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2017年4月25日 (火)

ユーロランドは解体寸前か?

2017年4月20日
F. William Engdahl

昨年のイギリス有権者の大多数による欧州連合離脱という決断は単なる国民投票以上のものだ。Brexitキャンペーンは、シティー・オブ・ロンドンの最も有力な複数の銀行と、イギリス王室が推進し、資金提供していた。イギリスの終焉どころか、Brexitは、悲惨なユーロ単一通貨実験の終わりの始まりになる可能性の方が遙かに高い。

2008年の世界金融危機以来、ブリュッセルも19のユーロ圏諸国政府も、ユーロ圏最大の銀行を健全な安定状態にするために意味あることをほとんど実行していない。逆に、ドイツのドイツ銀行のような尊敬すべき巨大銀行でさえ瀬戸際でよろめいている。

イタリアでは、世界最古の銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行が、国家による延命処置状態にある。それもイタリア銀行不良債権の氷山の一角に過ぎない。現在、イタリアの銀行全体で、3600億ユーロの不良債権を抱えているが、これはイタリアGDPの20%、五年前の合計の二倍だ。

それは更に悪化しつつある。イタリアはEU四番目の経済規模だ。イタリア経済が惨憺たる状態なので、銀行の不良債権は増大する。国家債務はギリシャ同様に多く、GDPの135%だ。現在、2013年のキプロス銀行危機以来、主にドイツからの圧力で、EUは厳しい新銀行“ベイルイン”法を成立させた。この法律では、新たな金融危機になった場合、金融債保有者と、必要とあらば、キプロスの場合同様、まず銀行預金者が“ベイルイン”つまり損失を被るまで、公的資金投入による救済措置は禁じられている。イタリアでは、総額約2000億ユーロの金融債保有者の大半は、金融債は安全な投資だと言われた普通のイタリア国民なのだ。

ドイツの緊縮政策という薬が、患者を殺している

主要な問題は、2008年の金融・経済危機に対処するのに、ユーロ圏経済が、間違った薬を押しつけられていることだ。ユーロ圏危機は、国々が余りでたらめに支出し、労賃が余りに高くなり過ぎたと、誤って理解されている。そこで、またもやドイツの圧力で、ギリシャなど危機にあるユーロ圏諸国は、過酷な緊縮政策、年金削減、賃金引き下げを押しつけるのを強いられた。その結果、一層酷い景気後退や失業増加、銀行の不良債権増となった。2008年と比較して、2015年には、ギリシャのGDPは26%以上、スペインのGDPはほぼ6%、ポルトガルは7%、そしてイタリアのGDPは、ほぼ10%減少した。

緊縮政策は、決して国の経済危機に対する解決策ではない。1931年 ハインリヒ・ブリューニング首相による過酷な緊縮政策の結果、不況、失業と金融危機の中、勃発したドイツ経済危機の教訓は、歴史的な記憶の健忘症に陥っているように見えるドイツ当局にとって、十分明らかなはずだ。

ユーロ圏全体で、1900万人以上の労働者が失業している。ギリシャ、イタリア、ポルトガルとスペインには、合計で1100万人の未曾有の失業労働者がいる。フランスとイタリアでは失業は労働人口の13%を越える。スペインでは20%で、ギリシャでは信じがたい25%だ。それが、2008年危機から8年以上たった今の経済状況だ。要するに、ユーロランドは経済回復していないのだ。2009年以来、欧州中央銀行 (ECB)、ユーロの銀行は金融危機を安定させようとして未曾有の動きをした。彼らは状況を良くするのではなく、延期しただけだった。

ECBが担保付き債権、社債、国債や資産担保型証券を購入した結果、ECBの貸借対照表は、現在、1.5兆ユーロ以上だ。イタリアのマリオ・ドラギが総裁をつとめるECBは、2014年6月以来、約 -0.4%という未曾有のマイナス金利を導入した。ECBは、マイナス中央銀行金利が“しばらく”続くことを明らかにした。この結果、インドが昨年実行して悲惨な結果になったり、ユーロ国ではないスウェーデンが既になったりしたような、キャッシュレス社会にしようと、有権者の説得を試みるむきも出てきた。多くの人々にとって驚くべき考えで、顧客が預金を利用するのに、銀行が顧客から手数料を取り始めれば、人々は“預金をおろし”金や、他の安全な資産や、現金に換えるだけのことだ。

ECBのマイナス金利は、控えめに言っても、死にもの狂いの兆しだ。ユーロ圏全体の債券金利が余りに低いので、多くの保険会社が、ユーロ圏金利がより正常な水準に戻らない限り、将来、負債を支払う上で深刻な流動性問題に直面する。ところが、ECBがマイナス金利政策と、いわゆる量的緩和を辞めるようなことになれば、多くの銀行の債務危機が、ギリシャから、イタリアやフランス、更にはドイツでも爆発するだろう。

来るべき通貨戦争?

だから、穏やかに言っても、ユーロ圏は、わずかな新たな衝撃や危機で即爆発し得るカチカチいう債務時限爆弾なのだ。二年後、イギリスがEUからの離脱を完了した際に、その衝撃を見ることになるかも知れない。既にワシントンのドナルド・トランプ新政権は、ユーロに対する通貨戦争を開始する可能性を示している。1月31日、アメリカ国家通商会議のトップ、ピーター・ナヴァロは、アメリカと、ドイツのパートナーのEU諸国を“非常に割安なユーロで、搾取している”とドイツを非難した。ナヴァロは、ユーロ圏経済の中核ドイツを、事実上の“通貨操作国”とまで呼んだ。ナヴァロはこう述べた。“ユーロは国際通貨市場で自由に変動しているが、この制度は、もしドイツのドイツ・マルクがまだ存在していれば、ドイツ通貨がそうであったもの以上に下げている。”

シティー・オブ・ロンドンの膨大な金融資源を持つイギリスは、EU加盟の足かせから解放されれば、ユーロ圏経済に壊滅的結果をもたらすであろう、ユーロを引きずり下ろす秘かな全面通貨戦争で、ワシントンと提携することが可能になる。イギリス・ポンドは、ドルとユーロに続く三番目に大きい世界の支払い通貨だ。イタリア、ギリシャ、スペインや他の諸問題がある脆弱なユーロ圏に対して、イギリスがワシントン側に付く通貨戦争で、EUの拘束から解放されたイギリスがユーロを引きずり下ろせれば、ポンドは主要な利得者となり得る。既にイギリスのテリーザ・メイ首相は、二国間でアメリカ-イギリス貿易協定を結ぶことをトランプ政権と話し合っており、英連邦の一部の有力な国々は、アメリカを英連邦の準会員に招くことを話しあっている。アメリカ・ドルとウオール街銀行が、ドルに対する中央銀行準備通貨というライバルを傷つけるというのは極めて魅力ある考え方だ。今やEUの拘束から間もなく解放されるイギリスと、シティー・オブ・ロンドンにとって、誘惑が現実になる可能性がある。

これはすべて、乱用を制御する民主的に選ばれた当局が存在しない超国家的通貨というユーロ圏プロジェクト全体の機能不全な本質のせいだ。1990年の昔に、マーストリヒト条約が、欧州通貨制度と共にもたらした、国家主権の中途半端な解体が、EUに将来危機が起きた場合、最悪の組み合わせを置き土産にしたのだ。

F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。

記事原文のurl:http://journal-neo.org/2017/04/20/is-euroland-on-verge-of-disintegration-2/
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ソーシャル・メディアが、宗主国のツールで監視されていることが明らかになった。当然そうだと思っていたので、書き込んだことは皆無。たまに覗くだけにしていたが。

今日のIWJ、岩上安身氏のインタビュー相手は関良基氏。個人的に待望のインタビュー。『赤松小三郎ともう一つの明治維新』を拝読したのだが、次は『社会的共通資本としての水』を読む予定だ。以下、 日刊IWJガイドから引用させていただこう。

北朝鮮情勢から、いったんテーマは離れますが、今日は15時から政府が力を入れて今国会での成立を狙っている「水道民営化」の危険性について、拓殖大学政経学部准教授・関良基氏にインタビューします!TPPやFTAとも無関係ではない、重大な問題です!北朝鮮危機や森友学園の問題、あるいは小池劇場の陰に隠れてしまいがちですが、こんな法案が通ったら大変です!我々の生存に関わるライフラインが、外資を含めた民間資本に売っ払われ、カネ儲けの道具にさせられてしまうのです。

 しかし実は、関さんがお詳しいのは「水」問題だけではありません。『赤松小三郎ともう一つの明治維新』という著作をもつ関さんは、美化されがちな幕末明治維新の真実に迫っています。

 テロを政治権力獲得のもっぱらの手段とした長州の「志士」たちは、まごうかたなき「テロリスト」であり、初代首相の伊藤博文はそうした「テロリスト」の一人でした。彼は自分自身の手で、人を殺めています。そうやって明治維新後の日本は「長州レジーム」が支配してきたと、関さんは分析され、今こそ「長州レジームから日本を取り戻せ!」と訴えています。

水道民営化については、下記記事を翻訳してある。

コチャバンバ水戦争:「水戦争」から10年 マルセラ・オリベラ、市営水道民営化阻止の対ベクテル民衆闘争をふり返る

ザ・ウォーター・ウォー(水戦争)と複雑なことに取り組む必要性

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コメント

水道民営化はライフラインの私物化だし
共謀罪は情報泥棒の合法化なんですよね。
どっちも誰かさんたちの一方的な都合。
権力のパワーバランスが偏るとこうなる
という実例ですよね。これだと横暴で質が
落ちるだけじゃないでしょうか。

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