レバノン:快楽主義と戦争
アンドレ・ヴルチェク
2017年5月10日
対抗する派閥間紛争の結果と、外部からの‘好ましからぬ’影響もあって、国中でパレスチナ難民キャンプが崩壊している。誰もが知る通り、レバノンでは、たとえば、アルカイダとつながる戦士たちが南部に隠れている。
イスラエルが、陸上でも、海上でも、レバノンを侵略している。無人機も、イスラエルからレバノン領空に常習的に侵入し、通過飛行している。
シリアを巡り、イスラエルとヒズボラ間には大変な緊張があるが、それだけではない。
レバノン軍は、主にレバノン北東部、シリア国境の山々で、ダーイシュと戦っている。ヒズボラもダーイシュと戦っているが、‘独自に’だ。
シリアでの戦争が七年目となる中、依然、100万人以上のシリア難民がレバノン領内で暮らしており、中には酷い状態の人々もあり、多くの人々にとって将来は極端に不確実だ。正確な人数は不明だ(ほぼ2年前に、国連難民高等弁務官事務所は、あらゆる新規到来者登録を停止した)が、100万人と、200万人の間で推移していると考えられている。
既に乏しい雇用や公共サービス(水道などの公益事業を含む)を巡って競合する中、シリア人とレバノン人のコミュニティ間で緊張が高まりつつあり、一方、社会的、政治的、経済的権利をほとんど持たないまま、パレスチナ難民がもう何十年もレバノンで立ち往生している。
生産(主にベッカー高原)から、ベイルートでのとどまるところを知らない消費という覚醒剤汚染がある。
機能する政権が2年半以上不在だった後、2016年12月に新政権がようやく造られた。とは言え、首相はスンナ派イスラム教徒で、シリアには、あからさまに敵対的で、最近のアメリカによる隣国攻撃を支持することをあからさまに表明しているサード・ハリーリーだ。2005年2月に父親ラフィーク・ハリーリーを暗殺したとして、ハリーリ首相は、ヒズボラとシリアを長年非難している。ハリーリーは、レバノンと、彼が生まれたサウジアラビア(リヤド)の二重国籍だ。一方、現在、レバノン大統領は、ヒズボラによる、変わることのない支持のおかげで権力の座についている、マロン派キリスト教徒、83歳のミシェル・アウンで、この事実から、彼は首相と反目している。
(レバノンでは概して宗派と同義であることが多い)‘各政党’間で、選挙法、ゴミ処理、国際的政治同盟、外国の軍事支援、性差別、雇用や、あらゆる基本的社会福祉(あるいは、その深刻な欠如)などの様々な問題を巡り、闘いというか行き詰まりが続いている。
* * *
レバノンは絶え間ない紛争で、文字通り包囲されている。大変な苦闘の中にあるシリアが、小国レバノンのすぐ‘隣’、北と東にあり、強力で攻撃的なイスラエルが南からレバノンを脅かしている。国連軍が、いわゆる“2000年国連ブルーライン”、レバノンとイスラエル間の事実上の国境を巡回している。実際、UNIFIL(国際連合レバノン暫定駐留軍)が長年レバノン領の広大な部分を‘警備しているのだ’。全く交戦地帯のようだ。
実際、この地域は、破壊的な極めて残忍な力で、再び、いつ何時、爆発しかねない、一連の一時的に休眠状態の紛争で構成されているのだ。
占領され荒廃したゴラン高原も国境のすぐ向こうにある。公式には、ゴラン高原は依然シリアの一部だが、既にイスラエルが住民の大半を追放し、イスラエル国民を定住させている。約4年前の私の訪問時には状況は既に悲惨で、地域には鉄条網が張られ、イスラエル軍駐屯地や車両が至る所にあった。多くの現地の家は‘懲罰’として破壊されていた。地図上の一番端まで行けば、レバノンからゴラン高原が見える。イスラエルも見えるし、堂々としたはげ山のすぐ後ろに、シリアが‘常にある’。
国連平和維持軍兵士は、韓国やインドネシアやヨーロッパを含む世界の至る所からやってくる。都市チレ近くで沿岸高速道路が終わる直前、ドライバーは最後のレバノン検問所を通過する。装甲車と砂袋と監視塔がある国連レバノン暫定駐留軍警備地域が始まる。速度を落とさせる狙いのコンクリート・ブロックには、こう書いてある。
“レバノンに平和を、韓国に栄えあれ!”
パレスチナ難民キャンプは溢れている。シリア難民(一部は酷い状態にあり)ベッカー高原で奴隷のように働くか、シドンやベイルートで、金を無心するか、万一裕福な場合には、首都の崖道沿いの海に面した豪勢なマンションを貸すかしている。
* * *
あらゆる虚勢にもかかわらず、レバノンはおびえている。すくんでいる。
イスラエルがいつ何時再び攻撃してきかねないことを誰もが知っている。既にイスラエルが、レバノンの海底から石油を盗掘していると言われているが、弱く、ほぼ完全に無防備な国は、地球上最も強力な軍隊の一つに対してできることはほぼ皆無だ。
国中に、戦争で荒廃したシリアから溢れ出したISIS(ダーイシュ)や他の過激派戦士集団の‘休眠細胞’が存在している。ISISは‘カリフ制と、海へのアクセス’を夢見ている。レバノンはまさにそこに、‘完璧な位置’にある。
この分裂した不確実な政治情勢の中で活動することには、余り強い興味をもたず、ロシアも中国も目立つ行動を比較的控えている。レバノンでは、永久的な忠誠心は非常に稀にしか残っていない。忠誠心は移ろいやすく、外部‘資金’次第のことが多い。
サウジアラビアとイランは、常に存在しており、欧米もそうだ。ヒズボラ(欧米のいくつかの国々で、テロ組織として‘リスト’されている)が、貧しい人々に対する、少なくとも多少の基本的社会福祉と、イスラエルに対する、断固とした軍事的、イデオロギー的防衛が可能で、進んでそうしようとしている唯一の汎レバノン軍なのだ。
多くの政治評論家たちが、レバノンは完全に崩壊する、しかも間もなくと予言している。それでも、レバノンは、断固、挑戦的に依然存在している。一体どのようにしてなのかは誰も知らない。いつまでかというのは、全くの謎だ!
国連が見回り、難民が溢れるレバノンの夜はきらびやかだ。フェラーリが早朝まで、消音器無しで、街を走り回る。ナイトクラブが、湾岸諸国からの快楽主義の観光客たちを誘っている。映画館は立派で、パリのものより良いくらいだ。AUB医療センターでは、中東最高の外科医たちが、この地域での最も忌まわしい戦傷を治療している。
ここでは、戦争と放縦が共存している。これは、むき出しの冷笑主義に過ぎないと言う人々がいる。違う意見を主張する人々もいる。
“いや、これが生活だ! 21世紀世界の生活だ。露骨で極端だが、ある意味正直な。”
アンドレ・ヴルチェクは、哲学者、作家、映画制作者、調査ジャーナリスト。彼は、何十もの国々における、戦争と紛争を報じてきた。彼の最新書籍三冊は、革命的な小説『Aurora』と二冊のベストセラー政治ノンフィクション『帝国の嘘を暴露する』『欧米帝国主義と闘う』。アンドレは、teleSURと、Al-Mayadeen向けの映画を制作している。長年、中南米、アフリカ、オセアニアで暮らした後、ヴルチェクは現在、東アジアと中東で暮らし、世界中で働いている。ウェブサイトかツイッターで連絡できる。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2017/05/10/lebanon-hedonism-and-war/
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彼の著作で日本語訳があるのは『チョムスキーが語る戦争のからくり: ヒロシマからドローン兵器の時代まで』一冊だけのようで残念。
大本営広報部白痴製造部隊、飽きずに連日、北朝鮮ミサイル発射呆導。
「北朝鮮ミサイル発射」は、共謀罪強行採決の煙幕だろう。
東京都の選挙も、自民党、公明党、自分ファーストのからみを面白おかしくあおって話題を独占し、野党勢力を徹底的にそぎ、議席を連中が独占するのが狙いだろう。対決など茶番。神田祭りまで、洗脳宣伝に使われているのに驚いた。
本質ネオコン・ネオリベ「新党」全く期待しない。東京も大阪のようになるだけのこと。
共謀罪や森友土地疑惑や今治の獣医大学の話題は全く抑制されている。
大本営広報部が、特定の話題をしつこく一斉報道する時は、決まって、とんでもない法律が強行採決されていると、記憶している。
WikiLeaksを巡る疑念はてんこもり 2010年12月7日 の翻訳記事の後に書いた蛇足を再度貼り付けよう。
「一斉報道」、何によらず眉唾ものだと思っている。
『眉唾』、眉に唾をつけると、キツネなどに化かされないという俗信からだという。たまに現れるキツネなら、眉に唾をつければ化かされずに済んだのかも知れない。
朝から晩まで色々報じるマスコミに化かされずに済むよう眉に唾を塗っていては、唾が間に合うまい。
この国の民度に比例したジャーナリズムなるものが、どうでもよい話題を一斉に報じる時期は、なぜか庶民生活の根本に関連する重要な法律の成立前やら、つつかれたくない政府の活動と一致することが多いような気がする。まあ、貧乏人の被害妄想だろう。
「庶民生活にとって、どうでも良い話題は熱心に報じるが、庶民生活にとって、どうでも良くない話題は報じない」のが彼等(政界・マスコミ・霞が関)の仕事なのだ、という素朴な確信、頭から離れない。
- 野球関係のおば様と剣劇のおば様の口論?が大いに報道されたのは、1999年3月末
- そこで、 周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律 1999年5月28日
- 国際連合平和維持活動などに対する協力に関する法律の一部改正 1999年7月16日
- 白装束の渦巻きカルト集団の動きが大いに報道されたのは、2003年4月から5月
- それから、 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 2003年6月13日
- モンゴル人横綱の暴力騒動がかまびすしかったのは、2010年1月
- そして、 「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」(日米安全保障条約)署名50周年に当たっての日米安全保障協議委員会の共同発表 2010年1月19日
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