真実は反米と化した
2017年5月23日
Paul Craig Roberts
『マトリックス』の世界から脱出した我々は、アメリカの世界覇権のために、ワシントンが核兵器を使用することに対する何の抑えもないのを懸念している。
ワシントンとイスラエルは平和に対する脅威だ。ワシントンは世界覇権を求めており、イスラエルは中東での覇権を求めている。
ワシントンの世界覇権の邪魔になっている二つの国がある。ロシアと中国だ。結果として、ワシントンには、両国を先制核攻撃する計画がある。人類に対するこれ以上に深刻な脅威を想像するのは困難なのに、議会や、売女マスコミや、アメリカ合州国の一般大衆や、ワシントン傀儡ヨーロッパ諸国の国民の間には、この脅威に関する認識は皆無だ。
この二国と他の一部の国々が、大イスラエルの障害になっている。イスラエルは、南レバノンの水資源が欲しいのだが、イスラエル軍を二度も派兵したにもかかわらず、シリアとイランが支援しているレバノンのヒズボラ民兵のおかげで、手にいれられずにいる。シリアとイランが、ワシントンの殺害対象者リストに載っている理由はこれだ。ワシントンは、軍治安複合体とウオール街と巨大化しすぎたアメリカ銀行とイスラエルのために働いている。
ロシアと中国が、彼らに対するワシントンの敵意が、外交でなんとかなる単なる誤解の類だと理解しているかどうかは不明だ。
明らかに、ロシアはアメリカ大統領選挙に干渉してもいないし、ウクライナにも侵略しておらず、ポーランドやバルト三国を侵略するつもりも無い。ロシアはソ連帝国を棄てたが、帝国は経費がかかり、ほとんど儲からないので、棄てたことを喜んでいるのだ。ソ連東欧帝国は欧米による次の侵略に対するスターリンの緩衝地帯だった。ワルシャワ条約に攻撃的な意味は皆無だった。ワシントンで不正確に言われているような、ソ連の世界支配の始まりでは無かった。
ロシアの英語版ウェブサイトに掲載されるロシア・マスコミ報道や記事は、ロシアが直面している脅威に関して、明確さが欠けていると私は思う。ロシアのラブロフ外務大臣が、ワシントンとの和解をもたらす努力を継続しているのが、私には釈然としない。ワシントンが、ロシアを支配するか、孤立化させるつもりなのに、一体どうして、ラブロフ外務大臣が、ワシントンとの和解をもたらすことができるだろう?
ワシントンには、他国の国益を斟酌するつもりがないという認識を、ラブロフ外務大臣と、ロシア・マスコミ機関は、必ずしも常時示しているわけではない。
下記の三つの理由から、アメリカは、それしかあり得ない。
- アメリカ軍治安複合体の予算は世界最大だ。それは多くの国々の国内総生産より大きい。これには、ペンタゴンの予算のみならず、16のアメリカ諜報機関や、オークリッジ核兵器工場と、その他の16の国立研究所を抱えるエネルギー省の予算も含まれる。すべ機関をまとめれば、軍治安複合体は、毎年、1兆ドルの権限と利益を得ている。このような帝国は、大統領の誰かや有権者の一部が平和を望んだとて、あきらめて、消え去ることなど決してあり得ない。“ロシアの脅威”は、56年前に、アイゼンハワー大統領がアメリカ人に警告した、軍治安複合体の権限と利益にとって、必要不可欠なのだ。今や、この権力がどれほど堅固なものかご想像願いたい。
- アメリカ外交政策と、欧米マスコミ言論の両方を支配しているネオコンは、主にシオニスト信条のユダヤ人だ。イスラエル-アメリカ二重国籍の連中もいる。ソ連共産主義の崩壊は、歴史が、アメリカ合州国を、社会-政治-経済制度として選択したことを意味しており、アメリカ政府には、全世界に対するアメリカ覇権を行使する責任があると、ネオコンは信じている。ネオコン文書をお読み願いたい。連中は、この主張をしつこく繰り返している。これが、アメリカは、例外的で、必要欠くべからざる国だということの意味なのだ。もし、アメリカが必要不可欠な国であれば、他のあらゆる国は無くても済むのだ。もし、アメリカが例外的なのであれば、他のあらゆる国は特別ではないのだ。ネオコンが アメリカについてしている主張は、ヒトラーがドイツついて、していた主張と同じだ。
- イスラエルがアメリカの中東政策を支配しているので、イスラエルは、イスラエルの拡大に対する障害を、ワシントンに抹殺させるのに、その支配力を利用している。これまでのところ、イスラエルは、サダム・フセイン政権打倒、イラクの混乱、ワシントンによる対シリア戦争と、十分に悪者扱いすれば、戦争を正当化できると願っての、ワシントンによるイランの悪者扱いを実現している。
ロシア外務大臣が、ロシアが屈伏すること無しに、ワシントンとの和解が可能だと考えるのは愚行だ。これは、おそらく、ロシアが準備する間、アメリカ攻撃を遅らせるために、ラブロフ外務大臣は外交を利用しているのだ。あるいはひょっとして、ラブロフ外務大臣は、事実にもかかわらず、外交にしがみついている外交官に過ぎないのかも知れない。
ロシア語のものも、外国語ものも、放送局もウェブサイトも、ロシア・マスコミの大半は、欧米によるロシアについての不正確な記述は間違いにすぎず、事実がはっきりしさえすれば、間違いは改めることが可能だと考えている。こうしたロシア人ジャーナリストたちは、ワシントンが事実など全く気にしていないことを理解できていない。ワシントンは心底、敵を必要としており、ロシアが最適の敵なのだ。
ウオール街とアメリカ大企業は、アメリカ体制に利益を注ぎ続けている中国の安価な労働力に余りに依存していて、戦争をして、こうした利益を危険にさらすことはないと、中国政府は考えているように見える。
戦争の危険を目立たせないことによって、ロシアと中国は、ワシントンの無謀さに対する世界の反対の声を動員し損ねて、戦争に向かうワシントンの動きを可能にしている。
安保治安国家のために働く売女マスコミは、紛争に向けて、あおり続けている。プーチンを表紙に載せ“アメリカに対する策謀: アメリカの民主主義を破壊するプーチン作戦の内幕”という見出しにした特集記事を載せたニューズウィークの2017年5月26日号を検討しよう。
主要ニュース雑誌で、これほど無知なたわごとを想像するのは困難だ。アメリカ民主主義は、特定権益集団によって、特定権益集団に権力を与えたアメリカ最高裁裁定によって、そして、アメリカ憲法を破壊した、でっち上げの対テロ戦争によって、破壊されたのだ。それなのに、売女マスコミは、プーチンがアメリカ民主主義を破壊していると言い張っている。失われずに残っている知性が、欧米マスコミのどこにも存在していないのは明らかだ。欧米売女マスコミは、信じ難いほど堕落しているか、信じ難いほど無知なのかのいずれだ。連中については、それ以外言うべき言葉はない。
タイム誌の表紙を検討しよう。表紙は、トランプ大統領の下、ロシアに服従するアメリカを象徴して、ホワイト・ハウスが、その上にそびえるクレムリンと聖ワシリイ大聖堂の土台に変わるのを描いている。この異常なプロパガンダも、無頓着さの結果、死ぬであろう、大部分の欧米諸国民には、あっさり受け入れられるそうに思える。
ワシントンに批判的なポール・ストリートのような筆者ですら、CounterPunchと、英語版のロシア・ウェブサイト、Strategic Culture Foundationの最近記事でも、主たる敵を必要としているアメリカ軍治安複合体が、ロシアをその役に選び、地球上の人類を絶滅させても、このでっち上げを維持するつもりなのだという真実を述べることはできない。
ストリートは“ロシアは、いかにして再度‘我々の敵’となったか”について書いている。ストリートによれば、ロシアは、世界の住民と資源の一部が国際資本に搾取されることから、ロシアが守ったがゆえに最適な敵になったのだ。プーチンが、アメリカがロシアを経済的に搾取するのを止めたがゆえに、ロシアはアメリカの第一番の敵になった面もある。プーチンは、ワシントンが世界を搾取するのに邪魔なのだ。
ストリートが言っていることの大半は正しいが、彼は歯に衣を着せない形で言うのをためらっている。彼は、おきまりのプロパガンダを繰り返して、真意を薄めざるを得なかったのだ。ストリートは、本来ロシアとの正常な関係を望んでいたトランプを“独裁主義者プーチンの男らしさを称賛しているオレンジ色の髪の人でなし”と呼んでいる。
トランプの問題は、ロシアとの関係を正常化するという目標に由来している。ヒラリーは、 関係の悪化を狙っていた人でなしだ。
プーチンは、独裁主義者ではなく、民主主義者だ。独裁主義者連中はワシントンだ。ポール・ストリートも、CounterPunchも、確実にこれを知っている。だがストリートは、アメリカとロシアにまつわる政治的に不適切な真実を言わずに済むよう、若干の反プーチン・プロパガンダを発言し、トランプをけなして、自らを守っているのだ。
ロシアと中国との和平は、1兆ドルという軍事/治安予算と、軍治安複合体がアメリカ政府であることの正当化を駄目にしてしまう、大半の筆者にとって、発言するには余りに重大な真実だ。
真実は、欧米世界において、最も稀な要素で、我々は多くの真実を享受することを、そう長いことは許されまい。真実を見出すことはますます困難になりつつある。可能な間に、真実に浸っていただきたい。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2017/05/23/truth-has-become-un-american/
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元事務次官の証言があっても「その指摘は全くあたらない。粛々と進める方針は、いささかも揺らぐことはない。」
無理が通れば通りがひっこむ。
属国も、宗主国と同じ。共謀罪によって、真実を語るのは反日になる。
ポール・ストリート氏の記事は、下記で読める。
How Russia Became “Our Adversary” Again
Roberts氏の足をひっぱりたいとは全く思わないが、単純な誤記は指摘せざるを得ない。
タイム誌表紙の画「聖ワシリイ大聖堂」であって、クレムリンではないのはあきらか。
クレムリンは聖ワシリイ大聖堂がある赤の広場の横にある。
観光で見た以上の知識はないが、素人でもわかる事実。
疑問を感じられるむきは、各自、ご確認願いたい。
RTには、この頓珍漢を揶揄する5月21日づけ記事がある。
Sorry, Time, but Putin doesn’t work in a cathedral
「タイムよ、プーチン大統領は大聖堂で執務していない」という感じだろうか。
記事冒頭に「赤の広場の歴史的史蹟、ロシア正教教会がアメリカ大統領府を乗っ取った構図になっている。しかし、彼らは、教会ではなく、クレムリンが大統領府を乗っ取ったと表現したかったのだろうに」とある。
提灯持ち助さん格さん二紙を連想させる痴的レベル。
宗主国でも属国でも、洗脳マスコミのレベル、全く変わらないもののようだ。
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コメント
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管理人様 良い記事の翻訳に御礼もうしあげます.「ロシアはソ連帝国を棄てたが、帝国は経費がかかり、ほとんど儲からないので、棄てたことを喜んでいるのだ。」の行,家内(コミ出身だがロシア人)に読み聞かせました.吾が意を得たり,の文章だということであります.そしてウラルの金はモスクワに吸い取られ,その多くはカフカスの共和国―チェチェンイングーシその他の非印欧語系国―の政治軍事バンディット(悪党集団)の懐柔に使われたと語り,彼女は右手を左肩に当てて,とんとんを叩く所作をします.これは重荷を負ったことを表す所作なのです.
投稿: 国立大学教員 | 2017年5月26日 (金) 20時25分