サウジアラビアの東南アジア・テロ歴訪
Tony Cartalucci
New Eastern Outlook
2017年3月5日
最近、サルマン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール=サウード・サウジアラビア王は、この地域のイスラム教徒が大多数の国々との経済的、政治的つながりを固めるための努力だとマスコミや専門家が主張する東南アジア大歴訪に取りかかっている。
ところが、マスコミも専門家も、この悪名高いテロ支援国家が、東南アジア内部を含む全世界で、テロをあおり、管轄地外に地政学的介入し、対立をもたらすテロ活動に関わって、サウジアラビアが演じている役割については、避けるか、全く無視している。
“サウジアラビア サルマン王の東南アジア歴訪、イスラムの友好を確認”と題する記事で、ドイツ放送局ドイチェ・ヴェレ(DW)はこう報じている。
サウジアラビア王は稀な一カ月に及ぶ歴訪で、経済的に急速に成長しつつある地域の、リヤドが通商上の関与と社会・政治的つながりを深めたいと願っている戦略的に重要な国々を訪問する。
DWはこうも報じている。
サルマン王の東南アジア諸国歴訪は、イスラム教徒が多数派の諸国との協力的なつながりの強化も際立たせ、イスラム教の権威や、マレーシアとインドネシア政府のイメージを確認するものだ
ところが、サウジアラビアが、地球上のイスラム教徒にとって、おそらく最大の脅威であることに疑問の余地はない。サウジアラビアによって、国内、国外遥か彼方まで流布される、政治的性格を帯びたワッハーブ主義という宗教ブランドは、そもそも曖昧な宗教というベールの陰で、サウジアラビアの政治的影響力を確立し、維持し、拡張するために作り出され、今も利用されているのだ。
サウジアラビアが輸出しているのは、オイルマネーのための石油だけではない
アメリカ合州国やイギリスやヨーロッパ中の他の特権利益集団の保護国としてのサウジアラビアは、ワッハーブ主義が根付き繁栄するのを許されているあらゆる国々で、ワッハーブ主義を利用し、保護してくれる国々に権力と影響力のベクトルを提供しているのだ。
具体的に、東南アジアでは、サウジアラビアが資金提供するワッハーブ派の学校は、マレーシア、インドネシア中にかなり存在しており、他の国々でも多少存在し、欧米が威圧したり、置き換えたりしたいと願っている政党や政治指導者に対し、政治的反対を表明することが多い過激主義をあおっている。
ミャンマーでは、サウジアラビアが資金提供するテロリストが、ミャンマーの少数民族ロヒンギャに潜入し、この集団への迫害を、地域の治安危機と、アメリカの政治的、軍事的拡張を含む、アメリカの更なる関与の口実に変えようとしている。
実際には、アメリカ合州国と、代理のサウジアラビアも、ロヒンギャには、危機につけこむ以上の興味はなく、潜入する過激派が本当の安全保障上の脅威だなどとアメリカは思ってもいないが、アメリカは、ミャンマーと中国の間に更にくさびをうち込み、この狙いに大いに役立つようサウジアラビアが工作している、でっちあげの安全保障上の脅威に対処すべく、ミャンマーにアメリカ軍顧問を配備することを狙っているのだ。
フィリピンでは、サウジアラビアが資金を提供し洗脳しているテロ組織は、フィリピン政府に対し、圧力をかけ続け、アメリカがフィリピンに軍事駐留を継続する恒久的口実として役立っている。
アメリカ合州国は、バンコクに対する更なる圧力とし、アメリカ軍の影響力を及ぼすための潜在的ベクトルとして役立てるため、タイ最南端の州における分離主義者の暴力を、宗教を背景にした紛争に変えようと再三試みてきた。
アメリカ-サウジアラビア介入が、ミャンマー-中国関係を崩壊する役に立っているのと同様、アメリカ-サウジアラビアは、フィリピンとタイ国内で煽り、二国が、アメリカ長年の地域覇権を犠牲にして、中国とのつながりを強化するの阻止することを狙っている。
アメリカ-サウジアラビア・テロは、中国を狙った政策に役立つ
中国自体の国内では、中国西部の新疆ウイグル自治区におけるアメリカが支援するテロが、地域と、中国国境内部の両方で、北京の影響力を分裂させ、打倒する企みで、アメリカが維持している、いくつかの「ツボ」の一つとして機能している。
新疆住民の大多数は、宗教や民族とは無関係に、安定と社会経済的発展を望んでいるが、アメリカは、政治的激変を作りだし、新疆ウイグル自治区の住民と政府両方に対して実行される組織的テロの隠れ蓑に利用すべく、反政府集団を作り、資金を与え、指揮をしている。
新疆の少数派過激派は、ウイグル・テロリストを、中国から東南アジア経由で連れ出し、トルコに送り込み、そこで武器を与え、国内に配備しているシリアを含む、アメリカ-サウジアラビア共同海外テロ人材の供給地としても役立っている。
このテロ・パイプラインの一環と思われる数人の容疑者をタイが拘留し、送還したことが、バンコクとワシントン間の深刻な政治論争の原因となり、バンコク中心部で実行され、20人を殺害し、更に多くを負傷させた破壊的爆破テロに至ったのだ。あらゆる証拠が、バンコクの抵抗に対する報復として、このテロが実行されたことを示唆している。
ワシントンの要求に対する、タイの実にあからさまな抵抗に加え、この東南アジアの国は、アメリカとの冷戦のつながりを徐々に捨て去り、中国やロシアやユーラシア中の他の重要な権力中枢とのより多角的なつながりを構築してきた。バンコクに対する、更なる圧力行使拠点を見出すことがワシントンにとって不可欠であり、宗派的紛争の嵐を産み出すサウジアラビアの才能利用は、ありそうな選択肢だ。
サウジアラビアの存在感強化は、アメリカの影響力強化を意味する
アメリカ合州国は何十年間もの外交政策で、イスラム教徒が大多数の国々内部の集団を取り込み、活用しようとする際には、政治的支援、兵器、現金を洗浄する手段として、サウジアラビアを利用してきた。
東南アジアにおけるサウジアラビアの存在感の増大は、アメリカにとって イスラム社会を活用し、過激派を醸成し、世界中でも東南アジア中でも、破壊的代理戦争で利用するために、人的資源を採用する機会の増大を意味する。
東南アジアの文化的に多様で、寛容な諸国民の間に、宗教的分裂を作り出す取り組みが長年続けられているが、ほとんど成功していない。この地域におけるサウジアラビアの存在感の増大が、ワシントンに有利なように、条件を大きく変えるかどうかはっきりしないが、緊張、混乱や分裂が起きるのは確実だ。
サウジアラビアは、サルマン訪問で、外国とのつながりを単に多様化しようとしているだけだと主張するむきもあるが、彼の旅程表の明らかに宗派的な性格が、そうでないことを示唆している。地域的に、また東南アジアの個々の国で、アメリカとサウジアラビアが利用しようとしているこの危険な地政学的兵器を暴露し無力化しようという協力がないので、未曾有のサルマン歴訪は“アラブの春”風の混沌の波が、地域を押し流す前の静けさとして思い起こされることになるかも知れない。
Tony Cartalucciは、バンコクに本拠を置く地政学専門家、著者で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”独占記事。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2017/03/05/saudi-arabias-southeast-asia-terror-tour/
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ミサイル発射のおかげで、この属国、更に宗主国ミサイル迎撃システムを追加導入するだろう。打ち上げ騒動があるたび「誰が儲かるのか」考える。いつも属国政権、宗主国軍産複合体のお役にたっているようにしか思えない。
大本営広報部、ご一行のおいでをどう報道するのだろう。旅行中は酒も飲めるのだろうか。爆買いはされるのだろうか。
暗殺事件で隣国を批判するのは自由だが、自国を同じ言論統制体制にする現代版治安維持法「共謀罪」を導入する政府批判は御法度。カルト学園をつついているうちに、我々は地獄に落ちる。電気洗脳箱と茶番出演者の皆様は、思想の自由より、野球や給料や出演料が大切なのだろうか。
東京大空襲記念日が来るたびに思い出すことがある。
あの空襲を推進し、原爆投下も監督していたカーチス・ルメイ空軍大将、1964年に勲一等旭日大綬章を授与された。推薦は小泉純也防衛庁長官と椎名悦三郎外務大臣連名だという。一人はトモダチ作戦で被曝した米軍兵士の救済基金を設立した人物の父親。
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Tony Cartalucci氏はバンコクに拠点を置いておられるとのこと、チェンマイ在住の私は2011〜2012年頃の赤シャツvs黄シャツの対立に関する分析記事以来、いつも関心して読ませて頂いている。バンコクの連続爆弾テロが起こったとき、私はまだバンコクに住んでいた。確かそのころ中国の昆明でも刃物による殺傷事件があったと記憶している。筆者のおっしゃる「テロ•パイプライン」の経路と何か関係があるのかもしれない。昆明には昨年の5月に10日間旅行して、料理のうまさ、気候と治安の良さですっかり気にいってしまった。バンコクもそうだが、貧しい人たちはいるが、テロの起こりそうな雰囲気が少しも無いのである。都市を斜めに流れる運河沿いにいくつものイスラム寺院が建ち、我々外国人もタイ人も礼拝に通うイスラム教徒も船に同乗するのだが、満員という以外、不快な思いをした事が一度も無い。乗船マナーがいいのである。バンコクでのイスラム教徒と仏教徒の対立らしき場面に遭遇した事も一度も無い。ミャンマーのロヒンギャ問題も、筆者のおっしゃるように外圧で人工的に作られたものだという気がしている。
投稿: コメット | 2017年3月10日 (金) 14時35分