クリスティア・フリーランド: 在オタワ・キエフ外務大臣
Michael Jabara CARLEY
2017年1月23日
Strategic Culture Foundation
2017年1月10日火曜日、カナダ首相ジャスティン・トルドーは、在任わずか14カ月で内閣を改造した。最も報道に値する変化は、ステファン・ディオン外務大臣の罷免と、これまで国際貿易大臣だったクリスティア・フリーランドを後任にしたことだ。内閣改造は、ディオンに対するひどい扱いと、フリーランドを彼の後継者指名がなければ、さほど話題になっていなかった可能性が高い。元カナダ自由党党首で、1996年以来国会議員のディオンは、罷免に関して何の事前通知もされていなかった。“公務とカナダに大いに貢献した長年の友人で同僚”とトルドーは言い、それは確かに真実だ。だがディオンが今でもトルドーを“友人”だと考えているとは私には思えない。
“公務とカナダに大いに貢献した長年の友人で同僚”。本当だろうか?
1995年の接戦だったケベック住民投票後、元首相のジャン・クレティエンが、ディオンに入閣を依頼した。連邦側は僅か0.5%の勝利だった。1996年、ディオンは政府間問題担当大臣となり、連邦政府が、その下で、地方政府と分離の条件を交渉する条件を規定するクラリティ法立法を監督した。カナダ連邦から分離するという、ケベックによる将来のあらゆる取り組みに対処すべく、この法律が制定されたのだ。ディオンは、ケベック分離主義の頑強な反対者として名を馳せた。
2015年の連邦選挙運動で、自由党は、保守党政府のロシア連邦に対する敵対的政策を翻すことを提案した。非常に結構なことだ、基本的な利害の衝突が全くない国と一体なぜ争う必要があるだろうと一部のカナダ人は考えた。その通りだとディオンは考え、外務大臣に任命されると、カナダ政府はロシアとの、より建設的関係を再建することに取り組むと宣言した。
ディオンはこの政策をさほど進めることはできなかった。閣内で、ほとんど支持がなかったに違いない。2015年の国政選挙戦中でさえ、トルドーは、特にウクライナに関して、ロシアに敵対的な保守党の方針を維持した。プーチンは“弱いものいじめをする悪党だ”とトルドーは言った。ロシアは“侵略”などのかどで有罪なのだ。ウクライナ系だと主張して、2014年2月、選挙で選ばれたウクライナ政府を打倒した、キエフのいわゆるマイダン蜂起参加者を支持する自由党国会議員が何人かいる。こうした議員の中で最も目立ったのが、フリーランドだった。彼女は国際貿易大臣に任命された。それは結構だ、おそらくディオンの対ロシア方針の邪魔はするまいと思うむきもあった。彼女がそうしたのか否か、我々にはわからない。
2014年、フリーランドは親マイダン国会議員として最も目立っていた。
おそらく大半の人々が当時知らなかったのは、フリーランドが、歯に衣着せぬウクライナ“民族主義者”だということだ。彼女は政界に入る前はジャーナリストで、ロシア政府と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する心からの敵意を再三明らかにしていた。フリーランドは、1990年代、しばらくモスクワで過ごし、ロシア語を話し、ロシア文学を愛すると主張している。それ以外は、彼女はロシア嫌いで、プーチンと、彼が代表するロシアを猛烈に憎んでいる。明らかに、ディオンを罷免し、代わりに、フリーランドを後継者にするというトルドーの決定から引き出せる論理的な結論は、首相がモスクワとのより建設的な関係という自由党の約束を破棄したということだ。
「この父にして、この子あり」というのは父親のピエール・エリオット・トルドーとはほとんど似つかないトルドー・ジュニアには、あてはまらない。
誰も驚くことはない。これは欧米の選挙でよくある結果だ。A党に投票したのに、B党が権力をとる、あるいは、B党に投票したのに、A党が権力をとる。我々が好もうと、好むまいと、我が国を支配している“1パーセント”の強力なエリート、“陰の政府”を打ち負かすことができないのだから、投票は無意味なのだ。「この父にして、この子あり」は、できる限りカナダの独立のために立ち上がる覚悟のある、勇敢で、いささか変わり者の独立心のある首相だった、父親のピエール・エリオット・トルドーとは似ても似つかないトルドー・ジュニアには当てはまらない。
2015年選挙の後、トルドー・ジュニアは、ネオリベラルのバラク・オバマと会うべく、ワシントンに駆けつけた。彼の覇権者に対する忠誠の誓いの儀式というのが、トルドーとワシントンのオバマとのやりとりの大げさな画像を解釈する唯一の方法だ。
だから、アメリカ大統領選挙で、事実上全員にとって驚くべきことに、オバマが選んだ後継者ヒラリー・クリントンが、ドナルド・トランプに敗北した際、首相は驚き、不安になったに違いない。トランプは選挙運動中、ロシア連邦とうまくやりたいと明言していた。その方が、為になるように思えると、彼は言っていた。それはそうだろうが、彼のこの姿勢は、オバマ・ネオリベラル連中のみならず、彼自身の共和党内のネオコンを怒らせた。トルドー・ジュニアは、アメリカの陰の政府が、トランプがアメリカ-ロシア関係を良くするのを許さないだろうと計算したのだろうか? さほどうまくない賭事師でさえ、そういう賭けならできるだろう。だから、フリーランドの任命は、さして影響はなく、ロシアに対するアメリカの敵意の継続と、最終的に一致するだろう。もしトランプがアメリカの政策を変えれば、アメリカの臣下として、トルドーもそれに習うだろう。フリーランドが、そうできるかどうかは疑問だが。
2015年選挙の後、トルドー・ジュニアは、ネオリベラルのバラク・オバマと会うべく、ワシントンに駆けつけた。
キエフでのクーデター後、フリーランドは、いわゆるマイダン蜂起参加者、“民主主義の擁護のためなら、戦い、拷問され、死さえ辞さない”という大絶賛を突如始めた。カナダが、アメリカ政府の命令で経済制裁を課した際、モスクワは、フリーランドを、ペルソナ・ノン・グラータだと宣言して反撃した。カナダの新外務大臣はロシア連邦に足を踏み入れることができないのだ。ロシア人は現実主義者で、彼らに話かけるほとんど誰に対しても答える。ところが、フリーランドは、いささか行き過ぎかも知れないが、不思議ではない。彼女は、ロシアとプーチン大統領に関する憎悪に満ちた偽りの記事の数々を残している。2014年11月のそうした記事の一つで、彼女は「イスラム国」と同じ文章に、プーチンを置いた。これは連座で、決して、デリカシーがあるとは言えないが、フリーランドは、ロシアの話となると、デリカシーなど全く気にしないのだ。“プーチンのクレムリンは、ロシア人がピノチェト風独裁的政治支配と呼ぶものと、市場改革とを結びつけたものを目指しているように見えた… ところが今やロシアは、独裁的で、一層専制的な収奪政治で、しかも戦争しか頭にないものへと退化した[強調は筆者による]”。フリーランドの記事題名は“プーチンの脆弱な鉄のカーテン”だ。彼女のイメージは、1945年冷戦後のものだ。彼女が言いたいことは、プーチンの“鉄のカーテン”は崩壊しようとしているということだ。“もし疑われるのであれば、プーチンはそうではないことに留意願いたい。彼の攻勢は、彼の政権の脆弱さへの認識から出ている… [それが理由だ]彼が新たな鉄のカーテンを構築しようとしている…”。プーチンがするあらゆることは、彼の個人的権力を維持するためのものだ。それは、彼がロシア国家の国益と思うものには決して役立たない。
フリーランドによれば、プーチンは金銭ずくと自暴自棄から、民主主義や出版の自由を追放するに至った。実際は、選挙は正当なもので、ロシアの印刷媒体も、放送局も、欧米のMSM、つまり主流マスコミより遙かに大きな意見の多様性を認めている。私のロシア人同僚、ドミトリー・バビッチの言葉を引用すれば“プーチン政権は[いわゆる]リベラルなメディアが、その全くの愚劣さと偏見をさらすのを邪魔していない”。
フリーランドの悪意ある誇張は、ウェブ中に転移している。彼女は自らを“ウクライナ民主主義者”と見なしている。カナダで、そもそもカナダ人ではない外務大臣で、我々は一体何をしようとしているのだろう? ウクライナ“民主主義者”フリーランドは、一体どのような権益、一体どのような目的に仕えようとしているのだろう? トルドー・ジュニアは、一体、彼の閣僚の扇動的な記事をどれか読んだことがあるのだろうか?
他にもいくつか例がある。これは2011年のものだ。ロシア連邦が新オスマン帝国で、“ヨーロッパの病人”であるがごとく、プーチンは“ロシア’のサルタン”だ。この比喩的表現のほとばしりは、ドミトリー・メドベージェフが、プーチンが第三期目に出馬できるよう、大統領の座を降りるつもりだと発表した後に起きた。ロシアは、その意味が何であれ“サルタン風、つまりネオ世襲政権”に変身した。“ロシアのサルタン支配への移行は、世界の他の国々… 世界の列強諸国-ロシアが何としてもそこに所属したがっている集団と歩調が合っていない-クレムリンの支配者は‘朕は国家なり’と言いさえすれば良い。中国は確かに独裁主義だが、それはまさにプーチンが構築しそこねた一党国家なのだ。”
一体何という疑似科学的たわごと! キエフで、アメリカと、EUが支援したクーデターが成功した後、フリーランドはあらゆる節度を放棄したのだ。フリーランドによれば、民主的に選ばれた大統領ヴィクトル・ヤヌコーヴィチを打倒することで、ウクライナは彼らの民主的権利を行使したのだ。数カ月後に予定されていた選挙を、連中は待ちきれなかったのだろうと私は思う。当時の我慢できなかった民主主義者は、いささか興奮し、敵対する人々を殺害し、偽旗作戦によるキエフ街頭の人々への銃撃を仕組み、それをヤヌコーヴィチのせいにした。政府打倒作戦は、長期にわたり、50億ドルの資金で支援されたと、当時のアメリカ国務次官補ビクトリア・ヌーランドは自慢した。ヌーランドは、キエフで、暴徒連中、あるいは、あえてこう言うべきだろうか、フリーランドの“民主主義者”に、サンドイッチとビスケットを配った人物の一人だったのを覚えておられるかもしれない。
マイダン支持者の一部は、連中は、彼らに反対するあらゆる人々を脅迫するため、1930年代のナチス・ドイツのものを思わせる松明行進を演じた。
暴徒連中が、ファシストのように見え、それらしく行動したことに気がついている人々もいる。“過激民族主義者”というのが、彼らを意味する欧米警察用語だ。こうした集団の中には、武装集団の右派セクターやネオ-ファシストのスヴォボダ党がある。彼らはファシストではないと、フリーランドは主張する。しかし連中は服装や、民兵制服、入れ墨に、ナチスのかぎ十字やSS記章をつけている。連中は、彼らに反対するあらゆる人々を脅迫するため、1930年代のナチス・ドイツのものを思わせる松明行進を演じた。連中は、オデッサ、マリウポリ、ドネツク地域や他の場所で、あえて彼らに立ち上がった人々を大虐殺した。Apply duck rule: もしファシストのような歩き方をし、ファシストのように語り、ファシストのように振る舞えば、それはおそらくファシストだ。“ごくわずかの腐ったリンゴ”に過ぎないと、ワシントンではいわれている。ナチス協力者で、いわゆるウクライナ民族主義者組織やウクライナ蜂起軍(OUN/UPA)、第二次世界大戦中、ドイツ国防軍やSSとともに戦ったステパーン・バンデーラが国民のアイドルに変身させられた。
現在のウクライナでは、ナチス協力者が国民のアイドルに変身している。
フリーランドの反ロシア論議については、いくらでも続けることが可能だ。クリミアと東ウクライナのロシア語話者住民が、キエフのファシスト民兵に対して、自らを守るために武器をとって立ち上がると、フリーランドは、それをロシア“侵略”と呼んだ。ウクライナ国内の、キエフにおけるクーデターに抵抗するあらゆる行動は、過去も、今も違法だ。クリミア住民の大多数がロシアへの再編入に投票したにもかかわらず、クリミアでの住民投票は違法だ。ウクライナ内戦を解決することを狙ったミンスク合意にフリーランドは気がつかなかったようだ。キエフ軍事政権が、それを一日たりとも尊重しなかったためなのは確実だ。ドンバスの一般住民はキエフの武装暴漢による容赦のない日々の爆撃の標的にされている。
フリーランドのロシア嫌いの反プーチン暴言は、彼女が誇らしげに認めている通り“往々にして、クレムリンを不快にさせた長い紙の軌跡”を残している。彼女は母側の祖父母はスターリン主義者による迫害の犠牲者だと言っている。実際は、彼らは信念の固いナチス協力者だったようだ。フリーランドは、首尾一貫でないにせよ、取るにたらない人物だ。彼女は、祖父母というネオナチの精神的子孫を支持している。彼女は自らを、何よりも“ウクライナ系カナダ人活動家”と称している。彼女は、キエフ軍事政権の狙いを、オタワで追求するつもりなのだろうか? どうもそのようだ。彼女自身の言葉を信じれば、彼女は、ロシア連邦とその大統領と戦うつもりのだ。“ほぼ十五年間、ジグザグした後、プーチンのロシアは進路を選んだ。現在ロシアは、拡張主義の野望を持った、自らは国際条約と規範によって拘束されないと考えている独裁国家だ。国内で権力を確保すべく、プーチンは、限界を外国で試すことに決めたのだ。ウクライナ国内であれ、他の場所であれ、いつの日か、我々は彼を止めなければならない”。フリーランドは、プーチンを一体どのように“止めるよう”提案するのだろう? その仕事をすることになるこの“我々”とは一体誰なのだろう?
“ナンセンス・イン; ナンセンス・アウト”(馬鹿げた入力をすれば、馬鹿げた出力になる)という古いコンピュータの格言を想起願いたい。ロシアとプーチンに対する見方は、ウクライナの超“民族主義”プリズムで歪められている。ロシアとプーチンに関するフリーランドの偽りの歪曲と勘違いに基づくことになれば、カナダ-ロシア関係は歴史的最悪に向かうことになる。カナダのためでない狙いを持った、この種の外国系カナダ人にカナダ外交政策を運営して欲しいと我々は望んでいるのだろうか?“いつの日か、我々は彼を止めなければならない”とフリーランドはプーチンについて書いている。これは一体何を意味しているのだろう? これは脅威で… 大げさで、危険なたわごとのように聞こえる。この類の煽動的な言辞を、我々はカナダ人として、わが国の外務大臣に望んでいるのだろうか? 前回選挙で自由党に投票したカナダ人として、私はあえて、そうでないことを望む。
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彼女の先祖は、ウクライナ・ファシストという記事がある。
Chrystia Freeland’s Family Record for Nazi War Profiteering, and Murder of the Cracow Jews January 19th, 2017
ファシストの末裔、宗主国の手先にふさわしいもののようだ。アジアの先兵、北米の先兵。
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大統領の座とスイス銀行の秘密口座のためにCIAと外国資本家に祖国を売り渡し、ナチ風の軍服にナチ風のシンボルを身に付けたファシスト連中を率いて、その最期の瞬間までチリの自由と民主主義のために自ら銃を取り闘ったアジェンデ大統領を死に追いやったピノチェ元帥とプーチン大統領を結び付けられる無知・無神経さに腹が立ちます。(その後の反体制派に対する大量虐殺含め今のウクライナの状況そのままじゃないか!)そして「現在ロシアは、拡張主義の野望を持った、自らは国際条約と規範によって拘束されないと考えている独裁国家だ。国内で権力を確保すべく、プーチンは、限界を外国で試すことに決めたのだ。ウクライナ国内であれ、他の場所であれ、いつの日か、我々は彼を止めなければならない」という発言。明らかにロシアよりその説明に相応しい国が彼女の身近にあるでしょう。ここまで来ると道化を演じているのかと疑ってしまいますが、まあ本気なんでしょうねぇ。
そしてトルドー。藤永先生絶賛の父親からトンデモのバカ息子が生まれたようでして…。
投稿: 一読者 | 2017年2月 6日 (月) 07時55分