とプライバシーの権利を侵害する」と日本ペンクラブ。

孫崎享氏の今日のメルマガ題名を複写させていただこう。題名が全てを語っている。
「日本は民主主義国家であり続けられるのか。国際社会が次々、懸念表明。国際ペン会長が「共謀罪」法案への反対声明。「国際組織犯罪防止条約締結のため、政府が必要であるとしている「共謀罪」に、条約関係者「条約はテロ防止を目的ではない」と明言」

儲けを流れ込み続けさせるために、アメリカ軍治安複合体が敵を必要としているという極めて不安定な状態に、世界中が暮らしているというのが、現在最も重要な真実だ。残虐な事実はこうなのだ。自分たちの利益のため、アメリカ軍治安複合体が、全世界を、核のハルマゲドンの危機に曝しているのだ。アメリカ軍治安複合体の意図に沿うため、属国売国政治家が、軍治安複合体の手先が、自分たちの地位と、利益のため、日本国民全員を、侵略戦争参戦と、そのための治安維持法復活の危機に曝しているのだ。

加計学園、とうとう息子の話題が出てきた。昼の洗脳痴呆番組は触れていない(と思う。あきれて最近あまり見ないので)。

日刊IWJガイドの一部をコピーさせていただこう。

 また獣医学部を出ても国家試験に合格せず、獣医師になれない可能性がある、という点を、日本獣医師学会顧問で元衆議院議員の北村直人氏が、岩上さんのインタビューで、家計学園が経営する岡山理科大の獣医学部新設に関する懸念ポイントとしてあげています。詳細は是非下記のインタビューを御覧ください!

 北村先生のインタビューについては、インタビュー動画とともに「IWJ特報」でテキストメルマガの発行もされています。こちらはバックナンバーのみの購入も可能です。詳細は以下からご確認ください!

※「特区の議論はすべて『加計ありき』」――「森友を超える」加計学園の疑惑をIWJだけにトコトンぶちまける!岩上安身が日本獣医師会顧問・北村直人氏(前衆議院議員)に独走スクープインタビュー! 2017.4.4
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/372080

※既存大手メディアが報じない「真実」がここに!毎号大ボリュームでお届け!有料メルマガ「岩上安身のIWJ特報!」ご購読のご案内
http://iwj.co.jp/wj/open/iwj-dispatch

◆中継番組表◆

**2017.6.6 Tue.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【録画配信・Ch4】14:00~「『共謀罪』に関する国際ペン会長声明発表記者会見 ―日本ペンクラブ浅田次郎会長、山田健太言論表現委員長ほか」
視聴URL: http://iwj.co.jp/channels/main/channel.php?CN=4
※6月5日に収録した、「日本ペンクラブ」主催の記者会見を録画配信します。


【IWJ_YouTube Live】15:00~「長州レジームから日本を取り戻す!歴史の闇に葬られた思想家・赤松小三郎の夢と明治維新の闇 岩上安身による拓殖大学・関良基准教授インタビュー」
YouTube視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501
ツイキャス視聴URL: http://twitcasting.tv/iwakamiyasumi
※再びの登場となる、拓殖大学准教授・関良基氏に岩上安身がインタビュー。今回は関氏のご著書『赤松小三郎ともう一つの明治維新』の内容についてお話をうかがう予定です。

赤松小三郎ともう一つの明治維新 テロに葬られた立憲主義の夢を刊行直後、夢中で拝読したものとして、このインタビューは見逃せない。読後、小生の頭の中から、明治維新神話は完全に吹き飛んだ。

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